この三語で書け! 即興文ものスレ 第十層

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276ルゥ:「地図」「メール」「ビキニ」 ◆1twshhDf4c
夏も盛りの頃、今年は……というよりも今年も私たちは4泊5日で長野に旅行へ出掛けた。勿論、山に登るためである。
しかし、私は旅行の数日前から夏風邪を引いたらしく体調があまり優れなかった。
伸行は私をいたわってくれたのか、いつもの様にきつい槍ヶ岳などでは無く、今年は立山にしようと提案した。
「あそこなら、途中までトロリーバスとかロープウェイがあって楽だからね。それに何だかんだ言って、亜理紗とはまだ一回も一緒に行ったことなかったし」
伸行の言った通り、今までの槍ヶ岳などに比べて今回は楽だし、黒部ダムの放水やロープウェイからの景色は最高だった。
一応、室堂周辺の地図もリュックに用意してきたが、道案内の看板も親切で、どうやら用なしのようだ。
途中までは実に気分良く山登りを続けていた。
だが、もともと風邪気味なのが良くなかったのだろう。しばらくしてから、ものすごく気分が悪くなってしまった。
伸行は心配そうに私の顔を覗き込んで「少し休むか?」と声を掛けてくれたが、私は首を横に振り、引き返そうと入ってくれないの、と少し苛立ちながら山頂を目指した。
山頂に到着し、お茶を飲みながら一息入れると、大分気分がよくなった。
「亜理紗、こっちに来て見てごらん」
少し離れたところで、満面の笑みの伸行が手招きをしている。
私はまだ伸行に対するわだかまりが残っていたが、ゆっくりと伸行に歩み寄った。
「亜理紗、海に行きたいって言ってただろう。こんな『海』はどうだい?」
私は、今までの気分の悪さや苛立ちを忘れ、はっと息を飲む。『海』って、こういう意味ではなかったんだけど……。
「すごい……。こんなすごい雲海、初めて見た」
それは見事なまでの雲海だった。私は微笑みながら、伸行の耳元にそっと囁いた。
「伸行……、ありがと」