この三語で書け! 即興文ものスレ 第十層

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267「いつのまに」「不可解」「緑」
いつのまに、大気圏外に出ていたのだろう。
ムーンシティ行き定期便のエコノミーシートの中で、私の頭はまだぼんやりしている。
目覚めるにつれ、自分の体の重さを感じない違和感が迫ってくる。
「あぁ・・・、これだけはいつまでたっても慣れない・・・」
無重力への苛立たしさのせいで、目がさえてきた。
「もう、月があんなに近くだ。小一時間ばかり眠ったようだな」
窓の向こうには、ムーン・シティのシンボル、全長3000メートルの
ムーンタワーが、遠く小さく見え始めている。
「ホント、いつ見ても馬鹿でかい。まるで不自然だ、不可解だよ。
東京シティーから見える富士山じゃあるまいし」
ふと船内に目を移すと、緑の制服が良く似合う、美しい女性船員がほほに触れながら
声をかけてくる。
「もうすぐ、ムーンシティに到着です。着陸時には、シートベルトを
お締め下さいね」
ほほに触れるのは、無重力状態の違和感を和らげるための
触覚刺激のためらしい。
無重力には慣れない私も、これにはすぐ慣れたものだ。