263 :
名無し物書き@推敲中?:
「イヤホン」「古本」「針千本」
「嘘ついたら針千本の〜ます。指切った」
イヤホン越しに聞こえたその声に驚き、思わず声のした方向に振り向いた。
しかしそこには誰もいなかった。もし例えそこに誰かがいたとしても、
彼の思う誰かがいるはずは無い。何故なら、その誰かはもう死んでいるからだ。
彼は何かを振り切るように、少しだけ早足で歩き出した。
彼の今進むこの街は、俗に言う古本街だった。店の前には、
店からあふれ出したような本がうず高く詰まれて、それがいつしか普通の街を迷路のように変えてしまっている。
彼はその迷路のような古本の山を進みながら、その誰か、死んでしまった妹思い出した。
そういえばもうすぐ、妹の三回目の命日だと思い出し、心の中で呟いた。
「残りは十二年」
お題は「妹」「命日」「ウソ」