夏も終わりの残暑の頃。子供達はある喫茶店の二階の部屋で人間が
暑さにどれだけ耐えれるかといわゆる我慢大会をしていた。始めて
一時間。まだ誰も降参していない。彼等は真冬の格好でこたつに入り
さらにストーブを二つに暖房をかけた。そしてこたつの上にはキムチ鍋。
部屋には鍋の湯気か汗が蒸発しているのか何やら霞んでいる。この分だと
においも相当だろうが彼等の鼻は働いていないらしかった。
「全然平気やな。もっと熱くしようや」
「でもどうやってこれ以上熱くするんや」
「さあ。どうするかな。酒でも飲むか。俺正月に飲んだとき顔が火照って
しゃあなかったぞ」
彼等は賛成し、この家に住む子供が親の目を盗んで一升瓶をふらふらと持ってきた。
彼等はコップに酒をなみなみと注ぎ、乾杯をした。
一人が得意げに一気飲みをすると皆、負けじと飲み干した。
「まだまだいけるよ」
一番早く飲んだ子供が一升瓶を手に取りコップに注いだ。それに続く他の者。
彼等の飲みっぷりは小学生とは到底思えないものだ。次から次へと飲んでいった。
「なんやもう終わりかい。大したこと無いな。酒ぐらい小学生でも飲めるわ」
「ほんまや。全然平気やわ」
彼等の顔はいっこうに赤くならず、寧ろ熱を引いたように思える。
「お前顔青いぞ」
「なんでやねん。お前も青いぞ」
その後この喫茶店で働く彼等の内の一人の親が二階に上がってくるまで
彼等は変なにおいの充満した部屋で青い顔をして寝転がっていた。