この三語で書け! 即興文ものスレ 第十層

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237うり
「マイ」「フーリッシュ」「ハート」
 私はシャンパングラスに手を伸ばすとボランジェを口に含んだ。彼女は人差し指で私の唇をそっとなぞった。
透ける程に白く、繊細なガラス細工の様な指だった。彼女は口許だけの微笑みを浮かべるとそっと唇を寄せた。
彼女は口移しでボランジェを飲みながら潤んだ瞳に切なげな光を宿した。
見詰め合ったまま舌を絡めた。彼女の舌に残ったボランジェの仄かな甘味が、日常の全てを忘却の彼方に置き去った。
舌を絡めながら唾液を交換し合った。
彼女は重ねた唇をすっと離すと私の下唇を噛んだ。段々と噛む力を強めて行った。
唇に血が滲み、口の中に血の味が広がった。彼女は私の唇に滲んだ血を舐めた。舐めながら舌先を口の中に差し込んで来た。
彼女はいきなり私を突き飛ばすとシャワールームへ消えた。
口移しのボランジェが妖しい夜へのプレリュードだった。シャワーの音に混じって彼女の鼻歌が聞こえて来た。
「マイ」……「フーリッシュ」……「ハート」…… 一語一語区切る様に、そして言葉の間に気だるいスキャットをはさんだ。
 ちくしょー、俺だってこんなキスしてみてーよ。
俺は白いブリーフに右手を突っ込んだまま左手に持った恋愛小説を床に投げ出した。どーせ、俺はでぶオタだよ。ちくしょー。
どうせ猫耳好きだよ、くそー。クリスマスが近付くとこんな俺でも『ひょっとして素敵な彼女が出来るかも』と思って恋愛の予習がしたくなるんだよ。ちくしょう。
俺は鏡にうつった自分の姿を見て急に冷静になった。「やっぱり猫耳だよな」俺は呟いた。

次のお題は「コーンフレーク」「仏像」「暴走」でお願いします。