この三語で書け! 即興文ものスレ 第十層

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「ついに田中、バッケンレコード更新!!田中世界一です!!」
 私が幼稚園児の頃。オリンピックが開催されていたのだが、日本人が世界記録を
更新したというニュースが盛んに報じられ日本国民皆が彼を讃えた。
 私は彼のジャンプのシーンが放送されるといつも
出来ないことは分かっていながらも、だだをこねていた。
「僕もあれやりたい」
「遊園地に連れて行ってあげるから我が儘はよしてくれ」
 母は私を大人しくさせるためにこんな事を言ってその場を済ませた。しかし、
その時は私はしつこく母に迫った。
「いつになったら連れて行ってくれるの」
 母は眉を歪めかけたが、
「もう、明日連れて行くから静かになさい」
と口元は優しかった。
 遊園地へ行ったが幼稚園児の私の乗れるものといったら、
メリーゴーランドやお化け屋敷などで飽きっぽい私は幾らか乗り物に乗ると
退屈し始めた。
「もう帰ろう」
 私はふくれ気味に母を見上げた。
「あら、もう飽きちゃったの。どうしましょうかね。そうだもう一度メリーゴーランドに
のったらどうかね。スキーの選手のように飛んだ気になったらいいじゃないか」
 母のいい加減な言葉に乗せられて、嫌々メリーゴーランドに乗った。
ずっと同じ所を回る。もういいから早く終わってくれと思いながら馬の背中に
揺られていた。
 家に帰りるとすっかり夜で、疲れた私はうとうととしていた。が、眠りに就こうと
するとき、夜の冷たい空気をつんざく音がした。暴走族。不良少年達がバイクにまたがり、
やかましい音を立てている。私は彼等にメリーゴーランドの楽しさを教えて欲しいと思いながら
スキーの選手になる夢を見た。