この三語で書け! 即興文ものスレ 第十層

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 鳥籠でカナリヤが鳴いているのがとても煩いので物心ついたときから部屋の
片隅で埃を被っていた消火器を持ち上げ、鳥篭に向って消化剤を噴射した。
ピンクがかった消化剤が一瞬の内にカナリヤの姿を泡で包み、姿もろともその
鳴声をかき消した。
「なんだって鳥なんて飼おうと思ったんだろう。自分で自分が分からないな」
 そうひとりごち、寝室で仮眠をとった。明日はスキーだ。
 
 夢を見た。
 水爆戦の夢、世界が終わる夢。
 ただ1人、カナリヤの突然の死によって空気の汚染を知った私はアストロ
スーツを着込んで被爆を逃れた。周りの人々は喉をかきむしりながらバタ
バタと倒れ、死んでいく。その中を悠々と闊歩する私。愉快ではあるが少し
悲しい。周りの人々は私が好意をよせていた人ばかりで、私が嫌いな人たち
は鳥篭を持ち、私と同じようにアストロスーツに身を固めていたからだ。鳥篭
の中にはもちろん死んだカナリヤが入っている。

 目が覚めると窓から強烈な閃光が雪崩込み、私の体はその光に焼かれて
いた。皮膚は失われ、筋肉組織が剥き出しになる。失明し、視界は真っ白に
なる。毛髪がごっそりと抜け落ちていく。足は体重を支えきれなくなる。カナリ
ヤはどこだ。