この三語で書け! 即興文ものスレ 第十層

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228うり
「黒猫」「レポート」「秋」
レポートの提出期限は明日だ。提出してしまえば心置きなく冬休みを迎えられる。
バイトが終わったらさっさと書上げないと。
でも、何も考えが浮かばない。いや、そうじゃない。正確には僕の頭の中はあいつ等で一杯だった。
一日中アイツらの目が僕を睨んでいる。早くこのバイトを辞めなきゃ駄目だ。ああ、今年の秋にあんな事さえなければ。
キキーッ。僕は思い切りブレーキを踏み込んだ。何かが目の前に飛び出して来たのだ。
ごんごんと何かが車体の底に当たった。なんとも言えない嫌な音と感触だった。
僕は車をおりると目を凝らした。車の数十メートル後ろに黒い塊が見えた。僕はやれやれと言う様に頭を振ると、黒い塊に歩み寄った。
黒猫だった。下半身がぺちゃんこに潰れていた。迫り来る死から逃れたい一心か、必死に前足で地面をがりがりと掻いていた。
でも、潰れた下半身が地面に貼り付いているのか一向に前に進まなかった。僕は急に吐き気が込み上げ路肩に思いきり吐いた。
僕は振り返って猫を見た。猫と目が合った。かっと目を見開き、口から血を垂らしながら必死にこちらに這って来ようとしていた。
僕は恐ろしくなって車まで走った。断末魔の恐怖に耐える様な必死なあの目が僕の頭から離れなくなった。
僕はトラックターミナルで配送伝票の整理をしていた。僕の職場は宅配便のターミナルだ。
トラックの車体にも伝票にも壁に貼られたポスターにもアイツ等はいた。
アイツ等はいつでも僕をじっと見詰めている。恨みがましい目で僕をじっと見詰めている。

次のお題は「雪崩」「カナリヤ」「消火器」でお願いします。