この三語で書け! 即興文ものスレ 第十層

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210名無し物書き@推敲中?
「脱ぎすてる」「はちきれそうな」「社会の窓」

頬を流れる涙を由紀は手の甲で乱暴にぬぐった。
窓辺に座る花井が、それを優しく見守っているのが見えた。
その傍らに、そっと身を寄せる。
窓から見える景色。ミカン色の夕日があたりを染めていた。
「もう甘えは脱ぎ捨てていかなきゃ。子供じゃないもの」
物憂げに呟く由紀に、花井は答える。
「そうだね。君は社会へ出て行くんだ。もう僕に甘えてられないね」
「意地悪言わないでよ。…でも、正直怖いのも本当なの」
「君はこんなふうに社会の窓辺にたっているだけだ。景色は眺めるより、味わうほうがいい」
「…うん、そうね。私、ここで足踏みするより進むことにする。目が覚めたみたい。きっと明日から違う私でいられそうな気がする」
まだ幾分赤い目をしている由紀の表情は、それでもさっきよりも毅然としていた。
その様子をみて優しく微笑むと、花井も由紀の視線の先の夕日を眺めた。
由紀はただ、赤い夕日の沈んでゆくのをじっと見つめていた。
はちきれそうな明日への期待を胸に。


さわやかに…

「風水」「アゲハ」「きのこ」