あなたの文章真面目に批評します(3)

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416院丸
友人が「2ちゃんに載せてくれ。色んな人の感想が聞きたい」と言ってたので載せます。
タイトルは「すたれびとさん」です。

夏が死に行き秋が息を吹き返しても街は時間を忘れない。夏が死んだ朝、時間に逆らえず動きつずける街がある。
高層ビルの谷間にひっそり人生を知り尽くしたかのように、ふてぶてしい顔をしメンソールの煙草をくわえ夏が死ぬのを待ちくたびれたおっさんがいっ匹。
時代の先端ファッション、コムサデモードのスーツを身にまとい街を泳ぐ。
417院丸:02/10/08 03:24
出会いとは、偶然なのだろうか。幸治は人生に疲れを感じていた。
全てのことが偶然なら、偶然に身を任せ何の努力もせずただ時間の流れにみをまかせれば良いのだろうかと困惑する。
二学期も始まり、高校生活最後の夏を受験勉強もせず、偶然に身を任せ、
時計の針をくる日もくる日もみつずけた夏の日々に憂鬱を感じ新宿駅を後にした。
全ては自分が悪いのにも関わらず認めたくはない。今日は遅刻だーとも思わず、四限目が終わり昼休みに登校するのが幸治の日課である。
教室のドアを開けると皆が事務的に弁当を口に運んでいる。幸治には彼らが受験勉強するウンコ製造機にしか見えない。
ロボット達を後目に幸治の隣の席のものが飯も食わず、腕時計をいじっている。幸治はそれを凝視した。
時刻を調整しているのかと思えば、時計の針はひたすら反時計回りをえがいている。驚きを隠せない幸治は彼に問い掛けた。
418院丸:02/10/08 03:26
「君、さっきから何やってるの」
「弁当忘れてやることないから、時計を眺めてて・・・時間、夏休み前に戻らないかなーっと思って」
幸治は少し微笑み、彼の古ぼけた時計を見つめた。
「その時計が壊れたらきっと時間は眠るよ」
「君の心、オシャレだね」
何だか幸治の心は妙にハイな気分だ。
「俺の心は神様に強姦されたから」
「神様・・・死ぬ前に一度会ってみたいよ」
「授業サボって、今から神様でもラチるか」
419院丸:02/10/08 03:29
二人は目を合わせ、軽く微笑んだ。もう言葉なんかいらない。必要なのは退屈からの脱出だと幸治は思い学校を後にした。
国語、数学、理科、社会、英語、君たち五人のことは、幸治の体からは、風化したのかもしれない。
風が石を削り取るように自然体に、みんなに「さようなら」も言わず・・・
なまぬるい風が幸治のほうを打つ。学校という狭い社会、鳥かごの中で五人の退屈の使者と向かい合う社会。
その日は、月が真っ黒に塗りつぶされ、街に存在感を与えるものは人を狂わすコバルトブルーのネオンライトと目を背けたくなるような錯乱する光達。
虫さえ死ねないこの街の主は捨てられた死神かもしれない。
幸治は友人と共に街を練り歩く。
見つかるはずのない神を追い求めてどす黒い空の下を練り歩く。
答えの無い道を、答えを追い求めて・・・。
冷たいビルの谷間から時折、光に映し出される死神は幸治に突き刺さるほどの視線を投げつける。
下衆くさい過去を買占め動乱の世界を笑顔で語る街の主に睨まれたが最期。
煙草の煙が風に色を付けたかと思えば、風は色を消し幸治のもとにやって来る。
色無しの風が幸治を包んだ瞬間、死神は幸治の瞳に舞い降りた。
表情が無い死神に見つめられた幸治は心が凍りついた気分に陥った。視線が絡みつく。
もう逃げれない。逃げたくもない。
420院丸:02/10/08 03:31
コムサデモードのスーツを着たどこにでもいるような外見、人間であるのはみれば分かるのだが、生きているのは感じ取れない。
幸治の視界には生を映し出す光が差し込まず、見えるのは死神の瞳に映し出された答えが見つからない自分だけ。
「自分が見えますか?」
いきなりの質問に呆気にとらわられ幸治はたじろいだ。
と、同時に自分の全てを見透かされている自分がいる。幸治を恐る恐る声を発した。
「よく分かりません。僕を教えて下さい」
あまりにも弱弱しく、あまりにも力が無い声は、街の騒音にもみ消されて死神の耳には届かないかもしれない。
しかし、死神の瞳に映る幸治の虚像は、とてもすたれて言葉なくとも、それだけで充分であった。
死神は幸治に問い掛けた。
「道に答えが落ちていたら、あなたは拾いますか?」
「確実に拾います」
「私を拾って行きなさい」
街はいつもと変わらないように時計の針を刻んでいる。
ビルの窓からは光が絶え間なく出続け目を開けたまま寝ているようだ。
全ての世界は何も無かったように動き続けている。
二人の出逢いを除いては・・・。

421院丸:02/10/08 03:34
その日は、空が怖いぐらい青く白い波をうつ。
気の抜けた青い空は幸治の心境を映しているのかもしれない。
海の深さの限界は空には理解されず、空は底なしだ。
「面倒はあなたが見るのよ。お母さん知らないからね」
おじさんを飼う承諾は既に出ている。
一見、見た目は人間と変わらないおじさんを飼うのは、いと容易であった。
しかし、幸治が少し気がかりなのは、おじさんの生活態度だ。
 荒れている。ただの荒れではない。海を憎む台風が大海原を駆け巡り海水は台風を恐れ、津波という形をとり海から逃げ出そうとしている。
そんな大海原に幸治の家が一軒。その日も台風の目は帰ってきた。
 今日の入り口は玄関のドアではないようだ。
風呂場の窓が派手に割れる音がする。今日の台風は風呂場の窓が好きらしい。と、同時に幸治の母の悲鳴が聞こえる。
その悲鳴はやがて怒声に変わり罵声に変わりつつある事を感じ取った幸治は風呂場に駆けつけた。
「なにガラス窓割ってんのよ」
浴室には見知らぬ年老いたおばさん、と、思いきや、恥ずかしがり屋に恥を売り捨てた全裸姿の幸治の母と浴槽の中には大きな石が・・・。
「私の意志で石を持ち意志を投げた」
422院丸:02/10/08 03:37
派手に割られた窓ガラスの向こうには、今日の主役、台風の目が満面の笑みを幸治の瞳に映し出す。
そして、意志を幸治に投げかける。
「今日は、幸治の母親の裸姿を見たかったので、窓を覗きました。
そしたら、窓にモザイクがかかっていたのでガラスを石で割りました」
意志をグローブも着けていない手のひらで受け取った幸治は呆気に囚われ言葉を失った。
ワンッと鳴き方を忘れた犬のように・・・。
犬は鳴かずに台風の目を犬小屋に連れ去った。
犬であることを忘れ正気に戻った幸治は台風の目に問いただした。
「何やってんだよ」
言いたいことがいっぱいある幸治にとって何から話せばよいか分からず、その一言で精一杯。
そんな挙動不審な幸治を後目に台風の目は堂々と呟く。
「今日、お金が欲しかったので銀行に行き銀行強盗しようと思ったのですが警察に捕まるのが嫌なので、
あなたの家と土地を担保に7000千万円いただきました。そのあと、保険会社に行き、
あなたと、あなたの両親にそれぞれ一億五千万の生命保険をかけました。
あした、自殺してください、じゃないと毎月、私が多額のお金を保険会社に払わなくてはいけないので、お願いします」
423院丸:02/10/08 03:39
幸治が道端で拾ってきた答は答える間も無く幸治に死ねと言う。行き先は墓だった。
死神の凍りつく目は口より先に幸治の身を硬くし拒むことを許さない。
死に直面した幸治は淡々としている。
目の前の人間を見て生気を感じ取れない幸治はただそれだけのものしか感じ取ることができない。
「死じゃないと駄目ですか。人間辞めたいです。
あなたみたいに辞めてみたいです。時には名前を捨ててみたりなんかして」
死神の凍りついた目は一瞬、幸治の答えを瞳に映すことを許し、またどす黒い、無の空間に様変わる。
「私、あなたのこと愛しちゃいました。
しかし、お金は欲しい。あなたの母親は美人だ、あなたの父親に自殺してもらいましょう」
424院丸:02/10/08 03:42
幸治の父が首を吊った朝、辺りの烏が狂わんばかりに鳴き、それに負けじと幸治の母が発狂している。
葬式には溢れんばかりの人に混じり一匹の死神が拳に力を入れその拳は未来の現金をてにしているようにも見える。
死神は葬式という言葉をとても嫌いだ。
「卒業式だよ」
と、幸治にもらす。幸治は死んだ父の顔を見た。
白く冷たくなった父は何も呟かず、生前、
無口だった父がよりいっそう無口になったように見え父と過ごした空気が当たり前に在る様な記憶が透き通って見えそうな日々を回想した。
記憶の走馬灯は曖昧でありながらも逆回転する時計の針のようにこうを描きその時計の針が十二を射した時、時間は眠りこけ、記憶は今日に戻ってくる。
今日、帰宅することを幸治に告げなかった涙は家の前で入ろうか入るまいか困惑し幸治の瞳を赤くする。
「ただいまー」昨日の父が帰宅し家のドアを開けた最期の記憶が家の前でたじろぐ涙に拍車をかけ涙はドアを開けた。
瞳から生まれた滝は死ぬことも知らず死のうともしない。
「うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
悲しみは日本語では表すことはできない。悲しみを表現できる言語をもつのは地獄だけかもしれない。
幸治は心の中で叫び続ける「神様、助けて」神は幸治にこう告げる「神様なんていませんよ」
涙を無くした死神は幸治に躊躇無く言う。
「泣く事を忘れた人間は生きてはいけない。
君はまだ辞める事は不可能だ、無くしてみて初めて愛したもの、それをまた得ようとする時、人は涙を流す。
あなたは紛れも無い人間だ。人間すぎる人間だ」
425院丸:02/10/08 03:44
幸治は答えを拾った。
幸治の体では持つ事のできないような重くて硬くて大きな答えを手のひらいっぱいに、
手のひらでは足りず足の平まで使ってむしゃぶるように掻き集めた。
「もう何もいらないよ、悲しむことも、悲しむことを知らなくなるのなら、もう涙さえいらない」
幸治は震えた声で父に喋りかける。
会話とは相手が返答しないと独り言。
悲しみに打ちのめされた時、幸治は返答を期待して独り言を話しかける。
「御飯はもっとゆっくり食べなさい」父の口癖を求めて。
426院丸:02/10/08 03:47
翌朝、いつも鳴るはずの目覚まし時計は幸治をきずかってか音を鳴らすのを辞め太陽からの心地よく温かな光が幸治の瞼を刺激する。
瞼は自然に開き夢を見ていた目は目の前の現実を見ざるをえない状況に直面する。
幸治は窓ガラス越しに外の透き通った空気を見つめる。
一台の見知らぬ車が幸治の家の前に止まる。
「ごめんください、世田谷区保険衛生所のものです」
幸治は思った。とうとうこの日がきたことを。
「あなたが面倒全てみると言ったから飼うことを許可したのに」
母の言いぶんは正しい。おじさんの面倒をすっぽかした幸治は、
ガムテープでぐるぐる巻きにされ抵抗し続けるおじさんを唖然と見続けるしかなかった。
一週間以内に新たな買主が現れない場合、おじさんは毒入りの注射をうたれ、夢もみることもできない永遠の眠りを強制される。
一葉の置手紙が・・・
「あなたが私を愛しない限り、答えは全て水の泡。愛したのに救われない、悲しみたいが悲しみ方も忘れて・・・涙はいずこへ」

427院丸:02/10/08 03:48
次の日の晩、空虚とはかけ離れた新宿の街に一部空虚な危険地帯が・・・
母親に捨てられ野良人と成った幸治がぽつり。
危険地帯に足を踏み入れた会社員がぽつりと幸治に呟く。
「あなたを拾って帰ります」
時計が生まれてから時計は針をどれだけ刻んだだろうか。
眠ることを忘れた時計は今日も何もなかったかのように時間を刻み続ける。
時間は眠らないから・・・。

428院丸:02/10/08 03:50
・・・以上です。
ご批評、ご感想御待ちしております。
長文失礼しました。