【まったりと「奇面組」創作小説を創ろう・2組】

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ちょっと暗めの話を行きます。
人によっては後味が悪いかもしれませんので、その辺は個人のご判断でお願いいたします。
ある冬の帰り道…奇面組はいつものように雑談を楽しみながら下校していた。
突然潔が話題を切り替える。
「ところでリーダー、清から聞いたんだけど…おじさん寝込んじゃったんだって?」
「ん〜、やっぱりショックは大きかったみたいなのだ」
大と仁も話題に加わる。
「あの火事以来、おじさんずっと頑張って店を建て直したのにね。かわいそう……」
「じゃあさ〜、うちの売れ残りのケーキでも持ってお見舞いに行く?」
「おおーっ仁くん!そりゃ名案なのだ!」
病人の見舞いに腐りかけのケーキが適当なのかという当たり前の疑問には誰も気づいていない。
その時、一人黙っていた豪がやっと口を開いた。
「しっかし、あのボランティア兄弟にはえらい目にあわされたぜ」
「まーまー豪くん、もう彼らには関わりを持たないようにしようじゃないか。
彼らはわたし達とは違う世界の人間なのだ……」
その時、脈絡も無く黒塗りのベンツが突っ込んできた!
「のわ〜っ!!」
ベンツは奇面組をかすめて走り去っていった。
「バカヤローッ!!どこ見て運転してやがんでぃ!!」
豪の罵声も空しく、ベンツは見る見るうちに遠ざかっていった……。
あっけに取られる奇面組一同、そこへ一人の男が息を切らせて走ってきた。
噂のボランティア兄弟の兄、募乱亭矢である。
「き…君達…今、黒塗りのベンツが走って行かなかったか?」
突如現れた募乱亭矢。
先ほどまでの話題が話題なので、奇面組は気まずそうに顔を見合わせる。
リーダーとしての責任感か、零が口を開いた。
「ああ…確かに黒いベンツがすごいスピードで走っていったな……」
「ナンバーは!?ナンバーは見たのかっ!?」
「い、いや…あまりにいきなりの事だったから、はっきりとわからなかったのだ」
他のメンバーもそれは同様であるという意味で口々に零に同意する。
興奮した亭矢は零の胸倉を掴んで、激しく揺さぶりながら怒鳴る。
「それじゃ困るんだよぉ!!千矢が…妹の千矢がヤクザにさらわれたんだ!!
そんな緊急時なのに、のんきに見てなかっただと!?ふざける…」
「いいかげんにするのだっ!」
普段は暴力など振るわない零が怒声と共に亭矢を突き飛ばした。
不意の出来事に亭矢はたまらず尻餅をつく。
「はぁ…はぁ…あの後、父ちゃんは店のおもちゃのほとんどをタダで持っていかれたショックで寝込んでしまった。
君達から見れば小さくて辛気臭いおもちゃ屋かもしれないが……、
父ちゃんが…死んだ母ちゃんと二人で苦労してやっと構えた店なんだぞ!!」
零の気持ちを噛み締めたように、豪が彼の肩にポンと手を置く。
「…スマン…わたしらしくもなく、ついカッとなってしまった……」
「リーダー…おめーの気持ちはよくわかった……。みんな行こうぜ、どの道おれ達には関係ねぇ話だ」
豪の冷たい言葉に、亭矢は顔を真っ青にして叫ぶ。
「そ、そんな!君達は僕ら兄弟が普段から人の為にどれだけ頑張ってるか知っているだろぉっ!?
それなのに…こんな時に何もしてくれないだなんて…薄情者っ!!」
「あのな!頼んでもいない親切の押し売りでさんざん人に迷惑かけておいて、
恩着せがましく『助けてくれ』なんてムシが良すぎるんだよ!!」
亭矢のあまりの身勝手な理屈にたまりかねたのか、潔が亭矢を怒鳴りつける。
それを見た豪も、嫌悪感をむき出しにして毒づく。
「ケッ、何がボランティアだ。けったくそわりぃ!
おいリーダー!仁!大!何ボサッとしてんだ!?さっさと行くぞ!!」
うなだれる亭矢に零は苦虫を噛み潰したような表情でこう言い残した。
「…本当になんとかしたいのならば、まずは警察にでも行くといい。
さすがにこういった問題はわたし達でもなんともできない。
それじゃあ…妹さんが無事戻る事を祈っているのだ……」
亭矢は、去っていく奇面組の背を呆然と見つめていた。
────────────────
今日はここまでです。
続きは近日中に貼らせていただきます。
パトロールにでも出ているのか、交番に警官はいなかった。机上の電話には「修理中」と張り紙がしてある。
交番から一応警察署まではかなりの距離がある上に、このあたりにタクシーは滅多と通らない。
電話で110番やタクシーを呼ぶにも、募乱家の教育方針で携帯電話を持つ事は許されていない。
近年の携帯の普及で一応町からも電話ボックスはすっかり減ってしまった。
その辺の家で電話を借りようと亭矢は走ったが、折り悪く曲がり角から出てきた男達とぶつかってしまった。
「あいたた…ぼくは急いでいるんだ。気をつけたまえ!」
「なんだとコラァ!!」
パンチパーマが悪名と共に知れ渡った珍平高校の生徒達である。
「おいおい兄ちゃん、人にぶつかっておいて詫びもなしかぁ!?」
「あいてて…肩の骨が外れちまったよ…こりゃ慰謝料をもらわねぇとな……」
一刻も早く警察署へ行かねばならない今は、こんな連中に構っているヒマは無い。
気が立っていた亭矢は生来の坊ちゃん気質を悪い方向に出してしまった。
「金なら財布ごとくれてやる!!さっさとそこを通せ!!」
彼はプライドを保つように財布をリーダー格の男に乱暴に投げつけた。
だが、勢い余った財布は男の顔面に直撃し、男は鼻血を垂らした。
「てめぇ…死にてぇらしいなぁ……!!」
…どれぐらいの時間が経っただろうか……?
亭矢は薄汚い廃工場に倒れ伏していた、彼の顔は見る影も無く無残に腫れている。
「おい…その辺にしとけ」
こへ農耕馬のフランケンシュタインとでも形容できそうな顔をしたモヒカン頭のヤクザが現れた。
間違いなく千矢を拉致した男である。どうやら珍平高のヤンキーどもと顔見知りらしい。
「あっ、政さん!お久しぶりッス」
「おれらが見つけてきた、あの一応高の女はどうでした?」
「へへ…なかなかの上玉で組長もえらく喜んでたぜ。
組長のおもちゃにした後は、薬漬けにして海外に売り飛ばすつもりだ。
さすがはおれの後輩、おれも鼻が高いぜ。こいつはおれからの小遣いだ、取っときな」
ヤンキーどもは卑しい愛想笑いをしながら、政と呼ばれたヤクザから一人につき数万円ほどを受け取った。
彼らの言う女とは、間違いなく千矢の事であろう。
最愛の妹がヤクザの慰み者となりそうな現実に亭矢は怒りを露わにした。
「きさま〜…!!千矢を返せぇっ!!」
「てめぇ!!政さんになんて口利きやがるんだ!!」
亭矢はヤンキーどもに何発も蹴りを入れられる。
「ん?ちょっと待ちな。顔が腫れちまってるからわかりにくいが…てめぇはあの女の身内か?」
「そ、そうだ!!同じ日に生を受けた…かけがえの無い双子の妹なんだ!!
頼む…ぼくはどうなってもいいから…妹だけは家に帰してやってくれ……」
絶体絶命の状況で発揮された自己犠牲精神。
まさに命がけのボランティアであった。
それを聞いた政の表情が緩む。
「へへへ…そうか、おめぇは妹思いの兄貴なんだな。
そんな気持ちを見せられちゃあ、ますますひどい目にあわせてやりたくなるぜ…!!
安心しな、兄弟仲良く薬漬けにして海の向こうへ送ってやるぜ!!ケヘヘヘヘ!!!」
まさに悪魔の形相であった。
それを見た亭矢は自分達が地獄へとまっ逆さまに落ちていくのをはっきりと実感した。
今日はここまでです。
次回完結&エピローグ予定です。
>>562一行目訂正
「こへ農耕馬のフランケンシュタイン」

「そこへ農耕馬のフランケンシュタイン」です。
失礼いたしました。
>>1にある
>3.エロは禁止、別スレへ
ですが、直接的な性描写は今後もありません。
この程度なら大丈夫でしょうか?
565 :04/09/11 00:57:30
大丈夫です!
566名無し物書き@推敲中?:04/09/11 05:38:40
無問題
>>565
>>566
ありがとうございます。
今回で一応完結ですので、いましばらくお付き合いください。
政は鼻歌を歌いながら手持ちのアタッシュケースから薬品のアンプルと注射器を取り出す。
「今から事務所へこいつを連れて行くが、暴れられちゃ厄介だ。
この薬でしばらくオネンネしててもらうとするか。おい、おめぇらの誰かにやらせてやる」
3人は一瞬戸惑ったが、やがてリーダー格の男が一番に立候補した。
「政さんっ!おれにやらせて下さい!」
「おう、ノブか!さすがは珍平高の切り込み隊長だな(鉄砲玉にはちょうどいいか…)」
ノブと呼ばれた男は必死に抵抗する亭矢を嬉々として押さえつける。
「う…うわぁぁぁぁ!!やめてくれ!!やめろぉぉぉぉぉ!!!」
「オラァ!!おとなしくしやがれ!!おれは極道の世界でビッグになりてぇんだ。
てめぇや妹にゃ地獄だろうが、おれの天国への階段になってもらうぜぇ……」
学生服の袖を引きちぎられ、むき出しになった亭矢の腕に注射の針が突き刺さる。
それを見た政はサディスティックな笑みを浮かべた。
「なにしろ強力な薬だからなぁ…麻酔の効き目が切れても、後遺症で確実にラリる。
可愛い妹に会えても、多分誰だかわかんねぇと思うぜぇ!?」
政に阿諛追従するようなヤンキーどもの下卑た笑いが廃工場内に響き渡る。
「やめろ!!やめろぉ!!や…め……」
亭矢の意識はみるみる朦朧としていく。
「へへ…手こずらせやがって…どうっスか政さん?」
「初めてにしちゃあ上出来だ。…おい、ヒデにヤス。こいつを車に積みな」
……脳裏に昔の記憶がよみがえる…………。
『千矢は今月のお小遣い全部を募金したのか、えらいぞ』
『えらいわね千矢ちゃん、お弁当を全部お乞食さんにあげるなんて』
幼い頃の自分に向けられる父や母の優しい声。
『よし!パパからの特別ボーナスだ、お小遣いの二ヶ月分をさらにあげよう』
『ご褒美にママと一緒に高級フランス料理店にお食事に行きましょうね。
あら、あのお乞食さん吐いてらっしゃるわ。少々古くなってるからって大げさな……。
千矢ちゃんは、あんな人の親切を無駄にする大人になってはいけませんよ?』
両親の愛情を受け、人の為になる事を率先して行ってきた自分がなぜこんな目に遭わなければならないのか?
今日もいっぱい慈善活動を行い、最愛の兄と楽しく下校していた。
そこへ脈絡無く現れたヤクザに拉致された後、千矢は女としての地獄を味わった。
身も心もすっかりボロボロとなったが、あちこち破られ汚れた一応高校の制服を再び身に纏っているのは
良家に生まれた彼女のプライドであると同時に、必ず兄が自分を助けに来るという希望を捨てていない証であった。
そんな事を考えている時、部屋の扉が荒々しく開かれ、兄が自分のもとへとたどり着いた…のだが。
「感動のご対面〜ってか?」
自分を拉致したヤクザが投げ捨てた物体…まさしく兄の亭矢であった。
顔は無残に腫れあがり、土と埃にまみれた学生服の袖も破かれた無残な姿である。
「いやぁぁぁーっ!!お兄さま!!」
千矢は泣き叫びながら兄の体を揺り動かす。
「安心しな、とりあえず死んではいねぇからよ。それじゃ、旅立ちまで仲良くしてな」
政が部屋を出るのにも構わず千矢は兄を呼び続けた。
「う…う…」
「お兄さま!」
どうやら兄の意識が戻ったようだ。千矢の顔に喜びの色が浮かぶ。
しかし、大好きだった兄の眼にはもはや正気は残っていなかった……。
「……ち……千矢……えへら!!えへへへへへ!!」
部屋の中から悲しみと絶望に満ちた悲鳴が上がる。それを聞いた政は満足げに笑っていた。
「売り物の女にあまり薬を使うと、価値が下がっちまうからな。
しかし、逃げ出さねぇようにある程度ぶっ壊す必要がある。
それには…やはりこの手が一番よ。
おい、今から1時間後に奴らを港へ運ぶから準備しとけ」
政は部屋の前に控えていた若衆にそう命じて上の階へ上がっていった。
──エピローグ

ここは一堂家、腐りかけのケーキを病人の啄石に食べさせた奇面組が霧と千絵に大目玉を食らっていた。
「なに考えてんのよっ!!病気の父ちゃんに痛んだケーキを食べさせるなんて!!」
「あんたら前にもバレー部で同じ事したじゃないの!!ちょっとは学習しなさいっ!!」
奇面組は全員二頭身で正座させられている。
「しかしだな霧に千絵ちゃん、わたし達は仁くん家の古くなったケーキを食べてもなんともないぞ?」
「兄ちゃん達は特別っ!!」
唯が二人をなだめる。
「まあまあ二人とも…零さん達も反省してるんだし、その辺で許してあげようよ……。
でも零さん、こんな事はもうやっちゃダメよ?」
「は〜い!」
「まったく…我が息子ながらこれで二十歳過ぎなんだから、頭が痛いよ……」
やっとの思いでトイレから戻った啄石がぼやく。
「あの…おじさん」
「ん?なにかね唯ちゃん」
「うちのお父さんが、デッサン用の人形がいくつか欲しいって言ってたんです。
おじさんのお店ではそういった商品を扱っていますか?」
唯がこの店でおもちゃを買おうとするのは初めてである。
きっと自分を元気づける為、半ば無理に板造から聞き出してくれたのだろう。
例の火事で霧が世話になった件といい、啄石は唯の優しさに感激した。
瞳にこみ上げてくる熱いものをこらえつつ、心当たりの商品を説明する。
「え、え〜と…それならダカラという会社のGIチョーという商品が手ごろな値段で
多彩なポーズが取れて、さらにはリアル造型の優れモノだったな!
(唯ちゃん…ありがとう……)
よ〜し、いつまでもクヨクヨしていては『おもちゃの一堂』の名がすたる!
零!明日にでもおもちゃの仕入れに行くぞ!!」
それを聞いた零は、二頭身のまま伊達眼鏡をかけ『わたしのよていちお』と書かれた手帳をパラパラと見る。
「え〜、わたしは明日予定があるのだ……」
「毎日日曜日男のおまえが言っても説得力ないわ〜っ!!」
「のわ〜っ!!病み上がりでロケットパンチは無茶なのだ〜っ!!」
一堂家に温かい空気が戻ってきた。
そんな中、家の前を寒風と共に軽トラックが通り過ぎる。
しかし、それに気づく者は誰一人としていなかった……。

573名無し物書き@推敲中?:04/09/11 18:22:13
乙!
エピローグのほのぼのした一堂家と、兄弟の悲惨な末路の落差がいいね。
モヒカンの政とか珍平高校といったマイナーどころを使ったのも面白いし、
奇面組や他のレギュラーの動かし方もうまい。

多分見落としだと思うけど>>570
>顔は無残に腫れあがり、土と埃にまみれた学生服の袖も破かれた無残な姿である。で、
「無残」が二回入ってるのはちょっと違和感を感じたかな。

揚げ足取るようで申し訳ないけど、それ以外はいい感じの作品だったよ。
>>573
感想ありがとうございます。
お褒めにあずかり、嬉しく思います。

>>570はご指摘の通り見落としミスです_| ̄|○
「顔は無残に腫れあがり、土と埃にまみれた学生服の袖も破かれた無残な姿である」

「顔は腫れあがり、土と埃にまみれた学生服の袖も破かれた無残な姿である」
以上のように訂正いたします。教えていただいて感謝です。