1 :
名無し物書き@推敲中? :
02/08/15 12:07
2 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/15 12:08
七層が書き込めなかったんで、新スレたてました。 いいのかな?
3 :
放蕩息子、死刑執行、救助隊 :02/08/15 12:10
AD.2065 地球連邦最高代表者会議にて普通選挙法の改正が行われた。 現代人の精神年齢低下による弊害を回避する目的で、 選挙権は一律男女35歳以上の人間にのみ与えられることになった。 AD.2075 「放蕩息子排除法」成立、施行。 親たちは非社会的、非生産的な男児に手を焼き、安定した円滑な理想社会を掲げ、 放蕩息子の排除をロビー活動で展開し、子を持つ世代の圧倒的支持を受けた。 連邦政府の第三者機関から「放蕩息子」の認定を受けた者は、死刑執行まで施設に収容される。 放蕩息子達も黙ってはいなかった。初めは、家の金の持ち逃げ、無差別殺人など個人的反抗が繰り返されたが、すぐ政府に鎮圧された。 AD.2079 弾圧された放蕩息子の一部は地下に潜り、秘密組織を作り上げた。 組織の活動は多岐にわたる。要人暗殺、主要機関爆破、35歳以上を標的とした無差別殺戮、救助隊による有名放蕩息子の救出などの武力テロ。 大学院進学、無職作家志望など意図的なモラトリアム延長、最先端金融テクノロジーを駆使した「稼ぐ以上に必ず浪費する」経済システム、結婚の形骸化を狙ったフリーセックスの啓蒙プロパガンダ、などの精神的経済的摩耗にも暗躍した。 今、遂に世界最大最後の「父と子の戦い」が始まる! ……つまらなそう、このゲーム。僕は棚に戻した。 「コンセント」「辞書」「太陽」でお願いします。
シャブ打ってたらコンセントから妖精が出てきた。 妖精は今日中に太陽と月を結婚させなければいけないがもう時間が無いよ助けてよと泣き叫んだ。 俺が辞書で調べようとすると妖精はそんなので調べてもわかるわけ無いよと言った。 そうかと俺は呟きどうしたら良いのかわからずタバコをふかした。 すると妖精はタバコの煙にやられて畳の上を苦悶の表情でのた打ち回った。俺は泣いた。 次。飼育係、受難、反面教師。
>>4 がんばるなあ……
熱液、熱液、雨、熱液……て感じ。1人なの?
>653 評価不能 えーっ、僕のデビュー作がなんてこったい。 ルール違反で申し訳ないけれど、 改めて「放蕩息子」「死刑執行」「救助隊」で 俺のムスコにも困ったもんだ。 ムスコのオヤジが、って言っても俺自身の事だけれど 40歳代半ばに糖尿病になって、不摂生のおかげで 50歳目前で大事な用に使えなくなってしまった。 思えば若い頃は、三夜と連続して同じネグラに −ネグラと言ってもタッテいたんだけれど− 納まったことのない頼もしい放蕩ムスコだった。 仲間内からは尊敬の念を込めて救女隊と呼ばれていたもんだ。 ところがっどうだ。おーい、起きろ、胸を張れ・・・ だめだ、まるで死刑執行が決まった囚人みたいにうな垂れている。 あーあ、ホントにしっこうの用にしか役立たんよ。 >割と暇人さん、感想・評価を希望します。 僕がこのレスを書き込んでいる最中に新レスがなかったら 改めて、No.3さんの 「コンセント」「辞書」「太陽」でお願いします。
あっ、ごめんでした。
恋をした。 かなかなの声は夏が永遠のものではないことを蓉子に教える。太陽はあふれそうなほ どに緋色だった。晩夏はしかしあきらめが悪い。 ---やっぱり、まだ、クーラーじゃなきゃダメね。 扇風機のコンセントを引き抜き、コードを手早くまとめつつ蓉子はひとりごちた。そ うしながらも、窓を閉め、雨戸を閉てる。だが、隣の部屋だけには声を向けるにとど めた。従兄の部屋だった。東京育ちの従兄は喘息がひどく、この春から本家である安 浦の高校に通っている。蓉子より2つ年上の従兄。いかにも都会育ちといった風情で、 この暑さでもどこか凛としてすずやかだった。触れることは叶わない。 ーーーあたしの言葉、すべてに従兄(にい)さんは参ってしまうんだ。 従兄の部屋をそうっとのぞいてみると、文机に向かい、なにか書き物をしているらし い。そばに置かれた辞書に目をやると背表紙の独逸語がまばらに金色を浮かばせる。 白いシャツの背は薄く、汗はどこにもにじんでいない。 「従兄さん」 蓉子の声にかれはふりむく。どこまでも透きとおる印象の従兄はしかしやさしい。形 良い眉に鼻。なめらかな頬は清潔そうだった。蓉子はかれを自分の肉体のなかにとり こんでしまいたい。こんなきれいなひとを誰にも見せたくない。多分、これも恋なの だろう。 恋をした。どうしようもなく恋をした。 >割と暇人さん、感想・評価を希望します。よろしくお願いします。 はじめて書かせていただきました。15行以内ってむずかしいですね。 自分の実力不足が痛いです。 (これは私が決めさせていただいてよろしいのですか?もし、違うようで したら他の方が決めてください) 「冷蔵庫」「CD」「氷」 で、どうぞよろしくお願いいたします。
9 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/15 16:09
>6、8 彼は引退したようですが?
10 :
『氷』『CD』冷蔵庫『』 :02/08/15 18:20
冷凍庫を開けて、コップの中へ沢山の氷を放り込んだ。 カラン、カランという心地よい音と振動に、思わず顔が綻ぶ。 その時、タイマー設定にしておいたCDコンポからRED EYEが流れ始めた。 音に頷きつつ冷蔵庫を開けると、中には済ました顔の妹が居た。 仕切り板は全て取り払われ、そこにちょこんと正座している。 私は、妹の横に並んでいるカルピスの瓶を一つ取ると、 妹の目を見つめながらドアを閉めた。 コップの中に、カルピスをそうっと注ぐ。 氷が白い液に押し上げられ、苦しそうに微かな声を出す。 私は、声が聞こえるうちにと、一息にそれを飲み干した。 これが、やりたかったのだ。 空のコップを流しに置くと、妹につけられた左腕の傷が気になった。 お題は継続でお願いします。
11 :
「冷蔵庫」「CD」「氷」 :02/08/15 18:46
曇りひとつない氷が軋む。小さく、だが鋭い音を立てて。 非常用ウイスキーに放り込まれた氷が醸し出す濃淡の変化は、 絶えず何かしら複雑な幾何学模様を生み出している。 水を凍らすのに冷蔵庫は必要ない。 以前よりは減ったが、南極点では最もありふれているものの一つなのだから。 この万年雪、いや、幾億年の歳月、己を固く律してきたこの結晶は ほんの一瞬、繁栄を謳歌した種の滅亡に一体何を想うのであろうか。 この頭上に広がる蒼穹はとても明るく幻想的だ。そう人体に有害なまでに。 ――男の肺から溢れ出した鮮血もまた緩やかに氷土を溶かしていた。 最期の晩餐にクラシックでも流そうかとCDを持参したのだが、 狂乱する電磁波によって、この電子機器も例に漏れずその機能を失っていた。 「地球上最期の人類として、吉報を二つばかり提供しようではないか。 そのひとつ、近づくことすら適わぬ汚染地域にも新しい生態系は形成されつつある。 ふたつめ、外惑星に向けて人類何度目かの箱船がついに船出に成功した!」 今の私と同じように彼らも冷気に囲まれていることだろう。 だが、彼らには目覚めの瞬間があるはずだ。 薄れる意識の中でこう願った。――良き船旅を。 --- 字数オーバー、久しぶりに書いた。CDの使い方が難い。 誰か添削かけてくれると嬉しい。 「木炭」「晩年」「急騰」
12 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/15 20:05
僕は山に籠もっていた。 それはただ単純に世間との隔離を望んでいたからだ。 勿論、新聞や雑誌、テレビの類とも決別した。 このまま僕はここで一生を終えよう。 そう、晩年は木炭でも売って生計を立ててれば良いではないか。 材料ならば文字通り腐るほどある。 自分一人が生きていくくらいなら何とかなるだろう…。 そして、数十年後…。 思いもかけないリバイバルブームで木炭の価値が急騰し、 僕は億万長者となってしまった。 嗚呼、結局、世間とは離れられないのか…。 悲観した僕は命を絶った。 初挑戦…。難しいだす…。御題継続で。
13 :
621=625(前スレ) :02/08/15 20:42
「木炭」「晩年」「急騰」 恐慌が世界を襲った。ついに石油が枯渇したのだ。 もちろん世界はパニックになった。 他人を押しのけ踏みつけて、まだ市場に残っている灯油、合成紙製品、洗剤などを買いだめに走る一般市民。彼らを脅すか殺すかしてそれらを奪う石油ギャング。 各国は他国の石油コンビナートに軍隊を派遣して占拠する暴挙までおこなった。 ゆいいつの頼みは原子力だったが、どういうわけか、この時期にそろいもそろって故障が勃発して稼動停止のありさま。パニックに拍車をかけた。 石油によって繁栄した文明は、晩年を迎えようとしていた。 ここ、R国でも、もちろんパニックがおこっていた。 大通りを意味もなく右往左往する群集を、ちょうどその国の姫君がお忍びで見ていた。 「じい。どうしいこのひとたちは、こんなに慌てふためいているの?」 「姫様、実は、石油が枯れたのでございます」 「あら、石油がないなら木炭を使えばいいじゃない」 その発言は、すぐに世界各国首脳に、そしてそのまますべての一般市民に伝播し、パニックにひとつの方向性をあたえた。 そして、地球人類すべてが、考えられるあらゆる手段で、森林を伐採し始め・・・ほどなく地球から、石油のみならず、すべての緑が失われたのだった。 すこし短くしたつもり。長いですか?
14 :
621=625(前スレ) :02/08/15 20:44
↑まちがえた。二行目の「急騰」、うっかり削っちゃった。読まないでね(TT
「こんなときにお前はどこに行っていたんだ」 「こんなときって?」 「馬鹿、株価が急騰してるんだよ、ニュースを見なかったのか?」 俺はモニターを見つめた。椛島の言った事は嘘ではなかった。 俺と椛島はすでに晩年を迎えていたが、経済の動向には注意をはらっていた。 俺には信じられなかった。株価とはそう急激に変化するものなのか。 「前にも一度いっただろ、経済は生き物なんだよ。覚えてるだろ? あの木炭のたとえ話さ」 木炭には脱臭効果もあるし、絵を描くことだって出来る、かつて椛島はそう言い、 俺に株式のこと比喩的に教えてくれた。ああ、今それがどれだけ俺の役に立っていることだろうか!
「木炭」「晩年」「急騰」 パパラパラパラパラ!!! ヴォンヴォン、ヴォォォォォン!!! 暴走族がうるさく走り回っている。五月蝿いと書いてうるさいと読むけど、あいつらは蝿以下の蛆虫だ。 だけど、俺は、彼らの様子がどうもいつもと違うことに気がついた。 派手な特攻服や意味不明の当て字が縫い取りされた旗といった、ゾク・スタイルはいつものことだが、どうも何かが違う。何かがおかしい。 あ、あれは・・・。ヤツラが自慢気に乗っている四輪者は・・・あれは木炭車じゃないか!!! なんでそんな、大昔の化石みたいなものに乗ってるんだろう・・・。 あれがいまの若者たちの流行なのだろうか。理解できない。俺は自分が急速に晩年を迎えた気分になった。 翌日、知り合いの雑誌編集者とのみに行ったとき、このことを話題にしてみた。 すると、彼は笑いながら驚くべき返答を返してきたのだ。 「ああ、担当の車雑誌のネタがなかったからさあ。ギャグで木炭者の特集組んで、オンナにオオウケとか載せたら、ヤツラバカみたいにとびついてきたんだよ」 酒が進んだためか、彼はゲラゲラ笑た。 「木炭者の値段が急騰してさ、今度ホンダやトヨタも参入するってさ。まったく、どいつもこいつもバカばかりだよな」 俺はあいまいに頷いた。 ゾクもバカだと思うけど、おまえもなんかバカっぽいよ。そう心のうちで呟きながら。 次回は「殺人」「ひきこもり」「宗教」
>15 意味はわからんが、今までの君の作品のなかで一番読める。 個人的には十点満点で七くらい。
18 :
「殺人」「ひきこもり」「宗教」 :02/08/15 23:38
ぼくは特別な「力」のある人間なんだ。神様から祝福された存在なの。 悪いことの反対は良いこと。だから悪いことの反対をいっぱいしなくちゃ。 だって天のお父様が認めてくれれば、すぐにも天使になれるんだ。 悪いことは、新聞にのってるんだ。宗教、ひきこもり、殺人だって。 「宗教」確かに戦争の原因の一つだね。神様だって人が幸せになればお喜びなさるはず。 うん、みんなに無宗教をすすめなくちゃ。そーれ。 「ひきこもり」人はお互いに関わり合えなきゃね。よし、外にでろ。そーれ。 ちょおと物足りないかな。ひきこもりはみんな童貞で、悩んでるのか。 じゃあ、それ男たち、外に出て目に付いた女の子をやりまくれ。そーれ。 「殺人」普通に生きていれば、人殺しはしないよなぁ。殺人の反対かぁ。なんだろう。 殺人は「生きてる人を死なすこと」なら反対は「死んでる人を生かすこと」じゃないか。 こりゃ、大変だ。そーれ、そーれ、そーれそれ。まだまだ足りない。それ、そーれ…… やったー。ゾンビだらけだ。いっぱい生き返った。 神様、ぼくは世の中の役に立ったはずです。どうか天使にしてください。
次を忘れた。 「プリンター」「セロテープ」「葛藤」で
20 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/15 23:54
「プリンター」「セロテープ」「葛藤」 僕の彼女はスプリンター。 「ねえ、セロテープ持ってない?」 「持ってるよ。何に使うの?」 「あのね、小指をセロテープでぐるぐる巻きにすると、足が速くなるんだって。セロテープ療法って言うのよ」 激しい葛藤の末、僕は彼女に告げた。 「それを言うなら、スパイラルテープ療法だろ!!」 次は「ドーナツ」「夏」「1999」
21 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/15 23:59
あの真っ白なドーナツ状の雲がぽっかりと浮かんだ夏、 1999年の夏を俺は忘れない。 次「死者」 「九月」 「髪」
1999年の、7の月。 それはとても異常ともいえるくらい暑い、夏の日だった。 七月も半ばをすぎ、そろそろ恐怖の大王のかけらでも降ってこないかと、俺はその日も、ひたすら青い空を見上げていた。 と、そのどこまでも広がる群青の中に、ぽつんと黒っぽい小さなしみが・・・・ それはすぐに、またたくまに天を覆い、次々に地上に落下してきた。 なんなんだ、これは。まさか、これが恐怖の大王なのか? こんなものが!? 地面に降り注ぐそれを見て、俺はただひたすら困惑するしかなかった。 それは、そこらの駄菓子屋で売っているような、なんの変哲もないドーナッツだったのだ。 あまりのバカバカしさに、俺はぽつりとつぶやいた。 「ドーナツテルノ?」 次は〜「テノール」「音痴」「疾風怒濤」
あ、先こされたね。 じゃあ、次「死者」 「九月」 「髪」 でどうぞ
24 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/16 00:19
「死者」「九月」「髪」 九月の終わりに彼女が死んだ。 彼女は遺品として僕に腰まであった長い髪を遺した。 彼女の髪はずっしりと重かった。 生きていた頃の彼女の髪の毛は、天子の羽よりも軽かったのに。 生者と死者。たったそれだけの違いなのに、どうしてこうも違うのだろう。 僕は彼女の存在を消したくなかった。だから、彼女の想い出を永遠にする為に、彼女の髪を一本残さず食べた。 彼女の髪は、メンマの味がした。 次のお題は「入道雲」「17歳」「海の家」
天子→天使ダターヨ。鬱。
「プリンター」「セロテープ」「葛藤」 プリンターさえあればこんな作業なんてしなくてもいいのに。 俺はそう思いながらディスプレイから写し取った手書きの紙切れを 画用紙に貼り付けていった。 俺は二度社内のプリンターを壊した事がある手前、貸してくれとは言い出しにくかった。 それに上司も俺をリストラするつもりらしく常日頃俺を迫害していた。 同僚は皆プリンターを使っている。 社内に響くプリンターの作業音は俺の耳に空しく響いていた。 俺はいつから糊を使わなくなったのだろう。 たしかにセロテープの方が便利だ。だが糊を使った方が出来上がりは美しい。 そうすればプリントアウトされた文書にも太刀打ちできるのではないか。 俺の心の中に葛藤が芽生えた。だが、糊は時間がかかる。手間隙がかかる。 なに残業すればいいだけの事さ。俺はそうも思ったが、糊の場合失敗するリスクもあった。 迷った挙句、俺は深夜、勝手にプリンターを使うことにした。
30 :
「入道雲」「17歳」「海の家」 :02/08/16 01:35
雲一つ無い青空など綺麗なものか。 私は砂の上に寝転がり、巨大な入道雲を見上げて一人納得した。 こんなにも美しい空を作れる自然というものは、やはり脅威でもある。 数日前、若い17歳の男女が溺死した。二人は恋仲だった。 その日、私は二人の姿を見ていた。 波打ち際ではしゃぐ二人を見て、こちらも爽やかな気分になれたのを覚えている。 しかしふと上を見上げると、空は眉間に皺を寄せているようだった。 次の瞬間、再び彼等の方に目をやると、既に二つの塊が海面にうつぶせになって揺れていた。 今と同じ様に砂浜に寝転がっていた私は、 助けるでも、人を呼びに行くでもなく黙ってその二つを見つめた。 そして再び空を仰ぐと、いつもと同じ空が見えた。 人気のある砂浜では無かったので、海の家の主人が騒ぎ始めたのは大分経ってからだった。 次のお題は継続で。
31 :
「入道雲」「17歳」「海の家」 :02/08/16 02:00
いかにも青臭い小僧だった、17歳の私は、その夏をこの海の家で過ごしていた。 彼女も友人もいない私にとって、都会から遠く離れたこの海は、まさに俗世からかけ離れた桃源郷だった。 毎日毎日、名も知らぬ山々を見つめ雲を眺め、海の向こうに入道雲が見えると、急いで雨の支度をしたものだ。 そんな風に、自然と一体となり自然とともに過ごす夏の日々は、何事にも替えがたいものに感ぜられた。 そんな夏の日差しに陰りが見えてくると、また俗世にまぎれて学校にかよう日常が始まる。 桃源郷での夢のような日々は、あくまで桃源郷としてしか楽しめないのもまた事実だった。 しかし、17歳の私は、その単純な事実に気が付かず、いつまで経っても海を後にしようとはしなかった。 何が一番大切なのか、分かっていなかったのだ。 何時までも海を眺めているのが、最も素晴らしい事だと思い込んでいたのだ。 今は、もうあの海を一人で眺めることは無いだろう。 すっかり俗に浸った私は、俗なりの幸せを手に入れたのだから。 人は、結局のところ、桃源郷では生きられないのだから。 次回、「説得」「連続」「さる」
32 :
説得 連続 さる :02/08/16 02:52
どうして僕が「かれ」と共に暮らす羽目になったのか、上手く説明することができない。 「かれ」……その「さる」が何歳なのかも僕は知らない。彼女は何も言わずに今朝5時に 「かれ」を僕に渡してよこしてきた。ベッドでまどろみかけた瞬間にインターフォンが鳴 った。鳴りたい放題鳴った。こんな時間に新聞の勧誘はさすがにないだろう。酔いつぶ れ、終電を逃した友人が来るには遅すぎる。連続して鳴らされる音にしぶしぶ僕は起き 上がる。 「かれをかくまってほしいのよ」 腰まである髪を器用にまとめあげた彼女は開口一番、それを告げる。あいさつもうかがいも 存在しない。 「……いったい、どこで「さる」なんか拾ってきたんだよ」 「出会ったのよ」 「いつ」 「昨日の日付が変わるころに忍びこんで助けてあげたの。あ、初めてめぐりあったのは 4日前」 そう言葉を連ねる彼女の横にはどうみても海外旅行向けのトランクがたたずむ。 「……めぐりあったのに、きみは高飛び」 「こんどは「かれ」の運命の「彼女」を探すわ。とりあえずアメリカね」 「日本サルは日光にでもいけば」 「あなた何もわかってないのね」 僕は肩をすくめた。 「わかれないよ」 「あなたを説得する気はないわ」 それじゃ、と、彼女はきびすを返す。僕は押しつけられたままのさるに困りながらも 追いかけようとした。だが、それが徒労に終わることもわかっている。大学で知り合 って以来、彼女にはふりまわされてばかりいる。奇妙な共同生活はこうしてはじまった。 …すみません。行数オーバーしまくりですね。ごめんなさい。 ええと、では、次は、 「鎖」「紅茶」「全滅」
ここは忍者養成学校。 こうちゃう先生からのひとくさり訓示が済んだ後 今年度の入学生の一回目の授業中。 コーチ「一人前の忍者になるためには、先ず正しい服装を心掛けること。 身に付けるものは全て目的がある。 生徒A「こうちゃあ」 コーチ「普通に『コーチ』と呼べば良いんだ。なんだ?」 生徒A「この網タイツみたいなものは何ですか?」 コーチ「おまえ、網タイツみたいなものって、 網タイツではないって知っていながら、なぜ足にはこうとしているんだ? それは鎖かたびらといって上半身を刃物から守る目的のものだ。 なに?俺は下半身を守りたい?勝手なことをしてチームワークを乱すな。 おまえ一人のミスは仲間の全滅につながるんだ。」 生徒B「コーチ、この西部の保安官のバッジみたいなものは何ですか?」 コーチ「ティッおまえは手裏剣も知らずに入学してきたのか? 何に憧れて忍者になろうとしたんだ?」 伊賀と並んで闇の世界を支配した 甲ちゃ忍者も新人の頃はこんなもんだったそうです。 御題継続で、
34 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/16 11:51
冷蔵庫の中で、紅茶きのこは「腐り」かけていた。 このままでは、人類は全滅だ。 シェルターの中はパニックになった。 発狂した一部の構成員は、自分の尿を飲み出す始末。 ところが、どうしたことだろう、 彼らは日に日に健康になっていった。 やはり、メシアは降臨なされたのだ。 次のお題は、 「ワクチン」「高枝切りバサミ」「;(セミコロン)」
切り落とした枝に付いている葉っぱに;状の斑点がいくつも付いていた。 《そういえば木村の奴、木の医者に見てもらったら木が復活したって言ってたな》 俺もそいつに電話して木を見てもらうことにした。 木の医者を名乗るその男は異様だった。 俺がいつも高枝切バサミで枝を切っていると言うと、 「そんなことをするから木が病気になるんだ!」とそいつは怒鳴った。 俺は木に関して多少の知識を持っていた。が、木の医者を名乗るくらいの人物だ、 奴の方が俺より詳しいんだろう、俺はそう思い、反論しなかった。 奴はワクチンを木に打ち、幹に頬を擦り付け、 「かわいそうに。よく頑張ったね。よく頑張ったね」と木に語りかけると、 金も取らず去っていった。
38 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/16 19:46
それはそうだが、最近お題継続にする人多いので、 僕はあんまり好きじゃないなあ、と思う。なんとなく。 熱液さんとか、お題提示してくれた方が、ありがたいです。
次、黄昏(たそがれ)、螺旋階段、魂
神々の黄昏は近い。 世界の終焉は近い。 あまねく満ち満ちた人間の負の心が、この世界を飲み込もうとしています。 しかし、悲観してばかりではいけません。 悪魔囁きに耳を傾けてはなりません。 神によって作られた、あなたの魂の中の光を信じるのです。 光の螺旋階段を昇り、貴方の魂のステージを上昇させるのです。 それこそが、あなたとこの世界を救う唯一の方法なのです。 光を信じなさい。 魂を信じなさい 神を信じなさい 救世教を信じなさい・・・・・
次は〜「刺青」「花火」「拳法」
この季節になると、私はいつも彼女のことを思い出します。 そして、花火に照らされた彼女の横顔が、とても美しく見えたことを。 脆弱で、学校も休みがちだった私を拳法の道に誘い込んだのは彼女でした。 彼女の家は拳法道場でしたから、本当は軽い勧誘のようなものだったのでしょう。 でも私は、とてもとても嬉しかったのです。人の目を合わせるのを恐れ、いつもお どおどしていた私に、彼女のような人気者が声をかけてくれたことが。 不思議なことに、どんなに病院に通っても丈夫にならなかった私の体が、それか らはぐんぐん元気になっていったのです。 付随するように性格も明るくなっていった…と自分では思います。 皆でいろいろな遊びをしました。思春期に入ると、こっそりお酒を飲んだり、タバコ を吸ったり…刺青を彫ってみたこともあります。小指のつけねに、ほんの小さくな んですけどね。 長くなってしまってすみませんね。あなたの疑問は解決したでしょうか。 「どうして小指に結婚指輪をはめているの?」という。 それではそろそろ帰ります。もう、暗い道の一人歩きはやめたほうがいいですよ。 では、「彼女」が待っているので。
わかりにくくてすみません。 刺青を隠すために指輪を〜みたいな感じのつもりだったんですが(^^;) 次は〜牛乳、阿片、兎
44 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/16 22:07
白い白い、雪が山に降り積もる。 牛乳だ。父がつぶやく。 遺憾、こんな頭ではまともにものを考えられぬ。 だいたい状況が特異過ぎておかしなことばかり考えてしまう。 彼が牛乳だと呟くのはまったく不思議でもなんでもないのだ。 そう、降り積もった雪と思っていたのは、紛れもなく、牛乳なのだ。 ミルキーウェイ、とめどなくしぶき舞う乳、 こんなことなら、羽目をはずしすぎるのじゃなかった。 兄を煽った所で、碌な事にならないのはいつもの事なのに! これは幻覚だったらいい。しかし、阿片にやられた牛は 農場の3分の2以上だ。 宇宙人の仕業だと言い張ってテレビ局に売り込んでやろうか。 それにしてもやくざのやり口はいつもえげつなく、突飛だ。 兄が、いったい何をやらかしたのかは知らないが、 先月から失踪したのが原因に違いない。 そう、高飛びが得意な兄のあだ名は、小学校時代から、兎だった。 以上、続き求む。 ススキノ、脂身、ガーターベルト
魚の脂身のせいで、唇がぬっとりと光った。魚は、なま物なので嫌いだけど、仕方ない。 薬漬けの牛を、食うわけにはいかないし……。 父は、外を舞っている大量の牛乳が楽しくて、頭がおかしくなってしまったようだ。 ヤク中の牛の乳を飲んだせいで、自分もヤク中になった父。そう考えると、可笑しくなって 笑い出した。 家の扉が、乱暴に叩き割られた。本当に怪しい格好をした男達だ。多分、兄が 目当てなのだろう。「兄なら、ここにはいませんよ」「じゃあどこなんだ?」 北海道へ高飛び、その後、ススキノへ。魅力的な女性達が、ガーダーベルトで誘惑。 緩やかでいて、かつ、色気を感じさせるヒップラインが男達の目を捕らえて離さない。 突然、牛達が暴れ出した。暴走する、禁断症状の牛達が、チンケなやくざどもを 木っ端微塵に。牛達の異様な目つきに、本物の狂気を感じた。その狂気は、 これから起こるであろう惨劇の予兆を感じさせた。
46 :
45は44の一応続き :02/08/17 00:04
続き書いてって言われたから書いたよ 次は「ディスコ」「パンクス」「スキンヘッド」で
47 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/17 01:21
一方その頃、ススキノの場末で輝くミラーボールは、狂乱の一夜の出来事を、 映し出し、反射し、回転し続けていた。 全盛期のゴールドを模したそのディスコは、80年代ブームのおかげで 客足の途絶えることはない。往年のツバキナイトを彷彿とさせるそのイベントで 一人息を吐くパンクスが一人、回りから鼠と呼ばれるそのスキンヘッド がなにやら喚いているのがフロアの人ごみにかき消される。 牛肉詐称、かろうじて聞き取れる単語は,これだけだ。 さらに続く。 次は、どぶろく、キッチン、三文判で
48 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/17 02:23
禿げ上がった鼠、淫乱が舌なめずりしながら身をよじるドリンクバー、 自作酒は法に反するが、 あまりに好評なので裏のメニューに載せたどぶろくに、 30手前のあばずれどもが群がる。 裏のキッチンには、瓶に4つもストックがある。 好色な女どもに檄を飛ばすやせた鼠。 兎になり損ねた鼠。 それはそれで仕方がない。 兎は寂しいと死んでしまうのだ。 すべてが終わった一枚の紙切れで。 ポンとついた三文判が兎の耳を引き千切った。
すいません、 次はマニキュア、耳栓、裸電球。です。
50 :
マニキュア、耳栓、裸電球 :02/08/17 03:07
そのときふと、片隅で一人どぶろくを煽り、トラになった男が鼠のそば へ歩みよってきた。 「鼠・・・。うちにも農水省の奴ら来たらしい。やくざのような奴ら だったとさ。」 男は煙草に火を点けた。口調には、哀れみや皮肉といった感情は含まれ ていない。 「さっき、牧場の弟に電話したんだ。でも、勿論・・・」 ふーっ、煙を吐き出す、深いため息のように。 「勿論、農水省の奴らなんかじゃあない。本物のやくざだ。阿片だまし とっちまったからな、ひつこそうな奴らだ」 裸電球が煙草のけむりで遮られ、雪の日の太陽のように霞む。 「狂牛病だと!?はんっ、それがどうしたっ」 男は急に感情を露わにして吐き捨てた。 「奴らのことは仔牛の頃から知ってる。うちの牧場でみんな産まれ 育ったのだからな。」 鼠は何も言わない。 「うちの牛たちは、今、祭りの最中さ。」 「おい、まさか・・・」 「おれは、阿片なんてやらんよ。牛たちを殺す前に、奴らに最後の 祭りをさせてやってるのさ。阿片喰らわせて、角にはマニキュア塗 ってな。」 オレは耳の切れた兎なんかじゃない。耳を羽に変えてでも、どこへ でも飛んで行く。役人がつべこべ抜かしてきやがったら、耳栓でも 何でもしてやるさ。 だが・・・牛たちは殺す。 それが人間に害を与える可能性がある以上は、牧畜家として当然だ。 役人の命令だからじゃあない。
稚拙で申し訳ないです。 次のお題は、「取り立て」「へび」「猿」で。
吉田一成は蛇焼きを食って泥水をば飲んだ。 食った食った猿でも殴りに行くかねどうしようかなあ めす猿だったら久しぶりにィヒヒヒヒうッひょー バコバコだぁ 元禄元年、三年ぶりに山を降りて女房子供の待つ家へと帰った一成。 呉服屋の角を曲がるとお菊さんがおや一成さん戻ったのかえと驚きの声をば発する。 耳をつんざく女房の声。おお、取立て屋に殴られる女房子供。一成は山へ引き返した。 次のお題は、喫茶店、インカ帝国、陰毛
「取り立て」「へび」「猿」 一平は純子の手を引いて藪の中へ入っていった。 「蛇が出ないかしら?」 「蛇くらい出たって大丈夫だよ、ここを抜けた方が近道なんだ」 猿山に着くと純子は思いつめた様子で一平を見つめた。 「あなた借金があるんでしょ、取り立ての人とかが来たら怖くないの?」 「じゃ、君んちに泊まってもいいかい?」 「私の家って言ったって、親がいるんだから……」 「わかってるよ。冗談さ」 一平はタバコに火を付けて、煙を吐き出した。 彼女との結婚を諦めよう、一平はそう思った。 次のお題は、喫茶店、奇跡、月
54 :
最近改革路線 :02/08/17 09:14
喫茶店、奇跡、月 何もする事のない小連休に、私はふと思い立って、生まれ育った町に帰ってみた。 電車を乗り継ぎ、名前まで変わってしまった駅に着くと、私はタクシーを拾った。 「適当に走ってください。」 運転手は怪訝そうな顔をし、しぶしぶといった感じで車を出した。 私は見たこともない風景が流れていくのをただ眺めていた。変わってしまった、という感覚はなかった。 しばらく走ると、突然見慣れない風景の中に混じって、小さな頃父によく連れて行かれた喫茶店が現れた。 懐かしい感覚が蘇るのを感じ、すぐさま多めにお金を払ってタクシーを降りた。 マスターは元気だろうか。私は店に向かって歩きながら、手品好きだった彼の見せてくれた小さな奇跡を思い出していた。 天窓から覗く月を意のままに満ち欠けさせるマスターが、少し怖くなって泣き出してしまったこともあった。 カランカラン。 ドアを開けるとマスターの変わらない笑顔がそこにあった。額に入って。 私はコーヒーを頼み、店内を見回した。昔はずっと遠くにあった天窓が、とても近く感じらる。 ひとしきり懐かしい時間を過ごすと、私は席をたった。 結局、彼がどうやって月を満ち欠けさせたかは、わからないままだった。 会計を済まし、店を出ると駅に向かって歩き出した。 駅まで、そう遠くはないはずだ。
55 :
最近改革路線 :02/08/17 09:16
お題わすれました。 コンタクトレンズ、麦茶、百円玉 でお願いします。
56 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/17 11:39
44-50の続きが読みたい。 51のお題は、十二支の複線の暗示と、やくざとの対決を促していたんだろうに・・・。
57 :
「コンタクトレンズ」「麦茶」「百円玉」 :02/08/17 12:48
「よく来たね。遠いとこ」 と、僕の高校時代の友人は、喫茶店で僕の到着を待っていた。 「メガネ掛けたんだね」 彼女はメガネを掛けていた。 「コンタクトにはしないの?」 ウェイターが麦茶を二つ運んで、僕の目の前その一つを置いた。 「わざわざそんなこと、言いに来たの?」 ウェイターが去ると、彼女は、僕の目を見つめてそう言った。 「…じゃあ、言うけど…君は、昔のことを、気にしすぎだよね」 「………」 「今はもう、高校の時とは違うんだ。あの時は、毎日がだらだら意味も無く続いて それが僕には、堪えられなかったんだ」 「………」 「だから、もう昔のことは忘れて、君にはもっと前を向いていてほしい」 「………」 「…聞いてる?」 彼女は黙ったままだった。この後、僕は別な、最近の話もした。けれど、結局彼女は満足な反応を見せてくれなかった。 「…じゃあ、僕は帰るね」 財布の中の百円玉を、全部まとめてテーブルに置くと、僕は席を立った。 「また、会おうね」 伝えたいことは、すべて伝わったはず。 そう信じて、僕は喫茶店を後にした。 会話をむやみに入れると、長くなりますね。 次回、「お面」「抱擁」「ほうき」。
58 :
「コンタクトレンズ」「麦茶」「百円玉」 :02/08/17 12:50
あ、コンタクト「レンズ」か…
祭りの代償は、大きかった。腐りきった役人どもとの戦争状態に突入。 地下に潜り、ゲリラ戦を展開。奴等は、最新の攻撃兵器を使用して、商品価値の 無くなった牛を皆殺しにした。火炎放射器など使用し、生半可なやり方では 勝利を手にしえない。 男は、眼鏡をかけずに、コンタクトレンズを常用した。なぜなら、痛みを 感じ続けるためだ。サイズの合わないレンズを無理矢理目の中に入れ、痛みを 決して忘れない。麦茶のようなビールを飲んで、時をやり過ごす。反撃のチャンスを 伺う。 日用品を武器として使用する。畜産業のための道具が主要な武器になり得るが、 他にも、衣類、食品、本や百円玉など、全ての身の回りのものを、武器として使用。 牛達を特攻隊として使用。彼らは最早、自分たちが何故戦っているのか、 ほとんど忘れてしまっていた。異常な興奮状態が持続するのだ。彼らは、 自分たちが、手の届かぬ何者かにあやつられ、自らの意思すら持ち得ない人形でしか 無いことに気付かない。
61 :
お面、抱擁、ほうき :02/08/17 15:57
お面、抱擁、ほうき 「それじゃ、元気でね」 叔母の抱擁を受けながら、後ろにいるちびのいとこに目を向ける。 寂しがってくれているのだろうか、一昨日の夜、縁日の屋台で買って やったお面を少し下げて、すねた顔を隠そうとした。 最後に祖母の家に来たのはもう2年ほど前だったろうか。 この前来たときまではいた老猫は、もう死んでしまっていた。 「気ぃつけて帰りなよぉ」 私は箒にまたがると、一度祖母を振り返り、 空に向けて強く地面を蹴った。 ・・・次のお題は、ビニール袋、カーテン、革靴、で。
62 :
コギャルとHな出会い :02/08/17 16:04
63 :
ビニール袋、カーテン、革靴 :02/08/17 18:09
夏用の白いレースのカーテンからビニール袋がちらっと見えた。 「挟んじゃったのかな」 あたしはそう言った後、ふと我に返ってため息を付いた。 幾ら振っても動かないようにガチガチに固めた頭から新品のスーツ、 そしてピッカピカの革靴を履いた八木君の、硬ばった笑顔を思い出したからだ。 「ごめんね、変な上司で」 ああもう。これじゃあ変な人とおんなじだよ。そりゃあ気持も悪いって。 よいしょ、だけは意識して言わないようにしながら、あたしはビニール袋を拾い上げた。 コンビニの袋。ああ、昨日ストッキング買ったんだっけ。飲み会の後電線したから。 テーブルの上にはそのストッキングと、水を入れたコップが二つ。 そして飲まずにタブを開けたビールが一缶。 まだ飲もうよって引き止めるあたしを振り切るようにして帰った八木君。 「独り言、直そう」 あたしはイスに座って溜息を付いた。 次は、ミント、雷、猫で。
俺は煮詰まっていた。 開店は明日だというのに、まだメニューが決まらないのだ。 オリジナルメニューは、単にその店独自のメニューというだけのものではない。 そのレストランの顔であり、その完成度がシェフの格を現すといっていい。 独自性があり、新しく、斬新でかつ、だれもが納得する味でなくてはならない。 それがどうしてもうまくできないのだ。 桃とアスパラとミントバターを使うことは、オーナーの意向で決められていた(実家が桃農家なのだそうだ)。 それに合う食材が、どうしても思いつかない。 牛肉、だめだ、それ自体が美味しすぎてつり合わなさすぎる。豚肉。いや、脂身が重くて味のバランスを崩す。鶏肉は逆に淡白すぎてだめ。魚介類も同様だ。 「くそっ!!!」 俺はフライパンを乱暴に投げ捨てた。 考えられる食材をためしたけど、どうしてもできない。オリジナルの、そしてまったく新しい味が。 ふと、足元で猫の鳴き声がした。俺を慰めているのか、足にからだをすりよせて、元気を出せよ、というように、無邪気な目で俺を見ていた。 ・・・・・・俺の心に春雷が轟いた。 できた!!! これだ、この食材だ!!! ・・・店は3日で潰れた。何でだろう・・・?
次回は「天才」「リサイタル」「戦争」
66 :
ミント、雷、猫 :02/08/17 20:15
「今日もいるよ。ほら、あの子。」 そう言って春恵は数メートル先の花壇を指差した。 「ほんとだ!いっつもあそこにいるね。」亜紀子は頷く。 ここ数日、学校からの帰り道二人がこの公園を通ると、きまって花壇に丸々と太った猫がいた。 「ライちゃん…いったいここで何してるの?」春恵は猫に話し掛ける。 猫の額には雷のようなギザギザの模様がある。どうやら、それを見た春恵によって強制的に名前が決定されたようだ。 「花の匂いを楽しんでるのさ!」無関心なライの代わりに亜紀子が答える。 「あら、ずいぶん優雅な趣味をお持ちなのね。日向ぼっこかと思ったわ。」 「パンジーの匂いは私の心を満たしてくれる…ミントの匂いは私に日々の潤いを与えてくれるのだ。」 再びライの代わりに亜紀子が答える。 「ここにミントなんて無いわよ!」春恵は笑いながら亜紀子のほうを見た。 二人はライに「バイバイ!」と言いながらまた歩き出した。 ライと呼ばれた猫は二人が見えなくなると、のそのそと歩き出した。
ミント、雷、猫 夜な夜な猫の怨念に苦しめられる源三とお菊。 襖をきちんと閉めてみてもまだ聴こえる猫の鳴き声。 いろいろ試してみたもののすべて甲斐なし。眠れぬ夜をすごす源三とお菊。 「お前が猫をあんなふうにあしらったがために」と怒号を発する源三。 「あたいが悪かったの、あたいが悪かったの」お菊は泣き崩れた。 明くる朝、庭から猫の死体を掘り出した源三は神社に向かった。 「お前の分もわびて来るよ」とお菊に言い残し、峠を登る旅路に出たのである。 頭上の雨雲から雷が発せられる中、源三は己の非を詫び、念仏を唱えながら、 山道を登っていった。風雨は益々激しくなり堪りかねた源三は山小屋に入った。 三日三晩、高熱を発し幻覚に見舞われる源三。猫の化身とも思える女にひたすら謝り続ける源三。 女、もうそのようなことはしまいな、と念を押し、霧のように消えてしまう。 目覚めた源三の前にはミントの葉が一枚あるのみ。 明け方、神社にたどり着きお払いをしてもらうと、源三は家路に着いた。 「お菊もう大丈夫だ」源三が奥にいるはずのお菊に声をかけても返事がない。 訝りながら襖を開けた源三が見たものは首をくくって死んでいるお菊の死体だった。
2、3度、雷が鳴ったかと思うとたんの夕立。 私はたまらず近くの喫茶店に駆け込んだ。 涼しくなるのはいいが、帰りがけにこれはたまらない。 しばらく待てば止むだろう。アイスクリームを注文し、 窓の外を眺めながら、今晩の献立はどうしようと考える。 猫の餌がそろそろ無くなる筈だった。 Yシャツ姿の若いサラリーマンが、私の座る窓のすぐ横を駆け抜けていった。 一番近いコンビニエンスストアまで後、50Mほど。 そこまでいけば400円のビニール傘を手に入れることもできる。 だが外は土砂降りだ、鞄を頭の上にかざしたところで、 20Mも走れば何もかざしていないのと大して変わらなくなる。 アイスクリームの上にのっていたミントの葉を唇で噛みながら、 ずぶぬれになって走る青年の後姿をじっと見送っていた。
69 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/17 21:25
お題はー?
「天才」「リサイタル」「戦争」 だったんだね。 重複するにしても最後に一言 書いてくれると嬉しい。
かぶった・・・
73 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/17 21:39
彼は積み上げられた土煉瓦の上に腰を落ち着けた。バイオリンを構えた。 「祖国の危機だぞ? 今はバイオリンより銃を選ぶべきだ」友人の言葉だった。 同じ土地の人間が殺し合う理由が理解できなかった。 彼は内戦より音楽を選んだ。 信じていたのだ。芸術の可能性を。音楽の力を。祈りを。 自分の才能を頼り海外へと逃れた。 そして天才と呼ばれた。 戦争は終結し、彼は故郷に戻る。 廃墟、荒廃。村は跡形もなく無人の荒野だった。空爆の傷跡が彼を歓迎した。 彼は静かにリサイタルを始めた。月と星と闇だけが耳を傾ける。 モーツアルトのレクイエム。 演奏は終り、彼は生まれて初めて銃を手に取る。 銃先をくわえ込むと引き金を引いた。 次、「千尋」「泥棒」「包帯」
「天才」「リサイタル」「戦争」 --- 「フルトヴェングラーだっけ?」 新婚旅行。ベルリンに着いたとき、あたしは行彦が何を言いたいのかわかんなかった。 「いやさ、フルトヴェングラーだったと思うんだけど、戦争中にリサイタル開いたの」 急になんでそういうこと言うの。そういう所、行彦はあたしを不安にさせる。 「そんなこと言われてもしらないよ。あたし理系だし」 すごいねって言ってあげればそれですむことなんだけど、あたしはすこしむっとして答えた。 「いや、天才フルトヴェングラーなんだよ。1941年にベルリンでやったんだ。チャイコフスキーをさ」 「ふーん。いいよもう。あたしが知ってんのは731部隊と毒ガスぐらい。早く壁見にいこ」 もう。所詮工業化学科の人間にそんなこと聞かれたって知らないよ。 「ムードないなあ」 そんなもんないよ。高校までは勉強勉強。大学は実験と論文。 あたしは、不安だった。あたしは、行彦を楽しませること、出来てないんじゃないかな。 なんで行彦はあたしが好きなんだろう。結婚式も挙げたのに、あたしはずっと不安だった。 向こうからツアコンの山嶺さんがゆっくりと歩いてきていた。英文卒でストレートの髪をした美人だった。 「ああもう荷物片付けられました? 皆さん出てこられるまで、ロビーで待ちますから」 「ああ、山嶺さん、フルトヴェングラーですよね? 41年にベルリンでリサイタルしたの。僕録音持ってるんですよ」 自信たっぷりの行彦に、山嶺さんはすこし怪訝な顔をした。 「いいえ? たしか41年はメンゲルベルクで場所はアムステルダムな筈ですが」 その後の行彦はすっごい慌てっぷりで、あたしと山嶺さんの顔を繰り返し見続けた。 「ねえ、行彦はフルトヴェングラーが好きなんだよね。帰ったら聞かせて」 あたしは吹き出してしまいそうなのを抑えながら、行彦の頭を撫でた。 「うん」 あたし、こういうときの行彦の顔、好き。 --- 長過ぎですね。 次は ワイン、お風呂、推理小説で。
ありゃ。お題は 73の 「千尋」「泥棒」「包帯」でお願いします。
76 :
「ワイン」「お風呂」「推理小説」 :02/08/17 22:33
>>75 しまった。書いちまったよ。
とりあえずお眼汚しスマソ。
タイルが敷き詰められた部屋の中、彼の半身はぬるま湯につかっていた。
元々は湯気が立つほどに熱かったのだが
推理小説を読み進めるのに夢中で、今ではすっかり冷めてしまっている。
日々 仕事で忙しく、こうでもしなければ好きな本を読む時間を得られないのだ。
彼はそろそろ犯人が明かされるだろうと予測し、親指をしおり代わりに本を閉じた。
開いたもう片方の手でボトルを傾け、グラスを深い赤色に染める。
そして全て注ぎ終わると、ボトルをゆっくりと床に置いた。
見れば他にも二つ三つ同じ物があり、顔はすっかり赤くなっている。
もし近くに友人がいたら、彼がグラスに触る事をとがめただろう。
だが、妨げる物はいない。彼は勢い良くワインを飲み干すと、再び本を開いた。
しかし読み始めると、彼の頭からは次々と疑問符が飛び出た。
死んだはずの者が再登場し、生きていたハズの者が既に殺されている。
彼は慌ててページを確認しながら、頭の中に答えを求めた。
しかし何も見つかりはしない。当然だ、全ては酔いが見せているのだから。
そうこうしていると彼の口から突然「へックシ!」と言う声が飛び出す。
彼はその音に少し長居しすぎた事を自覚し、その場を後にした。
翌日――
彼は忙しい仕事の時間と引き換えに、自由に使える時間を手にした。
そして、ベットにへばりつきながらこう思う。
「これから風呂場での読書は少しひかえよう」と――。
お題は73の「千尋」「泥棒」「包帯」でお願いします。
遅かったみたいです。 「天才」「リサイタル」「戦争」 毎年お盆には田舎にある祖母の家で過ごすのが我が家の習慣だった。 そして祖母の家での目覚めとは、私にとって戦争のはじまりだった。 暑さと、あのいまいましいセミの鳴き声との。 祖母の家にはクーラーというものがなかった。もともと密閉できるようには出来ていない昔の家なのだ。 そしてその構造がセミの鳴き声を遮断することなく届けてくれていた。 その日も、私が朝目覚める頃にはすっかりセミたちも起きていて、一週間しかないという地上での寿命をまさに謳歌していた。 私は方だけは新しい扇風機に顔を寄せて畳に寝転がった。何もする事がない。 昼頃になり、さらに増した暑さと五月蝿さに耐えかねて、私は声に出してこう言ってみた。 「夏の風物詩である、セミのリサイタルが今日も盛大に行われています。風流です。情緒があります。」 しかし、少しうまく表現したからといって、セミの鳴き声が耳障りな事に変わりはなかった。 私はおもむろに立ち上がると、冷蔵庫のある台所へと向かった。 一旦冷蔵のほうを開け、麦茶しか飲み物がないのを確認すると、冷凍庫に頭を突っ込んだ。 セミの声が少しだけ遠のく。私は、ひんやりとした空気を顔全体に感じながら、 「冷蔵庫発明した人ってほんと天才だなー。」 と、名も知らない発明者に無責任な賛辞を送った。
78 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/17 22:58
>>77 だから重複してもお題だけは最後に書けってばよー。
ちなみに次のお題は
「千尋」「泥棒」「包帯」
「千尋」は固有名詞なので、駄目なのではないか?
81 :
「千尋」「泥棒」「包帯」 :02/08/17 23:49
敵の爆撃により、病院は怪我人で一杯だった。大統領と司令官が視察の日… 「おじさん、だあれ?」 包帯に包まれた3歳の少年の足には足首が無かった。 「これはひどい。ひど過ぎる…」 うな垂れる大統領に、ここぞとばかりに司令官が囁いた、悪魔の囁きを。 それを聞く大統領は、千尋の谷から突き落とされた表情だ。 「これしかありません、大統領」「そうか、あれを使うのか…閣僚と協議しよう」 囁きを聞いた少年がこう聞き返した。「さいきんへいきってなあに?おじさん」 足早に立ち去る彼等に少年はなおも聞き返す。「ねえ、さいきんへいきって?」 翌朝、奇妙な爆弾が奇妙な液体を撒き散らした。学校に、家庭に、貯水池にも。 住民は気にしなかった。なんにも気にしなくなってしまった。 「奥さん。私、近頃どうでもよくなってしまったわ。死体を見ても、夫が死んでも」 「まあ奥さん。私も、泥棒だろうが、敵の兵隊さんだろうが全然平気で…」 町を軍慰安パレードが進む。この悲惨な時に、どこか空ろな表情で。 「私達は、こんなの、最近平気だぞー!」「おー、最近平気だぞー!」 ※駄洒落でも最近平気… 次のお題は:「ガーター」「ボーリング」「カルーアミルク」で御願いします
>>80 せんじん 【千尋・千仞】
〔「尋」「仞」ともに長さの単位〕山などがきわめて高いこと。谷や海などがきわめて深いこと。ちひろ。「―の谷」
「ガーター」「ボーリング」「カルーアミルク」 --- カルーアミルクをちびっと、小さく舌を出して舐める。 「こんなに飲んだん久しぶり」 そしてぼくを見て笑う。綾子さんはとても上機嫌だった。 赤いワンピースにガーターっていうのはなんとなく田舎くさい感じがしたけれど、 とても似合っていた。 「でね、うち土建屋やったの。やから、橋とか作るん仕事にしたいなって思てたの」 ぼくたちは閉店まで店にいて、朝方店を追い出された。 「これからどうします?」 「んー、うちらが建ててるビルの現場ってこのあたりやんかぁ。行ってみよ」 それは10階建てのマンション建テナント用の雑居ビルで、設計も終わり、今建てている最中だった。 工事現場にはボーリングの重機が入っていて、最上階まで鉄筋の柱が建っていた。 ぼくの隣で、綾子さんは子供みたいに目を輝かせながら、その柱を見上げていた。 「すごいなあ。ビル一つ任されたの初めてやったけど、大変やったけど、やっぱり凄い嬉しい」 ぼくはぼくの横で喜ぶ綾子さんを抱き寄せた。 綾子さんはことん、とぼくの肩に頭を預けた。 10階建の鉄筋の柱が、とても大きなぼくたちの子供のように思えた。 --- 次は「夏休み」「はしご」「ミネラルウォーター」で。
84 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/18 05:56
炎天下の外回りが嫌になって、コンビニで買ったボルビックを片手に公園のベンチに腰を下ろした。 マルボロメンソールを取り出して、火を点ける。 息を吐き出す。 子供の頃は夏が好きだった。 学校は嫌いじゃなかったけど、夏休みが待ち遠しかった。 せみとり、プール、アイスキャンデー。 登校日の帰りに好きな女の子のスカートをめくったり、透き通った、青い奇麗な思い出達。 そうやって人生のはしごを登って来たのだ。 ミネラルウォーターを飲み干して、僕は立ち上がる。 新しいステップを踏む為に。 --- 次は「100円ライター」「メロン」「錠剤」でお願いします。
85 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/18 06:18
100円ショップに行きたくなった。行くにはまず、車に乗る。 車(軽)に乗るには、駐車場に行く。駐車場に行くには 靴を履く。そうだった、靴を履く前に格好をどうにかしないといけないの だった。町に出かけるには時間がハンパに余るしねぇ。 そもそも、なんで行きたくなったんだろ? そうだった。鋏を買おうと思ったんだった。手元に転がる100円ライターの 石も切れている。物持ちがいいのでなくて、爪とぎに使っていたせいだ。 うちにあるものでどうにかできないかな。あたりを見渡そうと 顔を動かすと、空気が攪拌されて昨日食べたメロンの匂いがまとわりつく。 薬が切れ掛かっているのだろうか。やる気がでてこない。 ともかくゴミをどうにかしなければと、起き上がり、錠剤の殻、 空の菓子箱を片付け始めた。 次は、記者、貴社、帰社 で御願いします。
タクシーを降り、会社へと向かって歩く。正面玄関にはマスコミの黒集り。 路地を折れ、裏口へと回る。当然そこにもマスコミはいるのだろうが、まぁ、 正面よりは少ないだろう。私は憂鬱な気持ちで天を見上げた。夏の日差しが 眩しい。 私がこの会社に入社したのはこの会社における創業期という時代だった。 自転車に乗り、街の肉屋を回る。一日炎天下で働いて帰社、『ビールのほうが よかったかしら』と笑いながら奥さんが出してくれた麦茶。あの頃は会社こそ 小さかったが毎日が楽しかった。 なぜこんなことになってしまったのだろうか?輸入牛肉の国産偽装事件など 他社のことだと思っていたがまさか自社でもこんなことをしていたなどとは。 確かに、現場は大手スーパーからの買い叩きの中利益確保に血眼だった。 価格破壊なんてものは結局卸値破壊に過ぎない。だからと言ってこんな 不誠実が許される訳でもないが。 裏口にはそれでも数人の記者が立っていた。フラッシュがたかれ、裏路地が不意に 明るくなる。正面玄関の方でも気がついたのだろう、記者たちが一斉にこちらに走っ てくる。 「今回の事件で貴社はどう社会的責任をとるおつもりですか!」 さぁ、どうしましょうかね。何もかもが大げさになりすぎたんだよ。私たちは自転車と 街の肉屋からやり直すべきなんだ。生産者も、消費者も、みんなに責任があると思うよ、 などといったら罵声を浴びるのだろうなぁ。 あう、20行。 次のお題は、「誠実」「報道」「ほうれん草」でお願いいたします。
88 :
「誠実」「報道」「ほうれん草」 :02/08/18 12:19
将軍家は栄え、7代目を数えた。 しかし、ここにきて一つ大きな問題が持ち上がった。 仕事の効率低下である。 「どうすればよいかの」と尋ねる将軍に、筆頭老中は答えた。 「報告・連絡・相談の<ホウレンソウ>を誠実に守る事が、なによりかと…」 それから数年、江戸では奇妙な光景が見られた。 「こらー、ほうれん草様を何と心得る」と八百屋が怒鳴る。 ほうれん草を腰に巻いて、悠々と家族の前を立ち去る泥棒。 「控えよ、控えよ。ほうれん草様のお通りじゃ」 街道をまかり通る二本差しのホウレン草を、民衆が土下座して出迎える。 「ちょっと待てよ、ハチ…この世界はどこかおかしくねえか?」 「へえ?」 それから何百年が過ぎ、狂った世界は歴史から抹消され、今や何の報道もない。 ホウレン草は、しなびたのである。 しかし、安心してはならない。いつまた、恐怖のホウレン草が政権を… ※カタカナとひらがなの使い分けが難かしー 次のお題は:「オーダー」「メイド」「邸宅」でおねがいしまふ。
風流な邸宅に住む破戒僧がいた。 奴の名は「織田無道!!」 御免、ゴメンよ。お題継続で。 織田無道 > オダムドウ > オーダー・メイド
90 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/18 22:45
「オーダー」「メイド」「邸宅」 その日の為にオーダーしたスーツはメイドインイタリー。 僕には分不相応で、たっぷりと予算オーバーもしたけれど、こればっかりは仕方がない。なにしろ、彼女の両親に初めて会う日なのだ。 「よく似合ってるわよ、公平」と奈美は笑う。 「そ、そう? ネクタイ曲がってないかな?」 「大丈夫大丈夫。さ、行きましょう」 「う、うん……」 「あ、それから一つ言っておくけど、うちの家族ちょっと普通じゃないの。肝に銘じておいてね」 そのときの僕には知る由もなかった。 奈美に案内された古ぼけた豪奢な邸宅で背筋も凍る恐怖を体験することになろうとは……。 次は「午前三時」「ファミレス」「泪」
91 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/18 22:51
午前三時、ファミレスで泪を流している男がいた。 午前三時、ファミレスで泪を流している女がいた。 二人は出会わなかった。 次は「アスパラガス」「ワンピース」「大丈夫」
「アスパラガス」「ワンピース」「大丈夫」 --- 茹でたアスパラガスはすこし火が通り過ぎていて、あまり味がしなかった。 「大丈夫? 煮えてる?」 みゆきは、口調は心配そうに、顔は自信たっぷりに、ぼくにきいた。 「大丈夫、煮えてるよ。やわらかい」 今ここにあるような、へんなりした茹でアスパラガスのスティックや、 身が崩れているビーフシチューみたいに、みゆきの作る料理は柔らかいものが多い。 「シチューも食べてよ」 ぼくはワインを飲むのをやめて、離乳食のようなシチューを掬った。 「うん。ワインにあうよ。でもみゆきって、シチューとかそういうの作るの好きだね」 「ほら、昭彦くん、前にあたしがクリームシチュー作ったときに いっぱい煮こんであるほうが好きだった言ってたじゃない? だから、煮こみ料理、いっぱい覚えたの」 思い出した。去年の冬だ。あの時はニンジンが固かったんだ。 そう文句を言ったのをみゆきはずっと覚えていたんだ。 そう思い当たったとき、何故みゆきがサーモンピンクのワンピースを着ているのかが解った。 「服、似合ってるよ。ぼくはその色好きなんだ」 みゆきは嬉しそうに顔を紅くした。 --- 次は「野分」「刀」「貝殻」で。
93 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/19 00:15
私には、ワンピースの似合う可愛い一人娘がいるんですが、 これがどうしても野菜嫌いでして。ほら案の定、今日だって・・・。 「こら、せめてこのくらい食べなさい。」 「い〜やぁ〜。これもこれもこれも嫌いぃ〜。」 「ほら、こうやって・・・ほら、無くなった。これで大丈夫でしょう。」 私は、アスパラガスなりトマトなり、片っ端から細切れにしたんです。 それこそ、幼稚園生に折り紙とハサミを持たせて遊ばせた時のように。 え、娘ですか? まぁ、一応食べたは食べたんですが、1,2欠片食べては洗面台へ。 また食べては洗面台へ。後をつけてみたら、食道に行かずに下水道に行く野菜の欠片が・・・。 本当、呆れて物を言えないとはこの事ですね。えぇ、もう当分野菜サラダは出しませんとも。 次は、「カレー」「テレビ」「メンバー」でお願いします。
申し訳ありません。私のレスは忘れてください・・・。 次は、「野分」「刀」「貝殻」との事です。
95 :
「野分」「刀」「貝殻」 :02/08/19 01:37
無人の海岸、五本松。 吹きすさぶ野分の中を、刀が光る。 二つの刀は無音で間合いを詰めるながら… 「先生、それおかしいわ」副委員長が割り込んだ。 「無人の荒野で、どうして刀が光ったり間合いをつめたりするんですか?」 「ううむ」 「無音で間合いを詰めるというあたりも変。それより私の官能小説を…」 「無論その方がいい。しかしだ、続きもまあ読んでくれい」 剣術を極めるべく創られた二体のロボット… 製作者は、何千年も前に彼等自身によって斬られていた。 どちらが勝つか。人類が消えて久しい海岸の、白い貝殻だけが知っている。 「ふふふのふ。どーだ、無人だぞー」 「すみません、海岸のというあたりが。第一「無人の」を削除すれば済むし…」 ううむ、それはそうなのだが…つまり、なりゆきか(意味不明) ※意味不明ですみません(^^; 次のお題は:「貝殻」「僧侶」「阿波踊り」で御願いします。
96 :
「野分」「刀」「貝殻」 :02/08/19 02:43
時世を越えて連綿と繋がる修羅の荒原。 誰が名付けたかは定かではない。ここは貝殻山塚と呼ばれる。 落人はそんな因果な地に迷いこんでいた。 辺りは濃い霧に包まれ、手燭の火も足下をよく照らさない。 「ちょいと、そこのお武家様、 こんな平坦な地、どうして貝殻山なぞ呼ばれるるかや?」 柳の下より緑なす黒髪の女性が誘うように唄いかける。 「手前にとっては幸い、旦那にとっては幸か不幸か、今宵は『貝が開く』。 霧の深奥を覗けば塚山が見えまする」 女の声は滑るように男の耳に流れた。この地には妖が住まうという。 背筋に嫌な悪寒が駆け上がり、訳も分からず、五里霧中、霧の中を走りに走った。 突如、野分きが吹き荒れ霧が掻き消され、男の眼前には、 堆く積まれた屍の山の裾野が広がっていた。恐怖のあまり視界を上げると その天頂には、屍どもを磔にするがごとく、紅に染まった刀が突き立っている。 そして、山の頂上より年輪のような呪詛が響き渡るのだ。 「汝、我が主たる資格あるや否や。器あらば世を支配するに足る狂気を授けよう。 なからば……」 途中で意識を失い、男は塚に積まるる一貝と成り果てた。 --- 出遅れた。 「貝殻」「僧侶」「阿波踊り」
97 :
くすかもんめ :02/08/19 02:48
?
>97 > 出遅れた。 の部分に対して? 15行で書くという本分を忘れて、 短編書くようなノリで脱線してると時間が過ぎてました。 こないなプロローグで話が続いてました。 秋の空は死蝋を焼く熾火でそら汚れ、 冬の地は流れ出た血も凍り、 春の川は溶け出た血で乾く暇もなく、 夏のあざみ野は臙脂の徒花のみを咲かせる。
雑貨屋に飾られている貝殻には目を見張る螺鈿がほどこされていた。一目見て健二は心を引かれた。貝殻は目映いばかりに輝いている。 「おばあさん。これいくらですか?」健二は老婆に尋ねた。 老婆は怪訝そうな表情で健二を見ると、「いくら出したってこれは売らないよ」と、そっけなく答えた。 街路は祭りで賑わっており、美しい娘たちが幸せそうに踊っていた。 諦めきれず狂おしい思いでしばらくの間健二は貝殻に見入っていた。 しかし、いつまでも見ていても仕方が無かった。立ち去ろうと腰を上げた健二は老婆が阿波踊りに気を取られているのを見た。 今なら見咎められないだろうと思った健二は貝殻を取ると、ポケットの中に入れて足早にその場を離れた。 二十歩くらい歩き、健二は後ろを振り返った。老婆はまだ気づいておらず、相変わらず踊りを見ている。 《あの角を曲がってしまえば安心だ》ポケットの中の貝殻を手で弄びながら、健二は無我夢中で歩道を進んでいった。 もう少しで十字路まで来るというところで、健二は前から歩いてきた僧侶とあやうくぶつかりそうになった。 僧侶の通る邪魔にならないように健二は道の端に寄った。が、僧侶は健二の前で立ち止まった。健二はギョッとした。 笠の下に隠れていた僧侶の顔は黒くただれ、歪んでおり、片目が無かった。 「何ですか……」と、健二が言うと、僧侶は「貝殻をお出しなさい」と穏やかな口調で言った。 健二の心が暗くなった。《盗んでいたのを見られていたんだ》 健二は僧侶を無視して通り過ぎようとした。が、僧侶に肩をつかまれた。健二はかまわず立ち去ろうとしたが、僧侶は掴んだ手を離そうとはしなかった。 「貝殻を出さなければ、君こそ警察に突き出さねば、ならんな」僧侶は、健二を睨みつけた。 健二は怖くなり、僧侶の手に貝殻を渡すと、小走りで駈け出していった。 僧侶は逃げ去ってゆく健二の後姿を毒々しい眼差しで見送ると、薄笑いを浮かべながら袈裟に貝殻を入れ、人ごみの中へ紛れていった。
「お金を発明したヤツって、絶対詐欺師だよな」 と加藤は言った。 「なんでよ」 「最初はさ、お金ってただの貝殻だって言うじゃん。だれかが偶然、綺麗で珍しいのみつけてさ、これ価値があるんだぜって、うまくだまして大根かなんかと物々交換したのが始まりだとおもうワケよ、俺は」 「いくら大昔の人でも、そんなくだらねえ詐欺にひっかかるか?」 「いや、だからよ、すげえめずらしい貝殻だったんだって、絶対。それによ、騙されたヤツだって、悔しいから他のヤツを同じようにだましてさ、そうやってどんどんひろがっちゃったわけよ」 加藤は頭の後ろに手を組んで、天を仰いだ。 「あーあ、カネさえなきゃあさ、カネを基準にした社会もなかったろうしさ、俺が貧乏で苦しむこんな世の中もなかったはずだと思うのよ」 「・・・・・そうかな」 俺は曖昧に相槌をうった。 おまえが貧乏なのは、単にナマケモノだからだよと、心の中でつぶやきながら。 「でさ、俺考えたんだけど、托鉢やろうと思ってんのよ」 「はあ!?」 唐突に話が変わる。なんでいきなり托鉢なんだ、こいつは。 「僧侶の格好して街角にたってるだけでさ、信心深い年寄りがカネいれてくれんのよ。楽して儲けられてナイスだと思わない?」 「おまえなあ、少しマジメに人生、生きたらどうだよ。何が托鉢だよ、おまえ」 「いや、オレ、マジだって。マジ、マジマジ。僧侶の衣装もレンタルしてくれるとこ見つけてあるしさ、来週、阿波踊り大会もあって、人通りも多くなると思うしチャンスだと思うわけよ。なあ、でさ」 アイスコーヒーでいったん唇を湿らせると、すずいっと、身を乗り出した。 「オマエも一緒にやんねえ?」 「ハア!? 俺はそこまでカネに困ってねえぞ」 「なにいってんの、2人でやればきっと儲けも二倍だと思うわけよ。あ、鈴木も入れて三人がいいなあ。1人じゃ心細いしさあ。な、やんねえ? やろうよ、な?」 勘弁してくれ、俺は思わずこめかみを抑えた。 便所へ行った鈴木はいつもどってくるんだろう、救いを求めるようにそう考えた。
次回は「五戒」「誤解」「5階」(w でさ、熱液さんさ、次の3語までちゃんと書いてよ。 でなきゃ書き込むのやめて。
>101 うおう、過激だな。 まあ、ルールは守ろうね。ということで。 お題に関して、見なくて済むよう 「誤解も6階もないのよ!」 というネタだけは押さえておく。
>102 それを言うなら「5階も6階もないのよ!」なのでは? まあ、このうえ新たにやってはいけない、みたいな、制限じみたものを加えるのもどうかと思いますよ。 文章が小さく固く、ちぢこまってしまう危険性があると思います。 どうしても、と言うのであれば、あらかじめ「やってはいけない五戒文」みたいなものをお作りになればいかがでしょうか? そうすればいらぬ誤解も防げるでしょうし。
>>101 >5:お題が複数でた場合は先の投稿を優先。前投稿にお題がないときはお題継続。
となっている。
次の三語を指定しないのは別にルール違反ではない。
良いお題だったら継続することもしばしばあるし。
スレ汚し失礼。
105 :
「五戒」「誤解」「5階」 :02/08/19 21:57
上の階の一室で坊主頭が車座となっている。 住職が弟子に説法を行っているのだ。 「五戒を破ることなかれ。お主ら五戒とは何を意味するか当然知っておろうの?」 「人殺しを行ってはならぬと学びました。」 頬に切り傷のある大柄の坊主が重々しく答えた。 「そう、その通り」 住職は満足そうに頷く。 「僧兵が人を殺めずして寺を守りけれましょうや?」 「そ、それは誤解じゃ。寺を守ることはより多くの人を守ることじゃ、ほ、他は?」 「人を騙してはならぬことですな。ですが、私の唱えたお経どおり、 罪深い人々でも極楽浄土に辿り着けるか心配で心配で夜も眠れませぬ」 色白の坊主が立て板に水とばかりにつらつらと答える。 「み、御仏の心は寛大じゃ、ほ、他は?」 「酒を飲まぬことじゃあ。ところで拙僧、ご住職の棚の奥にしまってある樽を ひっく、うっかり喉の奥にしまってしまったのですが、あれは酒でしたかな?」 髭面の坊主の顔は赤い。 「あ、あれはあ、雨水じゃ。全部飲み干してしまったか……そうか もうよい。今日は町で托鉢でもしてくるがよい」 がっくりと肩を落とし手の甲を振ってあっちいけする住職を後に、 弟子達は三三五五階下に連れだって降りてきた。 ――残り二つの解は、不邪淫、不偸盗。 「おう、今日は色町で説法でも行う予定なのだが、お前達はどうする?」 「それにしては、ちと懐が寂しいな。」 「心配するな、さきほど住職よりこの財布をお預かりした」 --- 5階が苦しい…… 「久闊」、「威力業務妨害」、「営業」
「五戒」「誤解」「5階」 --- 在家の五戒。不殺・不盗・不淫・不嘘・不酒。 「五戒っていうのがあるんだけどな。酒だけはなぁ。これだけは止められない」 というのが得度を受けた叔父の言葉だった。 「誤解だよ。今ある酒じゃない。インドの酒だよ」 そういう叔父に、 「じゃあ、そのインドのお酒ってなんなのよ」 と聞くあたしに少し顔をそむけて、 「……知らないよ」 とつぶやく叔父。 まあそもそも、住職になれずにおばあちゃんの持ち物のマンションの5階に住んでる 叔父のことだから、守らなくてもいいのかもしれない。 「おれは真言だからさ」 というのが、あたしにはわからない、叔父の許しの言葉だった。 そんな叔父が、何も言わずにチベットに旅立ったのは、あたしと寝た次の日のことだった。 おばあちゃんも、お父さんも、もう誰も叔父のことは話題にしなかったけれど、 あたしを抱く叔父の手が震えていたのを、あたしはたまに思い出したりもする。 --- うー、落ちてない。 次は「蝉」「携帯電話」「山」で
107 :
2チャンねるで超有名サイト :02/08/19 22:42
すいません。
次は
>>105 の「久闊」、「威力業務妨害」、「営業」で。
109 :
「久闊」「威力業務妨害」「営業」 :02/08/20 00:57
沖風にあおられ、海岸を目指す私の目に、東京タワーが見えてきた。 嗚呼、我、久闊を叙す。 何十年の時を過ぎても、彼等は私を歓迎してくれるだろうか? 浜辺に第一歩を下ろすと、私は喜びの声をあげた。 高層ビルが一つ、溶けて落ちた。 中にいる人にはちょっと営業妨害だったかな。まあいいや。 目前には、あの、懐かしい東京タワーがある。 私は矢も縦もたまらず東京タワーに抱きつく。 タワーは、大らかに地に横たわる、昔と同じ様に。 やっとお迎えの飛行機がやってきた。 「威力業務妨害で…」 飛行機は、どこか悠長なセリフを吐いて豆鉄砲を撃ってくる。 「あれはなんだ」「巨大トカゲか?」「恐竜か?」 みんな、みんな、私の事を忘れてる。私は、寂しい… ※第一作…まだ見てない; 次のお題は:「黄色」「副将軍」「校門」でお願いします。
110 :
「黄色」「副将軍」「校門」 :02/08/20 04:48
放課後。教室の窓から外を眺めると、校門の前に黒塗りのベンツが何台か停まるのが見えた。そこ から降りてくる、ガラの悪い男達。どっからどう見てもヤクザだ。 おそらく、私を確実に捕まえる為にわざわざ学校まで出向いてきたのだろう。こっちは逃げも 隠れもしないというのに、つくづく癇に障る連中だ。あれだけ痛い目に遭わせてやっても、まだ わからないらしい。 私は校舎を出ると、堂々と校門へ向かった。彼らも私の姿に気付いたのか、数人が走り寄ってくる。 その中の一人、強面の大男が私のそばまで来た次の瞬間、私はそいつの鳩尾に鉄拳をブチ込んだ。 げええ、と男は呻きうずくまる。黄色い吐瀉物が、地面にベチャベチャと降り注いだ。 その光景に、しばし呆然としていた別の男が、慌てて私から離れようとする。が、遅い。 私の手が男の顎を掴んだ次の瞬間、男の頭はコンクリートの地面に叩きつけられていた。 「何回言ったらわかるんだいっ! 例え親父の命令でも、学校には来るなって言っただろうがっ!!」 「いてててて……しかしですね、いつまた他の組が殺し屋を雇うかもわかりませんし……」 「ケホ、ケホ……お嬢にもしもの事があったら、ワシら指詰めくらいじゃ済みませんよ」 ……生まれてからずっとこの世界にいたせいで、腕っぷしだけは異常に強くなってしまった。 もう嫌だ、こんな生活。いっそ、どこぞの副将軍みたいに諸国漫遊の旅に出るか。 次は、「倦怠」「醜態」「五体合体」でどうぞ。
「倦怠」「醜態」「五体合体」 部屋一杯におもちゃが散らかっている。最新式の五体合体ができるロボットを拾い上げて、私は大きく息を吐いた。 いくらいらないといっても、私の両親は孫である新一におもちゃを買い与えてしまう。そして私は結局それを受け入れてしまうのだ。嫌悪感を感じながらも、長らく入院したままで満足に息子と遊んでやることもできなかった負い目がある私には強く出ることができない。 「あれパパ、何してんの」 声に振り返ると新一がドアのところに立っていた。 「いや…なあ新一、公園にでも遊びにいくか?」 全身の倦怠感をおしやって私は立ち上がった。足元がふらついたがなんとかこらえる。息子の前で醜態を見せることは避けたかった。 「ううん。それよりさ、それ、すごいでしょ」 新一は私の手からロボットを奪い取ると一人で遊びはじめた。 そういえば、親子でのキャッチボールを望んでいたのは私の夢だったか。楽しそうに遊んでいる息子を見て、私は小さく笑った。この子は私よりも強く生きていくだろう。 体も、心も、揺らぐことのない強い子になってほしい。親の願いなど振り切れるほどに強く。 願いを託されることがつらかった私は、息子へとそう願う。この輪を断ち切ってほしいと、私はそう願っている。 次は「秋」「鯨」「新聞紙」でお願いします。
最近、妻は何処か妙だ。何かふわふわと危なかっしい。 日曜の朝から『五体合体ムテキンジャー』なるロボット合体ヒーロー物や、 『魔法少女プリチーガールズ』なるアニメを見入っている。そんな趣味は無かったはずだ。 声を掛けても、用事を頼んでも、応えてくれない。やっぱり変だ。 子供モノにはまってるので、もしやと訊くと、初妊娠では無いという。 ストレスだろうか? 繰り返し尋ねても「私は普段通りよ」と返ってくる。 わからない。原因は最近セックスしていないことか? 最後にしたのは五ヶ月前くらいか。 実は倦怠期だったのか? 子供のいない結婚三年の夫婦にしては醜態だな。 そして再び変わらぬ日曜の朝、『ムテキンジャー』は今日も勝つ。俺もここで勝負だ。 「なぁ、俺達も五体合体しようか? ただのアレじゃなくて、五体全身で合体しよう」 急に思いついた誘い文句はひどく馬鹿げてるが、妻は応えてくれた。これで大丈夫だろうか。 また日付は廻り日曜日。相変わらず『ムテキンジャー』だった。 俺は溜息が出たが、朝飯は何故かいつになく豪勢だ。レバニラやステーキ。セックスする。 結局、何だかさっぱりわからないが、気にしないことにした。 大切にできることを大切にしよう、そう思ったからだ。 「氷」「アフリカ」「筆」
遅かった……すまん お題は「秋」「鯨」「新聞紙」で。
そこには李珍峨が立っていた。 血走った目で猪瀬を見ていた。 いつも冷笑を浮かべていた整った顔立ちが、いまは半分醜く焼け爛れ、歪んだ醜い笑みを浮かべていた。 それは、すでに彼がまともな思考力を失っていることを意味していた。 伝説とまで言われた最高の暗殺者が、ただの旅行者相手にドジをふむとは。 それどころか一生残る傷まで負わされるとは。 暗殺者としての珍峨は死んだ。今の彼は、復讐にとりつかれた狂人だった。 「くほおおおううううう!!!」 珍峨が奇声を上げた。そのまま突進してきた。右手に、筒状に細く丸めた新聞紙が剣のように握られていた。 猪瀬は、珍峨が気功使いであることを失念していた。たかが新聞紙と思って油断した。 取り返しのつかない失敗だった。 気がついたときには、その新聞紙は猪瀬の頭蓋を貫通し、脳幹にまで達していた。 もちろん、致命傷に違いなかった。 新聞紙はストローよろしく、猪瀬の頭の中の血液を吸いだし、それを鯨の潮吹きのように派手に上空に吹き上げた。 まわりの新緑の木々が、またたくまに紅く染まって、まるでそこだけいきなり秋がきたようにも思えた。 まあ、そんなわけで、猪瀬は死んでしまったのだった。
はい次〜〜「碁会」「5回」「豪快」(激藁
夕方、郊外の駅のホームはガラガラ。JR線は帰省ラッシュだってのに。 さすがローカル。誰一人いやしない。と思ったらジイサン一人でトボトボ歩いてた。 つい先日まで真夏日が続いてたくせに、近頃は急に涼しくなった。 風はやや強いが不愉快なほどじゃない。 夕空に現れた月は金色で、端の方が少し欠けてた。ああいうのを十六夜というらしい。 空が暗くなるのも早くなった。もう、秋になっていたのだろうか。 ほとんど沈んでしまった太陽の、ちょっと顔だけ出したところから、 ボンヤリ日が差し、鯨のような雲が映えた。明暗はブルーとオレンジ。 道に視線を落とした。 ひび割れた道路が淋しかった。向こうをさっきのジイサンが、背中を丸めて歩いてく。 「あれ? あのジイサンは、死んだ俺のジイサンじゃないか」 風は強いが、不愉快じゃない。 黄色く古びた新聞紙がカサカサ転がって前を横切った。
>>116 は「秋」「鯨」「新聞紙」です。お題はそのまま。
119 :
「碁会」「5回」「豪快」 :02/08/20 22:13
黒、優勢… 豪快な碁で知られる名人も、力尽きた感がある。 名人の目前に列を成す黒石。なんとか、なんとかせねば。 「私は名人、名人、ほっ、ほっ、ほほほー!」 ジャンル違いの混乱に叩き込まれた名人の頭脳が、思わぬ妙手を編み出す。 「5五飛成!」 白石をぐっと左上に繰り出す。 パタリと色を裏返すと…白石が裏返って黒くなった。 「それはいけませんね、名人」と委員長が嗜める。 「オセロも知らないのですか? もう5回目ですよ」 「すまんすまん、誤解してたよ」頭をポリポリかく名人。 碁界の帝王も、碁会ならぬ異種目王座決定戦では形無しである。 ※なんか…無難すぎるか。 次のお題は:116さんの「秋」「鯨」「新聞紙」でお願いしまふ。 今はは白いままである。 すした。
「碁会」「5回」「豪快」 まったく、何がそんなにおかしいのか。 不意に聞こえる豪華な馬鹿笑い。確かに、そんな程度のノイズに思考を 乱される事、それが私がアマチュアたる所以なのだろう。そう思いつつ碁石を 右手で弄ぶ。 「持ち時間、なくなりますよ。」 「すいません。」 対戦相手の苛立ちは何も俺だけのせいでもなかろう。馬鹿笑い。まったく 何回目なんだろう。碁盤に落としたままの視線が無意識に泳ぐ。 「5回目ですよ、あの人。碁会に来るんだったらそれなりの心構えがあって しかるべき、とも思うんですがね。」 ・・・・・・決めかけていた手が止まる。あぁ、そうだな。こればプロとアマの差 なんだろうな。まったく俺の思考を読みやがる。 「碁がメジャーになるのはうれしいんですが。決り事一つ守れん輩が増えると 言うのは弱ったことです。」 確かに。俺は頷きながら投了した。馬鹿笑いは続いている。対戦相手の言って いた輩とは馬鹿笑いなのか俺なのか。感想戦の準備を始める対戦相手の指を見つめ ながら、俺はうっすらとした寒気を感じた。 出遅れ、しかも17行。それでもまとまんないなぁ。 お題は119さんより継続、「秋」「鯨」「新聞紙」で。
まったく情けねぇな。 2行目 豪華 −> 豪快の誤り まったくもって申し訳ない、所詮私もアマチュアだわね。
122 :
「秋」「鯨」「新聞紙」 :02/08/20 23:58
彼は、田舎からのトラックに揺られて僕のもとにやってきた。 ぴかぴかの黒装束に誇らしげに身を包んで。 それでも、彼にとっては、その周りのすべてが、 まるで鯨のように巨大に感じられたことだろう。 住環境の変化というのはそういうものだ。 しかし僕は、お互いにうまくやっていけるだろうと信じていた。 そして、その期待は裏切られることはなかった。 彼は、新しい住みかと、食べ物に一応の「慣れ」を示して見せた。 そんなふうに、彼と共存できることが僕には本当に嬉しかった。 そんな生活も長くは続かなかった。ある秋の朝、彼は動かなくなっていた。 僕は必死に彼の体を揺り動かした。しかし、目の前にあるのは、 ぴくりとも動かない彼の骸であった。 僕は、泣きそうになりながら、彼の亡骸を新聞紙に包んで、庭の片隅に埋めてやった。 ひと夏しか生きられないと分かっていても、楽しかったよ、僕のカブトムシ。 お題は「ヘッドフォン」「メール」「コーヒー」で。
「ヘッドフォン」「メール」「コーヒー」 聞こえる。 浮かぶでもなく、沈むでもなし。 発光する画面を眺める事を日常として、 ただただ自分の肉が溶けて床へと滲みるのを待っているのである。 粉っぽく口に残るコーヒーの匂い。 己を鞭打って楽しむのにも飽きた今、インスタントのこれぞ甘露よと一人、 遊んでみたり。 痴呆め。 手元の機械にヘッドフォンを差し込む。ぶつりと言う音。 何を聞くわけでもない。耳をすませる。 聞こえる? お題は「ピンク」「氷」「灰皿」で。
↑あー・・・「メール」無い・・・。 ズビバゼン、万年筆で額にモナーと入れ墨入れて逝ってきます。 私のは無視でお願いします・・・。 フガー
125 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/21 02:42
今年もアキアカネが空を舞い、水田が黄金色に輝く季節がやってきたが、 村の水田の出来は芳しくなかった。 「さて今年も年貢の季節がやってきたわけだが…。」 庄屋が部屋を見回す。皆は氷ついたように俯いている。 「正直、今年はだめだと思うやつの数は?」 茂吉はおそるおそる挙手した。続いて全員が挙手した。 庄屋は溜息を漏らし、一枚の紙を懐から取り出した。 茂吉が上目遣いに窺うと、白い紙の裏から朱の筆文字が透けて嫌なピンクになっている。 「今年の税率は、7公3民だ…。」 その瞬間一同は信じられないといった表情で顔をあげた。 「庄屋様、それはマジですか?只でさえ米の出来が良くないのに、そんなことになったら飢え死にですだ。」 「しかし納めないと村ごと消される罠だべ。」 「あんの厨房武士があああああ」 「……これは、もしかして……一揆の予感?」 「茂吉、声でけえよ!」 庄屋が茂吉の頭を灰皿で叩いた。
126 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/21 02:43
125は放置希望です 厨
127 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/21 04:36
ピンク、氷、灰皿 コンクリートに咲く鮮血の薔薇。 砕けた頭蓋の内容が氷のアスファルトを鮮やかに彩る。 崩れた男の顔面はもはや動かない。ピンクの腸が腰紐のように腹部に絡まって散在している。 都市という空間は生にこそ厳格だが、死には殊のほか寛容だ。 まるで一杯になった灰皿の中身を無造作に捨てるように、救急隊員は死体を病院へと運んでいく。 医者はごく自然な日常として、死亡診断書を作成する。 そして流れた命の最期の軌跡となる道に、今日も明日も幾千の足跡が刻まれていく。 ああ、なんと心地よい冷淡さに満ちた世界だろう…… そう考えると私は何も怖くなくなった。 さあ、飛び降りよう。
128 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/21 04:42
↑あ、お題忘れてた。 「ガラス」「耳」「歌」で。
ピンク、氷、灰皿 桃レンジャーのピンク色の乳首に黄レンジャーは氷を当てた。 「あうぅ」桃レンジャーはあえいだ。興奮した黄レンジャーは乳首を吸い始めた。 「おっ、やってるな」 任務を終えて帰ってきた赤レンジャーは秘密基地のドアを開けると、 タバコを灰皿に押し付けて、にやりと笑った。 お題は「ガラス」「耳」「歌」で。
130 :
エヴァっ子 :02/08/21 12:16
暑くもあり熱くもあった夏、私は一人冷たいガラスに耳と頬をつけて、ぼんやりとしていた。 学校の皆は野球部が甲子園出場したので、応援に行っている。 私はそんな気分になれなかったので行かなかったのだ。 熱くぎらぎらした太陽の下で、どうして興味も無いスポーツを熱狂的に応援できようか? ふと気が付くと、遠くから歌が聞こえてきた。 うちの学校の校歌だ。 たぶん甲子園にいけなかった先生達が、TVで甲子園を見ていて試合が終わったから校歌が流れているんだろう。 なんて事の無い古臭い歌だ。 そういえば私は校歌を一度も歌ったことが無いのに気がついた。 ……しばらくして、歌おうと思っても歌えない、自分の学校の校歌を聞きながら私は家に帰った。 次は「CD」「ダンボール」「カーテン」で。
131 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/21 15:36
「CD」「ダンボール」「カーテン」 お気に入りのCDはダンボールの中。でも、ブルーのカーテンは窓にかかったまま。 カーテンは置いて行こうと秋子は決めていた。 曇った日でも青空が見えるようにと恋人が買ってくれたブルーのカーテン。 その恋人はもういない。 引越しの業者が最後の荷物を受け取りにきた。 「荷物はこれで最後ですね。カーテンはそのままでいいんですか?」 「ええ、いいんです」 やがて荷物と秋子を乗せたトラックは、新しい街へと走り出した。 ブルーのカーテンは、別れを惜しむようにいつまでも風にはためいていた。 次は「ダンスホール」「スニーカー」「ドーナツ」
132 :
「ダンスホール」「スニーカー」「ドーナツ」 :02/08/21 23:22
きらびやかなダンスホールに円舞を繰り広げる男女達。 月見草も主役なしには価値がない。天は二物を与える。 大胆なドレスの上を賞賛と嫉妬の視線が舐めるのを感じる。 ドーナツのように取り巻き連中が寄ってきて、ご機嫌どりとばかりに 下らない愛想笑いとウィットに欠けた話題を投げかけるが、 まあ、仕方あるまい、社交界とはそういうものだ。 我慢強く相づちをうっていると、ようやくリクが姿を見せた。遅い、遅すぎる。 どうやってリクの熱烈な愛の告白に耳を傾けてやるか、それだけが愉しみなのに。 だが、 「エルザ、僕は彼女と結婚することを決めたよ!祝福してくれると嬉しい」 は? あまりの唐突な言葉に天地が裏返るのを感じる。だが、柱がそっと押しとどめた。 彼の傍にはジーンズにスニーカー姿の少女がいた。こんな田舎娘と? 「あ、あなたのお父様はそれをお許しになるかしら?」 それだけがやっと喉を突いた。 「反対されると思う。彼女とはね、難民キャンプでの医療活動中に知り合ったんだよ。 正直に言うと、この手の慈善パーティは今も好きになれない。 現状の財閥支配は変わるべきだと思う。だからこそ連れてきた」 リクは出会ったころのままの純粋な瞳で、そう語る。 「――あなたらしいわ」と口に出来たのは、この高すぎるプライド故だろう。 選んだのが私であれば、その理想も現実となったかもしれない。 ……復讐してやる。私の持ちうる全てを使って。 --- 「執事」「自己満足」「毒」
「執事」「自己満足」「毒」 --- 毒薬は執事の趣味だった。 毎夜、屋敷の大時計が12時を告げるころ、家の者が寝静まったのを見計らって彼は、 机の中から30cm四方ほどの大きさの鍵の掛った小箱を取り出す。 中には一冊のノートと、砒素や鳥兜と書かれた小瓶がいくつか、整然と並べられている。 ノートは彼が見聞きした毒についての効能や処方、症状について纏められていて、 ランプの灯の元、彼はその日聞いた毒についての話をノートに書いたり、 小瓶を手に取ってみたり振ったりして自己満足に浸るのだった。 彼はそのノートに夕方あった出来事を書こうとして、止めた。すこし考えを纏めるためだ。 彼は目を閉じて、夕方の情景を思い出していた。 彼がその日の夕方厨房に向かったのは、開けたワインが不評なため、 新しいワインを持ってこなければならなかったからだ。 厨房では20才ぐらいのメイドが大鍋の前で無表情に立っていた。 鍋の中にはブイヨンを取るための野菜の間に青く錆びた銅貨が一枚見えた。 「ジョゼ、そのブイヨンは捨てなさい。銅貨が入っている。それは毒なんだよ。 旦那様にはお伝えしておくから」 ジョゼ、と呼ばれたメイドはゆっくりと彼の方を向いて、花が咲くように微笑んだ。 「まあ、気が付きませんでしたわ。直に別の料理をお作りします」 メイドは無表情に戻り、ことことと細かい泡を吹き上げて煮える鍋から大事そうに銅貨を摘み上げた。 もしあのブイヨンを使っていたら、そしてそれにずっと気が付かなければ、 屋敷の者は皆体調が悪くなり、ゆっくりと死んでいったんだろうな。 その想像は、彼をひどく興奮させた。 --- 次は「ネットワーク」「勾玉」「スープ」で
134 :
「執事」「自己満足」「毒」 :02/08/22 01:17
鹿鳴館の舞踏会。初対面の若者と娘が、アクビを堪えながら向かい合う。 若者は、執事つきの屋敷に住む華族。 …その位になると、鹿鳴館の薄っぺらな目的が見えてくるらしい。 娘は、2年間父につれ添っての英国帰り。 …そりゃあ本場を見てきた者には、猿真似ばかりが目立つに違いない。 かといって別に毒付く理由もなく、二人で眠い顔を突き合わせていた。 「ちょっとお化粧室へ」と娘が席を立つ。 ああ、あの化粧室か。これみよがしに、大きな舶来の高級壷が置いてある… 「どうでしたか?」若者は戻ってきた娘に、話をさしむけた。 決まった答でも、お互い時間潰しにはなるだろう。 娘はしばらく下を向いたまま。しばらくして、赤面に耐えかねた様にこう答えた。 「はい。色は黒茶色でやや硬め。量は少なく、便秘のせいか薄く血の筋が…」 「…貴女だけではない、私にも、世界中どこにでも見られる事です。」 若者は、こともなげにこう答えた。 向かい合う二人の側を、虚ろな踊人達が通りぬけてゆく。 若者は、娘の中に輝く小さな真実を見た気がした。 ※ああ上品な話^^; 次のお題は:「緊張」「好奇心」「納豆」でお願いします。
失礼しました、遅れてます。 お題は、133さんの「ネットワーク」「勾玉」「スープ」でお願いしまふ。
136 :
「ネットワーク」「勾玉」「スープ」 :02/08/22 13:40
硫化水素に微量の金属元素を触媒として、 この生命のスープは形成されている。まさに原始の地球の姿だ。 おっと、電気刺激や潮汐作用も忘れてはならない。 私はアクリル製の球体の表面を撫でながら呟く。 「私はこの世界の神だ。愛しい我が子よ、早く生まれておいで」 だが依然として生命が誕生する気配はない。 ――そして、現実世界では私は一介の助手にすぎぬのだ。 「早川君、君の論文を読ましてもらったよ。素晴らしい出来だった。 でも、今の君はまだ無名だ。ここは私の名前で出した方が説得力があるだろう」 ちくしょう……何もかもうまくいかない。 学者もこの歳になると、教授に逆らっては生きてゆけない。 泥酔して帰ってきた。雑用に忙殺され、まともに家で寝るのも久しぶりだ。 そのまま睡魔に身を委ねようとしたが、なにやらプツプツと音がする。 アクリルの球体を覗き込むと、勾玉のような種子達がネットワークを形成していた。 文字通り腰を抜かすほど驚いた。 さらにはコミュニケーションを図ろうと電気信号を発していた。 「オカエリ ナサイ ワタシ ハ サビシ カッタ ノ デス ヨ」 --- もうちょっと続けたかったけど、長くなりすぎた。 「狂言回し」「業病」「潜在」
137 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/22 14:55
青年が茶を持って居間に着くと、いましも客が帰り支度をしているところであった。 「おとう、茶ぁ持ってきたけど……」 「お客さんは、お帰りだッ……」 苦々しく言い放つ父を前に、青年は仕方なく、盆から茶碗を二つ取り出し、茶を煎れ始めた。 「何の話だったん……?」 茶碗を父の前に出しつつ質問すると、 「……何でもねえ……あだ、狂言回しのこどなんて……おめえには関係ねえごどだ……」 静かな答えが返ってきた。 父は、客人の帰った後を世にも恐ろしい顔で睨み付けていた。青年は、そんな父の顔は見ずに、こう言ってみた。 「山の話、だない?」 父は、何も答えなかった。 茶碗を持つ父の手が、かすかに振動しているのが分かる。この仕事特有の職業病だ。 青年は、父にもう仕事を続けていくだけの体力が無い事も、組合で父が微妙に浮いている事も知っていた。 正直組合の中でも、潜在的に山を売りたがってる家は少なくない。そんな中、父にはもう無理をしてもしく無い。かねがね、青年は考えてきた。 「もう、うちだけ続けても、しょうがねえ」 青年は、少し考えそう言った。父は、相変わらず、無反応で返した。 「もう、止めだって、いい」 その時の父の表情は、青年には分からなかった。 東北弁で読んでみよう。 次 「無音」「助ける」「パイプ」
139 :
無音・助ける・パイプ :02/08/22 20:27
無音の中に生きている。 テレビもつけないし、音楽も聴かない。 せめて、大声で泣いたらいいのじゃないかと思うけれども、 涙も出てこない。 ただ一人。 狭い部屋の中で、蛍光灯の黄色い光の中、何をするでもなく、 座り込んでいる。 パイプが欲しい。 天井から垂れ下がるパイプ。 そうすれば、そこに口をつけて叫ぶだろう。 そのパイプは外へと伸びていて、私の声は遍く世界へ響き渡り。 やがて奇特な誰かが、この狭い部屋のドアを叩くかも知れない。 けれど、この部屋には勿論、パイプなんてない。 だから、誰も私を助けることは出来ないのだ。 多分、永遠に。 次のお題は アルコール・鞠・漆黒、でお願いします。
眠れない。 もう一週間も不眠が続いている。 羊もたくさん数えた。アルコールを浴びるほど飲んだり、睡眠薬にも頼った。眠くなるCDとかいう得体の知れないものにまで頼った。 まるで効果がなかった。 眠くなるどころか、意識はますます冴えわたってきたようだ。 また今夜も鞠の音を聞くような気がする。 そのせいで眠れなくなったのか、眠れなくなった日からその音が聞こえるようになったのか、そこらへんの記憶が、どこかあやふやで定かではない。 問題なのは、わたし1人しかいないはずのこの部屋で、誰かが鞠をつくような音がすることだ。 わたし以外の人間にはまるで聞こえない、だけど幻聴にしてはあまりにもはっきりとした音だった。 最初ははるか遠く、そして日ごとにだんだんと近づいてくるようでもあった。 いったい何が近づいてくるのだろう、恐ろしくもあったが、どこかでそれが姿を現すことを、わたしは期待しているようでもあった。 だぶん、わたしはまともではないのだ。 そんなことを考えて、ひとりでクスクスと笑ってしまう。 窓を閉ざして、明かりを消して、わたしは今日も自分の部屋の中で、膝を抱えてうずくまりながら、じっと漆黒の闇をみつめている。
お題わすれ、だーよ。
いまかんがえてるとこ。 また叩かれると困るしね(w ゴカイがダメならロッカイにしようかな(w 「惨禍」「狡猾」「胆力」
143 :
「惨禍」「狡猾」「胆力」 :02/08/23 00:37
キャンパスの周囲をパトカーが巡回する。 最早、きっかけなど問題にならないくらい事態は深刻化しているが、 一応まだ大学の治外法権は守られているらしい。流血の惨禍は免れるかもしれない。 全くこの男の胆力には恐れ入る。 過激派・大学当局双方に取り入り、己が手駒として動かしている。 いや、彼らもこの男を自分達の持ち駒と見なしていることだろう。 勘違いも甚だしい。こいつを手懐けられる奴など存在しない。 「まあ任せておきなよ、全て筋書きどおりだから」 そう狡猾に微笑んで、屋上の風を一身に受けたまま両手を水平に広げた。 その瞬間、俺は、あいつの背中に翼でも生えたかのような錯覚を感じた。 馬鹿馬鹿しい。そんなことが現実に起こりうるはずがなかろうに。 俺には関係がない、まあやりたいようにやるがいいさ。 「ところで、おまえ、絵を描くのはもうやめたのか?」 そう問いかけると 「君が現れたからね。自分の才能の無さは嫌というほど思い知らされたよ」 嫣然と微笑み返された。どうしてだろう、何だか瞳の奥まで見透かされそうだ。 この男に、ある歴史上の人物が重なる。絶望した芸術家の魂ほど危険なものはない。 「でも、僕にも新しい絵筆が見つかったんだ……」 口に出したつもりはない。 「彼よりはうまくやれると思うよ」 ――アドルフ・ヒトラー --- 感想スレのお題を借用 「拍子」「聞き上手」」「さざなみ」
「惨禍」「狡猾」「胆力」 「狡猾な敵、それを正面から打ち砕く正義の皇軍ですか。そんなもの・・・・・・、 私は宣伝映画の中にしか存在しないものだと思っていましたよ。」 その中で一番年下の男が呆れた様に呟いた。陣地の一角に作られた中隊指揮所、 そこにはこの塹壕に張り付かされている男たちが集められていた。様々な階級、 皆一様に若い。中隊は前回の敵陣への攻撃で多くの兵と指揮官を失っていた。 「まぁ、師団司令部からの命令はこんな感じだ。やれるかな?」 中隊長代行はそして男たちの顔を見回した。皆一様に無表情であった。 「さすが筋金入りの参謀殿、大した胆力をお持ちですね。あれほどの被害を 受けてもなお戦闘意欲が旺盛とは、まさにわれらが参謀殿は皇軍の誇りであられる。」 学徒出陣の少尉が両手を広げて詠うように言った。それを受けて兵長が面白く無さ そうに呟く。 「いっそ軍神になって頂きましょう。」 中隊長代理は場が静まるのを待った。そして、男たちの顔を見渡して告げた。 「兵たちにとっては惨禍以外のなにものでもないが、俺たちは軍人だ。よろしく頼む。」 男たちはそして様々に中隊指揮所を後にしていった。あぁ、これで俺たちも靖国か。 桜の時期には早すぎるのにな。と、最期の煙草に火をつけた。 16行。夏ですしね。 お題は当然143氏の「拍子」「聞き上手」」「さざなみ」で。 また出遅れた。
145 :
「惨禍」「狡猾」「胆力」 :02/08/23 00:50
遠い未来…銀河系最高会議はもめにもめていた。 「なぜ、我々の星間提携を認めて下さらないのですか?他の星系は自由なのに!」 代表議員は涙ながらに訴える。 「それで…えー」議長がお義理で尋ねる「提携グループのお名前は?」 代表は胸を張って言った「暗黒星雲・三星同盟です!」 一斉に議会がざわめく。「やっぱりねえ」「いくらなんでも…」 代表は必死で堪える。ここが胆力の見せ所だ。 「皆様が危惧している惨禍は、昔々の20世紀のSF小説での架空の出来事ですよ!」 結局、三星同盟は認められなかった。 ふくれ面で帰り仕度中の代表に、愛娘からの電話がかかる。 「お父様…彼ったら、私が暗黒星雲だと言ったら突然入院して面会謝絶と…」 彼は、星雲の様に暗い表情で電話を切る。 入院だと、面会謝絶だと。狡猾な若造め…怖いだけだろうが。 連邦への怒りが燃え上がる。叩きのめしたくなる。この怒りは国民も同様だった。 彼は「はっ!」と気付いて夜空を見上げる。 結局、自分達は、大昔の安小説をなぞって走る一事物に過ぎないのではないかと。 ※あと一行が削れません(涙) 次のお題は:「正月」「夏休み」「日食」でお願いします。
なぜ同じ10分ちょっとに3つも?
…失礼しました同様に遅れてます。
お題は
>>143 の「拍子」「聞き上手」「さざなみ」でお願いします。
147 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/23 01:04
惨禍」「狡猾」「胆力」 「寒いな……」 今は真夏だ。だが体の芯まで凍えるような悪寒が彼をつつみ、じっとりと脂汗が体中からにじみ出た。 絶望が、彼を支配していた。 彼のもつ知力も体力も胆力も、会社が総がかりで行うイジメにはまるで役に立たなかった。日々傷ついて いく体と磨り減っていく心。心配する妻の顔すら疎ましくなってくる。 限界に達した彼は、ある決断をするに至る。キレる、という表現は適当ではない。狡猾で悪辣な連中に対 するにはこれしかない。あとは心を決めるだけのことだった。 そして、その時。 彼が退職する会社に私物を整理しに行くと、人事担当者のニヤついた顔が目に入った。露骨に嘲笑の笑みを 浮かべる男は、鈍感にも彼の変化には何も気がついていない。既に彼は妻と離婚し、両親は既に鬼籍に入って いる。子どもはいない。もう失うものは何も無いのだ。 彼は無言で、無表情で詰め寄ると、バックからとりだしたナイフで切りつけた。男のYシャツに赤い線が走り 呆然とした表情のまま床に崩れ落ちた。朱にまみれた机と椅子。女子社員の金切り声。われ先へと逃げてゆく 男たち。そんな惨禍を呼んだのが自分たちであることを忘れているのだろうか?彼は怒りに身を震わせながら 青い顔をして立ちすくんでいる受付の女に向かっていった。 ついさっきまでニュース速+でリストラ関連の記事を読んでいた影響でこんなのを書いてしまった ……かぶっている人が3人もいる!漏れは4人目!?
148 :
大幅に遅刻。無音、パイプ、助ける :02/08/23 01:06
レースのカーテンごしに春の日差しが病室内をやわらかく照らしている。 時折風が吹いて外の木々がざわめくのと、生命維持装置の規則正しい無機質な音以外、ここは全てが無音だった。 僕は病室に入ると、ベッドの脇の背の無いパイプ椅子に腰掛け、横たわるユミの右手をそっと握った。 ユミが植物状態になって、もう二ヶ月になる。 あの時、僕はユミなら理解してくれると思った。 かつて僕は、ユミを本当に大切に思ってたし、ユミも僕に対してそうだったはずだ。 だから、時が過ぎ僕のその気持ちの対象が変わっても、ユミなら、受け入れてくれると信じていた。 「ふうん、浮気がばれたら、離婚届? 慰謝料はたっぷりもらえるんでしょうね?」 家にあの人を連れて帰ったとき、ユミはこんなふうに毒づいた。 「ユミ、お前には本当に悪いと思ってる。でも僕はもう自分の気持ちに嘘はつけない。この人と一緒に生きたいんだ。たのむ」 僕は土下座した。ユミはそんな僕に、 「何言ったって、もう慰謝料は負けられないわよ。とっとと私の前から消えたらどう?」 と言い放った。僕はその声がかすかに震えてることに気づいていた。優しいユミ。悪ぶって、本当は一番弱いユミ。 僕はわかってはいたけれど、もうユミには何も言うことは出来なかった。その晩、僕は家を出た。そしてユミは首を吊った。 「ユミ、この二ヶ月ずっと考えてたんだ。どうしたら、君に償えるかって」 僕はつぶやいた。ユミはただ、穏やかな寝顔をたたえている。 「もうぼくにはこれしか出来ないんだ。君が君自身の死を望んだこと、それを僕が果たそうと思う」 僕は生命維持装置の電源を抜いた。ユミの家族は尊厳死なんか望んじゃいない。これは殺人罪に他ならないだろう。しかしそれは僕がすでに犯した罪そのもの。それに罰が与えられるなら、僕は喜んで受けるだろう。 「ごめんな、ユミ、僕は君を助けることは出来なかった。だから、ずっと恨んでいいんだ、憎んでいいんだ。化けて出てみろよ、僕はずっと一人だから……」 僕はポケットから結婚指輪を取り出すと、ユミの右手の薬指にはめた。
分かりづらいかもしれないので現在のお題。 「拍子」「聞き上手」「さざなみ」
なんの拍子に人生が変わるかわかったもんじゃない。 趣味もなく、遊び相手もなく、ただ家と学校を往復して勉強ばかりを繰り返す毎日。 受験受験と教師は大声で張りあげ、僕達はサラブレットのように休むまもなく点数を競わされる。 家でも話題はテストと受験だけ。僕が何を考えているのか、悩みはあるのか、そんなことはどうでもいいみたいだった。 そんなわけで、受験という名の怪物においつめられ、ノイローゼになってしまった。 彼女に会ったのは、一ヶ月前、どうしても学校に行く気になれず、繁華街をぷらぷら歩いているときだった。 声をかけてきたのは向こうからだった。 彼女はすごい聞き上手で、おいつめられていた僕は、知らす知らずのうちに、導かれるように、泣きながらたまった鬱憤を吐き出していた。 はじめてだったのだ。僕の話を真正面から聞いてくれた人は。 僕がすぐに彼女を全面的に信頼するようになつたのは、むしろ当然の事だと思うのだけど・・・。 いま、僕は彼女の勧めで、神智教の本部道場で心を開放する修業に励んでいる。 そうはいってもさざなみの音を聞いているだけなのだが。 頭から雑念を追い払い、俗世の垢を落とすには、この音を聞きつづけるのが1番いいらしい。 ほんとうに、心から俗世のことが、きれいに洗い流されていくようだ。 テストのことも、受験のことも、学校のことも、両親のことも。 なにもかも、みんな。
次。「狼」「虎」「狗」 熟語が作りやすいように一文字にしてみましたが?
「拍子」「聞き上手」「さざなみ」 --- 「……つまり、我々はあの狡猾なマケドニアの王、アレクサンドロスから我らの自由を守るため、 テーベと同盟を結ばねばならないのです」 大波が寄せては返すようなデモステネスの演説が終わったとき、 アテナイの主だった面々からは拍手が湧き起こった。 その様子をデーマテスは口の端で嗤いながら眺めていた。 そしておもむろに立ち上がり、意見を述べ始めた。 「そうは言いますがね、実際の所どのように戦うというんです? あの小僧の父王が死んだ時、我々はマケドニアに内乱を煽動しました。 ところがあの小僧はあっと言う間に国内の諸部族を鎮圧してしまいました。 どうも、あの小僧は我々の思い通りにはいかないようですな。皆さん。 さて、我々はアテナイの為に、何をするべきなのでしょうかね? デモステネス殿?」 春風に煽られたさざなみのようなデーマテスの演説の後、皆は一斉にデモステネスを見た。 しかし彼は目を閉じ、何も言おうとしなかった。 「どうもデモステネス殿は聞き上手でいらっしゃる」 デーマテスの一言に皆はどっと湧いた。 その時、デモステネスは憤怒の表情で立ち上がった。 「今は、その質問に答える、草稿が、ないので、明日にして、頂きたい」 会議はそのまま終了し、明日に持ち越されることになった。 デーマテスは議席で一つため息をついた。 デモステネスのやつ、どうせ明日もあの調子で今日と同じことをがなり立てるんだろうさ。 彼は日々濃くなっていく疲労感に押し潰されそうになっていた。 --- 次は「帽子」「紙コップ」「アンテナ」で。
すいません、 次は「狼」「虎」「狗」で。
154 :
「狼」「虎」「狗」 :02/08/23 01:54
「虎だ!」とシルクハットの男が言った。 「虎だ!お前は虎になるのだ!」 彼は一言「いやだ」と言った。 たしかに虎はいい。でも勧誘には気をつけなきゃ。上納金とか取られたりして… 「親のいる奴は故郷へ帰れ」と少年が言った。 「俺と来る奴は狼だ!」 彼は「うさんくさい」と言い捨てる。一緒に来て欲しいなら、はっきりそう言え! インチキ寄付金集めのネタにされたりして。第一、徒党を組む狼は見苦しい… 「さあ、我々と共に…」一番怪しそうな男が言った。 「権力の走狗になって、甘い汁のおこぼれにあずかろうぞ!」 まさか…と彼は言いかけて、ふと気付く。 結局、動物シリーズしかないのか? 「何か」にならなきゃダメか? …彼は今、いまいち気が進まないながらも、一生懸命権力の走狗をやっている。 ※無難すぎてなんもないネタだー(涙) 次のお題は:「紅花」「黄金」「青空」でお願いします。
155 :
「狼」「虎」「狗」 :02/08/23 02:03
日が暮れかかっていた。私は兄とはぐれて、祭のにぎわいからはなれた鳥居の元に立って、 ただ何をするでもなく途方にくれていた。にぎりしめてきた虎の子の五百円札も、ひとりでは むなしいばかり。 少年が藍の色もまだ新しい絣の着流しに、天狗の履くようなホオ歯の高下駄をカランコロン 言わせてやってきた。私は、あてどもない視線のままに、この見たこともない少年を見つめていた。 少年は私の目を見てほほえみ、彼の今来た方を指して言った。 「さあ、わたしといっしょに行きましょう」 私は、彼の差し出した手をとらなかった。 「あの山は夜になると、狼が出るのです。言ってはいけないと母が言っています」 すると、少年は出した手をすっと戻して、言った。 「そうですか.ではわたしはひとりで行きます」 そして私に背を向けて歩き出そうとした。 「……待って」 どこかで兄の声が聞こえたような気がしたのをかき消して、私は少年の後を追った。 お題は前の人ので。
156 :
「紅花」「黄金」「青空」 :02/08/23 04:50
僕のうちは貧乏だった。だから、プレゼントできるものが、 庭に植わった紅の花しかなかったんだ。 高校最後の日、僕はK子を校舎の裏に呼び出した。 「ずっと前から好きでした。必ず幸せにします。僕と付き合ってください」 そういって彼女の手に紅の花を押し付けた。 「イタッ」紅花の刺が彼女の手のひらを傷つけた。「もう、なんなのよ!」 怒って彼女は去っていった。それっきり、二度とあってない。 高校を卒業して半年ほどたってから、お袋が死んだ。天涯孤独になった。 来るものとて寂しい葬式を済ませた後、ベランダでタバコをすっていた時だ。 夜空から家に向かって何かが近づいてくる。グングン大きくなる。なんだありゃ・・・ ガシャーン。隕石がうちを直撃した。 隕石は黄金の塊だった。僕は一夜にして億万長者になった。 仕事をやめて、都心の高級マンションに移り住んだ。毎晩女を買った。 少しでもK子に似ている娼婦を探し続けた。虚しく3年が流れた。 3年してから、南の島を買った。そこでリゾートを経営して、余生を過ごす ことにしたんだ。その後、あっという間に僕の人生は過ぎ去っていった。 今日60歳になった。とてもいい天気だ。僕はいま、さざなみが打ち寄せる海岸で、 ロッキングチェアに腰掛けている。そして目の前に、一糸まとわぬK子が立っている。 最後にあったその日の姿のままで。 後生大事にもっていた紅花についていたK子の血痕から、クローンを作ったんだ。 僕は赤子のように無垢に微笑んでいるK子を力いっぱい抱きしめた。体温が伝わってきた。 青空がとてもまぶしい。 超初心者です。次のお題は「浴衣」「浮遊」「亡者」で。
157 :
「紅花」「黄金」「青空」 :02/08/23 06:29
早朝の公園を、春菜はクロロをつれて歩いていた。 クロロは春菜の友達が飼っている雑種の中型犬で、体の8割が黒で所々に人工的に染めら れたかの様な紅花色の斑がある。散歩が大好きなクロロは耳をピンと立てしきりに尻尾を ふっている。昨日の雨がつくった水溜りに、じゃれつきながらきたせいで、足は既に泥だ らけになっていた。 昨日、春菜は久しぶりに、短大からの友人たち二人と再会した。その友人のうち一人が 結婚することになり、そのお祝いのために集まったのだ。そして、場所を替えながらビー ルや焼酎、日本酒にウイスキーと、とりあえずアルコールを浴びるほど飲んだ。酒に強い 春菜はフラフラになった友人を家まで送りそのまま友人の家に泊まった。 そして今朝春菜は、二日酔いで起きられない友人の替わりにクロロを散歩に連れ出して いるのだ。さすがに春菜も、昨夜の黄金色の液体を思い出すと少し気持ち悪くはなったが、 この早朝の散歩で少し残っていたアルコールも完全に抜けていくような気がした。 友人に先を越されたことや、自分にはまったく当てがないことを考えると春菜の気分は ひどく落ち込んでいったが、 「私の気分は、この青空よりブルーだ……」と一言つぶやくと、クスクス笑い出した。 かぶってしまったので、お題は「浴衣」「浮遊」「亡者」です。
158 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/23 16:19
「浴衣」「浮遊」「亡者」 夏祭りの会場に現れた彼女は浴衣がバッチリ決まっていた。 「この浴衣、どう?」 「う、うん。すごくよく似合ってるよ」 「うふっ、ありがと。それじゃあさっそく踊りましょうか」 火の玉が浮遊して会場を照らすその下で、僕たちは夜が明けるまで盆踊りを踊りつづけた。 糸冬 「なんだよこのホラー映画、恐くもなんともねーじゃねーか!!誰だよ、『亡者の盆踊り』なんてふざけたタイトルのビデオ借りてきたやつは!!」
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次は「下町」「黄昏」「立秋」です。
「下町」「黄昏」「立秋」 ある日の黄昏時、私は下町に赴いていた。 なんで急に下町に行きたくなったのかは判らない。気が付いたら、そこにいたのだ。 夕日が辺りを優しく照らす中、なんでで此処にいるのだろう、と考えていた。 だが、理由は見つからない。 ここが私の育った町だからだろうか。 もう故郷は捨てたと思っていたのに、やっぱり懐かしいのだろうか。 夕日は答えるはずもなく、ただ輝いていた。 ・・・・私は、もう永くない。 もう、私の一番好きな季節、秋は私にはやってこない。 せめて、立秋までは、此処に留まっていたかった。 頬を涙が伝った。 次は、「新聞」「花」「携帯電話」です。
「新聞」「花」「携帯電話」 --- 1901年1月1日東都新聞、20世紀未来予測。 犬猫と会話を通じ、より便利にその物らを使ふべし。 空を飛ぶ船あり、航路各地を覆ふ。 携帯さるる電話あり、モウルス信号、学校にて教育され、皆使うことあると思わるる。 携帯電話。もしそのようなものがあれば。 蝶子は元旦に配達された新聞を、インクで花柄の振袖が汚れるのも構わず掻き抱いた。 つん、と漂うインクの匂いに、蝶子は慌てて新聞を突き放した。 振袖にインク写りはしておらず、彼女はほっと溜め息を付いた。そして、居間にいる彼女の祖父へと新聞を運んでいった。 居間では羽織袴の一人の老人が、彼女を満面の笑みで迎えていた。 「お爺さま、新聞をお持ちしました」 「何か、面白いことでも書いてあったのかい?」 会津藩の江戸詰めであった老人は、維新の戦いで両親を失った蝶子に優しく問い掛けた。 「ええ。これから100年の予測なのですが、携帯電話ですって」 老人は少し顔を曇らせた。 「携帯電話か。もしそのようなものがあれば、お前の父の靱負も死なさずに済んだのだが……」 老人の言葉に、蝶子は少し自らを悔いた。 --- うーん。次は「中華」「紐」「ナイロン」で。
俺は新聞記者をやっている。新聞記者というのは、つまり小説家と同じだ。 読者が喜びそうなネタを適当にでっち上げて記事を書く。嘘でもなんでもいい。 自分の書いた嘘が、販売店やキオスクからどんどん街に溢れ出していくのは面白いよ。 でも、賢い人間は新聞なんか信じちゃいけない。 俺だって、時々嘘に嫌気がさすときがある。そんなとき、俺は花になる。 最近気に入っているのは、歌舞伎町のボッタクリバーの玄関を飾る花になること。 バカな連中が今日もどんどん店の中に消えていく。 今手元にもっている携帯電話。ここから「花世界チャンネル」に電話をかければ、 俺は花に生まれ変わって、いつもの植え込みに転送される。 ちなみにこれは、auの販売店で売っているから店員に聞いてみるといい。 さて、今日もいっぱい嘘を書いた。そろそろ、花になろうか・・・ 二回目の投稿です。次のお題は「予言」「重力」「思い出」
かぶった。前の人お題で。
「中華」「紐」「ナイロン」 僕はいまから調理をするところ。 それは新鮮な食材が手に入ったからだ。しかも珍しい食材が。 今日は友人達を誘ってパーティだ。 僕はそれの皮を剥ぎ、麻紐でしっかり結ぶ。 せっかくの形が崩れたら台無しだ。 それを、型崩れが無い様に丁寧に蒸し器に入れた。 そして、香味野菜を少々。 中華まんを思わせる匂いがした。同時に、嗅いだ事の無い芳香も。 そして、それは蒸しあがった。 皿にのせ、彩りの野菜を少し添えて、盛り付ける。 そして、テーブルに持っていく。 まだ友人達は来ていない。僕はわくわくしながら待った。 これを友人達が見たら喜ぶだろうな。 人間の子供の蒸し焼き。切り忘れた緑色のナイロンの服が、一層色を引き立てる。 これを見て何人の友人が嘔吐し、失神したかは、また別の話。 一言 私は異常者じゃありません(笑)ちょっとホラー風味で・・ 次は、「雨」「銀」「百合」です。
166 :
「雨」「銀」「百合」 :02/08/23 22:15
吸血鬼と呼ばれた男は、何時間も彼の喉笛を狙っていた。 女は、暗闇の中でじっと待っていた。 「…も、もう夜は明けたはずね!」 さっとカーテンを引く。これをずっと待っていたのだ。 しかし…「あ、ああ!」 空は生憎と雨模様、太陽は彼女の危機を救ってはくれなかった。 「かくなる上は…この、銀の十字架で!」彼は一向にひるまない。 「じゃあ、このニンニクを!」これも効果なし。 「ニンニクも、銀の十字架も効かないなんて…貴方は本当に吸血鬼?」 「違うな、俺はニセモノの吸血鬼だ」と男は笑う。 「そうかあ」と女も弱々しく笑う。 実はあの十字架は銀じゃなかった。百円ショップの銀メッキだった。 ニンニクだってニセモノだった。実は百合の根だったのだ。 「俺は吸血鬼なんかじゃない。血は吸わないが…」 結局、ニセモノでも結末は似た様なものだった。少なくとも彼女には。 ※前スレさんをちょっとひいてしまった^^; 次のお題は:163さんの「予言」「重力」「思い出」でお願いします。
167 :
雨 銀 百合 :02/08/23 22:45
夫が入院した。 検査の結果、過労と軽い胃潰瘍と診断されたのだが、私が大事をとって無理に 入院させた。 夫の身体を心配したというよりは、普段仕事で殆ど家にいない彼を拘束 したいというのが、正直な気持ちだった。 毎日、私は病院に通った。 奇妙な話だが、私は満ち足りていた。 家にいて、いつ帰るか知れない夫を待つよりも、清潔で静かな病院の個室に 閉じ込められている彼に会いに行く方が、安心できたのだ。 細い雨が降る、入院4日目の朝。 病室のドアを開けると、突然強い香りが鼻腔を刺激した。 それはいつもの消毒薬の匂いとは全く違うものだった。 夫のベッドのサイドテーブルに、見事な百合の花束が生けられていたのだ。 私の心は、この匂いにひどく掻き乱された。 ベッドに夫はいない。 窓から外を見下ろすと、髪の長い女が病院の入り口から出てきたところだった。 それを見送っているのは、夫だった。 昨日私が洗濯をして持って来た青のストライプのパジャマを着て、その女に手を 振っている。 女はそれに微笑んで、傘を広げ、雨の中去って行く。 サイドテーブルに駆け寄り、百合の花を掴みあげる。 そうすると、より一層、強い匂いがする。 この花を捨てなければ。 病室を飛び出し、入院患者とナースが行き交う廊下を走り抜け、共用のダスト ボックスがある手洗い場へと向かう。 そこに花束を投げ捨てようとした時。 「いたっ・・・」 小さく叫んで、百合を床にぶちまけてしまう。 最初は針が入っていたのだと思った。 あの髪の長い女が、銀の針を百合の花束に仕込んだのだと。 でも、それは違った。 散らばった花びらの中から、ぶぶぶぶぶというか細い音がして、よく眼を 凝らすと、一匹の蜂が百合の緑の葉の中で踊っていた。 その蜂は、どうやら半死半生のようだった。 私は蜂を踏みにじり、それから百合と一緒にダストボックスへと投げた。 私は指された人差し指をじっと見つめた。 そこは熱を持ち、やがて赤く腫れるだろう。 病室へ戻ると、夫がベッドの中に入っていた。 まだ匂いは残っている。 サイドテーブルにあった百合の花が消えたというのに、夫は何も言わなかった。 窓の外は、まだ雨が降っていた。 次のお題。 パイン 香水 ピアス でお願いします。
あ、すいません。 お題は166さんのでお願いします。
「予言」「重力」「思い出」 学校の帰り道。俺はいつものように、頭を悩ませていた。 友人関係。勉強。親。 その重力に、俺は耐えられなかった。 ろくな思い出もない。 次から次へと悩みの種が浮かんでくる。よくもまぁ、こんなに浮かぶもんだ。 自分でも感心してしまう。 「お困りですか?」 目の前に、突然何者かが現れた。全身が黒いローブに包まれている。もちろん顔は認識できない。 「うわっ!何だよ急に!」 「お困りかと聞いているのです」 「・・・・まぁ、ちょっとは・・・」 黒いローブを着た、怪しい人間。いや、人間かどうかも判らない。 今となっては何であの時逃げなかったのか不思議だ。 「・・じゃあ、これを差し上げます」 それは、真っ黒な石ころだった。 「なんだ、こんな石ころ。」 「予言石、とでも申しておきますか。明日の出来事がわかります」 「よく判んないけど、もらっておいて損は無いか」 その真っ黒な石を、俺は受け取った。別に自分に損はないし、単に面白そうだな、 という気持ちからだった。 その日、 「これって・・・予言石っていってもどうやって使うんだよ。石が喋るとでもいうのか?」 とりあえず、枕もとにおいて寝ることにした。すると、その晩夢を見た。 教室で喧嘩騒ぎになる風景。続いて、テストの問題用紙が見えた。 そして俺は目が覚めた。あれが・・・予言?まさか・・ しかし、次の日。 本当にクラスで大喧嘩が起こった。しかも、夢の中と同じ人物が。 そして、テストも、昨日の夢とまったく同じ問題だった。 「やりぃ!なんてすばらしいものをもらったんだ!」 俺は狂喜乱舞した。これで、テストの問題はわかり放題! なんて得をしたんだ!!やった! ・・・・しかし、それもつかの間。 予言石、それは明日のことを予言する石。 つまり、何があっても結局その「予言通り」になってしまうのだ。 明日のことがわかっても、結局変える事は出来ない。 俺は、明日死ぬ運命にある。 それが判っていても、防ぐ手立ては無いのだ。 次は、「祭り」「勉強」「ナイフ」です。
↑長くなってすいません;
171 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/24 00:14
「祭り」「勉強」「ナイフ」 十数年ぶりに帰った故郷で、僕は夏祭りの神社を訪れた。 さして広くもない境内に所狭しと並んだ露店。夕闇が迫るなか灯された電灯がどことなく寂しい。 子供ばかりが目に付いて、大人の客は数えるほどしか見当たらない中、僕は露天を一通り冷やかすと本 殿の横を抜けて裏庭にでた。 昔はよく此処で遊んだものだった。仲間も多かった。けれど…… 中学に入るころには、僕は彼らと遊ばなくなっていた。勉強をほかの何よりも優先し、一流の学校への 進学を目指した。結局、高校進学を機にこの町を出てから彼らとはすっかり疎縁になった。 首尾よく一流大学から一流企業への道を進んだものの、会社は倒産。茫然自失の僕は為す所なく故郷へ と逃げ戻った。しばらく、考える時間が欲しかったのだ。 思い出の中でたゆたっていると、太陽は向こうの山に隠れてしまっていた。藍色に染まる世界の中で 山の稜線だけがオレンジ色に縁どられている。もうそろそろ帰ろうと腰をあげ、帰り道でまた露天を冷や かしていると、ある雑貨屋の隅に置いてあるものが僕の目を引いた。ナイフの他にスプーンや栓抜きなど いろいろな機能がついた折りたたみナイフ。昔は十得ナイフと言ったはず。 昔はあれが欲しかった。ナイフなんて危険なものを持ち歩いてはいけないと親に禁止されていたのにも 関わらず、金物屋で買った、今目の前にあるものとは比べ物にならない安物を常にポケットに入れていた。 十得ナイフをクダラナイとか言い始めたのはいつだったのだろう。捨ててはいけないものを捨ててしま った。寂寥感が胸を占め、僕はきびすを返して速足で家へと向かった。 次は「イルカ」「石碑」「ラムネ」で
「祭り」「勉強」「ナイフ」 遠くからなにか懐かしい拍子が聞こえてくる。・・・・・・祭囃子だ。背中が 焼けるように痛い。多分砲弾片を浴びたのだろう。 「・・・・・・!・・・・・・!!」 自分の下で兵隊が何かを叫んでいる。しかしその声は私には聞き取ることが 出来なかった。兵隊はしきりに口をパクパクさせている。私はその仕草に庭の 池の鯉の事を思い出していた。 祭囃子が次第にその音量を増していく。 笛や太鼓の音、人々の笑い声。そういえば私はいつも勉強勉強で祭りに 行ったことがなかった。家の為、村の為。私は昼夜を問わずに勉学に勤しんだ。 そして私はそれに疑問を持ったことはなかった。・・・・・・でも、こんなことになる のであれば一度ぐらいは村の祭りを見ておきたかったな。 「少尉殿!少尉殿!!」 「もうよせ、無駄だ。予備陣地まで離脱するぞ!!」 敵戦車はもう壕の目前まで迫ってきている。男は、そして死に逝く小隊長に必死に 呼びかけ続ける男の肩をつかんだ。あちらこちらから悲鳴が聞こえる。機銃、迫撃砲、 戦車砲。ありとあらゆる災厄がこの壕で震える男たちへと迫りつつあった。 「遺品を、せめて少尉の遺品を。」 男はそして少尉の胸ポケットから一本のナイフ・・・肥後の守と手帳を取り出すと それをすばやく自分のポケットに押し込んだ。 「行くぞ!!」 そう言って壕を先に飛び出した男は炸裂した戦車榴弾の破片を浴び、その場に押し 倒された。そして無数の機銃弾。血、脳漿、骨。それまで男を構成していたあらゆる ものが大地にぶちまかれる。一人残された男はその光景を見、横たわる戦友の遺体を 越えながらただ壕の奥へと走った。少尉の遺品だけは、命に代えてもご家族に。それ は砲弾から自分をかばって死んでいった上官へのせめてもの感謝の気持ちであった。 25行。長すぎるわ! 次のお題は「晩夏」「風鈴」「日記帳」でお願いします。
うっ、また出遅れた。 お題は171氏の「イルカ」「石碑」「ラムネ」で 。
174 :
「イルカ」「石碑」「ラムネ」 :02/08/24 00:43
「坂田先生、これついでにもっていきましょうか?」 職員室の窓から外を眺めて坂田が振り返ると、同僚の女教師が坂田の机の上にあったラムネのビンを指差していた。 「登校日の時にまとめてリサイクルのゴミを出したいって用務員さんいってましたよ」 その言葉に坂田は苦笑しながら首を振る。 「ああそれは、うちのクラスの米山のおみやげなんですよ」 「直子ちゃんですね」 坂田のうけもつ2年生の米山直子の名前を女教師は覚えていた。 「おばあちゃんちにいった時に飲んだののお土産だそうです」 なつかしい形のガラスのラムネ瓶に眩しそうに目を細める。 「母親の田舎らしいんですが、イルカとか来るらしくて」 「いいところなんでしょうね」 坂田の視線が促すように窓の外に流れたので、女教師もゆっくりと歩いて窓の外を見た。 視線の先には、校門の脇には開校記念の石碑があった。 その側に少女が立ち、母親らしい女性が写真をとっていた。 「先程、挨拶にいらっしゃいましてね」 坂田達の視線に気がついたのか、少女が大きく手を振る。 「離婚するそうなので、転校するそうです」 坂田はそういうと、右手をあげ、大きく手を振り返した。 172さんのお題でどうぞ
175 :
174:「イルカ」「石碑」「ラムネ」 :02/08/24 00:55
誤字脱字をみつけたので細部直して再UPすいません :「イルカ」「石碑」「ラムネ」 「坂田先生、これついでにもっていきましょうか?」 職員室の窓から外を眺めていた坂田が振り返ると、 同僚の女教師は彼の机の上にあったラムネのビンを指差していた。 「登校日の時にまとめてリサイクルのゴミを出したいって用務員さんいってましたよ」 その言葉に坂田は苦笑しながら首を振る。 「ああそれは、うちのクラスの米山のおみやげなんですよ」 「直子ちゃんですね」 坂田のうけもつ2年生の米山直子の名前を彼女は覚えていた。 「おばあちゃんちにいった時に飲んだののお土産だそうです」 なつかしい形のガラスのラムネ瓶を眩しそうに目を細めて見つめた。 「母親の田舎らしいんですが、イルカとか来るらしくて」 「いいところなんでしょうね」 坂田の視線が促すように窓の外に流れたので、何かと思い 彼女はゆっくりと窓に近づきその先を見た。 窓からは開けた校庭が見渡せ、坂田の視線の先の校門の側に二つの人影があった。 校門脇の開校記念の石碑を背にして少女が立ち、母親らしい女性が写真をとっていた。 「先程、挨拶にいらっしゃいましてね」 坂田達の視線に気がついたのか、少女が大きく手を振る。 「離婚するそうなので、転校するそうです」 坂田はそうつぶやくと、右手をあげ、大きく手を振り返した。 172さんのお題でどうぞ
176 :
「イルカ」「石碑」「ラムネ」 :02/08/24 01:01
イルカと石碑とラムネ…一見して、ツクツクボウシが鳴く晩夏の 水族館とか墓参り、浴衣姿の妹の供養、あたりの情景が浮かんでくる。 これだけは避けてみたい。 いっそ殺人事件はどうだろう。ラムネの瓶を模した部屋で、地下室に 溜まった炭酸水でイルカが暴れてガス噴出…なんか複雑すぎ。 映画「イルカの日」をいただいてはどうだろう、イルカの「ファー」 のお墓の石碑に…いかん、マイナーすぎる。 石碑といえば誰かが死んだか、橋やなんかの業績…ああ、時間が。 人類最後の石碑と、イルカに乗った人魚族の少年。 あとラムネ…人間文明の象徴か? 「人間世界から長く離れていた「イルカに乗った人魚族の少年」 海岸に流れ着いたラムネの瓶を見て、急に人間社会が懐かしくなる。 誰もいない海岸に、人類最後の石碑と、無人の浜茶屋。 そこで彼は気付くのだ、自分はラムネの開け方を知らない事を」 …なんかありきたりだなあ。まあいいかー、時間ないし遅れるし ※あまりといえば浮かばないため、リアルタイムに書いてみました(笑) 次のお題は:「薬」「運転手」「脱皮」でお願いします。
ごめんなさい。 次のお題は172さんの「晩夏」「風鈴」「日記帳」でお願いします。
178 :
「晩夏」「風鈴」「日記帳」 :02/08/24 02:11
晩夏の夕焼け。僕は犬を散歩させていた。バス停を通りかかったとき、偶然バスが止まって、 バカンススタイルの見覚えのある男女が降りてきた。 「あれ、有紀ちゃん? あっ、ケンジ! えっ、二人でなにしてんの?」僕は叫んだ。 有紀はギョッとして、すぐ顔をそらした。 「いや、駅で偶然乗り合わせただけだよ」といったケンジの目は、からかうように笑っていた。 ふたりは高校のクラスメート。有紀ちゃんは僕の初恋の人で、ケンジはサッカー部のエース。 そりゃふたりがただの関係じゃないことは知ってたさ。でも、一緒に旅行するなんて・・・ うちに帰ってからも、頭からふたりのことが離れなかった。 ベッドに横たわって、何度もふたりの様子をフラッシュバックさせる。 そのうち日が落ちてきて、僕の部屋はうす暗がりに包まれた。涙でぼやけた風鈴の、単調な音。 いつしか僕は眠りに落ちた。 気がつくと、僕は重々しい書斎にいた。机に向かって、白いローブをまとった サンタクロースのような老人が書き物をしている。状況がつかめない。 「すみません」と老人に声をかけた。「はい?」 「ここはどこですか」「わしの書斎」 「で、あなたは」「神ですが、なにか?」「・・・えっ!?」 老人が言うには、僕は彼(神様)の部屋に紛れ込んだらしい。で、神様が書いていたのはこの夏の日記。 全世界のあらゆる出来事を記録した日記らしい。・・・あらゆる出来事だって? 「・・・神様、日記を読ませてください」「やだよ。恥ずかしいもの」 「そんなこといわないで・・・どうしても知りたいことがあるんです」「なに?」 「クラスメートの行動が・・・」「いやらしいヤシだな。ダメ」「お願い・・・」 神様は僕の目を見据えた。「知れば不幸になるかもしれんぞ?」 僕はうなづいた。 「なんだって、本条有紀?ふーん・・・あ、これか。ひょーイイオンナじゃのぉ。 はあ、これはこれは。おお、水着が食い込んj。スゲ−いいケツ。健康的だねー」 「あの、ちょっと水着って、どういうことなんですか!?」「ふんふん、それはのぉ・・・」 なんだか、神様の声が遠のいてきた。ヤな予感。えっ、チョット待ってよ。。。。 ・・・目が覚めた。頭がガンガンする。時計を見ると、11時を回っていた。 「なんだ、夢か・・・」 開け放した窓のそばで、相も変わらず風鈴がなっていた。 :長くなってスマソ。次のお題は、「日常」「水平線」「トラック」でお願いします。
179 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/24 03:16
おまいら、長すぎないか? 書けばいいってもんじゃないだろ!
180 :
日常、水平線、トラック。 :02/08/24 05:54
どこまでもどこまでも、日本中を駆け回る。 背に重い荷物を積んで、ただずっと、足をすり減らしながら走っている。 それが日常だった。定住する場所もなく、血管の中を走る血液のように流れゆく日々だ。 海岸の向こうに朝日が見える。水平線に半分に割られた太陽が、少しずつ地上に陽を投げかける。今日も朝早くから走り出した。目的地に急ぐためか、昨日はほとんど寝てないのではないだろうか? 海岸線に沿い緩やかなカーブが見えてきた。僅かな加重の移動が右足にかかる。そのときだった。 眠ってしまっている。そう直感した瞬間には、すでに俺の身体は中央線から抜け出ていた。目の前に迫る真っ白なガードレール、彼方に見える海。主人はいまだに目覚めない。 三つ目のお題を全体で表したつもりなんですが、反則なら罵倒して下さい。つぎはカーテン、朝、通勤で。
181 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/24 06:46
「日常」「水平線」「トラック」 夢を見た。夢の中で、僕はだだっ広い海に浮かんでいた。 その海には何もなく、目に見えるものは、波と僕の周りに円を描く水平線だけだった。 何かないかと思い、あてもなく泳いでみたが、何も見つからなかった。景色が変わらない せいか、最初にいた場所とまったく同じ場所にいるように思えた。 僕は陸上部に所属していて、長距離を走っている。長距離ではトラックを何周も走らな ければならないから、ずっと同じ場所を走っていることになる。 けれど、この海を泳ぐこととは全然違った。 夢の中の僕は不思議と楽天的で、冷静に考えると、そのときに置かれていた状況は漂 流ということになるのだが、ただ海水浴に来たような感覚で楽しんでいた。それなのに、 同じ風景の中を泳いでいるうちに、突然、恐怖のような不安のような、それでいてこれまで に感じたことのなかった感情に捉えられて、身体を動かすことができなくなった。 動けなくなった僕は沈むことなく、ただただ海に浮かんでいた。 そして目が覚めて、僕はまたいつもと同じ日常に戻っていった。 先を越されてしまいましたが。次は「カーテン」「朝」「通勤」ですね。
182 :
トラック、日常、水平線 :02/08/24 07:19
十歳のちひろにとって、たつきの存在は日常そのものだった。だから、それが失われる日が来たことを彼女はなかなか受け容れることはできなかった。 ちひろとたつきは同い年。ともに生まれたときから兄妹のように過ごしてきた幼なじみだ。 だが、あと半月ほどでたつきは両親の仕事の都合で、引っ越してしまうという。そう、ちひろの知らない遠い遠いところへ。 「たっちゃんのウソつき! ずっと友達でいるって約束したのに!」 転校することをたつきの口から聞かされたとき、ちひろは激高した。 そして、それに慌てたたつきが何か言う前に、思い切り彼の頭を殴った。はずみでたつきの分厚い眼鏡が地面に落ちたが、ちひろはおかまいなしだった。 「バカバカバカバカ!!」 「ちーちゃん、痛いってば」 「たっちゃんなんて、蜂に刺されて死んじゃえ!」 ちひろは泣き始めていた。男勝りのちひろは転んでも、犬に吠えられても、決して泣いたりしない。 それが今、滝のようにじゃんじゃん泣きじゃくっている。たつきはしばらくなんと声をかけていいのかわからわかったが、眼鏡を拾いかけなおすと少し落ち着いて、ちひろにこう言った。 「ちーちゃん、転校するからって、友達じゃなくなるわけじゃないよ」 「ウソ! そんなのウソ!」 「ホントだよ! ゼッタイホント! 約束するから!」 その勢いに息を飲むように、ちひろはぴたりと泣くのを止めた。 「…ホント?」 ちひろは必死にたつきを見つめた。たつきは「うん、ずっと友達だよ」と笑った。 「約束するから。手紙書くよ、電話もする。僕の一番の友達はちーちゃんだ」 たつきはそう言って、小指を差し出した。ちひろはしばらく戸惑っていたが、「ゼッタイだからね!」と、そこに自分の小指を絡めた。 やがて引っ越しの日がやって来た。たつきの家からたくさんの段ボールがトラックに積まれていくのを、ちひろは寂しく見守った。 「では、お荷物のほうは以上で」 引っ越し屋が荷物を積み終えたらしく、たつきの父親になにやら書かせている。いよいよ別れの時だ。 ちひろの目に涙があふれてきた。今日は泣くまいと心に決めたはずだったが、やはり我慢できなかった。せめて泣いてるところを見られないように、ちひろは物陰に隠れた。 「ちーちゃん」 ふと気がつくと、たつきが後ろに立っていた。ちひろは泣き顔を見られないように、懸命にうつむいた。 「あのさ、ちーちゃん、言い忘れたんだけど、聞いてくれるかな?」 「…なに?」 「うん、こないだね、ずっと友達でいようっていったじゃない。あれ、ナシにしてほしいんだ」 「え?」 ちひろは驚いて、たつきの顔を仰ぎ見た。たつきはやさしい笑顔を浮かべている。 「だからさ、もし大人になって、ちーちゃんがもうちょっと女の子らしくなったら、僕のお嫁さんになってほしいんだ…」 しばらくちひろは何も言えなかった。しかし、たつきがその沈黙に耐えかねて何か言おうとした途端、再びちひろの拳骨が彼の頭に命中した。 「まあ、約束してあげてもいいけど!」 目に涙をたたえたまま、ちひろは微笑んだ。「じゃあ、忘れないでね」ちひろとたつきはもう一度指切りをした。 トラックが去って行った後も、ちひろはしばらくその方向を見つめていた。 西の水平線の夕焼け雲が、ちひろの視界の中で何度も歪んだ。今日のこの日をずっと忘れないでいようと、ちひろは思った。
183 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/24 07:22
↑次のお題は、「薔薇」「醤油」「憂鬱」で。
184 :
「薔薇」「醤油」「憂鬱」 :02/08/24 09:10
某テレビCM 1:どこか野暮ったい少年が、両腕いっぱいの薔薇を抱えて 尾道の坂道を歩いてゆく。 似合わないタキシードに、やや憂鬱。 2:寺の門の前で待つ彼女。 花束と彼の表情を見比べながら、ふとある匂いに気付いた表情。 3:(イメージ) 古い町並みの家で、黙々と醤油桶を洗う少年。 4:彼女「お醤油の匂いね」 少年「どうせ俺は醤油屋の倅だからなあ」とちょっと恥かしそう。 寄りかかる彼女と、足元に散らばる薔薇。 ナレーション 「貴方は薔薇よりも香ばしい。ゲッコーマン醤油」 ※テレビでは香りは伝わらない… 次のお題は:「虫歯」「ロケット」「資格」でお願いします。
しまったです。180さんがすでにお題を出してることに気付かなかったです。 184さんには申し訳ないけど、次のお題は「通勤」「朝」「カーテン」で。 どうもすみません(^^;)
さすがに184さんに悪いので、「資格」「ロケット」「虫歯」で。 「全く、くだらない世の中だね。バカみたいに戦争しまくってる国もありゃ、バカみたいにガキ作るしか能の無い連中もいる。 俺はね、生きる資格のない奴はロケットにでもくくりつけてぶっ飛ばしたほうがいいと思うよ。 いわゆる大衆って奴はその存在意義として愚直さを必要とするもんだけど、それにしたって増えすぎなんだよ。 わかるかい? 俺みたいに冴えた人間一人に対する、量産型の愚民の割合、最近増えてんじゃないかってね。 そりゃ、啓蒙だって出来ないことはないよ。でもさ、それにしたって、効率の悪い世の中になっちまってるんだ。 ごらんよ、まわりを。バカほど口数が多い、そして口数が多いバカほど重宝がられる世の中だ。 俺の言ってることが理解できない? まあ、最後まで聞けよ。 例えば、テレビという愚かな箱からはなんの思慮もない情報が四六時中垂れ流し。新聞もそうだ。ラジオもそうだ。 だいたい、文字なんて覚えちゃいけない、言葉なんて語っちゃいけない。 無知蒙昧のストレイシープは迷えるがままに、その量だけはご立派な情報の海で、偉大なモーゼになったような幻想を抱くんだ。 全く、わかってないね。本当に海を割れるモーゼは俺くらいなもんなのにさ。 まあ、だからさ、要するに言いたいわけよ。俺に何も語るなって。 お前達がどんな言葉をつむいでも、クソにしかならねえ。つまるところ、お前達はクソったれなんだ。 わかったろ、な? 俺に説教こくんじゃねえ、触るんじゃねえよ。 インチキくせえ文明の威を借りて俺に苦痛を与えるなんて、全く分不相応なんだよ! あ? 聞こえてンのか! 言ってんだろォ! いいから俺を放しやがれ、このヤブ医者!」 「…ぼうや、そんなにいやなのかね? 虫歯一本抜くだけなんだかねえ」
187 :
「通勤」「朝」「カーテン」 :02/08/24 15:45
なんか…気を遣わせちゃって悪いので。 昨日の園遊会は、盛況だった。メイド達は朝から後片付けに大忙しだ。 彼女は通勤を始めたばかりの新入り。姉の様に頼るエレーンは、なぜかお休みだ。 「エレーンはね、昨日、お坊ちゃまにランチを持っていったのよ」と先輩は言った。 「それが?」 「あの娘はね、ランチを持っていって…自分が、デザートにされちゃったの!」 「食卓のテーブルクロスの上でね」と他の先輩が割り込む 厨房が一時に沸きかえる「素敵!」「お赤飯ね」 「そんな…」その言葉が何を意味するか、さすがの彼女にも理解できた。 思慮深く読書家で美貌のエレーンは、子供の頃からの憧れだった。 昨日食器を下げに入った時、カーテンの向こうから漏れ聞こえたあの嬌声…まさか! 住み込みメイドの小さな部屋で、エレーンは一人書きものをしていた。 後輩をいかに騙して驚かせるか…「新人おちょくり仕様書」を。 あの坊ちゃんが?まさか、彼の恋人は「経理台帳」に違いないわ。 彼女は自分で噴出す。声優もどきの拙い演技も、皆の役に立ったわけだ。 たとえ大多数が芝居と知っていても。たった一人でも「客」で退屈が紛れる。 単調なメイドの生活、この位なくてはやっていけない。後輩には悪いけど。 ※なんか単調な話だけど…書いてて赤面! 次のお題は:167さんの「パイン」「香水」「ピアス」でお願いしまふ。
188 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/24 19:25
「パイン」「香水」「ピアス」 1パイントのビール。それが俺の動力源だ。間違いなくそれで俺は動いてる。 今日もバーで呑んでいるとお揃いのシャツを着た一団が入ってきた。がやが やとさわがしい。一体玉蹴りなどどこが面白いのか、呑むなら呑むで味わって 呑みやがれ。 目の前にピーナッツの小皿がポンと出された。顔を上げるとオヤジは横を向 いて視線を合わせない。黙って俺の愚痴を聞いていたようだ。俺は下を向いて ぶつぶつとひとりごちていく。 俺はバスのルートを間違えたことはないし、時間はきっちり間に合わせる。 乱暴な運転で客を酔わせたこともほとんどない。実際、会社も俺を指導的なポ ジションに着かせた。今の若いのはだらしない。香水を使いすぎて客からクレ ームをもらったり、団体客の女の子にちょっかい出して電話がひっきりなしに かかってくるだの、男のくせにピアスの数が自慢だの……そんな奴ばかりだ。 だのに会社は、そんな奴らより俺の方が問題なんだそうだ。出がけに一杯引 っかけるのが何故悪い? このクソ暑いのに、そうでもしないと仕事に気が入 らねぇ。 オイ、オヤジ。おかわりだ。大丈夫。今日は客は乗せてねぇ。 次のお題は「龍」「蛇」「鰐」で。
「龍」「蛇」「鰐」 俺は今、ペットがいる。それはとても小さな龍だ。 どうやって龍を手に入れたかって?それは秘密だ。 でも、1つヒントを出そう。ジャングル地帯で、鰐とか危険な植物がうじゃうじゃしてる所だ。 まぁ、そんなことはどうでもいい。見つかるはずもないしな。 龍は、どんどん大きくなった。そして、賢くなった。 調教もしてある。俺の言うことなら何でも聞くように。 そして、ついに俺の野望を遂行する時がきた。 俺や俺の仲間を散々こけにしてきた奴への見せしめだ。 俺が龍に一声掛けると、龍は暴れまわり、瞬く間にあたりは焼け野原になっていった。 たくさんの人間の叫び声も聞こえる。いい気味だ。 龍は火を噴き、地面を唸らせ、空を揺らし続けた。 人類が滅びるのは、時間の問題だった。 そして、ついにその時がきた。 たくさんの目障りな建物、うるさい悲鳴が消え、ノイズも消えた。 動物達は喜び、俺を讃えた。 これからのこの世界は、俺たち蛇が中心となって動かすのだ。 次のお題は「雲」「妖精」「リモコン」です。
「雲」「妖精」「リモコン」 「でね、これがそのリモコンってわけよ」 妖精は、そう言って得意げに笑った。 「はぁ・・・・・・」 突然僕の目の前に現れた・・・・・・いや、彼女自身は僕が彼女を呼び出したのだと 主張している・・・・・・妖精は僕の生返事がよほど気にくわないらしく目を吊り上げて 怒った。もくもくとカミナリ雲まで現れる。突然の雷雨に机の上が水浸しだ。 「私がどんな思いをしてこのリモコンを手に入れたかわかってるの? 」 さて、どんな思いだったのだろう。僕は机の上を拭きながら思った。『昨日残業中に 20世紀のTV用のリモコンを抱えた妖精を見ました。』今は22世紀だ。TVなど もう過去の遺物だ。そんなばかげた話を誰が信じると言うのだろう。 「お願いだからありがとうって言って。そうすれば私はお家に帰れるんだから。 もうかれこれ100年よ。100年も家に帰ってないのよ」 「はぁ!? 」 こんなリモコンを手に入れるのに100年もかかったのか、この妖精は。呆れ ながら僕はひとつの可能性に気づいた。 「なぁ、お前。依頼人の名前って覚えてるか? 」 「雄一郎さん、でしょ」 妖精は泣きながらそう呟くように言った。あぁ、なんとも。雄一郎は骨董屋を していた祖父の名前だった。 20行。ありがちな話ですがまぁ。 お題は継続・「雲」「妖精」「リモコン」でお願いします。
191 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/24 23:43
「雲」「妖精」「リモコン」 「妖精のリモコン」というものを拾った。何に使うものなのかは 全く想像がつかない。ただ、ボタンが一つついているだけである。 そして、その裏側には妖精のリモコンと書かれている。 心が踊った。妖精のリモコンなんていう素敵な名前が付いている のだから、それはもう神秘的なことが起こすことができるのだろう。 ドラえもんの秘密道具の中に、こんなに素敵な名前を持つ道具はあ っただろうか。 ちょうど空に不思議な形をした雲があったから、とりあえずその 雲で試してみることにした。不思議な雲と、妖精のリモコン。これ 以上ない組み合わせじゃないか。その雲は妖精の世界と人間の世界 をつなぐ門のように思えた。 ボタンを押してみた。雲に変化は起こらなかった。その代わりに、 妖精のリモコンは何の変哲もないテレビのリモコンになってしまっ た。ボタンがたくさんあって裏には何も書かれていないリモコンだ。 僕にふさわしいのは、せいぜいその程度のものなんだろう。そう 気付くと悲しい気分になった。でも、不思議と妖精の世界に一歩近 づいたような気がした。 他の人の作品も見たいので、お題は継続で「雲」「妖精」「リモコン」 。
192 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/24 23:49
「雲」「妖精」「リモコン」 日曜日は、勉強をしないことに決めている。もっとも、決めたのはつい最近のことだが。 ある所でリラックスすることが、最近の僕には絶対に必要だからだ。 受験というものがここまで馬鹿らしいものだとは、自分が当事者になるまで気がつかなかった。 朝礼から就業までいつも成績と進路の話ばかりの教師。腫れ物に触るように接してくる割には受験の話 しかしない、無神経と神経質を同居させた両親。優勝劣敗が全てと説く塾講師。少しばかりの偏差値の上 下で一喜一憂する級友。勉強そのものは全く苦にならないのに、周囲の煩わしさに嫌気がさしていた。 そんななかで、僕はその場所を見つけた。といってもなんのことはない。近所の河原の河川敷だ。 風の妖精の息吹が頬をなでるのが心地よい。緑の絨毯は微風がつくる小さな波を幾重にも重ね、澄んだ 水の奏でるせせらぎが心を落ち着かせてくれる。護岸のコンクリートの板に寝そべると、果てしなく高く 青い空と、アクセサリのように散りばめられた小さな白い雲が目に飛び込んでくる。 心が安らぐ場所であることは言うまでもないけれど、携帯電話が場所によっては圏外になるように、こ こは僕を強制的にコントロールしようとする誰かが持つリモコンの電波が届かない場所らしい。 この場所を見つけられなければ、僕はどうなっていたのだろう。そんな他愛も無いことを考えているう ちに瞼が重たくなってきた。 「ああ、いい気持ちだ」 そんなことをつぶやいて睡魔に身を任せた。何かに抱かれるような安心感が、僕を包んでいた。 かぶったかな、と思いきや…… 次もお題を継続で
「雲」「妖精」「リモコン」 「ねぇ、お母さん。何で雲はお空に浮かんでいられるの?」 「目に見えない妖精さんたちのお家だからよ」 「ねぇ、お母さん。どうしてリモコンは離れててもチャンネルかえられるの?」 「目に見えない妖精さんがお仕事しているからよ」 「ねぇ、お母さん。子供ってどうやってうまれるの」 「お母さんとお父さんが愛し合って、目に見えない妖精さんたちが授けてくれたのよ」 「ねぇ、お母さん。何で電波師匠は普通はわからないことがわかるの?」 「目に見えない妖精さんが、目に見える特異体質だからよ」 #なんで継続なんだろ……ま、いいか。ホントは振って欲しいけど。 #次は「油」「リサイクル」「クチナシの実」で。
雲が切れ切れになると、月の光がもれる。掌に掬った水がもれるのと大体同じだ。 それは留まるべきのものでもないし、留まる必要もないものだ。 それはまた、ぼくが長いあいだここにいることがないのとよく似ている。 「あれだね、星を見ると言うのも案外つまらないもんだね」とぼくは言った。 「星は見れてないけどね」と彼女は空を見上げたまま言った。 「それにしても提案者は誰だったかしら?」 もし空を操るリモコンでもあれば、ぼくは確実にここで雲を晴らし、流れ星を流すだろう。 しかしそんなものはないし、空は相変わらずほとんど曇っている。 「それにしてもつまらない」とぼくは言い、曇っている空を恨めしく見た。 「曇り空もいいわよ、別に嫌いじゃないわ」 「急に曇るなんてなあ……」彼女はそれに対してなにも言わなかった。 「妖精でも降ってくりゃそれはそれでおもしろいな」 「それはそれで空しい空想だけどね」と彼女は言った。 とりあえず雲も晴れないし、妖精だって降ってこない。 曇ったままの空が上にあって、横に彼女がいるだけだ。 それは春の陽だまりの中にいるのと大体同じ感覚だ。 *16行……ちとミスった。ゴメソ *遅かった……
「油」「リサイクル」「クチナシの実」 学校のRTA主催のリサイクル運動をしている母子が2人。正確に言えば、清掃活動も含むが。 「やぁねぇ、こんな林にも空き缶やらなんやらゴミがいっぱいあるわ」 「このまんがとか、まだよめるよ」 「あら本当。こんな所に捨てないでほしいわ。」 2人はせっせせっせとゴミを拾っていく。 知らず知らずのうちに林の奥まで入っていっていた。 「あら、ずいぶん遠くまで着ちゃったわ」 「あっ!お母さん!みずうみがにじ色だよ!」 それは、油がたくさん浮いた湖だった。ところどころが虹色に輝いている。 特別綺麗と思ったことは無かった。子供が湖の近くに行く。 「おさかな・・・いないね」 「そうよ。この湖は汚くなっちゃったのよ。」 「ねぇねぇ!あれ、なぁに?何かあるよ!」 水面に、何かが浮いていた。クチナシの実を少し大きくした感じの、黒いもの。 その先っぽには、緑色の芽がちょこんと出ている。よくもまぁ、こんな環境で芽が出たものだ。 「お母さん、なんでこんなきたないところでも芽は出るの?」 「芽を出さなきゃ、いけないから。だからがんばってるの。こんな所でもね。少ない栄養を使って。」 「ふーん・・・じゃあ、ぼくたちとおんなじだね!みずうみのえいようをとりつくさないと気がすまないんだね。 みずうみさん、かわいそう・・・」 さりげなく、大人びた子供になっちゃいましたねぇ; また、続行で「油」「リサイクル」「クチナシの実」です。
ちょっと長くなっちゃいました すいません。
「油」「リサイクル」「クチナシの実」 --- やっぱり初デートっていうのは気合いが入るわけだ。 それが山歩きっていう、よく言えば健康的、悪く言えばジジくさいものになったのは、 裕幸君に「澤名さん、今度の日曜日いっしょに山歩きに行かない?」って向こうから誘ってきたからだった。 そういうリクエストならってことであたしは「じゃあお弁当作っていくね」って答えた。 料理はちょっと自信あるのよ。よし、じゃあ山菜おこわでも作っていこうか。山だし。決まり。 でもちょっと色が地味だから、クチナシの実で黄色にするっと。うん。それならいい感じ。 そんな感じでどんどん献立を決めていって、あたしは日曜に備えていった。 そして当日朝5時。お弁当を作るあたしの前にそれは現れた。 昨日の晩にタイマーを掛けておいた炊飯器の中の緑色の物体。綺麗な黄色になる筈の山菜おこわは緑色に染まっていた。 クチナシかなあ。クチナシをおこわに使ったのは初めてだった。実験しておけばって思っても、もうどうしようもない。 あたしはどうにかしようと冷蔵庫を開けた。ふと、油揚げが目に止った。油揚げならコンビニに売ってる。 これでリサイクルするしかないか。あたしはお稲荷さん用の付け汁を作ることにした。 「澤名さん料理上手いね、この一口いなりずしおいしいよ。おれ和食好きなんだ」 「そう? あたしも好きなんだ。どんどん食べてね」 あたしはなるべくお稲荷さんの具を見せないように、丸ごと口に放り込んだ。 裕幸君のほおに緑色のご飯粒が見えた。 あたしはあわてて手を延してそのご飯粒を取った。 裕幸君はきょとんとした顔であたしを見つめた。 「あ、ご飯粒付いてたから」 裕幸君は恥かしそうに下を向いた。 --- 今週は歴史物でまとめるつもりだったんだけどなあ。 次は「お茶」「辞書」「麦わら帽子」で。
198 :
お茶・辞書・麦わら帽子 :02/08/25 04:58
何でそんなにカリカリしなくちゃいけないんだ? 君ね、言葉と云うものは絶対的なものではないんだよ。 日々刻々と変化するものなんだよ。生き物なんだよ。 君のように流行に疎い人間は、その流れについていくのは難儀だろうけれど。 女子高生のほうがよっぽど敏感だよ。彼女等の云っていることが理解できないんじゃないかな? ――おや、少し納得したようだね。 辞書だってね、君、どんどん更新されて新しい意味に置きかえられているんだよ。 試しに「麦わら帽子」と云う言葉がある。 現在、あの言葉は「田舎に住む子供」と云う意味になっているんだ。 都会の子供たちはあんな帽子、かぶらないからね。 勉強になっただろ。今までにあったんじゃない? 言葉を間違って使ったことが。 ――お、心当たりがあるようだね。周りの人たちは変な反応を示しただろう。 君は適当に振舞って、お茶を濁したんじゃないかな。 さて、少しは納得したかな。言葉は変化するものだということを。 だからさっきの僕の発言もこう云う意味になるんだ。 『君は綺麗だ』と。 そう。「デブ」の意味が「綺麗」に変わったんだよ。 ――機嫌直してね……。 #次は「頭痛」「遊び」「資本」でおねがい。
199 :
麦わら帽子、お茶、辞書 :02/08/25 05:30
夏休みも終わりの八月三十一日。日本全国の家庭で、ある地獄絵図が見られるようになる。 終わらない夏休みの宿題に悲鳴を上げ、泣く子供達。それを叱咤し、ときに手伝う寛容な親達。 定吉もそんな親の一人だった。彼の目の前には中学一年生の夏休みの宿題の山がそびえていた。 定吉にはナナエという娘がいる。妻の連れ子で血はつながってない。定吉はそんな娘に少しでも父親らしくあれと、宿題を引き受けたのだ。 だが、その難しさは彼の予想をはるかに越えていた。大工の定吉にはさっぱりわからない。 必死に昔習ったことを思い出すが、定吉の夏休みの記憶といえば、麦わら帽子で一日中真っ黒になって遊んだくらいのものだった。 「あなた、少し休んだら?」 居間で辞書や参考書片手にうなっていると、妻のゆかりがお茶を持ってきた。定吉はさすがに限界だった。妻に、助け舟を求めた。 「そうねえ、ナナエはわからないことがあると、インターネットで調べるそうよ」 定吉は生まれてこのかた、パソコンなど扱ったことはなかった。しかし、もはや猶予はなかった。妻の手助けを借りて、インターネットとやらに挑戦した。 「ナナエはねえ、このサイトならなんでも調べられて便利だって」 それはネット上の巨大な掲示板だった。定吉はさっそく、それらしいところへ自分の状況を書き込んでもらった。しかし、その反応は… 「炉利オヤジ、逝ってヨシ」「氏ね」 その冷たいレスに、定吉がショボーン(´・ω・`)となったのは言うまでもない。
200 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/25 05:58
「頭痛」「遊び」「資本」 「アンタって、ほんっとーに救いようのない馬鹿ね」 「大きな声を出さないでくれ。頭痛がするんだ」 「自業自得よ」 「薬遊びが好きなんだ」 「どうりでアンタ、いつもラリってんのね」 「悪いかよ?」 「悪いわよ。アンタみたいに働きもしないで怠惰な生活送ってる奴は資本主義社会の癌よ。さっさとオーバードースで死んじゃえ!!」 ひとしきり喧嘩をした後、俺たちはいつものようにSEXした。 まあ、一種の儀式みたいなもんだ。 文句あるかい? 次は「宇宙」「無限大」「魂」
201 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/25 07:28
宇宙、無限大、魂 「別に、僕は君と宇宙の神秘について語ろうってわけじゃないんだ。もっと身近な話さ」 男は女の肩に手を回した。 「沈黙は金、雄弁は銀。私は金のほうが好きだわ」 女は男の手をやんわりはねのける。 「つまりだね。言いたいのは可能性さ。男と女には無限大の未来があるってこと。それがたまたま君と僕になるんだよね」 今度は腰に手を回す男。 「馬耳東風。私、馬年生まれなのよね」 腰を浮かし、またも男の手から逃れる女。 「わからないかな? これは単なる会話じゃなくて、魂の語らいになるんだよ」 なおも、男は女の手を握ろうとする。 と、そのとき、場内に「ゆきえちゃん、三番テーブルご指名でーす!」という声が響いた。 「会者定離。悲しいわ」 女は立ち上がり、去っていった。 聖闘士☆星矢みたいなお題は継続で。
202 :
最新情報!! :02/08/25 08:22
師匠が「宇宙へ行く」と言い出したので、その送別会には大勢の弟子が訪れていた。 酒宴の最中、弟子の一人が質問をした。 「師匠、宇宙とはどんな所なのですか?」 酒の入った師匠は真っ赤な顔で答えた。 「宇宙とは、時が流れず、光も無ければ、大気も無い、何も無い、何も起こらない所だそうだ」 「それでは、人は生きていけないじゃないですか」 「常人ならば、生きてそこまで辿り着けもできまい。辿り着けたとしても、生きてはいけまい」 「何故わざわざ、そのような所に行くのです?」 「何もかもが無である宇宙に行けば、下らん肉体からも、魂からも開放される」 「開放されるとどうなるのです?」 「宇宙において肉体は形を成さず、魂は還元されない。つまり、私の何もかもが無くなってしまうのだ」 「それは恐ろしい事ではないですか!」 「なに、恐ろしくもなんともない。わしはいい加減、生きるのに飽いたのだ」 師匠はそこまで話すと、庵の前の庭に出た。 「宇宙に行けば、わしのすべては無に還る。同時にわしのすべては無限大に広がり、この世のすべてと溶け合うだろう」 よほど嬉しいのか、恍惚とした表情で弟子たちに向かってそう叫ぶと、師匠の足元から風が沸き起こった。 風は勢いよく吹き、師匠の余裕のある衣を膨らませ、はためかせる。 次第に勢いを増して行く風は、縦横に吹き荒れそれに衣が踊り、殆ど師匠を飲み込んでしまっていた。 そして、いつしか風は止み、庭には、はらはらと舞い降りる師匠の衣だけが残されていた。 解釈からして間違っている。 次回「弓」「補助」「早い」
205 :
「宇宙」「無限大」「魂」 :02/08/25 10:02
総帥と呼ばれた男に挑戦状が届いた。沖縄からだった。 彼は、さっそく東京駅から「寝台特急・なは」で一路沖縄へと旅立った。 「那覇〜、那覇〜」早朝、男はJR那覇駅に降り立つ。 「ん!?」と怪訝な表情。「なんか…俺、体重が軽くなった様だな」 駅には挑戦者が待っていた。 「わしの入魂のパンチに耐えられるか?」「俺のパンチ力は無限大だぜ!」 勝負は一瞬でついた。敵は駅舎の屋根を突き破り、路上まで飛んでいった。 「んんっ!? なんか、俺、手が透けてるみたいだぞ!」 総帥は、大規模な総合病院で見てもらう事にした。 「診てもらいたいのですが」「はいどうぞ、すぐ診ますよ」 また妙な感覚が!…診察室には半透明のお医者さんがいた。 はっと外を見る、なんと、沖縄というか宇宙まるごと半透明で消えかけてる! 総帥は今日の事を思い出した。もしや、設定が破綻した世界なのか、ここは。 汽車で沖縄に行ったり、場外に吹き飛んだり、大病院が即座に… ああ!消 え た。 ※星矢だって似たようなもんだよー(笑) 次のお題は:「ピアノ」「線」「飛翔」で御願いします。
206 :
2チャンねるで超有名サイト :02/08/25 10:04
あわわ、失礼しました;;; 次のお題は203さんの「弓」「補助」「早い」で御願いしまふ。
弓、補助、早い 少年は馬に乗り、ゆっくりと辺りを見回した。 周りは味方の死体の山・・・ 少年はがっくりと肩を落とし、負傷した左手の甲を押さえた。 そこへ、また敵がやってきた。 般若のような形相をしている。 少年は弓を引き、敵に向けたと同時に、落馬した。 敵の矢が少年の腰と、馬の頭に当たった。 「くそお、父上の補助さえ受けていればこんなことには・・・。」 そして、敵は、少年の頭に銃を撃ちこみ、去っていった。 武芸少年の、早い、早すぎる死であった。
209 :
ltu ◆6oqdmb9w :02/08/25 10:39
次の題は「ピアノ」「線」「飛翔」で良いでしょう。
「ピアノ」「線」「飛翔」 少女はピアノを弾いていた。月光がライトとなって少女を照らしていた。 少女の軽やかな手つきは、まるで宙に線を描くようだった。 冴え渡る光と、静かで優しいピアノ曲。少女の目には涙が溢れていた。 そこへ、男が一人やってきた。 「おい、何をしているんじゃ!」 少女は一瞬びくっと体を震わせたかと思うと、空へふわっと飛翔していった。 「なんだったんじゃ・・・?」 しばし呆然とした男は、すぐ愛用のピアノに駆け寄った。 「高く買い占めたピアノなのに、傷がついたらどうしてくれるんじゃ!」 ピアノを隅々と見渡した。すると、ピアノの鍵盤に、血の様な赤いものがてんてんと付着しているのに気づいた。 両手にハンカチを持ち、鍵盤の汚れを丁寧に拭う。だが、それはいっこうに落ちる気配を示さない。 夢中になって拭っていると、突如ピアノの蓋が閉まった。 男は声にならないような悲鳴をあげた。どんなにもがいても、挟まった指は抜けず、 どんなに力をこめても、ピアノの蓋は開かなかった。 すると、あの少女がピアノの上にいた。くすくすと笑い声を上げていた。 これで思い知った?あなたが、私のピアノを奪った悲しみを。 ちょっとオーバーしちゃいましたね^^; 次のお題は、「北」「狂言師」「呪い」で。
齢80を越す、最高の狂言師と呼ばれる男が青森にいるらしい。 そう聞いた俺は、会社をサボって北へ向かった。 ファンのひとりとして、最近の狂言のレベルの低下は目に余る。TVの影響なのか、中身も演出も、どんどん薄っぺらになって、日本の文化から逸脱しているような気がするのだ。 最高の狂言師であれば、きっとすばらしい内容の狂言を見せてくれるに違いない。 期待に胸を弾ませて、青森の地を踏んだ俺を待っていたのは、驚くべきニュースだった。 なんと、その狂言師が逮捕されたらしい。 俺はすぐに、彼が留置されている警察署へ向かった。 逮捕の理由を知りたかった。できるなら、彼と会って話もしたかった。 「ここに狂言をやっている方が逮捕されているハズなんですが」 「狂言?」 応対に出た、若くて美人の婦警さんは怪訝な顔をしたが、すぐに笑顔になった。 「ああ、もしかして、河屋雲鵠斎とか名乗っているおじいさんの事ですか?」 「ええ、そうです、その人です。あの、どうして逮捕されたんでしょう。何をやったんですか?」 なにがおかしいのか、婦警さんはケラケラ笑った。 「まあ、狂言をやっていると言えば、言えるでしょうねえ。先輩から聞いたんですけどね、あの人、昔から狂言誘拐とか狂言自殺とか繰り返して、もう何回も警察に厄介になっているみたいですよ。なんか狂言師ってあだ名までついてるみたいで・・・・」 「・・・なんだそりゃ」 俺は呆然とした。会社ズル休みして、高いカネ払って、青森くんだりまできた結果がこれかい。 何が狂言師だ、あの爺い。なんだか呪い殺してやりたくなっていた。
「尊大」「良識」「バトンタッチ」
213 :
機甲自転車 :02/08/25 16:40
始めて書きました、変なところは遠慮無く行ってくれると ありがたいです 「尊大」「良識」「バトンタッチ」 大衆が見守る中、私は指導者としての任期を終え、 今、嫌悪感を堪えながら手を携えてるこの男に 国家運営の全権を委譲すると宣言した。 この革新的バトンタッチ劇は数週間の準備期間の後、私を一市民に 戻し、目の前で裏の読めない作り笑顔をかぶる男を指導者にするわけだ。 場をわきまえない感情がこみ上げてくる。 大衆は私よりこの扇動と謀略を生業とする「革命者」を指導者 の器に収まるべきだと判断した以上、良識ある市民として法に 従い後継者と我が民族の繁栄に助力を惜しんではならないはずだ。 ここで、つい、ため息を漏らしてしまった、良識だと?私が信奉していた 良識と信念に基けば、このような男に民族の明日をゆだねるなど あってはならないはずなのに。 目の前の男は革命者たらんとますます大袈裟な手振りを交えて 演説を始めた。私はその芝居がかった表情を見つめながら、 あの時と同じ男がここまで尊大に振舞える事実にに飽きれていた。 今、男の全身からは神々しいまでの尊大さが発散されていた。
ふんどしから汚いケツはみだした恥ずかしい姿でお神輿のてっぺんに乗ったヤンキーたちが、 「ワッショイ!」 と、太い声で同時に叫んだ。彼らは尊大に構えている。 そしてユラユラ揺られて俊也の方にやってきた。 パンチパーマのヤンキーが、 「ヘイ、バトンタッチ」 と、かん高い声で言って神輿から抜け、新たにヤクザみたいなオッサンが加わろうとした。 その時だった。 見物客に押されたばあさんが神輿の前に踊り出た。ばあさんは神輿にぶち当たって弾き飛ばされ、頭をアスファルトに叩きつけられた。 ばあさんは今年3人目の祭りでの死者となった。 お神輿を担いでいるヤンキーたちは、そのまま突き進むのかと思えば、後ろを振り向いて、 「おっとごめんよ」 と、言って謝った。 彼らに良識があるのか無いのか、俊也にはわからなかった。 お題 「空」「イライラ」「乾燥」 (ちょっと遅れた)
215 :
機甲自転車 :02/08/25 16:43
じゃあ次は 「科学」「神」「生命」 あたりでいいですか?
216 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/25 16:47
どっちのお題が優先ですか? よかった方でいいですか?
217 :
機甲自転車 :02/08/25 17:30
お題 「空」「イライラ」「乾燥」 通達書に似つかわしくないイライラと言う単が、 一体何を伝えようとしているのか分からず、 この電報を打った通信手が慌てものだったのだろうか、 と首を捻りながら、機長に訊ねて見ることにした。 建物から出て空を見上げると、天候は飛行に差し障り のない状態に変わりなかった、程よく乾燥しており機体 ヘの負担も軽い、緊急飛行には申しぶんが無い。 そうして居る間に機体でせわしなく準備を進るチームの所についた。 「機長、上の許可が出たそうです」 そう言い終わるのを待たずイライラ12‐Dと書かれた資料を開封した その地図に書かれた地名を見て私はようやく全てを飲みこんだ。 イラク‐イラン国境砂漠地帯!同僚の航空機はこの面倒な地域に 不時着してくれたのだ、チームの皆からも緊張が感じられた。 顔を刺す乾燥風が悪魔が我々を招き止せる罠じみた手腕に感じられた。
218 :
機甲自転車 :02/08/25 17:59
弓、補助、早い 偉大なるフランス王国軍では重騎士の華麗なる突撃 こそが戦場の覇者であり、弓を繰る雑兵など あからさまな補助軍として冷遇され、経験の浅い 傭兵・徴用兵が殆ど訓練の手間もかけず操作できる ボウガンを持たされて並ばされているだけだった。 所詮は英国の悪漢どもに貴族達が鎧にランスを構え 突っ込むまでの時間稼ぎに過ぎない。 その彼らが合戦の前哨戦−貴族たちは噛ませ犬ぐらいに考えているはずだ− 敵弓兵と射撃戦を開始した、その光景を眺めていた指揮官達は違和感を 感じざる負えなかった。あまりに相手側の放つ矢が多すぎるのだ。 英国兵達はその兵数に不釣合いな弾数を我が軍の弓兵に浴びせている。 乗馬騎士が叫んだ。 「いかん、下賎どもが崩れはじめた。英国弓兵の発射速度が早過ぎる! 猶予はわずかです、早く突撃命令を!」 指示を求められた騎士はうなずき、右手を上げた 「騎兵の数は我が方が勝っている、小手先の戦果の虚しさを教えてやれ」 英国の弓兵達−ロングボウを繰る熟練した自由市民−は伝統あるフランス 騎兵群が指揮官の合図と共に前進を開始したことを認めた、 皆、恐怖と緊張に顔をこわばらせていたものの、彼らは自分等が生き残る 術は、この弓がと手が握っていることを知っていた。
219 :
エヴァっ子 :02/08/25 18:40
科学、神、生命で。 つい先日王宮へ足を運んだら、科学省の予算が増え、魔道省の予算が削減されたという。 なんでも魔法をしのぐ威力を発揮する筒が開発されたとか……。 嘆かわしい世が来たものだと、魔道省の皆は嘆いていた。 神の力を借り、生命の営みは正しい方向へと歩む、そしてそのために我々魔道省が作られたのではないか、と。 これから、神が忘れ去られる時代が来るのだろうか? 私は魔道省の皆に聞いた。 しかし皆はそろって首を振った。 我々がいるから、それはない――と。 これから世界はどうなるのだろうか……。 王宮よりも高い建物が、世界を覆い尽くすのだろうか。 馬よりも早く駆けることが出来るようになるのだろうか。 誰も死なない世界が来るのだろうか。 私の考える世界が、どうか夢物語であって欲しいと思う。 次は「未来」「悲しみ」「花束」で
220 :
機甲自転車 :02/08/25 19:45
>次は「未来」「悲しみ」「花束」で その飛行艇は花束を運んでいた、その花束は 機に乗り合わせた者達の悲しみを乗せていた ただ、ひたすらに青く広い海原を行く飛行艇の目的地は やはり、ただ、波立つ海の一切れに過ぎなかった。 機長は機内を見返した。 婦人達の花束は愛する人への思いや共に暮らした記憶が 込められているように見え、それらの丁重さな造りと共に 一つ一つが比べ様も無く貴重に感じられた。 それに比べて、子供達の花束は十人十色、その子が秘めた 性格をそのまま写したように創造的だ。 最寄の女の子の花束等などまるで父の日の贈り物の様に 似顔絵や手紙が添えられていた。父親に会いに行く とでも聞いているのだろう、無邪気な表情が心に痛い。 「皆様、間も無く目的地です、ご準備を、 投下に使うハッチは危険ですのでお子様が近づかないよう・・・」 機長はそう言うと座標や時計を確認し 「あと10分程余裕がありますので、家族に届く事の無かった 一人の機関士の言伝を聞いてあげてください」 子供達さえも周りの空気を読みとって機内は静まり返った。 機長がポケットから元の手紙を一部要約した紙を取り出す。 「愛する君へ、私は君達に2度と逢う事が出来ないかも知れない。 ずっと、君達の事が頭から離れない。 家が恋しい、2度戻れないかもしれない家が。 無事、戻れる事を祈ってくれ。でも、もし戻れなくくても 一生、私の事を背負いこまないでくれ。君には他誰かと一緒 になってでも幸せに暮らし、子供達を立派に育て・・・」 操縦士の飛行眼鏡が濡れている、機長も昨日つけた紙の染みが 無ければ責務をまっとうできなかったかもしれないと思った。 「間も無く。沈没地点です」 機長の合図でハッチが開かれ、男達の守ろうとした数だけの 花束達は飛行艇から離れ特別であって特別でない只の海原に降りていった。 乗客達は窓という窓からその光景を眺め見えなくなった後も目を離そうと しなかった。皆、涙を流しながらも今を生きぬく為過去との決別をはかって いるように見えた。尤も、事情を飲み込みきれていない幼子の目には既に 新たな世界ヘの好奇心があふれていると感じた。 飛行艇は飛びつづけた未来へ向かって。
221 :
機甲自転車 :02/08/25 19:52
また、おだいを忘れちゃった。 「老い」「故郷」「手紙」 でどう?
222 :
機甲自転車 :02/08/25 20:37
お題まだ?
「老い」「故郷」「手紙」 私はまだ老いてはいなかったが、重い病気にかかっていた。言葉もろくに喋ることが出来ない。 10年程前、無理な駆け落ちをし、家族にも勘当された。駆け落ちをしてでも一緒にいたかった彼女もももう、この世の人ではない。 私は彼女の保険金と遺産で、裕福な生活、限りない財産をもっている。 だが、そんなもの意味が無かった。私はいつ死んでもおかしくないだろう。 彼女がいてくれるだけでよかったのに。死んでもいいと思っていた。 そんな事を考えていると、召使がやってきた。 「お手紙でございます」 私はそれを黙って受け取った。封を開け、中身を読む。 『お元気でしたか、あの時は、本当にごめんなさい。止め様と思ったのだけれども、 できませんでした。いまさら謝っても許される問題ではないのですが。 今生きているのは、お母さんただ一人です。あなたのことは本当に心配でした。 今何処にいるのでしょう?体は元気ですか?無理をしないで下さい。』 どうしたものだろう。今、謝られてもすむ問題ではないのに。 それは、母からの手紙だった。もう、故郷は自分には無いとおもっていたのに。いつのまにか、暖かいものが頬を濡らしていた。 そして、私は遺産を全て母に託そうと決めた。 数ヵ月後。母のもとに莫大な金額が書かれた小切手が送られてきた。 「ふふ。上手くいったわ。まさかあんな手に引っかかるなんて。でも、これで一生遊んで暮らせるわ。」
↑のお題は「火事」「枝」「お手玉」です。
225 :
機甲自転車 :02/08/25 21:16
<↑のお題は「火事」「枝」「お手玉」です。 その松ぼっくりはいつま経っても開く様子が無かった。 北地旅行で娘が拾ってから数年が経つはずなのだが、 今も、包子をを抱えこみ、娘のお手玉に甘んじている。 どうした、松ぼっくりよ出たくはないのか? どうした、松ぼっくりよ伸びたくないのか? その松ぼっくりが開いたのは更に数年後のことっだった。 家が娘を抱えこんだまま火事で焼け落ちたのだ。 私達夫婦は、仕事上の関係もあり、忌まわしい記憶の 土地から離れた。娘の7回忌の年、成長しない娘の 眠るこの土地を訪れた。 すると、丁度あの子の部屋が在った場所に細々しい松の木 の若木が立っていた。そこを訪れるたび、敷地に差す光を 一人締めにして松は育っていく。 調べた所、恐らくあのお手玉はアカマツの松ぼッくりで 山火事に合ったあと出ないと、開かないということらしい。 もし山火事で木々が焼け落ちれば空いた土地に収まる事 という性質らしい。 始めのうちは、まるで娘を犠牲にする事によってで芽吹いた 様に思え、はらただしかったが、おとづれるごとに、その木の が枝を伸ばし育っていく姿に娘の成長を重ねる自分に気付いた。 私の中の娘の記憶にこの松が収まったとでも言うのだろうか。 しかし、なんどおとづれても出迎えてくれるのはこの松だけだった。 成熟期に達した松は新たな松ボックリをつけ始めた。 枝の先に数個づつ実を孕む姿はまるで お手玉をするあの子のようだった。
226 :
機甲自転車 :02/08/25 21:18
次のお題は 「新芽」「ひだまり」「思い」にしときます
227 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/25 21:33
機甲自転車さん、たくさん投稿するのはいいけど、誤字はちゃんと直そうよ…
228 :
機甲自転車 :02/08/25 21:45
確かに読み返せば推敲の余地がある所が沢山見つかるものですね。
気がついた誤字だけでも訂正します
>>213 嫌悪感を堪えながら手を→嫌悪感に耐えながら
>>227 イライラと言う単→イライラと言う単語
>>225 一人締め→一人占め
229 :
機甲自転車 :02/08/25 21:50
「新芽」「ひだまり」「思い」 ひだまりの照らす切り株の上。ここにはさまざまな思いがこもっていた。 切り株となる前の、桜の大木だったころたくさんの人が木の下で、 桜の美しさに惚れ、一人泣き、かつての旧友と抱き合ったものだ。 だが、切られてしまった今ではただの切り株。 思いでも何もかも一緒に切り倒されてしまったようだ。 花見に来る人も、失恋した人も、再開を祝った人も、もう此処にはこないだろう。 向こうから、親子が歩いてきた。だが、この切り株には見向きもしないだろう。 すると、その子供が、切り株のほうへやってきた。 「あら。切り倒されちゃったのね。楽しみにしてたのに」 「うん・・・あっ!おかあさん、みて!はっぱがでてるよ!」 その切り株には、小さな新芽が出ていた。 「本当だわ。がんばったのね、この桜も。さっちゃんが15歳くらいになった時、 また、満開の桜が見られるわ」 「はやくおおきくなりたいな。」 次は、「原子」「過去」「木の実」ですがなにか?
231 :
機甲自転車 :02/08/25 22:43
>次は、「原子」「過去」「木の実」ですがなにか? 私が物書きなど不安定な生き方を興味を持ったのはつい最近だった。 私の頭脳と両手でのみが全てを決める、プリントされた文字という物が 羅列された紙を見ただけでは、世界を動かす偉大な文も、見返すのも おっくな、くだらない日記も、只のバグ羅列も見分けがつかない 同じ紙とインク、同じ分子と原子で構成されているはずなのに、こうも 価値が分かれる物も珍しいのではないだろうか。 ここでふと、この紙はほんの少し前まで植物を構成していた原子である んだな、過去には動物の物だったこともあるかもしれないと気付いた。 物質は世界を回っている、なんでも私達の呼吸する空気には、ある程度より 昔の人類全てが呼吸した事のある原子を数個確実に含んでいるそうではないか。 生きものは死滅と分解にあがなえ無い残せるのは子孫だけだった、しかし 人類が残せる種子は生物学的な子だけに限らず、ある時よりその知識や思考を 記憶媒体の殻につつみ残す手段を手に入れた。 私の中で、やがて幹樹が朽ちはて崩れ落ちるまで、出来るだけの木の実を生み後世に 残したいと言う意志がたった今、生まれた。
232 :
機甲自転車 :02/08/25 22:45
次は「魚」「流れ」「鳥」で行きます
233 :
2チャンねるで超有名サイト :02/08/25 22:49
「魚」「流れ」「鳥」 俺は悠々と海を泳いでいた。 昨日、この海の主だった魚を激闘の末に倒し、今では俺が主となっている。 子分の魚も沢山いる。俺に怖いものは無い。 お陰で、来る魚来る魚が俺に礼をしていく。愉快なもんだ。 俺は優越感にひたっていた。海の流れに身を任せ、軽やかに泳いでいた。 どうだ。羨ましいだろう? そのとき。突如頭上が暗くなったかと思うと、俺は強い力で体中を握られ、 身動きが取れなくなった。おい、何なんだ。俺がここの主だって言うのに、こんな事をして。ただじゃすまないからな。 じたばたと体を動かすが、無駄だった。前にも後ろにもいけない。夢中になって 暴れ狂うが、効果は無いようだ。周りを見渡すと、海の中とはまったく違う光景が広がっていた。 そして、体が自由になったと思うと、俺の視界は真っ暗になった。 「ちょっとまずいわね。この魚」鳥はとった魚を食べながら、顔をしかめた。 「最近、魚がよく捕まえ易いですわねぇ」もう一匹の鳥が言う。 「だって、あんなにゆったりした動きの魚なんて一発よ。身を隠そうともしてなかったし」 海の中。そしてまた今日も、海の主は悠々と泳いでいた。 次のお題は、「懐中時計」「花束」「雪」です。
「魚」「流れ」「鳥」 --- あたしは銀河光速路の中を、一緒に運送屋をやっている次元航行猫のタマといっしょに進んでいた。 まあ、進んでるのはタマであって、あたしはタマの首にしがみついているだけだけど。 「そろそろ宇宙港?」 あたしの質問にタマは髭をひくひくさせた。 「まだ先」 タマは少し血の混じった鳥の羽を付けた口で、ぶっきらぼうに答えた。 「そっか。じゃあご飯にしよう」 あたしはタマの首輪に引っかけてある命綱を確かめて、 タマが背負っている大きなランドセルの中からお届け物を落さないように、 タマ用の干し魚とあたし用のおにぎりの入った風呂敷を取り出した。 おにぎりはとりあえず腰に結んでおいて、体程もある干し魚を両手で抱え上げる。 からっからに乾いているから、そんなに重くはない。あたしが持てるぐらいの重さだ。 「はいタマ」 「ん」タマは干し魚を口に含むと、バリバリと食べていく。その振動はおしりを通してあたしにも伝わってくる。 タマは少し気が立ってるみたい。 宇宙空間を流れている星間粒子がタマの発生している断時間壁に当たって発生する光の色が いつもより青白い。スピードを出している証拠だった。 腕に付けているγ線測定器は警報を鳴らしていないから人体に影響は無いけれど、このままだと日焼けしてしまう。 あたしはUV防止パラソルを開いて光から肌を守った。 「タマ、スピード出しすぎよ」 「鳥が食べたい、鳥が食べたい、鳥が食べたい! なんだって急に仕事なんて受けるのさ!」 そう、タマは鳥が大好物だ。それも生きた鳥が。もうあたしは慣れちゃってるんだけど、 それを1日がかりでなぶり殺していく。 で、久しぶりにまとまってお休み取ったんでタマは心おきなく鳥を食べようとしたんだけど。 「しかたないでしょ。お客様第一。でも素敵じゃない? 遠く離れた恋人のためにプレゼントなんて。ね?」 あたしは、依頼主は鳥から進化した異種人の女性で、 お届け物は彼女が初めて産んだ無精卵だってことは、タマには言わないでおこうと思った。 --- 長いのは許してください。でもちょっと必要。と思いました。 お題は継続で、「魚」「流れ」「鳥」でおねがいします。
すいません、次は「懐中時計」「花束」「雪」 でおねがいします。
237 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/26 01:02
ひまだね、君たち
238 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/26 01:11
腕時計は嫌いだった。 あの手首にまとわりつくような、そんな感覚が嫌だった。 それで僕はいつも懐中時計を使っていた。 由香里はそんな僕を知ってか、安物の腕時計をくれたりした。 由香里とは大学のサークルの仲間で、そのころ仲が良かった。 あの時、由香里が僕のことをどう思っていたか? 今となってはもう確めようが無い、由香里はもういないから。 あれから数ヶ月経った。事故現場には今でも花束が残っている。 懐中時計を見るたびに、僕はあることを思い出す。 なんで僕の懐中時計は、悪魔城ドラキュラの懐中時計のように 時間を止められないんだろう。 あの雪の日、僕は「時間よ止まれ!」と叫んでいれば、 由香里は死なずにすんだかもしれない・・・ 彼女とはもう夢でしか会えないんだ。 それを思うと悲しくて、僕はくだらないことを考えるんだ。 次は、「ラウンジ」「珊瑚」「スパイラル」でお願いします。
「懐中時計」「花束」「雪」 灰色の低い雲が広がる空の一角から差す眩しい光。曇天といったかな、こんな天気を。 葉を落とした枝の上にこんもりと積もる雪が、時折吹く風に負けて地面に落ちる。 人なんてほとんどいない小道、それも膝まで埋まるのを掻き分けながら進む。 「仕方ないだろ、今日出来たんだから」 彼の頭の中は懐中時計のコレクションだけになっていた。 彼にとって念願のオーダーメイドがようやく手に入るのだから。 オタクなんて人種はどれも似たようなものらしい。彼と同様の趣味を持つ人の家族と 同様の悩みを抱えていたのを知ったときは、彼らオタク達の習性をあげつらって愚痴を ぶちまけあった。そのおかげで彼の趣味にも寛大でいられたのかもしれない。 「まったく、めんどくさい時に死んでくれちゃって」 ぼやきながら墓石に積もる雪を払い、菊の花束を生けて線香を立てる。 彼の最後のコレクションの蓋を開くと、銀世界に彼との思い出の曲が流れだした。 #遅れたけどリハビリがてらに。 #次は、238さんの「ラウンジ」「珊瑚」「スパイラル」でよろ
>次は、「ラウンジ」「珊瑚」「スパイラル」でお願いします。 この島の空港のラウンジでは出港していく者も入港してきた者も、 お互い顔見知りである事が多い。例えば、今、島に舞い戻ってきた ばかりの俺と島からおさらばするところのキングは十年来の仲だ。 二人は珊瑚礁の上に立つ島を拠点に特有のスパイラル現象が育てた 希少な宝石珊瑚で一攫千金を狙う 潜水夫同士、山師といっても良い。尤も、口利き屋の喧伝ほど 簡単に見つかる分けも無く、豊かな海産物を採って口を糊する生活 に追われ時間が過ぎていく。そんな行き当たりばったりの男達にも 幸運の女神は微笑むらしく、希少種を探し当てまとまった金を手にする奴 も出てくる、そしてその大半は泡銭を使い果たして舞い戻ってくる、 この俺のように。キングは俺の造り笑顔が隠しきれない自分の愚考ヘの後悔 と解放者への羨望を読み取り言った「運が良かっただけさお前もすぐに出れる」 と言って、すぐに自分が捨て置いてきた家族の写真と屑珊瑚の首飾りを 見せながら、自分が取り戻すはずの人生について語るお決まりの作業に入った。 俺は珍しく心からこの男と写真の母子の幸運を祈った。5年ぶりに娑婆 にこの男にできる限りの助言を与え、別れを惜しんだ。 それはキングとの友情だけのみならず、抜け出ようとする男達を 引き戻しつづけるスパイラルから自分もいつか抜け出す事が出来ると いう証明が欲しかったからだった。 良いアイデアが出ない。」
241 :
機甲自転車 :02/08/26 02:20
次は「森」「狩り」「絆」でよろしく
242 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/26 03:51
森、狩り、絆 追い詰めれば逃げていく。失われた絆を取り戻すためには、高志を激高させてはいけない。 春夫はわかっているつもりだった。しかし、彼の言葉は相変わらず直情的すぎた。 春夫の激しい口調に、高志はもはや貝のように口を閉ざすばかりだった。 「何か言えよ! 俺のこと殴ったっていいんだぜ!」 春夫も、そんな高志に次第にいらだっていく。 うっそうとした木立が風で厳かにざわめき、その音が、この暗い森にたたずむ二人の少年の心に風穴を空ける。そして、それは肉体にも及ぶ。二人の胃は恐ろしい飢餓に泣いていた。 「そりゃ、悪かったさ! お前の分喰っちまって!」 春夫は高志の沈黙に対抗するかのように、精一杯叫んだ。 「でもなあ、高志。食いもんはあの菓子で終わりってわけじゃないだろ。ここは森だし、狩りをすればいいんだよ。うさぎとか鳥とか。それで、全部お前が食っていいんだ。そうしよう、な? 機嫌を直してくれよ」 高志は相変わらず無言だった。怒っている、春夫はそう感じていた。だが、次の瞬間、高志は地面に腰を落とし、 「いい忘れてたけど、あれさ、ほんとは春夫の分だったんだぜ」 と笑った。春夫は一瞬、その言葉を間に受け、高志を殴ってしまいそうになった。しかし、それは、よく考えれば全くのでたらめだった。春夫が盗み食べた菓子はまぎれも無く彼自身のものだった。 「早く、助けがくるといいね」 高志は明るい声で言った。春夫もああ、とうなずき、彼のそばに腰掛けた。 次のお題は、「呉越同舟」「臥薪嘗胆」「白河夜船」で。 たまには四文字熟語もいいでしょ?
243 :
「呉越同舟」「臥薪嘗胆」「白河夜船」 :02/08/26 06:55
黄は唖然と目の前の光景に立ち尽くしていた。広大な石畳と赤くそびえる社の様な建物。天安門広場。そしてそこで、同胞が、次々と死んでいく。 銃で撃たれ、戦車で踏み潰され、石畳を赤く染める。呉越同舟ではあった。思想の違うものもいた、だが政府は何もかもを一緒くたに踏み潰していく。 文化大革命、そのために臥薪嘗胆を心に誓い、やってきたのだ。それに対する中国政府の返事は、武力行使だった。悲鳴が流れ、銃声は止まらない。逃げるには人間が多すぎる。 背を向けた人々へ、容赦なく降り注ぐ銃弾の雨。 自分の体から力が抜けていくのを黄は感じた。圧倒的な虚脱感だった。思想を力づくでへし曲げられ、口を縫い合わされる。今まで繰り返した全ての議論も無駄だったのだ。 このまま眠ってしまおう。そう思った。白河夜船、それほどに深い眠りにつけば、眼の醒めることには全てが終わっているだろう。 醒めることはないかもしれない、でもそれはそれでかまわない。 難しいよ・・・。四文字熟語は。次のお題は「学校」「屋上」「時計」でお願いします。
244 :
最近改革路線 :02/08/26 07:26
「呉越同舟」「臥薪嘗胆」「白河夜船」 出張で東北に向かう夜行列車の中、私は興奮を押さえるのに必死だった。 私は今、中学時代私を散々虐げてきた男と同じ車両に乗っている。 呉越同舟とはまさにこのことだ。 あまり頭のいいほうではなかった私に、彼はなにかにつけて罵詈雑言を浴びせ掛けてきた。 彼の言葉に傷つきながらも、いつか彼に復讐してやろうと思っていた。 臥薪嘗胆。何かの本で読んだこの言葉を胸に秘めながら、私は必死に勉強した。 別々の高校に進んだ私たちは、それから一度も会っていない。 彼は知らないはずだ。私が東大へと進み、いまでは原子力発電所の主任を務めていることを。 左前方に背を向けて座っている彼の後頭部に、憎憎しい視線を送った。 私はもう呉下の阿蒙に非ず。彼を論破してやろうと、その機会を虎視眈眈と狙っていた。 …はっとして、目を覚ますと彼の姿はもうなかった。時計を見ると、2時間ほど眠っていたようだ。 私は白河夜船という言葉を思い出し、彼に対する憎悪がすぅっと消えていくような感覚を覚えた。 窓の外をみると、いつしか雪が積もっている。 三日月に照らされる雪原に、列車は黒い影のようにのびていった。 遅かったみたいです。 次のお題は243さんの「学校」「屋上」「時計」でお願いします。
245 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/26 10:17
「学校」「屋上」「時計」 毎日、僕は朝早く学校に行くことにしている。学校に着くと、すぐに誰もい ない屋上へ上る。僕が学校に着く頃には、他の生徒はまだほとんど来ていない。 気持ちの良い朝。誰にも邪魔されず、景色を眺める。そこには無機質なビル や住宅が雑然と広がっている。お世辞にも良い眺めだとは言えないけれど、こ の味気なさは嫌いじゃない。どうも他人の気がしないからだ。それは、慣れて しまって愛着がわいたせいかもしれない。 校庭のあたりを見下ろすと、登校中の生徒が段々と目に付くようになってき た。すると、今日もこれから授業があることを思い出して、少し悲しくなった。 一体どうして面倒くさい授業なんか受けなきゃいけないんだろう? そう考え ると、僕はいつも暗い気持ちになる。僕の生活が無機質な風景の中に取り込ま れていくような、そんな気持ちになる。 「おはよう」という声が耳に届いた。下を見ると、クラスメイトの女の子だった。僕は 返事をして急いで階段を下りていく。 時計の針は、まだ8時を指している。今日はまだ始まったばかりだ。 次は、「サイコロ」「海」「玉葱」でお願いします。
「学校」「屋上」「時計」 夜の学校はいつ来ても気味が悪い。こんな遅くに取りに行くことになるんなら、もっと早く思い出しとけばよかった。 宿題なんか学校に置きっぱなしで良かったのに。なのに何故か無性に気になって、学校に取りにきたのだ。 私は意を決して校門をくぐった。ここまできたんだから取りに行ったほうがいい!そして、校庭を通る。 昼と違って静まり返った校庭。退屈そうな遊具。ブランコだけははかすかに揺れながら風と一緒に遊んでいた。 ブランコか。そういえば6年生になってからは、一回も乗ったことが無かったっけ。 私は自然にブランコに駆け寄り、乗ってみた。うわ、低い。私は立ち乗りになり、ブランコをこいでみた。夏なのに、風が気持ちよかった。 私、もうこんなに大きくなってたんだ。空を見上げてみた。少しバランスが崩れかけたが、上手く立て直した。 満天の星空。流れ星でも落ちてきそう。恥ずかしがり屋な月は雲に見え隠れしていた。 空も、星も、月も、ここのところ見てなかったな。下ばっかり向いてた。 だから、忘れるところだったんだ。大切なもの。 しばらく、月と星の宴会を見ていると、はっと気づいた。 あっ!宿題! 私はブランコから降り、教室へ行き、自分の机から数学の宿題をとった。 月の青白い光が風と戯れているブランコを惹きたてていた。 その光景は、私にとってはどんなに素敵な映画の1シーンより美しく、幻想的だった。 次は、「コーヒー」「夜」「刹那」です。
247 :
「学校」「屋上」「時計」 :02/08/26 11:03
「俺の小学校を見に行かないか?」と彼は言った。 「俺さ、ガキの頃は超のつくド田舎に住んでたんだけど、 俺が小学校3年くらいの時かな、急にダム建設計画が持ち上がって、 村は水の中に沈むことになっちまったんだ。でも俺のオヤジは ダム反対派だったからさ、俺の家はしばらく村にいたよ。日毎に村の人口は減っていって、 友達の家はどんどん隣町に移っていくのに、俺の家だけ村にずっと残ってて、 あの頃はまるでゴーストタウンに住んでるような感じだったな。ほんと人が いなくてさ、もともと全校生徒18人だった小学校も、卒業時の生徒は俺ひとりになった。 夜も近所で電気の点いてるのは俺の家だけだった。周りは電灯なんて全くなし。 元々田舎だから街灯なんかもほとんどなかったしね。でもまあ田舎だからさ、 夜でも晴れていて月さえ出ていればけっこう明るかったんだけど」 「それで俺が小学校を卒業して、でも村の中学は既に無くなってて、一体俺は どうなるんだろうって思ってたとき、オヤジの奴、急に羽振りがよくなりやがってさ、 それで俺の家は隣町に引っ越した、ってわけ」 「小学生の時周りから聞かされて覚えているのは、近くの建物は全部ダムの底に沈んで しまうんだけど、この小学校の屋上だけは水面から出るだろう、って話だった。 総生徒数が20人以上いたためしのない学校だったんだけどさ、山腹にあるレンガ造りの 三階建てで、当時としてはかなり立派な建物だったんだ。おかげで俺は、 大洪水に飲まれそうになりながら命からがら小学校の屋上に避難する夢を何度も 見たよ。あの学校の屋上には時計台があってさ、俺はいざというときのために備えて、 時計台の文字盤の裏に遺書を書いて隠してたんだぜ。」 かぶりっぱなしだ...次は、「サイコロ」「海」「玉葱」か「コーヒー」「夜」「刹那」か...
すいません!「サイコロ」「海」「玉葱」です!
249 :
低血圧、「サイコロ」「海」「玉葱」 :02/08/26 12:22
「負けがこんで投水自殺!?マジかよ・・・」 俺は思わず肴のオニオンピクルスを口から落として叫んでしまっていた。 髭面の男は煙草の煙を輪にしながら言った。 「マジもマジ。港をサツが嗅ぎまわってる。嗅ぎつかれたらこのカジノもヤバイからよ。どっかに丸ごと持ってっちまおうと思うんだよな」 俺は固まっていた。少し前から来なくなったと思っていたら・・・。まさか・・・ 死んでいた、なんて。 そんな俺を見て、髭面の男が舌打ちをした。 寄りによってあんな近くで死なんでもらいたいね、とヤツは言ったが、それが本気でないことくらいは俺にもわかる。 仲間がいなくなって哀しくないヤツなんぞいるわけがない。 少なくとも、俺たちのなかでは・・・。 ニュースでもかなり騒がれていたらしい・・・他の連中も皆知っていた。釣りをしていた人が・・・見つけたとか・・・。 自ら命を絶った。 毎日通っていたカジノが急に違うものになった気がした。 警備が手薄になったころ、俺は遺体発見場所から遠く離れた海岸からあいつの最期の場所を見た。 何も無かった。ただの海だ。 借金苦で死ぬ人は多いのかもしれない。 あいつは頭が悪かったけど・・・死ぬ時は確かに苦しかったはずだ・・・酸素がなくなったら・・・どのくらい苦しいだろう・・・? 自ら・・・命を・・・? 俺は神を憎んだ。金ではなく命が動くゲーム。どんな気持ちであいつはサイをふったんだろう? 自ら・・・・・・・・・? 「男らしく・・・散ったつもりか・・・?」 今度酒でも投げてやろうと、俺はそこを後にした。 クソ小説を書いた俺こそがクソなのか・・・そうかそうか。次は「コーヒー」「夜」「刹那」だそうだ。
長くてスマソ。ホントスマソ。 最後まであなたにクソを見せないために。次は「コーヒー」「夜」「刹那」です。
251 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/26 13:01
「コーヒー」「夜」「刹那」 その夜、10杯目のコーヒーを飲んだ。 しかし、コーヒーの与えてくれる覚醒ももはや刹那的なものでしかなかった。 「ううう、まだ眠るわけには行かないんだ。原稿をあと3枚仕上げるまでは・・・眠る・・・わけに・・・は・・・」 けれども、睡魔に抗えるほどの力は僕には残っていなかった。 夏コミ、新刊落ちました。 次は「銀河」「英雄」「雌雄」
252 :
エヴァっ子 :02/08/26 14:04
正義のヒーローを信じるか? と言われて、信じると言い切れる人間は珍しいだろう。 だが俺は信じている。というより、いたのだから当然、といった感じだ。 そう、あれはまだ新世紀が明けて数ヶ月しかたっていないというのに始まり、そしてその後数年か続いた銀河戦争のときだった。 それは地球圏や火星圏を持つ帝国と俺達、宇宙コロニー住む人間が、雌雄を決するための戦争だった。 まだ新兵だった俺は、その戦争の真っ只中にヒーローと会った。 ヒーローは俺が所属する部隊の隊長で、小柄ですばしっこく明るい人だった。 皆、戦争の死の恐怖で疲れきっているはずなのに、隊長と何かを話すと皆明るくなった。 隊長を守るために死んだ仲間も何人かいたが、その行動に皆迷いは無く、誇りの中で死んだ。 そんな隊長の元で動く俺達の士気は当然高く、皆暗い戦争の中で輝いていたと、俺は思っている。 とはいっても英雄勲章をもらえるほど、俺達は活躍したわけではない。 ヒーローってのはそんなもんだ……と隊長は繰り返し言ってた。 大勢の人を殺せばヒーローか? いいや、違う。大勢の苦しみを共有し、溶かしてしまうのがヒーローだと。 だが、俺のヒーローもつい先日死んだ。 死なないでください、と何度も頼んだがヒーローはあっけなく死んだ。 死の間際に、ヒーローに頼るな、おまえがヒーローになれ…………そう言い残して。 正直言って俺は自分がヒーローになれるとは思っていない。 だが……もしなれるんだったら……隊長のように、ヒーローになれるんだったら……なってみるのもいいなぁ。 次は「仮面」「人間」「潔癖」で。
「人間」「仮面」「潔癖」 私は今、恋をしているわ。とてもかっこよくって、優しい人間。男の人。私は彼を誰よりも深く想っているの。 でも、想いだけでは恋心は伝わらないのよね。彼の部屋に行こうかしら。でも・・・ 私は思い切って、彼の部屋に行ってみる事にした。恋心という仮面をつけて。 いままでは、彼の部屋に行こうと思ったら行けたのに、行けなかった。けど、今はもう、行ける。 私は彼のお母さんが私の邪魔をしようと箒でひっぱたこうとしたけどそんな事はお構いなしだった。 ほら。もう彼の部屋の前。 ドアの隙間からそっと忍び込み、彼の様子をうかがった。眠ってるわ。 しばらく彼の隣で、幸福感に浸った。本当に私、幸せよ。 その次の瞬間、私の目の前に何かが被さって真っ暗になり、彼の顔が見えなくなった。 俺は目が覚めた。よく寝た。布団はぐちゃぐちゃだった。寝返りを何回もうったらしい。 そのとき、背中に何かの異物感を感じた。手で背中を触ると、ぬるっとした液体がついていた。 その手を確認する。 「うげっ!なんか虫を背中に轢いちまった!きったねぇ・・俺、潔癖症なんだよ」 その虫の小さな恋心は水と一緒に流された。 食事中の方は、すいません。次は「都市」「誕生日」「下水管」で。
246>なんかねたはずれになっちゃってます^^;ボーっとしてたから・・ つうことで、訂正版 「学校」「屋上」「時計」 夜の学校は気味が悪いものだ。 オレは、野球でどちらのチームが勝つか、という賭けに負けて、 肝試しをやらされている。夜の学校を、一人で靴箱から屋上までまわれ、といわれて このありさまだ。教室の写真を全て撮らなければいけないので、ずるはできない。 あんなバカらしい賭けしなけりゃよかった。 オレはもう中二だが、やはり怖いものは怖い。 写真をとりながら、校内を回っていく。教室の時計を見ると、もう12時は過ぎている。 がみがみと言う親がいないのがせめてもの救いだ。 そして、屋上。 オレは屋上の写真を撮り、校庭に戻ってきた。 「どうだ?怖かったかぁ?写真ちゃんととったか?」 「ああ。俺が現像しとくよ」 「いいぜ。ただし、ちゃんと明日写真もってこいよ。」 そしてすぐに写真を現像した。 これで当分金には困らないだろう。 オレはかすかに口元がゆがんだ。 屋上でたまたまとれた、男子生徒がレイプしている写真を見ながら。 お題は、「都市」「誕生日」「下水管」で続行です。
255 :
英雄、雌雄、銀河 :02/08/26 16:05
時には百の詭弁を弄して自らを奮い立たせるのも必要だろう。今こそ戦いの時だ。 花子の前で、太郎は動悸に胸踊らせていた。その横の次郎もおそらく同じだったろう。 そしてその三人の周りには彼らを見守る大勢の観衆達の視線があった。 「僕は世界で一番あなたのことが好きです! お願いします!」 言った。太郎はついに。彼の内面では彼自身を英雄と讃える賛歌が歌われ、全力で戦い抜いた彼を労っていた。もう言うべきことは言った。あとは敵の出方次第だ。 太郎は次郎を横目で見た。この痩せた眼鏡の男は緊張で、見苦しくも唇を青く震わせている。もう雌雄は決したも同然だ。太郎は勝利を確信した。 と、その時だった。 「ねえ、あなたも何か言ったら」 かれんな花子の声が次郎にかけられた。これはなんということか。まるで彼女は次郎の言葉を待っているようだ。太郎は動揺した。 しかし、すぐに彼はそれが花子の優しさであると判断した。そう、フリータイムの時から、彼女は皆に優しかったではないか。 彼女は単に、続く沈黙でどんどん惨めになっていく次郎に同情しただけなのだ。 「あ、あの僕は…」 ようやく、次郎が口を開いた。 「ぼぼぼ僕は銀河系で…い、いや宇宙で一番花子さんのことが好きです!」 太郎はこの次郎の台詞に内心大笑いした。宇宙で一番とはなんと子供じみた言葉であろうか。お前の恋愛対象には火星人でも含まれるんかと。 だが、そんな太郎の嘲りをよそに、次の瞬間、 「はい、喜んで。次郎さん」 と、花子が次郎の手を取った。太郎は愕然とした。その後ろで番組司会者の「おーっと! 三組目のカップル成立だあー!」という叫びが聞こえた。
数少ない情報を辿り、ついに私はある地方都市で「彼」と会う事ができた。国民的ヒーローとまで 呼ばれた男が煤けた作業着に身を包み、下水道で働くその姿に、私は落胆の色を隠せなかった。 「どうして……世間から姿を消したんですか?」 「……疲れたんですよ……戦い続ける事に。それに、私の本職はもともとこっちの方ですしね。」 下水管のネジをキリキリと締めながら、彼は言う。 「……この世界は十分に平和になった。もう、世界にとって私は必要のない存在なんです」 「そんな事はありません! 私は、子供の頃からあなたのファンでした。誕生日には必ず、あなたの 玩具を買ってもらっていました……あなたを見ながら大人になって、正義を愛する心を学んだのです。 そんなあなたの勇姿を……正義を信じる事ができない今の子供達にも、見せてあげたいのです」 「……だが、そうやって周囲におだてられ……私はどんどん傲慢になっていった。いつしか、正義の 心を忘れるほどに、ね……私には、ヒーローになる資格なんて最初からなかったんですよ」 そう言うと、彼はかつてのトレードマークでもあった赤い帽子を深くかぶり直し……それ以上、 何も語ろうとはしなかった。 だが、これだけは確信できた。彼の目は、まだ死んではいない……いつか再び、世界が闇に包まれ ようとした時、彼は復活するだろう。正義の味方、スーパーマリオとして。 次は、「脱藩」「戦犯」「カレーパン」でどうぞ。
257 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/26 18:25
「脱藩」「戦犯」「カレーパン」 彼の遠い親戚筋の先祖に坂本竜馬がいる。 坂本竜馬は土佐藩の下級武士の子として生まれ、のちに脱藩して日本の近代化に多大な功績を残した。 彼が美味しそうに食べているカレーパンもそのおかげで食べられるというのに、彼は先祖に感謝したこともなかった。 なぜなら彼には過去のことを考える余裕など微塵もなかったのだ。 「少将閣下、会議の時間であります」 「うむ」 彼はこれからこの国の行く末を考えねばならなかった。どうやって戦争に勝つのかを。 彼はこの数年後に戦争が終結したのち、戦犯として裁かれることになるのだが、このときの彼には知る由もなかった。 次は「夜」「星」「霧」
258 :
機甲自転車 :02/08/26 18:42
>次は、「脱藩」「戦犯」「カレーパン」でどうぞ。 ↑韻を踏んだだけっすか? こんなに上手いカレーパン(ナン)は始めてだった。質素な素材で作られているが 差し出してくれた村娘の笑顔と民衆の歓声が最高の調味料だった。 私は英国インド総督からみれば日本人に荷担し主人に銃を向けた許しがたい 土人だった。事実、インド国民軍兵士反逆罪を犯した戦犯とし裁くべく交流し 処分を待っていたのだ。中部の藩国に住んでいた私は8年前現地の駐屯部隊に 編入されていた。そしてまもなく極東情勢の悪化に伴い部隊は兵力増強の為 脱藩、マレーへ移送された。勿論、皆、いけ好かない征服者の為に命を投げ出す 気は無かった、そのとき日本軍は泥沼の中国大陸出見せたような残虐性を見せなかったし、 蔑まされつづけてきた有色人種が白人に勝利を続けている事に感動した。英国をインド から追い払って欲しい、というのが私達の偽らざる心境だった。そして在マ英軍降伏し で日本軍の捕虜になったとき、日本の庇護を受けるチャンドラ・ボースの国民軍に 加わることを決意したのだった。志願者は現地人の卑屈さをすて、誇りを取り戻した。 それは、地獄のインパールでも、戦後の収容所でも変わらなかった。 変わっていたのは、民衆達だった。「処罰の反対」「インドに自由を」の声が 塀の外から聞こえてくる。声は日に日に大きくなり英国人達にも動揺が広がっていく、 正直、強制労働で家畜のように死ぬのかの弱気になっていた。しかし、何かが変わる と言う予感を民衆のシュプレキコールが押し広げるのを感じた。私は翌1956年戦友 の墓を訪ね行った「おまえの死は無駄では無かった、来世で良い生まれ変わりを するはずだ、やったぞ!英国人どもが出て行った!世界は俺たちの元に戻ったのだ!」
259 :
機甲自転車 :02/08/26 18:47
>戦犯とし裁くべく交流し →戦犯とし裁くべく拘留し >死ぬのかの→死ぬのかと >墓を訪ね行った→墓を訪ね言った 次のお題は 「落ちた」「言葉」「やさしさ」
260 :
機甲自転車 :02/08/26 18:50
続けてスマソ >出見せたような→で見せたような >1956年→1946年
263 :
機甲自転車 :02/08/26 20:48
では>次は「夜」「星」「霧」 僕は彼女の手を引きながら岩地にいた。手を離そうとしないのはお互いの不安を和らげる だけで無く、夜と供に山へ吹く風が冷え込む気温で凝結し霧が立ち込め始めたからだ。 ますます霧は濃さを増し一度離れたら離れ離れになってしまうのではないか、と思う ほど濃くなってきた。 「もう、あいつらは追いかけるのをあきらめたのかも」 「いや、少しでも遠くへ逃れないと」 僕たちは車で追ってこれない山麓に沿った経路で追っ手から逃れる事を目論んだが 奴らが、2人が通った形跡をたどって執拗に追いすがってる事は、化け物の目玉の ような照明灯らしい光が主張していた距離は許容範囲だが恐ろしい。彼女の顔に疲れ が見える。「そろそろ、休もう霧が僕たちを隠してくれる」 下手に動き回るのは危険だった。地図によると方向を間違えると 逃げ切れない地形であることは明白だった。今までは地形を見て 何とか現在地を確認していたのだが・・・。 「さてどちらが北かな」「分からないの?」お互いを更なる不安が襲う。 「コンパスの持ち出しにしくじった、山にぶつかる雲のせいで星で方位を測る事 もできなければ、植物の育ち方で判断しようにもこの岩地だ。夜中動けないと 逃げ切るのは無理かもしれん」 「昨日お星様にお願いしたの聞いてもらえなかったみたいね、ラジオで方角は 分からないし・・・」ここでハッとした、僕はラジオのイヤホンを石で叩き割ると 中から磁石を取り出した。「針のような者は無いか?」 彼女は髪に手を当てヘアピンを差し出した。僕はそれに磁石をこすりつけ、草の葉 の上に重ねた。水筒を取り出しコップに水を注ぐと、ヘアピンを浮かべた。 すると生き物のようにそれはある向きで動き止まった。どちらが北を指している かぐらいは河の流れで分かる。彼女と顔を向け合い 進もう、とだけ言い腰を上げた。お互い希望が待っている方角に目を向けた。 完 理科で習った記憶によれば可能だと思う。 次は「汗」「気遣い」「今日」で
「夜」「星」「霧」 俺は一代決心をしていた。彼女と付き合い始めてもう5年。 今日こそ、言おう。 彼女といつものようにドライブをした帰り。 もう、辺りは黒いベールを被っていた。夜だ。 よしっ!!言うぞ・・・言うぞぉ!! 「ちょっと・・車から降りてくれないか?」 俺はもう、外の景色すらまっすぐに見れなかった。 「何?」 「うっえっ・・・と・・・」 なに、ちょっとくさい台詞のほうが女はぐっと来るんだ!! 「こ・・・この満天の星空を、全て君にあげるから・・・けっけけ結婚してください!」 「・・・空、霧かかってるけど」 この瞬間、俺の恋は終わった。 ったく・・あんなくどい台詞いわなきゃ(以下略) 次は「落ちた」「言葉」「優しさ」でいいでしょ。
「夜」「星」「霧」 俺は今、大決心をしている。彼女と付き合い始めて5年。 もうそろそろ言ったほうがいいだろう。 いつものようにドライブを楽しんだ。 空はもう、黒のベ−ルで包まれていた。 よし、言うぞ、言うぞぉ!! 「ちょっと、外に下りてくれない?」 「えっ・・いいけど」 俺は彼女の顔どころか、周りの景色すら見えなかった。 大丈夫。女はちょっとくさい台詞のほうが利くんだ!! 「お・・・俺は・・この満天の星空を、き・・君にあげるから、け・・けけ 結婚してくれ!!」 「空・・霧かかってるけど」 この瞬間、俺の恋は終わった。 ったくよぉ・・あんなくどい台詞にしなけりゃ(以下略) お題は「汗」「気遣い」「今日」です・
266 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/26 21:10
ん? どっち?
すいません!!ばぐった・・ 連続投稿しちゃったようで・・ 汗、気遣い、今日です。
268 :
汗 気遣い 今日 :02/08/26 22:51
クーラーは身体に障るからとなるべく切り、その変わり、 妻と娘が交代で、団扇で扇いでくれる。 それでも汗がうっすらと額に滲むと、それを見逃さずに、そっと 白いガーゼのタオルで拭ってくれる。 柔らかいお粥をそっと匙で掬い取り、もう起きあがる事も難しくなった 私の口元へと運んでくれる。 癌の転移のせいで正直味覚などなくなっていて、粥が喉を通る度に口腔に 激痛が走る。 それでも、二人は健気に辛抱強く、私が粥を飲み込むのを待つ。 その気遣いが嬉しい。 病院を半ば無理に退院し、自宅療養に切り替えてからというもの、 今日という日が、美しく、濃厚に過ぎて行く。 人は皆そうなのかも知れないが、どうして一番大切な事を、残された 時間がほんの僅かになって気付くのだろう。 窓の外では、夏を惜しむように蝉が鳴いていた。
次のお題は 冷蔵庫 ベッド ヒットチャート でお願いします。
270 :
冷蔵庫 ベッド ヒットチャート :02/08/27 00:08
「こ、これ下さい!」顔を真っ赤にして本をレジに出す。 ずっと気になっていたのだ、棚の上で埃をかぶっていたこの本が。 一応名作らしいが、背徳的なベッドシーンがある事は明白だった。 見つけて1ケ月、この本は自分のヒットチャートを密かに独占していた。 あの店員さん、どう思ってるだろうか。 「まあ、近頃の女学生ときたら…」ああ! 息を切らして家に帰ると、従兄の夏彦さんと鉢合せ。 「お帰り妙子ちゃん。スイカ切ってよー」 「あっ、ごめんなさいお従兄様、冷蔵庫に入れたばかりで」 言い訳もそこそこに二階へ、震える手で、ページをめくる… 30分後、彼女はうなだれて二階から降りてきた。 「スイカ切りますね」本当は、包丁を握る気力もない。 「従妹ベット」バルザック著 濁点がないなんて、そんな、そんな… 彼女の期待と妄想は、ものの見事に裏切られたのでありました。 ※やっと遅れずに書けた・・・ 次のお題は:「三角州」「城」「マイクロ」で御願いします。
271 :
冷蔵庫 ベッド ヒットチャート :02/08/27 00:23
冷蔵庫がうるさい。 俺は窓を締め切って蒸し風呂のようになった部屋の中で一人、傍らに置いた ラジオを聞いていた。 このぼろアパートの壁は紙みたいに薄いので、音量はぎりぎりまで小さくしておく 癖がついている。 ラジオの中で誰かが叫んでいる。 「CMに引き続き、今週のヒットチャートの発表です」 ああ、それにしても、冷蔵庫がうるさい。 俺はラジオをつかむと、ベッドに寝転んだ。ラジオは枕元へ。 一瞬、生臭いにおいが鼻をかすめる。 ラジオから聞こえる声が変わった。 「番組の途中ですが、ここでニュースをお伝えします。今日午後、××区の ゴミ置き場で発見された、首が切り取られた死体の身元について、警察では 指紋の照合により現在指名手配中の○○○○容疑者と断定するとともに…」 喉が渇いてきた。この暑いさなか窓を締め切ってりゃ当然だが。 ほんの少しの騒音でも人の部屋に怒鳴り込む我が隣人は指名手配犯だった。 奴に追われてる自覚はあったのだろうか。あったからこそ些細な騒音に怯えたのか。 冷蔵庫がまたうるさくなりだした。 ああ糞、喉が渇いた。冷蔵庫にビールは残っていたっけ。 だが冷蔵庫を開ける気がしない。 そう何度も生首と目を合わせるのはごめんだからな。
272 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/27 01:04
「三角州」「城」「マイクロ」 Hi! Guuys! ご機嫌よろしくてなによりだ!え? そんなによろしくな い? このクソ暑さでばてばてだって?OK! そんなあなたにこのフレッドが とびっきりファンキーでクールなファンタジックスリラーをお送りするよ! 今回紹介するのは日本製! さすがアニメの国だけにイカしてるぜ! 暑い夏のある日。街のお城の真上に突然閃光が走り、そのマイクロウェーブで ゾンビがウヨウヨはいだして来るんだ。その気持ち悪さったらないね。皮膚がべ ろべろで、それをズルズル引きずって歩いてる。でも水を飲ませると死んじゃう んだ。だからみんなゾンビを河に突き落とすんだけど、河はそのうちゾンビの死 骸で埋まっちゃう。しかし、その都市は三角州にあるから、もう逃げ場なし!恐 怖で主人公なんて毛が全部抜けちまう。ヒュウ! しかもコレ、実話だっていうんだ! いや、日本って心底凄いぜ! 俺たちアメリカの田舎モノなんかニャ、想像もつかないワンダフルミステリー ワールド! ああ、題名を忘れてたな。”Gen the Naked foot” 日本製コミックだ。 必ずチェックしとくんだぜ! Bye! #次のお題は「サンバ」「うに」「国際映画祭」で。
273 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/27 01:17
「冷蔵庫」「ベッド」「ヒットチャート」 昨日も、ご主人様に殴られた。左の頬の腫れが少し残っている。でも、少しは進歩してきた、と思う。 この屋敷に住み込みで勤め始めて、もう3年になる。山奥の大きな洋館。住人は私とご主人様の2人き りだ。ご主人様は、普段は温厚で優しい方だ。けれど時おり癇癪を起こされて手がつけられなくなる。き っかけは、私がわざと作っている。聞こえないはずの「音」を意識していただくのだ。 彼は……いや、ご主人様は、元プロミュージシャンだ。早熟の天才と呼ばれ、作った曲は必ずと言って よいほどヒットチャートの上位に顔を出した。そして成功を謳歌している、そのさなかに交通事故に遭い 聴力の全てを失い、芸能界から去った。今はこの屋敷から一歩も足を出さず、身の回りのものは全て音を 出さないモノを使い、音を出すものには近づかない生活を送っている。特に台所には絶対にお見えになら ない。水道水の流れる音、包丁とまな板が奏でるリズム、冷蔵庫の低い声といった生活に不可欠な“音楽” を聞きたくない、いや、感じたくないのだろう。 もちろん、出すぎた真似をしているということは承知している。けれど、音と縁を切ったように見えて ご主人様は時々足でリズムをとっていたり、手でギターを引くような素振りを見せる。結局、あの方の中 で音楽はしっかりと根を張って生きているのだ。なら、その音楽で少女時代を支えられた私が出来ること は一つしかない。そしてそれはご主人様も心の底では分かってくれているに違いないと思う。そうでなけ れば、静謐の世界を作るために雇われた私が首にならないわけが説明できないではないか。 今朝は、何をしようか。ベッドの側のカーテンと窓を大きく開けて、目の前に木に集まっている小鳥た ちを見ていただこうか。考えを巡らせながら、ドアの前に立つ。少し怖いけど、それを振り払うように明 るい笑顔を作り、ノック代わりに来訪を知らせるためのランプのスイッチを押した。 「愛しています。ご主人様」 また遅れてしまった……しかも長いし。スマソ
274 :
的 ◆SpLWlLC. :02/08/27 01:51
「サンバ」「うに」「国際映画祭」 (私がサンバを習いたいと言うことに、お母さんはなんと言うのだろうか…) 当然の用に彼女の母親はお産婆さんなのである。 その心境は言わば素潜りでアワビやうにを採って生計を立てる海女の母親に 『わたし尼になりたいから、仏教系の大学に行かせて』と頼む何処かの漁村の少女に近いものだ。 「産婆の娘がサンバなんてねぇ…」 そんな不名誉な井戸端会議を成立させて母には恥をかかせたくないのだ。 だいたいてめぇらのガキも母の手助けあってのことじゃねぇか、もう子供は愛せないのな。 でもそれでも彼女はサンバを踊りたいのだ。 あのね、ある国際映画祭で栄誉ある賞を受賞した映画でね、主人公の女の子は… とでも切り出してみるかな。 映画には疎いくせに、外国とか賞に反応せずにはいられないのは 残念ながら自分の母親も込めて大体の日本人がそうだ。きっと食い付きが良いトピックスだろう。 ってな洒落っ気満載の来世に生まれ変われますよーに♪ 私はいじめを苦に自殺しますさようなら。 #久しぶりに即興文。楽しい。 #次は「募集」「自信」「アフターケア」で宜しく願います。
275 :
「呉越同舟」「臥薪嘗胆」「白河夜船」 :02/08/27 06:58
従業員募集の張り紙がガラス扉にひらひらと風に舞っている。 薄茶色の扉のその向こう、しかし従業員は愚か客の一人すらいない店内で、網崎はタバコをくゆらせていた。 喫茶店、ハウエルの店長である。 コーヒーの味には自信がある、とは本人談。 内装はどこか懐古的な風情で、空間に流れ込むジャズとよく似合っていた。 そのジャズをかき消すような勢いで、扉が開いた。現れたのは制服を着た女子高生だ。 「今日はお前か」 網崎は呆れるように言う。彼女はそれに構わず、店内をへと駆け込んでくる。 「っていうか今、彼氏が追っかけてきてんの!お願い、助けて」 息せき切って彼女は叫んだ。やれやれ、投網崎はため息をつく。 「俺が言った通りにしたのか?別れる時に」 「したわよう・・・・ちょっぴり余計なことを言っちゃったかもしれないけど」 「余計なこと?」 「うん・・・その趣味の悪いアクセサリーと脂肪をどうにかしてよねって」 網崎はもう一度だけ、大きく息を吐き出した。見ればガラス戸の向こうにすごい形相の男が、のしのしと駆けて来る。 客は来ない、来るのはこういうガキばっかりだ・・・。 なかば青少年悩み相談所と化した喫茶店ハウエルは、彼の思惑如何にかかわらず今日もアフターケアに余念がない. どうでしょうか?つぎは「爪切り」「口紅」「恋人」で。
すいません、上の即興文のお題は「募集」「自信」「アフターケア」です。
277 :
募集、自信、アフターケア :02/08/27 07:55
「エキストラ募集! お顔に自信のない女性を三名募集しています。日給二万。委細面談」 スポーツ紙にこんな求人広告が掲載されたのは今から一ヶ月前。エキストラというには募集人数が少なすぎる不可解な内容。しかし日給二万は破格だ 今、都内某所のとある事務所内では、我こそは一番のブスと自負する女どもがその審査を待っていた。 集まったのは二十人。いずれ劣らぬ強者達だ。 審査は二つ、面接審査と水着審査だった。どちらも審査の基準はいかにブスかということだ。女達は必死にブスさをアピールする。それはそれは壮絶な審査であった。 やがて審査は終わり、女達は一人づつ個室に呼び出され、結果を聞かされることになった。番号を呼ばれると、皆、緊張の面もちで別室に向かう。 しかし、そこで待っていたのは今までの審査員ではなく、アイドルかと見まごう美青年だった。美青年は実に甘い声でこう言う。 「残念な結果です。あなたは美しすぎるので、当社の募集内容にはそぐわないと判断されました」 こんなことを言われると、当たり前だがブスは驚く。美青年はさらに続ける。 「美しすぎるとは、今の外見を言ってるのではありません。元々我が社の必要としている人材は、整形手術によってもどうにも美貌を獲得できない女性達です。 そういう方々を集めて、今の整形一辺倒の風潮に風穴を空けたいというのが、我が社の狙いなのです。 しかし、あなたはそれに適さない。あなたは整形でいくらでも美しくなれる方だ…」 ブスは激しく動揺する。美青年はさらに、その耳元でささやく。 「もし、後でお時間を頂ければ、個人的にいい病院を紹介しますよ。アフターケアもご心配いりません。僕は、あなたの美しくなった姿を見てみたい…」 こんなことを言われて、断るブスがどこにいるだろうか。結局、美青年がその言葉を全員に言ってるとも知らずに、ブスは全財産を彼にゆだねてしまうのだった。 わかって頂けましたか? このような悪徳商法は我々美容外科医の恥です。 このような求人があっても、決して応募してはいけませんよ。あなたは元々美しいんですし。 ただ、整形すれば、もっと美しくなれますがねえ…。
従業員募集の張り紙がガラス扉にひらひらと風に舞っている→ガラス扉に貼られた従業員募集の張り紙がひらひらと風に舞っている。 たびたびすいません。
「爪切り」「口紅」「恋人」 夫がおかしい、と思い始めたのは3週間ほど前からだ。 上着のポケットに何気なく手を突っ込んでみると、ティッシュのような物が入っている。 だらしないな、と思いながら、そのティッシュを捨てようとすると、赤いものが付着していた。 よく見るとそれは口紅だった。それは、毎日のように入っていた。 そしてまたある時は、爪切りで爪をを入念に切っている夫の姿を見た。 手の爪だけでなく、足の爪まで丁寧に切っている。やすりまでかけていた。あの不精者の夫が。 「私が切ってあげましょうか?」 そうたずねると、夫は大変慌てた様子で、 「いや、いい」 と、しどろもどろ答えた。本人は普通を装っているようだが、何かを隠している、というのは目に見えていた。 情事の時も、今までよりなんとなく冷めた様な、そんな感じがしていた。 帰りも遅い。そして、私はついに夫に問いただしてみた。 「ねぇ、あなた、何か私に隠してない?」「えっ・・・どういうことか判らないな」 夫の態度が変わった。やはりそうだ。 「背広のポケットに、口紅がついたティッシュが入ってたの」「それは・・女性とぶつかった拍子に背広に付いちゃったのを拭いたんだよ」 「へぇ。毎日女とぶつかるなんて事があるのね」 「・・・」「どうなの?おとなしく白状しなさいよ!!」 もともとおとなしい性格の夫だ。これだけ問いつければ話してくれるだろう。 「悪かった・・全部話すよ」 そして、夫はゆっくりとした動きで、自分の部屋に向かった。 待つことおよそ15分。私の目の前に、美しい女が現れた。文句を言おうと構えた時。 その美女は、野太い・・・夫の声で喋った。 「つい出来心で、お前の鬘と口紅を使って、女装してみたんだ。そしたら、俺の好みの女になってた。 俺は変われたんだ!バーでも人気だ。俺、俺に恋しちゃったんだよ。こういう道に目覚めたんだ!!」 力説する夫を尻目に私は呆然とその場に立ち尽くしていた。 ながっ!!次は「列車」「空」「最果て」です
281 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/27 16:16
>279 おもろいけど5〜15行目安ですよ。
あ!!すいません、ミスってます。正しくは >14行目「ねぇ、あなた、何か私に隠してない?恋人が別にいる・・とか」 >19行目「どうなの?おとなしく白状しなさいよ!!浮気してるんでしょう!?」 です。
あ!!またミス発見してしまいました・・ 問いつければ→問い続ければ 普通を装っている→平然を装っている です。
284 :
名無し物書き@推察中? :02/08/27 19:39
「つまり僕は推理の限界に挑戦したいんだよ」 と、武田が物憂げにぼやいた。 「推理の限界?」 片方の眉を吊り上げて、首を横に振るノドカ。 「尋常じゃないわ」 二人は横浜環状線を乗り継いで、ローカルの小編制列車に揺られていた。 「それにしても軋み過ぎなのよ。ボロいのよ、このトレインは」 「お嬢様気分じゃ困るんだよ」 武田は眉根を寄せて不機嫌に拳を額に当てた。窓に視線を移す。 「いいかい、これから僕らは観光旅行に行くんじゃないんだぜ。怪盗を追ってるんだぞ」 「時代遅れなのよ、怪盗なんてのは」 ノドカは武田の心情を無視して酷評した。「ばっかみたい」 「ばかみたいでも何でも結構だけどね。黙っててくれ」 列車は静かに線路をすべって行く。時折揺れるが、乗客が少ないせいか車内の空気は動かない。 「一つ言わせてもらえば」 視線をノドカに戻す少年探偵。 「それらがみんな時代遅れだと言うなら、ミステリの最果ては一体どうなるんだ?」 ノドカは少し考えてから、答えを出した。 「先のことなんて、考えてる暇ないわ。興味もないし」 ノドカの言葉が終わらぬうちに、武田は再び窓に視線をやった。空ばかり見ていた。 次は「予定」「歌」「可能性」で。
285 :
「予定」「歌」「可能性」 :02/08/27 21:29
「今度、うちで売り出す新人なんです、是非、先生にお願いしたいんです」 俺の目の前に写真を数枚置いて、林は俺の相槌を待たずに言葉を続ける。 「歌の内容としては、癒し系っていうか、ほら、未来の可能性みたいなで」 「それで?曲はアップテンポで?」 「そうです!流石、先生!」 俺の言葉を肯定とでも思ったのか、林は嬉しそうに首を何度も振った。 「どうです可愛いでしょ?もし先生が1stアルバムもやっていただけるのならプライベートレッスンもOKですよ」 「期待の新人なんだろう?もう少し大事すれば?」 「いやあ、この子くらい歌うのはまだいますし」 「ふーん」 俺は写真に手を伸ばすフリをして、手の甲で水の入ったコップを倒した。 「うわっ!あっ!先生、大丈夫ですか?何か拭くものっ!」 林は写真より俺の方へと手を伸ばした。写真はこぼれた水にまみれて揺れる。 「ああ、今日は暑いからすぐ乾くよ」 「え?でも、まだ打ち合わせお願いしたい事が・・・」 「すまん、予定が一杯で無理だ」 伝票を取り上げ、俺はレジへと向かった。林が引き止める声を上げたが、俺は後ろも見ずに店を出る。 むっとする外気に、今更、大人気ない事をしたと気がついた。 林があること無い事いいふらしたら、今後の仕事にさしつかえる。 「ま、庄司さんの方に一言いれておくか」 携帯を取り出し、林の上司のナンバーを呼び出す。どこかの店が大音響で音楽を流していた。 大量生産される歌手が聞き取れない舌足らずな歌で、可能性の歌を歌う。 口元に皮肉な笑いが浮かぶ。 コール音が途切れ、聞き覚えのある声が出た。 「あ、庄司さん?いつもお世話になってます・・」 ======================= すいません、長すぎT_T
お題、次は「電話」「道路」「広場」でどうでしょう。
287 :
「電話」「道路」「広場」 :02/08/27 21:52
キミは引きこもっていた部屋からでる。 腹が減ったと何度叫んでも、誰も食料をもってきてくれなくなったからだ。 家の中には誰も居ない。キミは自分の親がどんな顔をしていたのかすら忘れている。 駅前の広場脇にコンビニがあったことを思い出し、キミは家を出る。 家の前の道路はまっすぐ東へと伸び駅前の広場へとつながっている。 「誰か!誰かいないか?」 広場には誰もいない。 コンビニ横の電話ボックスの中の電話は受話器がちぎれていた。 キミは最後の人類となり。 ようやく孤独とは何か知る。 ==================== 暗い・・・−−;
「電話」「道路」「広場」でいいのかな? 湾岸道路を抜けると、そこはまだ何もない埋立地だった。 「ここはね、将来子供たちの為の広場になるらしいのよ。」 助手席の義姉の声は心なしか嬉しそうだった。 突然の電話、義姉の声は震えていた。 兄は今日、海外出張から帰ってくるはずだった。 「飛行機が・・・・・・ね。飛行機が・・・・・・ね」 電話口で義姉は何度も何度もそううわごとの様に呟き続けるだけだった。 胸騒ぎを感じた僕は取るものも取らず兄の家へと車を走らせた。結局事の真相を を教えてくれたのはつけっ放しだったカーラジオだった。 兄の乗った飛行機は、着陸に失敗し滑走路手前の海に墜落した。 空港へ行こうと言う僕に彼女はこの場所へ連れて行って欲しいと言った。 そして、ここからは真っ二つに燃えさかる飛行機がよく見えた。 「ここね、お兄さんがデートに連れてきてくれたのよ。だからね、ここなら ・・・・・・あの人も私を見つけてくれるんじゃないかなと思って」 義姉は涙を浮かべながら微笑を浮かべていた。僕は、何も言えずただ立って いるのがやっとだった。 16行、中途半端。 次のお題は「残暑」「陽炎」「見送り」でお願いします。
289 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/28 00:52
「残暑」「陽炎」「見送り」 −−残暑厳しき折、いかがお過ごしでしょうか。突然でございますが青田一之 (享年68)が急逝いたしました…… 突然見知らぬ宛名の訃報が舞い込んできた。どうやら、この部屋の前の住人 に宛てたものらしい。大家に聞いてみたが、引っ越し先はわからないという。 私は、葉書に記されている故人の告別式に行くことにした。当然面識などな いわけだが、何故そこに行くかと言えば、故人が「著名人」であり、その大仰 な式典を一度覗いてみたい、と言う出来心だった。どうせ宛名の人物を騙って もばれやしない。ばれても代理を改めて騙るだけだ。 目論見通り潜り込んだ私は、実に愉快だった。哀しみに包まれたその式場で 私はただ一人その感情を共有していなかった。無防備に感情を晒す無数の有名 人を見ていると、奇妙な優越感を感じた。そこでは私だけ特別だった。 私はお焼香を上げに参列した。やがて私の番になり、TVカメラの存在を意 識しつつ、神妙な面もちをつくり香をくべた。踵を返して帰ろうとすると軽く 肩を叩かれた。フッと振り返ると棺の故人と目があった。死人が目を見開いて 私をにらんでいたのだ。私はすんでの所で腰を抜かすところだった。 陽炎の中に消えていく霊柩車を見送りながら、私は故人の成仏を心から願っ た。ゴメンナサイ、ゴメンナサイ。ゴメンナサイ。そう呟きながら。 #次のお題は「こだま」「とうもろこし」「最優先事項」で。
290 :
機甲自転車 :02/08/28 01:32
クッキー切れで届いてなかった。はうあ >募集、自信、アフターケア ドアの音が彼の帰宅を告げる。 私は急いで出迎えに出る、緊張している事が自分でも分かる。 新人賞に応募した渾身一擲の自信作が入賞作品に名を連ねている 事を確認しに行ったはずの彼は、口を開きかけた私と目が合うなり、 後にしてくれ、とだけ言って力なく今に向かいソファに座り込んだ。 それから、小一時間経つというのに、まだふさぎ込んだまま物思いに ふける彼、何を聞いても上の空。 私は、そろそろアフターケアをしないとね、と心呟し彼の傍に腰を降ろす。 どう見ても不自然に強がり続ける彼の態度だけでも十分に子供っぽかったが、 そっと包む私の腕に、今は子供に戻っても良いのだ、と受けっとったか、胸の中で 泣き始めた。 やがて泣き疲れ眠る彼の顔に、今度は私を慰めてね、と囁いた。 彼の心から染み出していた涙は痞たものをいくらかでも洗い流した後、 彼の感性の枝を伸ばし、次の果実を実らせるため根元に染み込み乾いていた。
291 :
機甲自転車 :02/08/28 01:33
今に向かい→居間に向かい
今のお題がなにか混乱しちゃう
「こだま」「とうもろこし」「最優先事項」 --- 紺色の空。とうもろこしの大平原を突っきる一本の道路。そして新婚旅行中のあたしを昭雄君を載せた古いキャデラック(レンタカーだけど)。 はじめは嬉しかったその光景も、10分もすると飽きてきていた。 「ねえまだ?」 「うんまだ」 そんな気の抜けたこだまみたいな受け答えを、2分ごとに繰り返している。 車でアメリカ横断なんていっても基本的にはずっとこんな調子だった。 この旅の為だけに国際免許取ようなロマンチストの昭雄君でも口数が少なくなるってもの。 大体、どこまで行っても同じ光景。こういうのは飽きる、を通り越して人を不安にさせる。 そんな不安は、あたしの中で、段々と積もっていって、うがー、もう駄目。飽きた。 そんなあたしにぎょっとする昭雄君をほっぽり出して、あたしは助手席の窓を全開にする。 「ああもう、飽きた飽きた飽きた! なんでこんなに馬鹿みたいにだだっぴろいのよ? あたしにうらみでもあるわけ? もう、こんな国」 その時上にバッテン印を付けた白いポールがあたしの目の前を横切った。 「ちょ、ちょっとちょっと、今なんて書いてあった?」 「そんなこと言われたって、わかんないよ一瞬だったし」 「……戻ろう」 昭雄君は車をUターンさせた。 ダイアーズヴィル、20。 ポールは実は運転席側にもあって、そこにはこう書かれてあった。 「……ほら、フィールドオブドリームズって映画見たじゃない、あれにとうもろこし畑の中の野球場ってあったでしょ。 あれがあるんだよ。本当に。そこで野球を見るのが今回の旅の最優先事項。僕のね」 「昭雄君、その話これで3回目。でもいいよね。あの映画あたしも好き」 あたしたちは急に元気を取り戻した。 --- 次は「クッキー」「期限」「タイマー」で
「クッキー」「期限」「タイマー」 俺、ウルトラマンなんだけどさ、この前のヘケラモケケ星人との闘いは大変だったね。 変身してからまだ1分ちょっとしか経ってないのにカラータイマーが鳴りはじめちゃってね。 番組史上初めていきなり必殺技だしちゃった。TPO考えろってあとでえらく怒られたけど、体調悪かったんだから仕方ないよね。 今思うと賞味期限切れのクッキー食べたのがまずかったのかなあ? みんなも賞味期限切れの食べ物食べるときは気をつけてね。 じゃ、また。ジュワッチ!! 次は「好き」「夢」「幻」です。
空が真っ赤に燃える下で、一人の少年が畑の作物をかき分けるように走っていた。 同じくらい背丈があるとうもろこしで、少年の姿はほぼ完全にかくれている。 そしてどうもろこしの香りでむせかえるなか、少年は畑に作られたみぞに倒れこんでしまった。 みぞはぬるぬると液体がたまり、嫌な臭いを発していた。 遠くから、くり返しくり返し聞こえてくるこだま。 少年は口からこぼれ落ちたパンをひろい、汚れをはらうとまた口に押しこんだ。 少年は思う。早く家に帰らなくちゃ。それが最優先事項だと。 でも、どうしても少年は体をおこせなかった。そのままみぞに埋もれるようにじっとしている。 うるさいこだまがやむまでは、動く事はできない。 遠くから、くり返しくり返し聞こえてくる銃声。 やがてそれは少しづつ近くなってきた。
ああ、ごめんなさい。次のお題は294の好き、夢、幻で
297 :
好き、夢、幻 :02/08/28 06:10
ひびの入ったコンクリートの壁、防音板の所々剥げた天井。どこからか拾ってきた、薄汚れたソファ。そのソファの上に横たわり、俊樹はじっと天井を見つめている。 「ねえ俊樹、これ好き?」 不意に、由佳がそんな事を聞いた。寝たまま、首をそちらに向けると、制服姿の彼女が椅子に座ったまま、下着もあらわに片足を上げている。 「・・・嫌いじゃないな」 「じゃあ、何でしようとしないのよ」 言い返す彼女の口調にはだが、責めている様子もない。漫然と繰り返してきた問答の一つだった。 由佳が立ち上がり、彼のほうへと近寄る。夢でも見ているかのような足取りが敏樹のそばまで来た。ぎしり、とソファが小さくうめき声を上げ、彼女の身体は彼に覆いかぶさる。 暖かな体温が伝わる。 敏樹の棲家、部屋などというよりも巣といったほうが相応しいこの場所に、由佳が通い始めてどのくらいになるか。あの雨の日、ずぶぬれの彼女を部屋に入れた時から。 性行為をするわけでもなく、ただ何かを話し、たまに触れあい、そして二時間もすれば帰っていく。彼女の日常に何があるのか、俊樹は聞いたことがないしまた聞く気もなかった。 ほんの僅かだけ訪れる幻の時間、それを夢想するための場所と、相手。他人の体温というぬくもりを感じながら、俊樹は彼女の頬にそっと触れた. てな感じで。次のお題は「破片」「傷痕」「幸せ」です。
298 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/28 06:33
神聖銀行がソフトバンクの会社更生申立を損に通告!! 又、預保に瑕疵担保条項に基づく買い戻し請求!! 神聖銀行がソフトバンクの会社更生申立を損に通告!! 又、預保に瑕疵担保条項に基づく買い戻し請求!!
299 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/28 07:22
注)六段階評価です 245 「僕」の感情を中心に書こう。屋上の清々しさ、授業の憂鬱さなど いずれも言葉で表しているだけです。「僕」に語らせるのでなく 行動させる? ★★☆ 246 初めの「気味が悪い」、は後の展開を考慮すると不必要です。 「大切なもの」、とは何か分かりにくいですね。 コントラストを付けましょう。 ★★☆ 247 「住んでたんだけど」、だけど結局何なんだ? 「日毎に」「既に」など彼の口調に即具わないとこが二三。 ダムが出来るような地方に洪水は起きないと思います。 ★★ あと十個くらい書いたが消えてしまい、これしか残らなかった…
300 :
機甲自転車 :02/08/28 07:34
>299 don't mind
301 :
「破片」「傷痕」「幸せ」 :02/08/28 09:45
私が握り締めていたビール瓶が貴方の頭の上で砕けた。 目の前が真っ赤に染まる。 貴方は叫びながら私に背を向ける。 ああ、うるさいから、もう少し小さい声で話して頂戴。 あけみ?貴方が私に隠れて愛した女は、貴方のずっと先を走って逃げていく。 ほら、あんな女より私のほうがずっと貴方を愛している。 もう砕けて少し軽くなったビール瓶をもう一度振り上げる。 ねえ、わかる?アタシの愛。 貴方の頭を砕いた破片が私の手を傷つける。 どくどくと頭から血が流して倒れるアナタ。 幸せ?幸せでしょう?傷痕を見るたびに、私たちは愛を確かめあえるの。 次のお題は「魚」「米」「河」でどうでしょう。
302 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/28 10:29
「破片」「傷痕」「幸せ」
洋子は空を見上げ、大きく息を吸った。
バサ。そのまま仰向けに倒れる。背中にひんやりとした芝生の感触を感じ、洋子は今度は大きく息を吐き出した。
肺を満たした清々しい空気は、身体の隅々まで綺麗にしてくれたように感じた。小さな幸せをかみ締めて、少し体を横に向けると、芝生の先が耳をくすぐった。洋子は思わず頬を緩めると、遠くの方に目を向ける。
遥か遠く、風車がいくつか連なっている。それは大きな羽根を思い思いの方向に向けて、静かに佇んでいる。
洋子はふと「モアイみたい……」と呟いた。
ゆっくり、ゆっくりと回る風車を見ていると、急に今までのことが思い出された。夢を追いかけたこと。でも、その夢は傷痕だけを残して潰えたこと。新たな夢を探し、旅に出たこと。
もう一度、仰向けになり、空を見上げる。
未来の破片は、風車に巻き上げられて空を満たしている、そんな幻想と共に、洋子の視線の先で、何処までも何処までも、蒼い空が広がっていた。
残念、遅かった。
次のお題は
>>301 さんの「魚」「米」「河」で。
うわ。改行忘れました……鬱
「魚」「米」「河」 まだ、日本に侍がいた時代。その男は、1人河に出かけていった。 ここの所飢饉で蓄えていた食糧も全て底をつき、米一粒に何人の農民が群がることか。 男は、なんとか食料を手に入れるために、河へ釣りにきたのだ。川魚は危険と訊くが、今となってはどうでもいい事だった。 動物の骨で作った釣り針に、川虫をつけて釣りを始めた。 だが、いっこうに釣れない。「くそっ!!」そうつぶやいても何か変わるわけでもないが、何か言わずにはいられなかった。 すると、確かな手ごたえが。力の限りさおを引っ張り釣上げてみると、それは大きな箱だった。 「ああ、あんなに必死に釣上げたのに、こんな箱とは情けない。だが、ひとつ中身を見てみよう」 蓋を開けるともくもくと煙が上がった。「なんだなんだ!!ごほっごほっ・・・」 「私はこの箱の精だぞよ。出してもらったお礼に、ひとつ願いを叶えてやろう。」 「どこかの夢物語で聞いた事があるような話だな。まぁ、いいや。どうしようかの・・」 「そうだ!食べ物をくれ!!家中に・・いや、私が見見渡す限りの全てを食べ物にしてくれ!!」 「わかったぞよ。それ!」煙が一段と濃くなったかと思うと、ぽしゅんと消えた。 空から声が聞こえる。「これでお前の見るものは全て食べ物。存分に食べるがよい」 それから、男の家族、村は全滅した。男が1人残らず村人を食い尽くしたからだ。 いやぁ・・少しありがちでしたか。次は「本」「虹」「ミイラ」で。
「本」「虹」「ミイラ」 ある晴れた日曜の昼下がり、トムはパパに質問をした。 「パパ、本当に虹色ミイラなんているの?」 「ああ、勿論いるとも。パパも一度だけ会ったことあるけど、それはそれは綺麗で威厳があってミイラの中の王様って感じだったよ」 「ふうん……じゃ、僕も虹色ミイラになれるように頑張るよ」 トムは早く人間をたくさん殺して虹色ミイラにレベルアップするんだ、そしてパパとママに楽させるんだ、と心に誓いました。 それから数年ののち、トムは魔法の鍵を探しにピラミッドにやってきた勇者一行に殺されることになるのだが、そのときのトムには知る由もなかった。 次は「花束」「勇気」「未来」でおながいします。
あ、間違えてる・・・鬱。
307 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/28 18:49
「花束」「勇気」「未来」 目を閉じていてもカーテン越しの眩しい朝日が頭に染み込んでくるような、そんな感覚で私は目を覚まし た。漏れてくる光の色を見るだけで快晴だということがわかる爽やかな一日の始まりを、不安と緊張の中で 迎えた。そう、自分で決断したことなんだから、最後までつらぬき通すしかないんだ。 3年間通いなれた道をたどって学校へ着くと、門には大きな日の丸と筆で書かれた卒業式の看板。目には 入ったけれど直ぐに意識の外に追いやられてしまう。私にとって今日は大きな賭けをする日、3年間の想い に結論を出し未来の私を方向付ける日。失敗したらもう彼―――優しくて、おおらかで、私のことをとても よくわかってくれる、かけがえの無い親友―――に逢うことは叶わなくなるだろう。卒業式なんてどうでも いい。最後の日であることだけが重要だった。 その卒業式は滞りなく行われ、私はクラスの代表として、壇上で後輩から花束を受け取った。3年間の思 い出がふと頭をよぎった。入学式、体育大会、修学旅行、テストに追われた日々、部活動等、充実していな かったわけではない。そう考えれば幾分かは緊張してもよかったはずだけど、意識はすぐに彼のことに切り 替わった。どんな顔で、何て言えばいいんだろう、と。 結局、女友達に頼んで彼を呼び出してもらうことにした。校庭の隅にある乙女の像。その前で告白して 恋人同士になれれば、その絆は永遠だという。不安と緊張で心臓が高鳴り、落ち着かずに像の周りをうろつ いていると、彼の姿が遠くに見えた。普段はこんなことをしない私だけど、思わず目をつぶってお願いした。 「神さま、私に勇気をください……」 次は「メロン」「人形」「ハイライト」で
308 :
名無し物書き@推察中? :02/08/28 19:14
「メロン」「人形」「ハイライト」 崩れかかった屋敷のドアを開けると、山羊髭を生やした執事が出迎えた。 「武田様、ノドカ様でございますね。どうぞこちらへ」 東海地方総少年探偵連盟の武田と、ネットアイドルのノドカは執事の後を歩いた。 説明的な描写が入ったところで、執事は広間の扉を開け、武田は彼らと再会した。 「久し振りだね、武田君」 椅子から立ち上がり声を掛けたのは、埼玉の名探偵ヒロセ。 「この屋敷は僕らにぴったりだ。むしろ僕らのためにあるようなものだ」 握手を交わしながら、武田はそこの面々を確認した。栃木のハル、名古屋の相田、山口のタダシ。 「なかなかの粒揃いだな」 武田の言葉にヒロセはニヤニヤした。「屋敷はもっと素晴らしい」 名古屋の相田が、席を立って広間の奥にある嵌め殺しの窓を叩いて見せた。 栃木のハルは、ピアノの上のフランス人形を持ってきて抱きかかえた。 山口のタダシは、長テーブルの上からメロンをぶら下げてきた。 「なるほど、嵌め殺し、人形、メロンね……って、メロンは関係ないだろ!」 武田精一杯のノリツッコミ。凍りつく広間。駆け巡る殺意。 「ところがね」 ヒロセが口火を切った。「このメロンには恐ろしい因縁があったんだ……」 真面目くさって15年前の殺人事件を説明しだすヒロセを茫然と眺めながら、 武田は、今回のハイライトがメロンの呪いなら僕帰っちゃうよ、とか思った。
「メロン」「人形」「ハイライト」で、いいんだよね。 誰もいない境内、俺は一人で月を眺めながらあの日の事を思い出していた。 あの日の俺はまだ大学生で幼馴染のサヤカとこの夏祭りに来ていた。 「ハイライトなんてまた渋いタバコ吸うのね、おにいちゃん」 なんとなく間が継げずに取り出したパッケージを見てサヤカは笑った。 「あ、あぁ」 その日のサヤカは浴衣姿でいつもとは違った雰囲気で俺は正直落ち着かなかった。 「かき氷食べるか? メロンのやつ。・・・・・・あ、やっぱりイチゴが良いか?」 「私、もうそんな子供じゃないよ」 どういう意味なのだろう、と俺は微かに期待していた。物心付いたときから一緒に いた俺たちはそろそろ違う関係へ移行してもよい年頃だった。しばしの沈黙、サヤカは 意を決した表情で俺にこう言った。 「ねぇ、おにいちゃん。彼ね、フィギュアとかなんとかって人形に夢中で私にかまって くれないの。私どうしたらいいと思う?」 なんともまぁ、今思い出しても泣けてくる。 14行。半分実話。 次は「満月」「秋風」「はらっぱ」でお願いします。
「満月」「秋風」「はらっぱ」 俺とあいつは親友だった。いつも行くはらっぱ。そこは俺たちだけの空間だった。 「ねぇねぇ、ほら、虫がいるよ」「うげぇ!!俺、虫ダメなんだよ。おいっ手で持ったらきたねぇって・・こっちにやるな!!」 そんな会話を繰り返し、満月が見えるころまで遊んで、怒られたりもした。それくらい俺たちはいつも一緒だったんだ。 だが、ある日を境目にその関係が微妙に変化してた。それはクラスが初めて別々になった4年生の頃だった。 「ねぇ、僕、新しいお友達が出来たんだよ」 俺は正直言って驚いた。内気で人見知りなあいつは、クラスに馴染めないらしく、いつも俺にくっついてきていた。そのあいつが・・その日から、あいつは俺の教室にこなくなった。授業終了のチャイムと同時に来ていたのに。 心配になって、あいつのクラスに行ってみるとクラスメイトと楽しそうに話している様子が見えた。少し寂しい気持ちがした。 その日から、俺は1人になった。 クラスに馴染めてなかったのは、あいつじゃなくて、俺だったんだ。あいつがいつも、俺のそばにいたから・・だから1人じゃなかった。 そして。ついに事件は起こった。俺が1人ではらっぱに行こうとしたとき。 なんとはらっぱに、あいつとその友達がいたのだ。俺は怒りが込み上げてきた。あの空間・・俺たち2人だけの・・ 頭の中に怒りだけがぐるぐると回った。突然、今まで積み上げていたものが崩れていったような気がした。 俺は、あいつを原っぱに呼び出した。「どうしたの?」あいつは何にも知らない。これから起こる事を。 秋風が俺の後ろを通り抜けた。俺は台所から持ち出した包丁で、あいつの胸を刺した。味わったことの無い感触。俺の手を、生暖かいものが濡らした。 あいつは、悲鳴を出すまもなく倒れた。真っ赤な色彩が一層鮮やかに見えた。 「俺たちずっと一緒だよな・・お前が悪いんだぞ・・俺は・・ただ一緒にいたかったんだよぉ!ただ・・」 あいつと、俺だけのはらっぱ。今も・・これからも・・ずっと。 長くなった・・・^^;次は「春」「別れ」「思い出」だ!
311 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/29 03:09
「春」「別れ」「思い出」 僕はきみのことが大嫌いだよ。 きみが別れようと僕に告げたのは去年の冬だった。 「僕のことが嫌いになったの?」 「そうよ。あなたのことが嫌いになったのよ」 「どうしてそんなこと言うの? 僕、わけわかんないよ。僕何か悪いことした? 何がいけなかったのかおしえてよ。謝るから」 「今更遅いわ。とにかくあなたのことが嫌いになったの。急に冷めたのよ。他に好きな人もできたわ。だから別れて」 「……それ、本心で言ってるの?」 「勿論。もう家にもこないでね。迷惑だから」 その後僕は諦めきれずに何度も手紙を書いた。電話もかけた。でも、僕はきみに会うことはできなかった。年が明け、春になるまでは。 きみの両親から電話がかかってきたのは桜の散り始めた時期だった。僕はきみの両親とある場所で会う約束をした。それはとある病院の一室だった。 そこにきみがいた。冷たく、物言わぬきみがいた。 癌だったんだって? 進行が早すぎて、気付いたときにはもう手遅れだったんだってね。つらかっただろうね。苦しかっただろうね。 でも、そんな理由で僕を遠ざけるなんてきみは優しすぎるよ。きみは若すぎて、優しさが人を傷つけることもあるって知らなかったんだろうね。 病院から家までの長い距離を僕は歩いて帰った。途中、桜並木の下を歩いているとき、桜が風に吹かれてはなびらがゆらゆらと舞い降りた。きみの想い出をのせて。 きみの笑顔。きみと歩いた道。きみと語ったこと。きみのすべてが目の前を通り過ぎた。 こんな想い出だけを遺して死んでしまったきみ。僕はそんなきみが大嫌いだよ。これは僕の本心さ。でも、なぜだか泪がとまらないんだ。 ちょっと長すぎたかなー? 次は「夢」「記憶」「前世」だよ。
312 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/29 06:24
「夢」「記憶」「前世」 夜空には、闇夜に浮かび上がる満月。風が流れ、草原に小波が広がる。どこからか虫の鳴き声がする。 綺麗だと思った。 この風景が。 「ここで見る夢は……心地よいだろうね」 腕に抱えた彼女を草の上に下ろした。その眼は、かたく閉じられている。 髪を掻き分けてやり、額を、頬を撫でる。指先に、かたく冷たい感覚が伝わる。 本当に、綺麗だと思った。 「……また……あの夢か」 毎晩の様に見る夢。前世の記憶なのだろうか。 ――どうでもいい。 身を起こし、隣を見やる。 彼女は眠っていた。 頬を撫でると、柔らかく暖かな感覚が伝わった。 何故だろうか、安心していた。 次は「酒」「ありきたり」「太陽」で。
313 :
「夢」「記憶」「前世」 :02/08/29 06:48
過去の記憶が次々と、浮かんでは消え、また浮かんでくる。一から再生させるビデオテープ。どこにこんな映像が残っていたのだろうか、子供の俺が笑っている姿がなぜか客観的に見える。 巨大な鉄の塊が頬に触れている。痛みは全く感じないのに染み込むような冷たさだけは感じる。視界に僅かに見えるのは、曲がるはずのない方向へと曲がった俺の脚だった。 なにか前世で悪いことでもしたのかな? どくどくと流れていく俺の血、へし折れた体。ダンプの真下はとても冷たい。 妙に冷静な俺自身に、自嘲した。恐怖もなければ、パニックもない。まるで俺を守るために、脳が痛みや恐怖を遮断しているかのようだ。 もう、耳は聞こえない、目もほとんど見えない。指先の感覚もない。 そして、解る。すぐそばまで、ゆっくりと、歩んでくる真っ黒な何か。巨大な意識の暗闇、その淵まで引きずってゆこうとする存在。 夢も、希望も、何もない。 それは、俺の襟首をつかむと、来た道へと踝を返す。それが一歩を歩むたび、俺が細くなっていく。薄くなっていく。 霞がかった視界は閉ざされ、暗闇の中にゆっくりと連れて行かれる。なんにもなくなる世界へと。 ただ、冷たさだけがある。 ふう。次は「パソコン」「認識」「嫌悪」で。
一足遅かったですな。お題は上の「酒」「ありきたり」「太陽」で。
315 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/29 07:03
白色人種が入植して建国した国々には、 保護政策の施行を受ける原住民が、保護政策を受けている。 アメリカには、インディアン。 オーストラリアには、アボリジニ。 モンゴロイドのインディアンには、太陽信仰の風習があり、 今日でも、民芸品に、その影響が認められる。 ポリネシア系のアボリジニは、我が国の原住民、アイヌとの、 人種的共通性を指摘する学者もいる。 両民族の共通する問題は、ありきたりであるが、酒である。 保護政策により、働かなくとも生活が成り立つ者が、 アルコール依存症に陥る場合が多いのである。 次:油絵、労組、マグカップにて、お願いしまつ。
「保護政策」かぶり、無しね。
317 :
油絵/労組/マグカップ :02/08/29 07:38
「この水彩よく描けてるね」 「いや、そりゃ油絵だよ」部屋の管理人が答えた。この絵の作者と同じくらい 老け込んだ白髪のご老体だった。 僕は少しきまり悪くなって口ごもった。見れば水で引いたようなそのキャン バスの風景に、なんとなく視線を奪われたままじっとしていた。描いた本人の イメージからはまったく想像もつかない、精細で、暖かく、でもどこかしら力 強い筆触。 「彼とはむかし、同じ職場だったんだ。彼だけがどんどん出世してね。労組 時代から熱いやつだったよ」そう言われて、僕は物思いから我に帰った。「そ うなんですか。ずっと忙しい人でした」 コーヒーが飲みかけのまま残ったマグカップがテーブルの上にあった。あの 人はいったいなにを思って過ごしていたのだろう。 僕も絵を描きたい。ここで、この古びたアトリエで。これが唯一の、せっか くの父の遺産なのだから。 次は「四畳半」「封筒」「意識不明」ってところで
意識がさめた時、俺は見なれた部屋の中にいた。四畳半の俺の城、 築三十年のボロアパートの一室に。 立ち上がると少し頭がふらつく。二日酔いだ。下に住むホステスと 昨夜飲みに行き、三軒目から後の記憶がない。 窓からはもう西日がさしこんでいる。 出ようと思って扉に手をかけた。鍵がかかっている。体をまさ ぐったが鍵が出てこない。酔ってどこかに落としたのか。ここの管理 人は戸締まりにうるさく、勝手に部屋の鍵を夜中にしめてまわる。 隣の男が鍵を無くして一つしかないようになったとは言え、やりすぎだ。 俺は思わず悪態をついた。 誰か来れば外の鉢植えに隠した鍵を使って開けてもらえるのだが。 例のホステスはすでに出勤している。もう一人の住人であるヤクザは なぜかやって来なかった。この間などちょっと物音を立てたくらいで 下のホステスをぼろぼろになるまで殴り飛ばしたくらいなのに。ねじ 回しでもあれば扉を外せるのだが、むろんそんな物はない。こうなれば 毎晩来る管理人の婆さんに期待するしかなかった。 俺はその場に座り込み、する事もなく部屋を見わたす。 床には赤茶けた畳が敷いてある。壁も人面が浮き出たような染みが いたるところにあり、柱はささくれていた。西の窓とその反対にある 扉、天井にホコリをかぶった電燈。部屋の中には机だけ。電話すらない。 ふっと思い出して机の引き出しを開けるとアパート契約時の封筒が 見つかった。逆さにすると忘れていた三枚目の鍵が落ちてきた。 喜びいさんでそれを扉の鍵穴に差し込む。鍵は開かなかった。 呆然として動けずにいる間、奇妙な想像がわいてきた。 隣のヤクザはなぜ来ない。ホステスは酒を飲むだけにしても、なぜ 俺なんかと。そしてなぜ俺は長い間意識不明だった。 ホステスはヤクザを殺したいほど嫌っていた。彼女は殺そうとした。 そのため俺を酔い潰した。薬を使ったのかもしれない。俺の鍵も 盗んでおく。そして彼女は昼間にヤクザを殺す。さらに俺とヤクザの 部屋の扉を取り替る。そしてヤクザの部屋に俺の鍵を置き、もう一つの 鍵で扉を閉める。ヤクザは鍵を一個しか持っていない。密室の出来上 がりだ。そして俺の方も騒がれないように外から鍵を閉める。外の 鉢植えに鍵を置き、俺が思ったように鍵は飲んで落とした事にする。 管理人はマスターキーを使っているから異常には気づかない。 彼女の誤算は俺が鍵をこっそり複製し、三枚持っていた事だ。 妙な妄想に取りつかれた俺を西日が赤々と照らしていた。
319 :
的 ◆SpLWlLC. :02/08/29 10:54
「四畳半」「封筒」「意識不明」 わたしはその瞬間、四畳半の病室が電子レンジになって マイクロ波を浴びた夫が中から破裂してしまえばいいと思った。 なんて酷いことをとわたしの心を読んだ人間は思うかもしれないが、 次の患者や次の次の患者のことを考えながら夫のカルテに 『脳血栓により意識不明の昏睡』と流暢にドイツ語で書き込む医者を見たら 誰がわたしを責めることなんてできる? おまけに数日後には突然夫が死に、その医者は味気ない封筒に札束を入れて 謝罪しながらわたしに手渡したしたのだ。このことは内密にとか言った医者はまもなく入院した。 その足でわたしは全ての電気屋を回り全ての電子レンジを購入し、家に置いたのである。 お釣りで、葬式を挙げた。 参列者が皆怪訝な顔をしているのはそのためだ。 #次は「几帳面」「ギャンブル」「目くじら」で宜しく願います。
320 :
几帳面/ギャンブル/目くじら :02/08/29 15:22
艦隊が立ち寄ったのは、直径10キロにも満たない小さな惑星だった。戸籍上 の人口はおそらく1万人もいない。俺が丸窓からその様子を眺めていると、い きなり背後からどやしつけられた。 「おい二等兵、これは貴様の靴下か」俺のニオイのするそれをブラブラさせた。 風呂場で置き忘れたらしい。 「ハ、申し訳ありません曹長」 小太りの曹長は、きちんとアイロンがかかったハンカチで汗をぬぐった。軍 人のくせにこういうところだけはなぜか几帳面だ。 「まあいい、下で遊んでこい」ふつうなら目くじらを立てて怒られる俺だっ たが、曹長はとくに表情も変えず眼下に広がるネオンサインの群れをあごでし ゃくった。「お前、ギャンブルはやるのか」 質問の意図がわからず、俺が返答しかねていると曹長が続けた。 「俺が新兵の頃、やはりここに来た。ここで勝てば生きて帰れる。昔からそん なジンクスがある」 運命は信じない、そう思いつつも俺はネオンのゲートをくぐった。生きて帰 れるか賭けてみようじゃないか。 次は「微動だに」「乾杯」「かざぐるま」ってな感じで
321 :
( ^▽^) < :02/08/29 15:28
( ^▽^) 「几帳面」「ギャンブル」「目くじら」 パチンコでも競馬でもスロットでもなんでもかわまない。ギャンブルという行為 そのものに価値を見出していたのだ。(どれにするかはその時の気まぐれで決まる) 几帳面さだけが取り柄の私にとって、ギャンブルはそうである必要の無い非日常 的なものへの一瞬の脱却のようなものだった。 賭けるのは1コイン分だけ。その瞬間の自分をそいつに託す。結果が出るまでの わずかの間、私は小さな玉やサラブレッドやモーターボートになる。 もちろん当たれば嬉しいのだが、幸か不幸か、いままで数千円程度の当たりしか とったことがない。実に私らしいといえば私らしいのだが所詮こんなものと自嘲し てしまう自分にちょっとした悲しさを感じてしまう。 そして今私は日曜日の競馬場(どちらかといえば地方の競馬場が好きだ)で馬券 を握り締めているのだが、非常にまずい状況に陥ってしまった。競馬史上最高の配 当金の馬券を当ててしまったのだ。 家の奥さんに言ったらどんな顔をするのだろうか。いまやすっかりおばさんにな って鯨のような姿でテレビを見ながら寝そべっているだろうが、きっと目くじらを 立てて私の幸運も奪っていくだろうな。 ##駄洒落だい好っき 次は「無言電話」「笑い」「ピンク」
「無言電話」「笑い」「ピンク」 おれは新しい電話を誕生日、彼女からもらった。ちょっと趣味の悪いピンク色の電話。 だが、彼女がくれたので、特に気にならなかった。プルルルル・・・ さっそく電話が鳴っている。ははーん、彼女だな。俺は受話器をとった。 「はい、もしもし」『あはははははははは』不気味な笑い声。電話は唐突に切れた。 今のはなんだろう?いたずらだろうか?無言電話ならわかるが、「笑い電話」 なんて訊いたことも無い。 プルルルル・・・また電話だ。「はい」 『あははははは』「おい・・いいかげんに」ぷつ。 無機質な音を立てて電話はまたもや唐突に切れた。なんなんだ。2回も。こういうときはお約束で3回目も・・ プルルルル・・・「・・・」無言で電話をとるとやはり、 『あははははは』 くそっ!!おれは受話器を乱暴にがたん!!と投げつけた。 プルルルル・・もう許せん!! 「はいっ!!いいかげんにしろよ!!くそ・・」 『今の受信は電話の故障確かめの電話です。3回とも聞き取れたでしょうか・・』
323 :
名無し物書き@推察中? :02/08/29 17:52
「無言電話」「笑い」「ピンク」 闇の中を走る女。龍神家の邸宅を離れ、とあるビルに忍び込む。 「今回も、僕の計画は完璧だった。何一つ手抜かりはなかったんだ……」 女は呟く。その独白に反して、事実は探偵とのゲームに負けていた。 龍神家のルビーは彼女の手元にはない。どこか、計画に見落としがあったのだろうか。 そう思ってから首を振る。「僕の計画は完璧だった……」 入り込んだビルはデパートで、一階の衣料品コーナーを女は走っていた。 裸体のマネキンが、四方八方に林を形成している。 「止まれっ!」 女の後ろから鋭い声が響く。銃声と、足元に散った火花を見て、女はようやく立ち止まった。 現れたのは探偵だった。ブラインドの隙間から滑り込む月光に、女の顔が浮かび上がった。 探偵は息を飲んだ。「君が、蜘蛛だったのだね……」 女は凍れる笑みを浮かべる。「僕を撃たないのかい」 「こいつにはあと二発の弾丸が残っている……」 探偵は右手のトカレフを持ち上げて見せた。 「しかし必要とするのは一発だけだ。それで事は足りる」 言葉が終わらぬうちに、女の脚が宙を舞う。二回目の銃声。彼女は肩を抑えて崩れ落ちる。 「さあ、早いところ撃ってくれよ」 彼女は言った。探偵は苦笑した。 「二発というのはハッタリでね……実際は、今ので尽きてしまったのだよ」 女は少しためらい、だが結局はその場から逃げ出した。探偵は自分の不甲斐なさを呪って銃を撃つ。 でたらめの方向に放たれた弾丸は、マネキンの頭を破壊した。
>>323 申し訳ない、「ピンク」を忘れてしまった。
>女は凍れる笑みを浮かべる。
を
>女はピンク色の唇に、凍れる笑みを浮かべる。
とでもしておきます。
だめだ、
>>323 は無視してください。熱中症だね。
あれっ次のお題は?
>320のお題がスルーされちゃったみたいだから、それでやれば?
329 :
微動だに/乾杯/かざぐるま :02/08/29 20:29
僕の田舎にこんな唄がある。 「やぐるまくるくる 風んなかぁとにまわろまわろ」 やぐるまとはかざぐるまのことで、風のないのになぜか回り続ける、といっ た意味だ。実はこれには続きがあって、男ぐるまと女ぐるまのふたつが近づく と、互いに惹かれあって風もないのに回りだす、というものだ。恋歌のひとつ で、子供が大声で歌うには赤面してしまうような歌詞だったのらしい。 この唄が聞こえるのは祭りの日だ。縁起物として売られているかざぐるまは 二種類あって、四枚羽は男用、三枚羽は女用と決まっている。浴衣を着た女の 子がかざぐるまを片手に歩いてくると、僕らは自分のかざぐるまを持って走り ながら追いかけたものだ。 この夏、僕は田舎へ帰り、久々に羽を伸ばした。夜になるとどこからともな く幼馴染、当時の悪ガキどもが集まる。 「そういえばアキちゃん結婚するらしいぜ」 「へー誰と?」 こんな話が出るのも、僕らもそういう世代になってしまったんだとつくづく実 感する。 「ターボーだよ」 ターボーとは、いつもアキちゃんをいじめていた僕らの親分みたいなヤツだ。 そういえばめずらしく顔を出していない。あいつがねえ。僕は黙ってアキちゃ んのために乾杯した。 その夜、アキちゃんの浴衣姿を見た僕には、どぎまぎしてとてもひやかすど ころではなかった。 東京に出て早十年。僕のかざぐるまは微動だにしない。 #実は320です 自分で出題しといてスマンっす #次は「座布団」「夕立」「とりとめもなく」ってところで
「座布団」「夕立」「とりとめもなく」 --- 濡れるよ、って言ってるにもかかわらず、夕立の中、ペルシャ猫のアイちゃんはベランダの洗濯機の上に悠然と横たわっていた。 大きな雷鳴が轟いても、全然動かない。どうせ無理矢理抱き上げても嫌がるだけだから、あたしはそんなアイちゃんを眺めているだけだ。 「ほら、アイちゃん、おなかの毛が濡れてるよ。濡れるの嫌いじゃないの?」 何言っても無駄なことはよくわかってるんだけど。でもこれっくらいシャンプーの時も大人しかったらいいんだけどなあ。 あたしはため息をついて、居間の座布団に座って、テレビを見ながら餃子の具を詰めることにした。 テレビではニュース番組をやっているぐらいで、川に迷い込んだアザラシのニュースをやっていた。 時々稲光がベランダから差し込んでくる。餃子の具を詰めながらあたしは、その光ぐあいから次に来る雷鳴の音を予想する。 と、雷鳴の音が予想したより小さくてベランダに顔を向けたとき、今までとりとめもない方向を見ていたアイちゃんと目があった。 「なに? お部屋に入るの?」 アイちゃんはそれに答えることなく、ついっとまた外に視線をやる。 ひょっとして、強引に部屋の中に入れて欲しいのかなあ。でもそんなことしたらいつもみたくすごく怒るんだろうな。 アイちゃんは怒ると1日は抱かせてもらえない。 抱きたいときにアイちゃんを抱けないのは、あたしにとって辛いことだった。 アイちゃんを抱き上げて撫でるだけで幸せになるのだから、あたしは結構安い女なのかもしれない。 --- 次は「復活」「御神酒」「革命」で
マクドナルドが世界に進出した今でもアメリカの味が一番だ。そう豪語して幅からない友人たちの話を イワンは上の空で聞いていた。ハンバーガー一つの為に五時間も氷点下の中並び続け口にした時の寂寥感を 今だ忘れられずにいる彼には、マクドナルドの味について熱い議論を交わす彼らの姿はどこか滑稽に見えた。 「何故こんな狭い場所に4人も押しこめるんだ?しかもこのチケットは高額だ」 「SUMOには日本人の文化だよ。ローマではローマの法に従えと言うじゃないか?」 アメリカの友人達の他愛のない会話はイワンの耳に届いていなかった。満場の会場 で繰り広げられた対戦の熱気と興奮は時間が経つごとに鮮やかに蘇り彼をあの世紀の取り組みが 行われた瞬間へと運び去る心地がしていた。敗者復活戦で頂点に立った若土花と、一戦も負けず勝ち抜いた 貴土花。兄弟が対峙する世紀の対戦。イワンは極寒の地ロシアに生まれた自分が奇しくもアメリカ留学を 果たしたその時期に日本のSUMOU、ニューヨーク場所を見る事が出来た喜びで胸が一杯だった。 ソビエト社会主義連邦共和国とアメリカとの間に長きに渡って張り巡らされ氷の壁は瓦解し、 彼はニューヨークのダウンタウンを闊歩しこうしてアメリカの友人とSUMOUを見ている。 強いて言うならばこの友人たちと熱烈な意見を交わしたいのが本音だ。 しかし彼らはアメリカの食文化が世界を席捲した経緯について議論する事に余念がない。 イワンは一人、故郷へと思いを馳せた。 かってインテリと呼ばれた知識階級が帝政ロシアを改めるべく立ちあがり、ソビエト は共産主義国家としての道を歩み始めた。革命と時代の波が国家を半壊させたが、 イワンはそれを歓迎した。閉鎖的な村、国から抜け出したかったからだ。アメリカは 自由と憧れの象徴だった。 学者肌の祖父と父が語学に堪能なおかげでイワンはアメリカ留学で言葉に不自由する事はない。 しかし時には煌々と燃え盛るペチカの前でウオッカを飲み一息ついた日々が恋しくなる時もある。 日本では神に捧げる酒を“OMIKI”呼ぶことを先日、相撲に詳しい大学教授から聞いた。 そうだ今夜は日本酒をキリストに捧げ、ついでに自分もSUMOUで得た感動を噛みしめよう……。 イワンの口元に微笑を浮かべ決意したその瞬間、マクドナルドの店舗数について言い争っていた 友人が一斉に口走った。 「イワン、今夜はビールで乾杯だ」
332 :
名乗るほどでもない人 :02/08/30 01:00
「復活」「御神酒」「革命」 わたしは御神酒を神棚の上に備えながら老巫女の話を聞いていた。 「これは・・私がまだ20前後だった頃さ。そのときはまだ、今では到底信じられないような 迷信や言い伝えが信じられていたんだ。人身復活なんか出来るわけ無いじゃないか。 でも、私は信じたかったんだよ。私の愛しい人は、必ず生き返るってね。」わたしは相槌を打った。 「それは、老巫女に聞いた話だった。特定の人間の血を3人分集めて、死体に振り掛けると、その血が死体の血肉をつくり、生き返るってやつさ。 私はその3人の名前を、大量の銭を払って聞き出し、血を奪いに行った。殺しに行ったといってもいいね。血は大量に必要だったから。私の中では革命が起こったよ。虫も殺せなかった私が、あんなに軽々と殺せるようになるなんてね。 3人のうち、2人は男だったけど、そんなの関係なかった。背後から迫ったら、大柄な男でも簡単だった。釜を首筋に突き立てれば、後は勝手に血が出てくるからね。生臭くて、気持ち悪かった。でも、彼の為なら。それで全部割り切ったんだ。 だが、私はただあの巫女の復讐に利用されていただけだった。全部嘘だったんだよ。私は、その巫女も殺した。切り刻む快感に身を任せ、血しぶきに酔った。」 わたしはただ、声を殺してきいていた。何かしら戦慄も覚えていた。 「そして私は、4人分の血を、死体に振り掛けた。当然何も起こらない。私はただ泣いた。泣き続けた。 彼が固く目を閉じたままだったから泣いた。自分の愚かさにも泣いた。血に涙が混じった。私は、血が自分の涙で少しでも清められたら、彼の体を清められたら、と思った。そのとき、彼の声が聞こえたんだ。 それは暖かくて柔らかな声。彼の声に間違いなかった。幸せだったよ。私は、彼の言葉に励まされて、ここまで生きてこられたんだよ」 わたしは半分恐怖も覚えていた。なんて異常な・・ 「彼は・・・何っていったんですか?」 「彼は、今から50年後の今、目の前にいる者の血をわたしに振りかけてくれ、そうすれば生き返れる、と言ったんだ」 彼女の手には、釜が握られていた。 わたしの意識はそこで途切れている。
333 :
名乗るほどでもない人 :02/08/30 01:00
次は、「快感」「月」「蝙蝠」で。
次のお題は「秋」「別れ」「思慕」でお願いします。
335 :
「快感」「月」「蝙蝠」「秋」「別れ」「思慕」 :02/08/30 02:08
僕達は、士官学校の裏に集合させられた。悪評高い「最後の卒業試験」だ。 一人一人が呼び出され、真っ青な顔をして帰ってくる…自分の番が来た。 「ゼニス君、この、薄汚い敵兵を処刑し給え。自分の手でだ」 敵兵って…民間人の娘じゃないか、しかも臨月でお腹が大きい! 「貴様それでもドイツ人かぁ!他の者はちゃんとやった…馴れれば快感になるさ」 もう逃げ場がない。目をつぶって銃の引き金を引く「お別れだ…」 「カチリ」と音がした。目前には、悲しそうな娘と上官の顔があった。 「そうか…君はこういう場合、引き金を引く人間なのだね。残念だ」 「だ、だって、他の生徒は…」 「他の生徒は、銃を放り出すか、私を撃とうとしたよ。君以外は全員ね!」 秋の空というか、蝙蝠というか、上官の余りの豹変ぶりに僕は驚くばかりだ。 「残念だが、君の様な劣性人種は処分せねばならない。個人的な思慕はあるが…」 そうか、世界はそんなに立派で意思が強い人ばかりなのか。なら仕方ないか。 「よりによって君がこんな…貴様、それでも、地球市民かぁ!」 ほんの微かなある疑いが、僕の脳裏をかすめた。 ※なんとか15行で6題(^^;L 次のお題は:「ためらい」「逆噴射」「悠長」でお願いします。
336 :
名乗るほどでもない人 :02/08/30 02:13
ぎゃぁぁぁぁ!!335殿、申し訳ない^^; 6語も・・
「快感」「月」「蝙蝠」「秋」「別れ」「思慕」 秋の夜。月に狼が吠えていました。 梟が来て言いました。あなたは何故吠えているの? 狼は言いました。育ててくれた人間のご主人様を思って吠えているの。 夜鷹が来て言いました。あなたのご主人様はどこにいるの? 狼は言いました。死に別れてしまったの。 蝙蝠が来て言いました。君は悲劇の主人公を気取って快感に浸っていないかい? 狼は言いました。そうかもしれないけれど、とてもとても悲しいの。 ムササビが来て言いました。その強い思慕はどこから来るの? 狼は言いました。私の身体の奥深くから。 やがて夜が明け、月が太陽になっても狼は吠えていました。 そこへ鶏が来て言いました。お腹が減ったでしょう。私を食べて悲しいことは忘れなさい。 狼は、ありがとうと言って、鶏をむしゃむしゃ食べてしまいました。 そして言いました。おいしかった、けれどご主人様程じゃなかったわ。 #遅かったか……かぶりスマソ。 #お題は継続「ためらい」「逆噴射」「悠長」
338 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/30 02:42
「ためらい」「逆噴射」「悠長」 トムは博士の助手をしています。今日は博士の発明した使い捨てロケットに試乗するのです。 「博士ー、ホントに大丈夫なんですかー? 空中分解したりしないでしょうね?」 「安心せい。せいぜい逆噴射するくらいじゃわい。万が一の為に脱出装置もついとるよ」 博士は自身ありげですが、トムはやはり不安でした。 「じゃあ、トム。ドアを閉めて席についてシートベルトをしたら発射ボタンを押すのじゃ」 トムはためらいつつも、博士に言われたとおりボタンを押しました。 ロケットはものすごい勢いで飛び出し、光速で地球の周りを回って帰ってきました。 トムが再び地上に降り立つと、そこはまったく別の風景になっていました。 トムがロケットで地球を周ってる間に地球では1000年の時が過ぎ、猿が人間を支配する星になっていたのです。 「へぇ・・・こりゃすごいな」 などと悠長に独り言を呟いていると、どこからか猿の軍隊が現れ、トムを連れ去っていきました。あとにはロケットの残骸だけが残りました。 トムはこの後、反乱軍を結成して猿から地球を取り戻す英雄となるのですが、それはまた別のお話。 次は「希代」「壮大」「永遠」ですよ。
自信が自身になってる・・・鬱。
340 :
「希代」「壮大」「永遠」 :02/08/30 05:48
稀代の魔女と呼ばれたヘルクローツ、彼女の残した遺産が今、青年の目の前にようやく姿を現した。成年、この遺跡の最奥部までたどり着いた最初の人間。冒険家たるルイス。 瞳を輝かせ、だが周囲に向ける針のような警戒はそのままに、彼はゆっくりと石造りの祭壇へと近づいて行く。張り巡らされた罠に、ここに至るまでどれほどの苦難を舐めさせられたか。神経質になってなりすぎるなどということはなかった。 祭壇に置かれたそれは、卵のような形状を模している。これ一つで一国を支配できるなどという壮大な伝承が残っている。なんに使うのか、どうやって使うのか、その部分は失伝してしまったが。 手を伸ばせば卵に届く、ルイスはそこまで近づいた。そして止まる。思案のしどころであった。ここにだけ、罠のないはずがない。 永遠とも思えるほど考え込み、やおら彼はリュックからロープを取り出すと、慎重に、恐る恐る、卵の両端をくくった。そしてロープの片方を手に自らは出口へと戻る。 次に迷いはなかった。腕に力を込め、一気にロープを引く!宙を舞う卵が彼の胸元まで弧を描いた。 次の瞬間、壁面に穿たれた空気穴から、風の噴出する音が聞こえた。即座に踝を返し駆け出すルイス、確認のしようもないがいずれ致死性のある毒ガスだろう。 古びた卵型の石はいま、彼の腕の中にある。湧き上がる高揚感を彼は必死で抑えた。帰路がまだ、目の前にある。 神経を研ぎ澄まし、彼はまた罠の群れへと潜り込んで行った。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」男は墓石の前で頭を地面に擦りつけながら呟き続けた。 その男を冷やかに見つめるぼくの頭の中には壮大な交響曲が流れている。 雨がぼく達二人の惨めな男に降り注ぐ。そう、ぼくらは負け犬なのだ。ぼくと、土下座する男と、土の中の彼女は共同で研究を進めていた。 希代の天才と言われた彼女の直感、データの収集に長けたぼく、そしてそれらを客観的に 評価できる彼。三人はこれ以上ないほどの共同体だった。ぼくらは自惚れていた。宇宙の真理を解き明かすつもりでいた。 ある日彼女が研究室で一人で資料を整理しているとき、それはいきなり彼女に襲い掛かった。 彼女は心臓を永遠に脈打たせることができなくなってしまった。突然の理不尽な力によって。 当然彼女と一番親しかったぼくらが疑われた。しかしぼくらはそのときにはアリバイがあった。二人は同じバーで酒を飲んでいたのである。 マスターの証言もあった。 そして事件は迷宮に入った。しかしぼくらはどちらかが犯人だとお互い疑いあっていた。 ぼくは言う。「君が犯人なのは分かっているんだ。彼女は毒殺だ。きみは薬学部で、彼女に 睡眠薬も非合法的に処方していた。そして遅延性のカプセルに毒を入れて彼女に処方したのだろう?」 彼は返事をしなかった。「まぁいい、ぼくらが一つの肉体を共有した二つの人格だと、気づいているのは 彼女だけだろう。二人の人間を演じながら大学に入るのは大変だったが、君が失踪したことにすれば、社会は 君が犯罪をバレるのを恐れて逃げ出したという解釈をしてくれるだろう。さぁ、君の人格が消える前に彼女のお墓参りに行こうか」
次のお題は「中身」「上級」「喜び」でお願いします。
すみません、次の御代は340さんが出さなければ 「幽霊」「怖気」「染色体」でお願いします。
ああ、被り続ける我らが運命。
「幽霊」「怖気」「染色体」 ちかごろおかしな物を見る、という相談を受けた。格安で売っていた一軒家に越して きてからというもの夜中に目が覚めると体中穴だらけの靄のようなものがいくつも浮か びあがっているという。本人は幽霊なんじゃないかと心配らしく、いまのところなんの 被害もないけれどこれからどうなるのかとすっかり顔が蒼ざめていた。気持ちをやわら げるために、怖気づいていてはいけませんよ、相談することで少しでも気が楽になりま すからねと言うと幾分表情も良くなったみたいだ。 こういう話こそ私の本分だ。頭の中が好奇という名の染色体でそまり始めているのが 分かる。依頼者に一通りの質問をし、返答のなかからいくつかヒントとなりそうなもの をピックアップした。 少し時間が経ったあと休憩しようと言いかけたときにし忘れていた質問を思い出した。 「そういや、家が建つ前にその土地になにがあったか調べましたか」 その話を聞いた直後私は依頼者の襟を猫掴みにして無表情のまま外へ追い出した。 「ええ、その昔そこはレンコン畑だったそうです。」 ……二度とくんな。 次は「中身」「上級」「喜び」
「中身」「上級」「喜び」 わたしは玄関のドアの向こうでカチャカチャと鍵を触る音で目を覚ました。 わざわざ出迎えるつもりもなく、再び瞼を閉じた。 「ただいま」 彼はそう言いながら、布団の引いていないコタツ台の上に、ドサリと 何かを置いた。 その瞬間、目を見開き、首だけ彼の方へ向けた。 「起こした?ごめんね。お腹空いてる?」 空いてない。昼寝をする前にコタツの上にあったお菓子を食べたのだ。 彼がおいしそうに食べるので、ちょっと食べてみたら、 恐ろしく辛くて、水をがぶがぶ飲んでお腹はたぷたぷだった。 「ああー!お前カラムーチョ食ったな!?こんなちらかして 誰が片づけると思ってるんだよ!うわっ、なんだよキッチンびしょびしょ・・・ あああー!てめえ何食ってるやがる!」 袋の中身は、今まで食べた中で最上級とも言えるマグロの刺身だった。 噛みしめると脂ののった肉汁が口の中をとろけさせ、飲み込んだあとも 舌にまとわり続ける。ああ、変なお菓子なんて食べるんじゃなかった。 彼は、私の頭をぐりぐりとかいぐり回し、困っているような 怒っているような、でも優しいまなまなざしで、むさぼり食べる私に 話しかけた。 「おい、一つくらいは残しておけ。」 あとであのマグロの入っていた袋の中に入って遊ぼう。 彼は袋の中に入った私を袋ごと持ち上げるのが好きだ。 きっと喜ぶに違いない。
347 :
名乗るほどでもない人 :02/08/30 13:25
「中身」「上級」「喜び」 とある路地裏に私とその男はいた。私は大きな鞄を持っていた。私は男に話を持ちかけた。 君はジョン.A.Dに間違いないねぇ。うん、写真と顔も一致してる。早速なんだけど、 この鞄の中に、何が入っているか判るかい?きっと君は判らないだろうねぇ。この中には、「喜び」が入っている。え?何馬鹿なこと言ってるかって? まぁ、私たち上級者にしかこの中身の価値・・「喜び」は判らないだろうねぇ。でも、君もこの「喜び」の1つに入る事になるよ。喜びたまえ。おや?何を怯えているんだい?そうかそうか、この中身を見たいんだねぇ。 「喜び」がどんなものか、冥土の土産に見せてあげよう。 私は鞄のキーロックを解除して中身を見せた。男はそれを見てしばし唖然とした。 どうだい?すばらしいだろう。おや、君は表情豊かだねぇ。ボーっとしてたかと思えば急に青くなったり。おやおや、逃げ出すなんて卑怯だよ。 私はその言葉と同時に素早い動きで銃を出し、撃った。 銃弾は男の心臓を貫き、男は暫く痙攣したあと、絶命した。 私は男の首から上を持っていた出刃包丁より少し小さめの、だが切れ味はそれ以上のナイフで 切って鞄の中に入れた。そしてまた、キーロックをした。 すいませんねぇ、私は別に君の事は嫌いじゃないが、依頼を頼まれててねぇ。 君は大量の札束に変わってくれるから、君の死は決して無駄じゃ無かったよ。 これが私の「喜び」だ。次は誰をこの鞄に入れようか。 大きな鞄を持った男には、要注意です 次は「外科医」「毬」「みかん」で。
348 :
名無し物書き@推敲中? :02/08/30 19:47
「外科医」「毬」「みかん」 みかんの木にいつの間にかアゲハチョウの幼虫がついていた。 ふっくらと育った美しい青虫で、頭部を軽くつつくと橙色の湿った角を出して柑橘系の香りを辺りに漂わせる。 それでもつつくと、今度は橙色の角を巻き込んでくるりと丸まってしまう。 黄緑色と橙色のまだらに巻いた球は、艶やかな毬麩のようだ。 2、3日してまたとおりかかると、蛹になっていた。 まだ緑の生々しい蛹で、つつくともそもそと動いた。 よく見ると、表面に薄紫色の筋が網の目のように走っている。 これはこの蛹の血液が通っているのだろうか。 昼の光に照らされて、蛹の表面は銀の粉をまぶしたようにきらきらと光っている。 この美しい生き物も、やがて羽化して下界の粉塵にまみれるのか。 私はそっとその場を離れた。 以後、そのみかんの木のところには行っていない。
349 :
外科医/毬/みかん :02/08/31 00:25
なぜおばあちゃんはあんなに拒否したのだろう。町の暮らしのほうが楽しい のに。うちの近所のお年寄りとも仲良くなれると思うのだけれど。「ここには ね、忘れちゃいけないものがたくさんあるのだよ」おばあちゃんはそう言って、 首を縦に振ることはなかった。 バスのドアから雪の上に降りた。凍りついた雪が足の裏に痛い。停留所には 白い排気ガスとあたしの息がまじりあって広がった。そのままバスはガタガタ とタイヤに巻いたチェーンの音をたてつつ、次の停留所を目指して走り出した。 「おばあちゃん、ただいま」凍りついた引き戸をギシギシ開けた。 「おばあちゃん寝てるの?」ひさびさの対面のはずなのに、と不思議に思い、 居間に呼びかけた。 食べかけたみかんがコタツの上にあった。おばあちゃんとミケが寄り添うよ うにして、毬のように丸くなって眠っていた。火鉢にかけてあった鉄瓶だけが シュンシュンと静かに音を立てていた。 脳外科医はただ首を横に振るだけだった。おばあちゃんはそのまま帰らなか った。あたしの中で、忘れちゃいけないものがひとつだけ生まれた。
離陸してしばらく経ったころ、前席から強いみかんのにおいが 漂ってきた。 隣に座った肥満体の男も顔をしかめている。 どうやら前の席のバカ女が柑橘系の香水をやたら使っている らしい。恋人らしき隣の男は注意もせずに甘い言葉をかけている。 ようやくシートベルトを外すサインが出て、前席の光景に虫酸が 走った俺はその場から離れようと立ち上がりかけた。 その時突然、乱気流が俺の乗った飛行機を襲った。 隣にいた肥満体が鞠のように弾み、天井に激突する。 俺は廊下まで出ていたので、逆にうまく受け身をとれた。 数分してゆれはおさまったが、機内ではあちこちに物が散乱し、 数人が血を流してうずくまっている。一応外科医である俺は彼らの もとに向かった。 手早く応急処置をすませて席に戻ろうとすると、前の席の男が 叫んでいる。あの女が床に倒れて失神していた。 擦り傷はあったものの、気絶していただけで女の体に異常はなかった。 夫が俺に頭を下げる。女も容態が落ち着いて弱々しくも微笑ん できた。正面から見ると意外と可愛い顔だちだった。 俺はふと思いついて尋ねた。 その夫は、たしかに妻はつわりがひどく、柑橘系の香りを嗅い でないと吐き気がするのだと答えた。
25行以上か、我ながら長いな。 お題が続いているので「色紙」「笛」「贋作」
352 :
外科医/毬/みかん :02/08/31 02:28
患者の腹は、毬の様に丸く膨らんでいた。 バンチ症…難病である。 患者の前に、二人に外科医が対峙していた。 「私が治してやる、しかし治療代は高いぜ」 「私が安楽死させてやる、これなら安いぜ」 患者は「高いのも死ぬのもいやじゃ!」と言って 自分で手術を済ませて帰ってしまった。 「…なんだあれは?」 「まあ、俺達にとって、未完の対局といいったところかな」 一方の外科医の娘が聞いた 「みかんのたいきょくって、なに?」 「細かい事は気にしなくてよろしい」 そう、患者が自力で治すのが一番なのだ。 患者を含んだ4人のうちで、結局、彼女の気分が一番釈然としない。 「アッチョンブリケ」 ※次のお題がなかったので、前題で…安易かなあ^^; 次のお題は:「慰め」「怪人」「缶詰」でお願いします。
まいったな、ニアミスか。 関係ないが、女の体に異常はないと書き直すのを忘れていた。
あわわ、どうして同じ2:28に? 気が合うのでせうか、失礼しました。 次のお題は351さんの「色紙」「笛」「贋作」 でお願いします。
355 :
色紙/笛/贋作 :02/08/31 05:51
研究所の廊下をけたたましく駆ける靴音がする。所長!という甲高い声と共 にヤツが駆け込んできた。 「またなにかやったのかね」 「とうとうやりましたよ! 」こいつの顔は赤い色紙をくしゃくしゃに丸めたよ うな構造をしている。美人のおふくろさんにとっちゃ遺伝子工学上の傑作だ。 そのままゴミ箱に投げ込んでやりたい。 「発見したんです、これでヒトを作れます」 「ヒトのクローン培養は法律で禁じられたばかりではないか! お役人からきつ く言われたろう」 「あんなものはただの贋作ですよ。これはちがうんです、固体の分裂ですよ」 「プラナリアみたいにか」 「ビンゴ! 培養しないで体ごと分裂するんです。なんなら私で試してみましょ うか」 「やめてくれ。キミが二人もいたらわしはノイローゼになる」 「実はもうやっちゃいました。こいつです」 「フッ、騙されんよ。それは君の双子の弟だろ」 「そうなんです実はもう二人いるんです」 なにか言おうとしたが声にならないでノド笛がヒューと鳴った。暗転。 #次は「水銀灯」「クラクション」「時間切れ」ってなもんで
356 :
最近改革路線 :02/08/31 19:31
仕事から帰り、部屋でぼうっとテレビを見ていると、母親の再婚相手だと名乗る男から電話があった。 母が事故にあって危険な状態らしく、すぐに来て欲しいとのことだった。 私は受話器を置くと、煙草が切れているのに気付き、近所のコンビニまで買いに出た。 正直、私は迷っていた。母に会いに行くべきか…。 母は私が4歳のとき家を出て行った。それきり母とは会っていない。 父と祖母と三人暮らしで育った私は、いつしか母に捨てられたのだと思うようになっていた。 コンビニで買物をすませると、私は近くの公園に向かった。すこし夜風に吹かれたい気分だった。 公園のベンチに座り、虫の集まる水銀灯を眺めていると、いままで一度も思い出さなかった母との最後の記憶が蘇ってきた。 そうだ、あのとき私は公園にいたんだ。 夕方だろうか、薄暗い公園で、私はその日買ってもらった三輪車で夢中になった遊んだいた。 母はそんな私を、水銀灯の下に立ちただ黙って見守っていた。 公園の入り口には車が停まっていて、時折クラクションを鳴らしていた。今から思えばあれは母を急かしていたのかもしれない。 どれくらいたったのか、あたりがすっかり暗くなった頃、男が車から降りてきて母に「時間切れだ」と言った。 いつの間に来たのか、男のとなりには祖母が立っていた。私を連れて帰るためだろう。 母は私に近寄ると、水銀灯を背にするようにしゃがみこんで私の頭を何度もなでた。 母の顔は影になってよく見えなかった…。 そこまで思いが及んだとき、私ははっとして煙草をもみ消すと大通りまで走ってタクシーを拾った。 私は一応メモってあった病院の名前を告げ、 「急いでください。私は母の泣き顔しか知らないんです。」 と言った。 次は「カメラ」「ぬいぐるみ」「ほくろ」でお願いします。
357 :
名乗るほどでもない人 :02/08/31 21:18
「カメラ」「ぬいぐるみ」「ほくろ」 今日は私の娘、絵里の誕生日だ。仕事が忙しく、ほとんど家に帰っていないが、今日だけは早めに帰らなければ。 私はカメラ屋に向かった。毎年絵里の誕生日に写真を撮っているのだ。 これが中年の私のささやかな楽しみだった。 その帰り。 小さな玩具屋に目がいった。そういえばプレゼントがまだだった。絵里は何がほしいだろうか。 店内を見回してみると、可愛らしい白色のくまのぬいぐるみがあった。これにしようかな。 いや、もう絵里も小学4年生だ。そろそろ人形のほうが良いだろうか。 バ○ビーとリ○ちゃんどれが良いだろうか。うーん・・・もし絵里が気に入らなかったらどうしようか。 それとも、ゲームの類はどうだろう。いかんいかん。これ以上絵里の目を悪くさせたら、眼鏡代がいる。 他にもいろいろ考えていたが、どうもしっくりこない。そういえば、絵里は「大人っぽくなりたいな」なんていってたな。 ったく、近頃のマセガキは。あ!!そうだ。私はあるものを買った。 「おかえり、おとうさん」 絵里の元気な声が聞こえる。妻もテーブルについていた。料理もいつもより豪華で、テーブルの中央には手作りのケーキが置いてある。妻が明かりを消して、ろうそくに明かりをつけた。 誕生日の歌を歌った後、絵里が10本のろうそくの炎を吹き消した。 絵里が私のほうを目を輝かせながら見ている。そのタイミングを見計らって私は言った。 「絵里にプレゼントがあるぞ。ほら」私は小さな包みを絵里に手渡した。 「ありがとう、おとうさん!!」その言葉とほぼ同時に包装紙を破いていく。絵里の喜ぶ顔が目に浮かんだ。 だが。「・・・・なにこれ」絵里は少し表情を曇らせた。 「なにって、つけぼくろだよ。ほら、目元につければこんなに色っぽくなった」 「お父さんの馬鹿!!」 私は喜びの言葉のかわりにビンタをくらった。まったく、子供心は判らないものだ。
358 :
名乗るほどでもない人 :02/08/31 21:19
↑長くなりました・・・ 次のお題は「帰り道」「虹」「公園」
「帰り道」「虹」「公園」 --- 歓楽街のビルの谷間の狭い路地を延々と進んでゆくとビルに回りを囲まれた30坪ほどの公園があり、 ひしゃげたジャングルジムとペンキの剥げたベンチが水をやり忘れて枯れた鉢植のように転がっていた。 そこには一人の薄汚れた老人が大きな鞄を持ってその公園のベンチに腰を掛けている。 いつものことだった。ほっておけば彼は死ぬまでその日課を繰り返すのだろう。 私は憂鬱な気分でその公園に向かった。老人に会いたい訳ではない。むしろ会わずに済ませたかった。だか、そういうわけにもいかなかった。 「じいさん、睡眠薬を飲まされたガイ者は、あそこから」私はマンションの4階を指した。 「落ちてきたんだ。そんでこれに」ジャングルジムに、「当たった。時間は14時30分。あんたはここに居た。そうだろ?」 返事はない。老人は猫のように虚空を凝視めていた。 「虹を見てたんだよ。ほら……」老人は向かいの12階建の雑居ビルを指した。「あそこに。それを見てた」 私は老人と別れた。署への帰り道、私は一つの結論に達した。 「虹、か」 報告を終えたとき、熊崎警部はぽつりと言った。 「ええ。12階建てですよ? 確かにあのとき虹は出てましたが、あのじいさん、どうやって虹を見たんですかね? 確かにあのじいさんの目撃証言はありますよ。14時30分。 音に不審に思った5階の主婦がガイ者の側にいる老人を見ています。落ちて直のときだ。 少なくとも、あのじいさんの格好したやつが居たことは確かでしょう。 あとあのジャングルジムのひしゃげ方。打ちどころが悪いと言えるかもしれませんがね、 たかだか4階から落ちてジャングルジムがひしゃげますかね?これは推測ですが、何か重りを抱かされて、落とされた。 その重りは後で回収する。ガイ者の側のじいさんは、そういうことじゃないんですかね」 熊崎警部は唸った。 「共犯か?……鞄が、くさいな。石を抱かせたとしたら、粉でも残っているかもしれん」 それは私と同意見だった。 --- チャンドラーっぽいミステリーに挑戦してみました。 次は「お別れ」「スープ」「髪の毛」
「帰り道」「虹」「公園」
雨上がりの午後三時、チャコはいつもの公園に向かう。
突然からりと晴れたので、空には虹が映えていた。いい天気である。
「オヤ、チャコちゃんじゃありませんか」
近所付き合いのある、後藤のダンナが声を掛けた。株で失敗したと専らの噂だ。
「ちゃん付けはやめてください。あたし、もう二十一よ」 苦笑半分、チャコがいう。
「なあに、帰り道だったんですよ。ここ通るんですよ」 後藤のずれた返答。
「そうですか」 社交辞令のつもりでチャコもいった。「気分転換によくここへ来るんです」
「はん、はん、なるほど」 頷く後藤。首がガクガク動く。「僕もです」
嘘おっしゃいよ、と思わずチャコは口に出してしまった。怪訝そうな表情をする後藤。
「だって、帰り道だったんでしょ」 引くに引けず、言葉を叩きつける。「どういうつもりよ」
「ウフフフ」 後藤の口がニヤーッと開かれる。「そうだよ、そうだよ。待ち伏せてたんだよ」
チャコの肩は震え、後藤は水鉄砲を取り出し叫ぶ。
「ホラ、うっちゃうよ、うっちゃうよ」
やめて、とチャコは訴えた。が、しかし、その訴えは却下された。水鉄砲は放たれた。
人気のない公園に、後藤が一人佇んでいる。傍には婦人服と水たまり。
「チャコちゃん、溶けちゃった」
お題は
>>359 さんのを。
「お別れ」「スープ」「髪の毛」 女は思いつめたようにラーメン丼の中を覗き込んでいた。向いに座る男は額に汗を 流しながらラーメンをすすっている。女が意を決して顔を上げた瞬間、男はカウンター 内に向かって手を上げた。 「おっちゃん、替え玉」 「あいよ」 男は替え玉が入った丼の中に紅しょうがや高菜を入れるとそれをすすりながら女に たずねた。 「ごめん、何の話?」 女はうつむいたまま『ううん』と小さく呟いて、髪の毛ほどの細さのラーメンを口に 運んだ。芯が残っているような食感に女は強い違和感を覚えた。男はそれを見て取り ゴマをラーメンに入れながら言った。 「この食感が博多ラーメンの醍醐味なんだよ。イタリアのパスタにも天使の髪の毛って あるでしょ。アレと同じでアルデンテで揚げてちゃ麺がラーメンの中でのびちゃうんだ」 女は一言も答えない。男はそんな女の様子を窺い安心した。こんなところじゃ別れ話も 出来るまい。さて、どうすればお別れを言われずにすませられるだろう。男はそう思い つつ、残っていたスープを一気に飲み干した。 16行。う〜。 次もお題継続・「お別れ」「スープ」「髪の毛」でお願いします。
362 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/01 03:34
「お別れ」「スープ」「髪の毛」 楽しかったデートももうすぐおしまい。彼女と駅前で別れるとき。それは寂しいけれど、彼女をとても愛しく思える瞬間でもある。 「今日はここでお別れだね」 「うん」 「次に会えるのは……クリスマス・イヴ?」 「そうだね」 「あーあ、あと1ヶ月も先なのかあ…長いなあ」 「仕方ないよ。イヴを二人で過ごすにはそれまでに仕事やっつけちゃわないと」 「そうね。イヴの夜にまで残業なんてしたくないものね」 「まったくだ」 「あ、そろそろ私行くわね。じゃあ、クリスマス・イヴにね」 「うん、クリスマス・イヴに」 僕は彼女の後姿を見送った。彼女の歩くリズムに合わせて、髪の毛が元気に飛び跳ねるのを。 家に帰り着くと、僕はドーナツと温かいスープで冷えた身体を暖めた。そして彼女のことを考えた。 1ヶ月も会えないのは正直、辛い。けれど、彼女はいつも僕の中にいる。今、僕の胸が温かいのは何もスープだけの所為じゃない。彼女のへの想いが、僕をどんな冷たい夜も暖めてくれるのだ。 こうして一人でいるときでさえ、僕は満たされている。それもまた、彼女をとても愛しく思える瞬間である。 次は「雨」「午後」「庭」でーす。
363 :
「雨」「午後」「庭」 :02/09/01 09:26
窓を叩く雨音がその強さを増した。滔々と降り続ける雨、街の汚れを洗い流そうとでもするかのように、いつまでも降り続けている。 俺は家のソファに寝転がり一人、水滴の音を聴いていた。朝から続く雨は午後になっても降り止まない。どこまでも灰色の続く空は晴れる予感すら見せてくれない。 重く暗い心が曇りに共鳴する、俺の精神がなお陰鬱に落ち込んでいく。 溜め息をついても何も吐き出せない。 脳裏に、彼女の顔が焼きついている。四六時中その顔は俺に付きまとい、あるいは恨めしげに泣き、そしてあるいは微笑みかけてくる。 手放してみて、初めて解ることもある。俺に解ったのは、彼女と別れ、暫し経た後にゆっくりと襲い掛かってくる、凄まじい喪失感と悔恨だった。 庭の紫陽花がとりどりに色を咲かせている。彼女は紫陽花が嫌いだった。雨が止み、花が枯れたあと地面に残る茶けた残骸が嫌いだった。彼女はスチェーンが好きだった、あの歌声が好きだった。彼女は・・・・・。 男はどこまでも引きずる物だと気がつく。自分がこんなに未練たらしい人間だったのかと思い知らされる。 だけど今はこの痛みを感じていたい。失ってしまったものを埋める痛みを享受していたい。空が晴れ陽が差すまでは、俺は雨と共にある。
次は「調査」「意外」「選択肢」でお願いします。
365 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/01 14:51
「調査」「意外」「選択肢」 一人でいるのに耐えられないとか、そんなことで人は死んだりしません。 何か事情があったんですよ。 朝出たときのコップが帰ってからも同じ場所にあるとか、 そんなことをバイト先でこぼしてたようですが。 そんなことで人は死んだりしませんよ。 何か事情があったんです。 実家に帰ればこんなに優しいご両親が待ってるのに。 残される親御さんの悲しさも想像がつくのに。 息子さんはまだ若かった。 人生の選択肢も無限にあった。 なのに自ら命を絶つなんて。 バイト先の花火見物にも出てきてたそうです。 いつもと変わらず明るく笑ってたそうです。 ええ、このような結果は私にもかなり意外です。 調査は今後も続けます。 それでは失礼いたします。 次は「月」「ベーコン」「週刊誌」でお願いいたします。
366 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/01 18:43
「月」「ベーコン」「週刊誌」 市外電車に乗って砂州へ行った。 電車は行楽弁当や週刊誌やラジオで武装した人々でいっぱいで、 僕はしかたなく出入口のそばに立って扉のすきまから漏れてくる潮風を嗅いだ。 家族連れや恋人達は夏だけ営業している海水浴場前で降りてしまい、 終点の灯台前まで残ったのは航法局の事務員と僕だけだった。 駅からは砂州の外洋側へと小径が伸びていて、 僕は足元の砂をぎゅうぎゅう鳴らしながら砂丘を登った。 空は晴れていて、雲がすべるように上を流れていった。 僕はとある『塔』の草むらの上に腰を下ろし、ベーコンの塊を鞄から取り出してかじった。 そうやって海と砂州を眺めながらときどきキュウリで喉をうるおした。 ときどき砂が飛んできて、僕は眼をつぶった。 よみさしの十月革命についての論説書を家に忘れてきた事に気付き、 僕はなんだか気分が軽くなった。 次回は「峰」「誠実」「ガラス」
「峰」「誠実」「ガラス」
北アルプスの峰々を望む、諏訪湖の畔にラリックの美術館がある。
ルネ・ラリックはアール・ヌ−ヴォ−、アール・デコ様式の香水
瓶を初めとするガラス工芸品が人気のデザイナーだ。有機的な流れ
のあるフォルムに端正な装飾が施された作品は、ナリこそ小さいが
仕事に誠実さが伺える。
今日ここに来たのは、ある香水瓶のためだ。俺が今の仕事をして
いるのも、それに感化されたからだ。いわば俺の原点だ。
それは、館の中央部にあった。若い頃見たその輝き。ぼーっと光る
磨りガラス、官能的な丸みを帯びた曲線、蓋の部分に載っている彫
刻の乙女像の麗しい姿。昔のままだ。
恋と仕事の板挟み、仲間との軋轢、追いかけっこのような忙しい
毎日。そんな日常に疲れた俺を、見ているだけで癒してくれる。こ
れでまた一がんばり出来るだろう。おっと、お迎えが来ちまった。
さて、早いとこ仕事に取りかかるとするか。
「ルゥ〜パァ〜〜〜〜〜ン!」
アバヨ、とっつあん。また当分付き合ってやるぜ。
#次のお題は
>>352 「慰め」「怪人」「缶詰」をサルベージ
368 :
「慰め」「怪人」「缶詰」 :02/09/01 23:19
いやね、お前の考えは画期的なものだと思うよ。 缶詰にしてしまえば、輸送に関わる面倒も無くなる。 先週のヤツのように、電車賃に困るということも無いだろう。 しかしね、それじゃ納得してくれないわけだよ。 例えばさ、お前が追い詰められたとする。 そこでお前はセコセコと缶切りで缶詰を開けはじめるわけだ。 お前は不器用な上に上がり症だから、全部開けるのに5分はかかるだろう。 正義の味方がそこまで待ってくれるか? な、やめとけって、戦闘員を缶詰にして持っていくのは。 まあでもあれだ、お前のように自分のスキルを自覚し、 業務に生かそうという考え、俺は好きだな。 そう言って、悪の首領であるところの俺は 今週の怪人である「缶詰仮面」を慰めた。
369 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/01 23:22
次は、「ガラス瓶」「宅急便」「憐憫」でおねがいします。
370 :
「ガラス瓶」「宅急便」「憐憫」 :02/09/02 01:10
鶴首のガラス瓶は底に深い藍色が沈んでいる。 香子の視線は、ガラスの色に添って上にあがる。 次第にその色は薄藍に変わり、薄藍は水縹に溶け、 水縹は浅葱にゆるやかに移り、首は甕覗の色をしている。 浅葱色に染まった鶴首に香子の手がかかったとき、入り口から声が届いた。 「宅急便です。いつものお荷物、取りにあがりました」 森岡がやってくるのは、毎月一日午前十時と決まっていた。 「これから荷造りをするところなの。少し待っていてください」 香子は、そういってガラス瓶を新聞紙でくるみはじめる。 「お手伝いしましょうか」 「いえ、これは私がやります。あの人に送るものですから」 香子の声は堅い。 森岡は、ふと憐憫にかられる。 自分が首を締めて殺した男の命日に、 こうして青い鶴首のガラス瓶を送り続ける女に。 次は「鴉」「顔」「形見」でお願いします。
371 :
「鴉」「顔」「形見」 :02/09/02 01:49
京都市にある一等地を格安で手に入れられる、ということで社長は乗り気だった。 しかし、実際に交渉役となった僕にとっては、苦労が絶えなかった。 「あのー、ここの部分なんですが、鴉丸ではなくて烏丸が正しいじゃないんですか?」 「いいの、あたしこっちの鴉っていう字のほうが好きなの」 「いやそう言われてもですね、こういう公的な文書では・・・」 僕がそう言いかけたとき、その女はただでさえ無表情な顔を さらに冷たくして、ゆっくりと目線を僕にあわせて僕に言った。 「あの土地は、祖父の形見なの。祖父はいつも言ってた。 『鳥のように自由に、お前も生きていなさい』 それであたしは、こんなヒラヒラした格好をしているの」 勘弁してくれ・・・。僕はそう思った。 こんな電波女との相手にかなり疲れていた僕は、交渉する気をなくしていた。 結局その土地はライバルの不動産会社に売られたらしい。でもそれで良かったと思う。 その土地からは多数の噛み殺されたと思われる死体が見つかったのだ。 どうりで彼女は鴉の字を好んだわけだ。僕はそう思った。 彼女の歯には、するどい牙のようなものが生えていた。 次は、「ポリマー」「卒業写真」「花火」でお願いします
372 :
「「ポリマー」「卒業写真」「花火」 :02/09/02 06:55
空に桜の花が舞う、少しだけ風の強い日。カメラを向けてくる写真部に、俺と、三人の友人達は思い思いのポーズをとる。皆一様に、小さな筒を大事そうに抱えている。 卒業写真。この学校で写す最後の写真だ。 「とうとう卒業か」 学校を振り返り、一人が言う。声に含まれるどこか寂しげな響き、それは今、皆が共有しているものだ。学校という一つの世界、そしてそこから締め出される自分達。 「お前就職決まったんだよな」 俺は笑い、頷き返す。友人達がみんな三学期当初には就職の内定した中で、俺がポリマー精製会社に採用されたのはほんの一週間前の事だった。 「良かったなあ。ほんとに」 「お前だけプーになるところだ」 はは、と笑う。そこにまた一人がくだらない洒落を言った。 一緒になって笑いながら、俺はこんな時間が好きだった、そう思った。このすこしだらけ、馬鹿みたいな、けれど楽しげな瞬間が、どれほど大切なものか最後の最後にわかった。 「なに黙ってんだよ」 俺の方に腕を乗せ、笑う。 「しんみりすんなよ、いつでも会えるだろうが?」 そうだね、と俺は言った。そうだ、最後というわけじゃない。いつでも会える。いつでも一緒に騒げる。友達なんだから。 夏の花火大会に、俺は行くことが出来なかった。仕事というのは予想以上に厳しく、毎日の残業が続いている。誘いはあった。OKの返事をしたが、結局は行けない、と翻すことになった。 友達とも、もうあまり会えていない。 仕事。社会人。友人達との時、瞬間とも疎遠となる言葉。俺は小さく息を吐き、目の前の書類に取り組んだ。 次は、事件、一変、心理、でお願いします。
373 :
エヴァっ子 :02/09/02 13:39
父の言っていた事件は一瞬で成り行きが分からなくなるという言葉が、良く分かった。 新しい証言によって事件はその姿を一変させ、犯人の心理を……行動を曇らせる。 名刑事の名を欲しいままにしていた父なら、この事件をどう考えるだろうか、と犯人の心理ではなく親父の心理を探ってしまう。 「だぁー!ダメだ!!」 俺は思わず叫び声を上げて、事件のあったアパートから飛び出した。 ダメだダメだ、と心の中で自分の声が反芻する。 父に頼っちゃダメなんだ、名刑事の息子なんかじゃないんだ、俺が名刑事だ。 そう自分に言い聞かせ、胸ポケットから煙草とライターを取り出して、煙草を吸った。 思えばこれも父を真似したものだった。 馬鹿馬鹿しい子供の憧れで、煙草を吸う父の姿を、知らず知らずに真似をしていた。 なんて情けない刑事なんだ、俺は! 煙草を地面に叩きつけ、地面にすり込むように踏みつけた。 クソクソクソクソ!! 行き場の無い怒りと情けなさが、俺の心を蝕んでいく。 いっそこのまま逃げ出してしまおうかとも考えてしまうほど、俺は酷く滅入っていた。 だが、ここで逃げるわけには行かない。 俺は名刑事なのだから……。 どんよりと曇った空の下、新米刑事はゆっくりと足をアパートに進めた。
374 :
エヴァっ子 :02/09/02 13:40
次はロープ、ナイフ、屋上で。
375 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/02 14:45
「ロープ」「ナイフ」「屋上」 「ロープは首をつるための道具である」と言い残して彼はいなくなった。僕と彼は長い付き合いではあるが、それほど親しい間柄 というわけではない。何をするときでも、彼は何か別なことを考えているように見えた。何を考えているのか、聞こうとは思わなかっ た。もし聞いたとしても、きっと理解できなかったと思う。 いつだったか、彼の家に行ったときに、僕はりんごを買って持っていった。そのとき、彼がりんごの皮をむいたのだけれど、果物 ナイフで皮をむいている時でさえ、彼はりんごのことなど全く眼中にないようだった。きっと彼は、りんごではなく彼の中にある何か 余分なものを抽象的に削ぎ落としていたのだろう。僕には今でもよくわからない。ただ、りんごの皮は驚くほどきれいに薄くむけて いた。彼は、何も言わずそのりんごを僕に渡した。 僕は彼に何かを言ってやるべきだったのだろうか? でも、僕には彼が何を考えているのかなんてわからない。そんな僕に何が 言えただろう。もしかすると、僕はあまりに彼に対して無関心だったのかもしれない。彼は僕に何かつながりのようなものを求めて いたかもしれなかったのだ。 今ごろどこかの森の木にぶらさがっているのかもしれない。あるいは、「屋上はそこから飛び降りるための場所である」とでも言 いながら帰ってくるのかもしれない。 僕はそのことについて考えるのをやめた。僕はそういったことを考えることには向いていないのだ。 次は、「枕」「傘」「ギター」で。
376 :
最近改革路線 :02/09/02 17:30
「枕」「傘」「ギター」 母に頼まれて物置の掃除をしていると、ホコリだらけになったクラシックギターが見つかった。 「あーこれ懐かしいわね。わたし昔弾いてたのよ、ギター。」 母はそう言うとギターについているホコリを払い、たどたどしい指使いで弾き始めた。 「へたじゃん。」僕が言うと、「あれぇ、おかしいなぁ。昔は弾けたのに。」と母はなんだか 悔しそうに言い、懐かしそうな表情を浮かべた。 夜になり、夕食が食べ終わってリビングでテレビを見ていると、母がアルバムを持ってきてテーブルの上で広げはじめた。 母があまりにため息ばかりつくので、僕は居心地が悪くなり自分の部屋へ行ってマンガを読むことにした…。 「起きなさい、遅刻するよー。」 枕もとの時計を見ると、遅刻ぎりぎりの時間だった。 急いで制服に着替えながら、キッチンへ向かった。 冷蔵庫を開け、朝食代わりの栄養補給ゼリーを取り出すと一気に吸い込む。 母は出勤準備を済まし、ソファーに座って日課である朝のドラマを見ていた。 「雨降ってるわよ。傘持って行きなさいね。」 振り向いた母の頬には珍しくチークが塗られていて、口紅も心なしか普段よりも紅いような気がした。 僕は母のその変化に少し戸惑いながら、しかし足を止めることなく玄関に向かった。 靴を履きながら傘立てを見ると、傘が一本しかない。 「いいよ、俺駅まで走っていくから。母さん使ってよ。 せっかく厚化粧したんだからさ。じゃ、いってきまーす。」 ドアをしまる直前、「うるさいわよ!」という母の声が聞こえた。 僕は色とりどりの傘の群れの間を走り抜けながら、 安かったらギターの弦を買って帰ろうと思った。 #長くなってすいません。 次は「創作」「文芸」「板」でどうでしょうか?
377 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/02 18:35
創作文芸板は 作家の卵が集う場所 文を通して励まし合い競い合い 芸術の高みを共に目指す 板に溢るる気概と友愛 というのは嘘です。 (すんません(笑 お題は継続で。)
378 :
「創作」「文芸」「板」 :02/09/02 20:02
教授は、縦横2メートルほどの板を助手に持ってこさせた。 「皆さんにこの板を使って創作してもらおうと思う。 期間は一カ月、テーマは文芸」 彰はこの大学に入学したことを、後悔した。千一回めくらいに。 「キミたちも知っているように、私は十年ほど前から 文芸と美術について思考を続けている」 「ンなこと、知らないよ」 ガムを噛みながら、隣の奴が言った。 教授にも聞こえたはずだが、教授はかまわず続けた。 「文芸と美術。それは、互いに高めあう関係をもつと 一般に思われているようだが、本来、相容れないものである というのが、私の考えだ」 <オレは、この学校に相容れない。アンタとも相容れない> 彰は五百回は繰り返したことを、また思う。 「この二つを、ひとつの板で君たちはどう表現をするか。 それを私は見たい」 一ヵ月後、彰は板を白と黒で上下に塗り分けた。 「すばらしい! 美術の文芸に対する圧倒的上位が示されている」 教授は絶賛した。 <現代美術はクソだ> 彰は今、長距離トラックの運転手をしている。 次は「キセル」「関所」「山姥」で。
379 :
「キセル」「関所」「山姥」 :02/09/02 20:50
「スイカのせいで、キセルができなくなっちゃったからなぁ」 関所まであと一駅になった電車の中で、向かいの席の若い男が 隣に座った娘にぼやいている。 娘はイマドキ珍しい山姥、もといヤマンバ・メイクをしている。 「どうしてスイカのせいで、キセルができなくなったのぉ。 スイカって、前からあるじゃん」 「前からって、あれ、できてからまだ二年も経ってないだろうが」 「え〜っ、ウソォ。亜矢が生まれたときから、じいちゃん、畑で作ってたよぉ」 素朴なヤマンバ・メイクに出会って、また、小ネタがひとつできた、 と旅のルポライターは喜ぶ。 オソマツでございます。 次は、「虹」「二字」「二児」で。
380 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/02 21:35
石にはたった二字、「墓石」と刻まれている。 誰の墓だったのかもう誰にも分からない。 俺は自分の家の墓参りのあと、余った線香をこの無縁墓にやる。 俺の爺ちゃんも、俺の親父もそうやっていた。 昔、爺ちゃんはこう言っていた。 「誰もお参りしなきゃ、この仏さんは誰でもなくなる。 誰でもなくなった仏さんは誰かになろうとして、すがりついてくる」 子供のころの俺はそんな話を信じちゃいなかった。 今では俺は二児の父親。子供たちと一緒に無縁墓に手を合わせている。 「あなたはここに眠っていますよ。迷いでてくることないんですよ」 一度、俺はこの墓の仏さんに会ったことがある。 そいつは二年前に生まれるはずだった俺の三人目の子供にすがりつき、妻を連れて帰っていった。 「さあ、ちゃんとお参りしたか」 「ちゃんとしたよ」と面倒臭そうに長男が言う。「それよりオヤジ、虹だぞ」 息子の指差す先には今にも消えそうな虹。あれから毎年この季節に出てきている虹。 ---- お題は継続で。
あのクソデブがいまでは2児の父親らしい。 高校で同じクラスだったときには、毎日毎日イジメてイジメてイジメぬいたヤツだ。 なんていうか、生理的に肌に合わない、嫌悪感を持つタイプだ。 リクツじゃない。もう、見ているだけでムカつくヤツなのだ。 殴る蹴るなんて毎日。フデバコだノートだ教科書だの、もちものは全て壊して捨てた。 放課後にはハダカで近所の空き地に放置。それを写真にとってバラまいた。 自殺したって俺の心は痛まなかったろう。 それがどうだ。ヤツは地獄のイジメに耐えて卒業しやがったばかりか、すげえ美人のオンナと結婚して、ガキまでこさえて幸せな家庭を作ってやがる。 あのクソカスが、冗談じゃない!!! 俺はたった2字、「死ね」と書かれていることを確認すると、その葉書をポストに投函した。 もちろん配達先はヤツの住所だ。 俺ももう大人だ。昔みたいに軽々しく暴力沙汰は起こせない。 せいぜいこうやって、毎日イヤガラセの手紙を出すだけだ。 セコイと思うかもしれない。でも、鬱屈な毎日も、このおかげでどこか晴れ晴れとした気分になる。 きっと俺様の心の中の青空には、美しい虹がかかっているに違いない。
「真紅」「べらぼう」「紹介」
「真紅」「べらぼう」「紹介」 --- 寛文年間のことである。江戸に流れ星が落ちた年、ある見せ物が流行した。 肌は鴉のように黒く、真紅の虹彩をした男が市中を練り歩き、猿のようにおどけながら街の者にちょっかいを出してまわるのだ。 そして「便乱坊 廿文」と書かれた見せ物小屋へと消えてゆく。 男の後をぞろぞろと付いてきた江戸市中の人々は、つい、20文を支払ってその小屋へと吸い込まれてしまう。 2度3度と訪れる者もいたということだから、その見せ物はおおむね好評だったようである。 ただ、不思議なことにこのべらぼう、一体何処からあらわれるのかついぞ見たものがいないのだ。 いつもどこかしらから現れ、そして小屋へと消えてゆく。神出鬼没、と言えるのかもしれない。 また、べらぼうについて不思議なことはもう一つある。 べらぼうは幾つかの古書や日記に紹介されているが、どうやら興業が進むにつれ、見せ物をするべらぼうの数が増えていったらしい。 日本永代蔵によると最初1人であったべらぼうは3ヶ月間の興業でおよそ100人ばかりに増えていったようである。 ともあれ、5月に始まったべらぼうの興業は、8月に終了した。 座の荷車は鉄ばりの箱型をしており、高さ18尺を越えていたというのだから対したものである。 この荷車が日本橋にさしかかったとき、普請方の侍が橋が落ちるのを心配し、通行を差し止めようとした。 結局べらぼうの荷車は橋を越えることになったのだが、その時の荷車の車輪は回っておらず、1寸ばかり浮いていた、といくつかの古書は証言している。 やがて座は中山道を通り西に向かったとあるが、興業をしたという記録は残念ながら残っていない。 --- 司馬遼太郎、のつもり。 次は「街道」「余談」「あくせく」
384 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/03 00:28
「真紅」「べらぼう」「紹介」 「……というわけだ。組織的な援助交際の元締め、禁止薬物の元売。素晴らしい相手だな」 「そうですか……」のんきに語るボスの顔と話の内容に、俺はかなりやる気を削がれていた。だいたい 15,6歳の餓鬼をスケベ親父に紹介して金を受け取るような世事に長けた奴なんて、何をしてくるかわかった ものではない。仕事はもっとスマートであるべきだ。陰鬱な気分で事務所を出ると、すぐさまファイルにある “奴”のアジトを確認した。こんなテンションの上がらない仕事は直ぐに済ませてしまうに限る。 その夜、俺は街の外れにある巨大な屋敷に向かった。塀を乗り越え、気配を追って庭に進むと、とたんに闇 が濃くなり、目に映る景色が黒と真紅の2色に染まってゆく。アレの気配だ。間もなく黒い霧の中から姿を現し たのは、がっしりとした体格をした金髪の中年男だった。 「私の屋敷にようこそ、歓迎するよ」男はそう言うと片側の頬だけで笑ってみせた。 「お前、ずいぶんと世知辛いことをするじゃないか。いつから誇り高き吸血鬼はヤクザの元締めになったん だ?少女の血を吸って体と薬を売らせるなんて。金なんてどうにでもなるだろう」 俺の率直な疑問に、男は大きくかぶりを振った。 「そうもいかないんだよ。高度な社会システム下での不老不死はべらぼうにコストがかかるのでね。それに世 知辛いといえば君の組織も同じだろう。連絡手段は伝書鳩からインターネットと携帯電話に、羊皮紙はCDに変 わり、報酬は月給制だそうだな。誇り高きヴァンパイアハンター君、どうなんだ?」 俺は苦笑した。確かにその通りで、だからこそ…… 次の瞬間、俺の剣と奴の爪が火花を散らした。瞬時に間合いをとりながら、つぶやいた。 「だからこそ、この瞬間を追い求めなきゃならないんだよ!」 またかぶったし。漏れ筆が遅いな。
385 :
「街道」「余談」「あくせく」 :02/09/03 01:13
街道に、見るからに美味しそうな葡萄の木がありました。 キツネがそれを取ろうとしましたが、なかなか届きません。 「ふん、こんな葡萄、どうせ酸っぱいに決まってる!」 歴史的に有名な捨て台詞を残して、立ち去ろうとしたその時! 「あわわわ、ちょっと、ちょっと待ってぇー」 一匹のシマリスが、重い荷物を抱えて葡萄の木の上からご挨拶。 「この葡萄を諦めた貴方には、余談に過ぎませんけど…」シマリスは続けます。 「本当に酸っぱい葡萄だったかどうか。この糖度測定機で計ってみまーす」 ザッと枝をどけると、そこには農協の糖度測定機が。 イソイソと葡萄の房に紫外線をあて、糖度を測定するシマリス。 「はーい、結果が出ましたぁ。「糖度18:極めて甘い」でしたぁー」 キツネは黙っておりました。 このシマリス、ずっと俺を待っていたのか。何日も何日も木の上で… 一シマリスが糖度測定機を買うのだって、並大抵ではなかった筈だ。 あくせく働き、何日も何日も、ただキツネの悔しそうな表情をみるために… キツネはシマリスの心に巣食う闇の深さに、慄然とするしかありませんでした。 ※動かなくなったシマリスの顔には、安らかな微笑みの表情が…(<ヲイヲイ) 次のお題は:「バナナ」「その時」「マシーン」でお願いしまふ。
386 :
「バナナ」「その時」「マシーン」 :02/09/03 06:25
彼はほんの少し、腹が減っていた。 たわわに実ったバナナが収穫の時期を迎えた。フィリピンの夏。一年中温暖な気候にあってこの時期は特に湿度も高く、蒸し暑い。 彼はきょろきょろと辺りを見回した。あたりに、自分以外の労働者はいない。監督もいない。それを確かめる。 籠いっぱいに詰め込まれたバナナをつまみ食いするなど、誰でもやっていることだ。俺だって・・・そう思っていた。一本だけ、その手に握る。 そして皮をむこうと指をかけたその時、がさりと草音が聞こえた。 バナナを取り落とし、びくんと後ろを向き、横を向き、上を見る。かごに隠れでもするかのようにしゃがみこみ、その額には冷や汗が浮かんでいた。 彼はほんの少し、気が小さかった。 見つかっても、笑って誤魔化せばいいことじゃないか、一本だけだ・・・一本だけ。 ベルトコンベアだの、殺菌機だの、マシーンにかけられる間に傷ついて捨てられるものがいくらでもあるんだ、一本ぐらい・・・。 必死で自分に暗示をかける。 しゃがみこんだまま再びバナナを手に取る。枝部分に指をかけ、剥く・・・ 「シルコー?」 「うああったひゃあお」 十二分に裏返った返答が友人に届いた。こちらを見つけ、近寄ってくる。 「休憩だよ・・・どうした?顔色が悪いな」 「いやいやなんでもない、なんでもない」 「そうか。喜びな。珍しく社長が、ご馳走してくれるそうだ」 「ご馳走?」 「ああ。商品のバナナをな。とはいってもこの間の台風で、商品価値のなくなったものをだが。・・・どうした?なんで頭を抱えてるんだ」
次のお題は「音楽」「最初」「鼓動」でお願い。
小鳥がさえずっていた。 素足の少年はそれを追って草原を駆け抜ける。少年は動物の皮を腰に巻き、 木製の槍を片手に構えている。なぜか体には泥が塗りつけられていた。 やがて小鳥はある樹木の周囲をまわり始めた。少年は地に伏し、その樹木の 中間地点に槍を投げる。やや間があって、土色の塊が一つ落下した。少年は その蜂の巣を手に取り、先ほどよりも速くその場を逃げ出した。そして小鳥は 蜂が消えたのを見計らって、地面に舞い降り、落ちた巣のかけらをのみこんだ。 草原から森へ走りぬけ、一つの洞穴へ少年は帰りついた。泥で体を覆ってい たが、それでも数カ所に蜂の針が突き刺さっている。 洞穴には少年の父も兄弟もおらず、ただ母一人だけがいる。少年は命がけで 採ってきた巣を母に渡した。 母が巣ごと蜜を口に入れる間、少年は母の膨れた腹に耳をあてる。くり返し 聞こえてくる鼓動、時に何かが暴れるような響き。少年はそれが妹となる存在に よって生まれた音であるとは知らない。 生活の糧とは何の関わりもない、無意味な音。それが最初の音楽だった。 ちょっとずるいが15行ギリギリか。お題は継続。
夏嫌いの私は、相対的ではなく、絶対的に冬のほうが好きだ。 九月の幾分涼しげな朝夕の空気に身を晒すたび、まだまだ先の雪の降る光景が待ち遠しくなる。 夏の間中、吹奏楽部の練習は、冷房のろくに効いていない教室ばかりだった。夏は手入れも慎重に、チューニングも合い難い。 この点いい加減うんざりして来たところだ。 だから冬になれば、外の情景とストーブの焚かれた室内が、この上なく気分を落ち着かせ、楽器も心なしか扱いもよくなることだろう。 冬はジャズ。誰が決めた訳ではない。私がそう思うだけだが、冬の音楽といえば、降りしきる雪を見ながらジャズと決まっている。 それもスウィングがいい。金管だけでストーブの回りに集まって、最初は何でもいいから一曲演奏して、みんな疲れると外で雪と戯れたり。 さすがに外で吹くと楽器が大変なことになりそうだが、外で吹いたり。 そんな、こじんまりと少人数で集まっていると、お互いの鼓動が一つになって、楽器の動きも出る音も、全部が渾然となって 堪らなく気持ちがいい。 早く、冬にならないか、そんなことばかり考えて、今日も残暑の中楽器を抱えて歩いていた。
次回も、お題継続だ。
391 :
「音楽」「最初」「鼓動」 :02/09/03 19:02
2両編成のディーゼル列車はエンジンの鼓動を響かせて発車した。降り立った私は無人の改札をくぐる。 駅前の小広場に立ったとき、何処からか音楽が聞こえてきた。私の聞き覚えのあるような曲が・・・ ふと、あたりを見回してみるてみる。すると、そこには一台の車が停まっていた。 音楽の正体はこの車のカーステレオだった。車からはどこか懐かしい音楽が流れ続けている。 私がこの町を逃げ出してからもう何ヶ月経ったのだろう。 “こんな田舎にいたら私の人生は駄目になってしまう。都会に出たらもっと輝けるはずだ。” 突然そんな衝動に駆られて東京へと向かった私。もちろん反対されるから家族には無言でだ。 最初の頃は上手くいくと思っていた。だが、考えが甘かった。東京は私のような田舎物を決して受け入れたりはしなかった。 この町とは比べ物にならない速さで流れていく街並み。人情味のかけらもない人間関係・・・ 私は心身共に朽ち果ててしまい、もはや抜け殻同然だった。頼みの綱の貯金も底をついて―― この町に戻ることを決めたのだった。やはり私にはこの町が一番ふさわしいのだと悟って! 目の前には懐かしい光景が広がっていた。あの寂れた商店や、遠くに見える山並み達・・ 私はなんだか生き返った気がした。そしてつくづく、帰ってきて良かった、と実感するのだった。 だが、ひとつ重大なことを忘れていた。こんな事をした私を家族は許してくれるのだろうかと。 しかし、その悩みはすぐに解決するのだった。突然車の運転手が掛け声とともに私に手を振った。そして 「おーい、友紀子じゃないか!帰ってきたのか、お前? とにかく乗れ。みんなが待ってるぞ」 その車の運転手は、なんと私の父だったのだ。車からの懐かしい曲は、父が長年愛用している演歌のテープだったのだ。 こうして私は我が家へと戻った。そして、みんなは私を快く受け入れてくれた。 次は「喪失」「台本」「カバン」で
「喪失」「台本」「カバン」 −− 晩夏の午後。鉄男たちスバル少年演劇団の面々は今日も稽古に忙殺される。 台本通りにやってくれ、と宮田が叫んだ。彼は脚本担当である。 「そこはグラスを床に叩きつけてバッタのように飛び跳ねる場面なんだぜ!」 宮田はうるせえな、と鉄男は呟いた。演出担当の野村も苦い顔をする。 「宮田ァ、やつらも懸命なんだからあんまり苛めるなよ……」 野村がなだめると、 「駄目だね、甘やかすのは駄目だ。スパルタで行かなきゃならん」 団員たちは揃ってため息を吐く。彼らはすでに士気を喪失していた。 ふと、鉄男は台本を読み返し、ある事に気付く。 「あ、宮田さん」 と、鉄男。「ちょっと、これ……」 「喋るな」 宮田は一喝した。「かしましい」 「シーン28、応接間の場面から!」 田嶋監督のコールが響いた。 『ねえ、水差しはある?』 女客役の内田康子が振り向いて言う。 『ありますよ、どうするんです』 主人役の鉄男。 『これ、このままでは枯れてしまうわ』 と内田。 内田は水差しを受け取ると、舞台脇に向かった。そして「それ」に水をぶっ掛ける。 「おい、そりゃ俺のカバンだ!」 悲鳴を上げる宮田。「馬鹿野郎、花瓶に水を差すんだよ――」 言いかけて、宮田はハッとした。台本に目を走らせる――『女客、カバンに水を差す。のち微笑む』 −− お題は継続で。
393 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/04 05:42
「喪失」「台本」「カバン」 やってしまった。 今まで真面目に生きてきたのがパアである。 そもそも飲み過ぎたのが悪かった。 電車に忘れ物をしたことなど一度もなかったのに。 届けを出さねばなるまい。 あの黒革カバンには私の番号が入っているのですぐに通報されるだろう。 もし、すでに通報があったとしたら! 震えおののきながら私は近くの派出所へ急いだ。 警官は言った。「党員番号教えて。それから名前と住所ここに書いて」 私は汗ばんだ手でペンを握り、警官はどこかへ電話をかけた。 その電話のやりとりを聞きながら、私は恐怖のあまり何度も書き損じそうになった。 「以上、照会終わります」警官は電話を切ると私を見た。 「馬鹿な事をしたもんだ、幸いカバンはまだ見つかってないそうだが」 警官は引き出しを開け、使用すべき書式を吟味した。 「なんせ刑期がぐんと違ってくるからな。発見の前と後で」 そうして警官は書式を取り出し、得意げに私の目の前でそれをひらひら振った。 「第二種党有物喪失行為。まあ再調整施設くらいで済むだろ」 「じゃまず状況聞くから。聞いた事だけに答えて。余計な事はしゃべんないでね。 あんた初めてだから知らないだろうけど、こういうのには台本があってね……」 次回は「海老」「第一走者」「ユスリカ」
394 :
「海老」「第一走者」「ユスリカ」 :02/09/04 06:24
排水溝の中で、よく知らない虫が踊っていた。芋虫のようであり、節足動物の様でもある。整列をするかのように何匹も並ぶ様はまるで走り出すのを待つトラック走者だ。 痛む右足をさすり、俺はしゃがみこんだ。 慰められるのが一番辛かった。責める人間はいなかった、それが辛い。 地方の駅伝とはいえ、皆必死で練習してきた。よりによってその本番で、第一走者の俺が、転倒してしまった。 海老のように背を折り曲げ倒れこむ自分の姿が、傍目から観ているように脳裏に浮かぶ。慌てて立ち上がったが、足首を捻挫した俺は満足に走ることは出来なかった。完走はしたものの、お話にならないタイムを次に手渡すことになった。 誰かに文句を言ってほしかった。だが皆は笑いながら気にするなと言った。それが思いやりだと解っていても、俺は自分で自分を責めることも出来なくなった。 どうでもいい存在になってしまったような気がする。目の前のこの虫のように。生物の時か、ユスリカとかいう虫だったか。 流れる水の中でゆらゆらと見える虫。それと自分が重なる。自己嫌悪が病気の様に、心の中にはびこっていた。 俺は立ち上がると、空を見上げた。走るしかない、そう思う。このトラウマを払拭するには、走って走って走りこんで、次の駅伝で結果を残すしかない。 右足を引きずりながら、俺はこの痛みを忘れないと強くそう思った。 次のお題は「明かり」「溢れる」「囁き」で。
395 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/04 16:04
「明かり」「溢れる」「囁き」 血が溢れる。止まらない。 彼は使い物にならなくなった左足を引き摺り、月明かりの差さない場所へと身を隠す。 息が荒い。 此処に隠れていられるのも時間の問題だろう。 逃げなければ『奴』が来る。 だがもう、動けない。 足音が聞こえる。───来た。 彼は無理矢理に息を静め、目の前の『奴』を見遣る。 「・・・終わりか」 自嘲的な笑みを浮かべ、彼は言う。 「始まりさ」 『奴』は彼の耳元にそう囁き、躊躇無く引金を引いた。 事切れた彼を一瞥し、『奴』はもう一度呟く。 「そう、始まりだ」 物語の導入部っぽく。 ネクスツお題は「世界の終わり」「電話」「ベッド」でぷ。
396 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/04 20:15
「世界の終わり」「電話」「ベッド」 女がいた。 美しい女ではなかったが、俺にとっては最高の女だった。 料理が上手く、金持ちで、俺に従順な女だった。あんな女はなかなか見つかるもんじゃない。 だが、あの女はもういない。 真っ赤なベッドに寝ているのはあの女ではないのだ。ただの肉塊にすぎない。 鼓動が高鳴る。呼気が荒い。ナイフを持っている。俺がナイフを持っている。 殺した。俺が殺した。刺した。背中から一突き。死んだ。あいつは死んだ。 プルルルルル。 俺は飛び上がった。電話の音だと分かってはいたが、体の震えは止まらない。 無視しなければならない。俺は今夜ここにはいなかったことにしなければならない。 電話の音は徐々に大きくなっていっているように思えた。 部屋を満たす音。おそろしい。ある種の強迫観念を伴って俺を責め続ける機械音。 頭がわれる。ダメだ、とってはいけない。受話器をとれば、そこが世界の終わりだ。 分かっているのに、全て分かっているはずなのに、俺は電話に近づいく。 受話器に手をかけ、意を決してそれを持ち上げようとした瞬間。 インターホンが、鳴った。 次のお題は「明後日」「ネクタイ」「足跡」で。
397 :
「世界の終わり」「電話」「ベッド」 :02/09/04 20:56
世界の終わりだ。 盗聴がバレた。彼女本人に、だ。 数週間前。彼女の留守中に電話台の下に取り付けた、まさにそれを見つけた瞬間、彼女の小顔についている器官の すべてが動きを止めた。 マスカラを綺麗に施した目が見開かれ、白い顔が更に白くなる。彼女の表情が刻々と変化していくのを、俺はむしろつまらない 三流映画でも見るように客観的に観察していた。 「ずっと、黙って聞いてたのね?あたしの、こと…」 長い長い沈黙の後、搾り出すように彼女が言った。 フローリングにぺたりと絞り込んで、うつむいたまま。 「ちょっと待てよ、俺じゃない!俺がこんなことするわけないだろ!!」 反論しても無駄なことはわかっていた。容疑者ー彼女の部屋に入ることのできる人物ーは他にいないのだから。 当然、彼女は耳を貸そうとしなかった。 「帰って。二度と来ないで!」 涙まじりになった語尾。ああ…こんなときまで彼女は可愛い。 (…よし) これで奴は一巻の終わりだ。よかった。 俺から彼女を奪おうとしたあの男は、完全に彼女に嫌われた。 そう思ったら、自然と頬が緩んだ。 ーー彼女はしらない。 ベッドを据えつけた壁にかかった絵。そこに、仕掛けがあることを。 すべてを仕組んだ神は、額縁のカメラの向こう側にいるということを… 感想待ってます。次回は「秋」「朝日」「自転車」で!
398 :
「明後日」「ネクタイ」「足跡」 :02/09/04 20:59
その日は朝から、僕はずっとひとつの事だけを考えていた。 田舎に帰るという彼女のことだった。僕は彼女からもらったネクタイを触りながら、 やはり同じ事を考えていた。 僕は彼女と付き合いだし、三年の月日が流れていた。残念ながら我々2人は、あの夏のように若くなく、 お互いに光を失い始めていた。そんな時だ。明後日の東京駅発の長距離バスで、 彼女が田舎に帰ると言い出したのは。 以前僕らは2人で手をつなぎ歩いていた。けれどいつしか、どちらかが先を歩き、 どちらかがその足跡を追ってきていたのだった。そしてついに、彼女は足跡を追うのをやめたようだ。 不思議と止める気はなかった。なぜって、それがお互いのためだと思った。 じゃあ、何故、彼女は僕に田舎に帰ることを伝えたんだろう・・・・・・ 僕は気づくと仕事を放り出し、彼女の元に走り出していた。 次は「ツバサ」「包丁」「時間」で。
うーわーかぶった〜。ウワーン すんません、次は396さん提示の言葉でお願いします。
400げっとー
401 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/05 07:48
「秋」「朝日」「自転車」 「まぁ、ツーリングには持って来いの日だぁな」 爽やかな秋晴れの日。彼はガレージからスポーツ仕様の自転車を引っ張り出しながら言う。 事の発端は一昨日の電話。 学生時代のサークル仲間が久々に集まるのだという。 最初は億劫だと思っていた彼も、当時淡い想いを抱いていた『彼女』も参加すると知って 意気揚揚と名乗りを上げたのだった。 「さて・・・」 期待と思い出を胸に秘めつつ、彼は朝日の中を走り出した。 えーと。帳尻合わせの為にお題は出しませんでぷ。 4649。
402 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/05 09:39
>>401 一応>>1のルールがあるんだし・・・・・・
次のお題は
>>398 さんの「ツバサ」「包丁」「時間」ということで。
403 :
「ツバサ」「包丁」「時間」 :02/09/05 10:01
時間がない。そんなつもりはなかった、こんな予定じゃなかった。 彼は気が狂いそうになりながら、目の前のそれを見ていた。 激しく混乱しながらも、手は休まらない。いや、混乱しているが故なのか。 彼はかぶりを振る。その間も手は止めていない。細切れに動き 続ける包丁は、彼の天敵ともいえる標的を滅茶苦茶に切り刻み 続けていた。発端は、よう子のあの一言だった。 「隆君の責任なんだから,隆君がやってよね。」 そういって手渡された包丁。罰ゲームはスタートした。 そして、それは隆にこの上ない屈辱と恐怖を与えた。 時間がない!時間がない!時間がない! 突然鳴り響く警告音。隆の緊張は、あっさりと遮断され, 側頭部を殴りつけられたような衝撃が走った。先生だった。 「はーい、30秒。きゅうり輪切りテスト終了―、数えて―。」 隆の班は,またしても30枚に一枚足りなかった。再々テスト。 家庭科室の窓の外で,からすの翼が晩夏の日を照り返して翻った。 お題:「車」「シャチハタ」「ばんそうこう」
404 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/05 16:55
「車」「シャチハタ」「ばんそうこう」 A「おーい、シャチハタ持ってきて」 B「シャチハタ? シャチハタってあれですか、名古屋城のてっぺんに・・・」 A「それはシャチホコ。シャチハタだよ、シャチハタ」 B「ひょっとして車の・・・」 A「それはシャコタン」 B「絶好調ー!!」 A「それは中畑」 B「きみの肌、ざらざらしてるね」 A「それは鮫肌。シャチハタっつーたらハンコに決まってやんけ、このドアホ!!」 B「あ、こんなところに傷が」 A「それはバンソーコーやろ!! もうきみとはやっとられんわ」 AB「どーも、ありがとうございましたー」 次は「曼陀羅」「秘儀」「秘境」です。
405 :
最近改革路線 :02/09/05 19:52
「曼陀羅」「秘儀」「秘境」 彼はバスを降りると、かねてから寄ろうと思っていた駄菓子屋のほうに足を向けた。 その駄菓子屋がまだつぶれていないことは、実家に住む妹に確認済みだった。 しばらく歩くと、軒先にプラスティックの容器が並んでいる小さな平屋が見えてきた。 隣には彼が子供の頃よく遊んだ竹やぶも残っている。 今の彼からするとほんの小さな茂みのような竹やぶだが、子供の頃の彼にとってまさにそこは秘境だった。 薄暗いその雰囲気に、彼はなにか呪術的なものを子供ながらに感じた。 実際秘儀めいたこと、といっても円を描いて石を重ねるくらいのものだったが、行った事もあった。 そんな竹やぶを少しの間見上げてから、彼は目的の駄菓子屋を覗いた。 置いてある商品はやはり彼の子供の頃とは変わってしまっていたが、それでも懐かしさがこみ上げてきた。 そして、変わっていないものもあった。三段になった棚に並んでいるプラスティックの容器。 少し首をのばして上からのぞくと、まるで曼荼羅のように駄菓子がひしめいていた。 彼は真ん中にあったイカを二本とって、そして思い返したように言った。 「ばあちゃん、これ全部でいくら?」 容器を抱えながら、イカを二つ一気に頬張る彼の顔は満足気だった。 しかし、駄菓子屋から実家まで続く緩やかな上り坂に彼の息は上がりはじめた。 彼は、昔は実家まで走って帰っていたのを思い出し、イカの容器をぽんと叩くと、 大人もそんなに悪くないもんだよな、とひとりごちた。 #お題は継続でおねがいします。
>>403 ツバサがないじゃないのかな?
「曼荼羅」「秘儀」「秘境」
僕は困っていた。道が分からない。それが今の僕の心を支配してる気持ちだった。
普段は、僕はこの会社のこんな奥まで来たことない。普段は見慣れている壁なのだが、
迷っている感覚のせいか、そこはまるで秘境。ジャングルにいるような気分を僕にさせ、
不安感のみを積もらせていた。そんな時だった。突然電気が消えた・・・・・・
僕はますます混乱するかと思ったが、どうやら少しだけ慣れてしまったようだ。
それにここは、ジャングルではなく、僕の出向先の会社の中なのだ。
少しだけ手探りで歩いてたが、ふと思い出した。昨日、この会社の人間が落したライターを、
僕は拾ったのだった。「いやはや困ったものだ」僕はしばらくぶりに独り言を言った。
考えてみればおかしな話だ。さっきまでは、出向先であるこの会社での仕事について、
部長と呼ばれる上司に当たる人間と会議室で話していて、トイレによって、
多分1つだけ手前の角を曲がってしまっただけなのに、いつしか元の場所に帰れないなんて。
狐だか、狸に化かされたのか、孔明の秘儀にはまっただかわからないが、僕は文字通り迷子になったのだ。
「もうしばらく歩きますか」僕は自分自身を慰め、また歩き出した。
突然のことだった。前のほうから、まるで仏教用語の曼荼羅のような光が、前方から照らされてきた。
僕はこの光を見ながら、意識を失ってしまった・・・・・
ってひどい文章ですいませんm(._.)m
次回のお題も継続で。
407 :
帝国の曼荼羅 抄 :02/09/06 01:29
「曼陀羅」「秘儀」「秘境」 保養地用としてのナポリ湾周辺に点在するヴィラには,ヘレニズム王国の 宮殿装飾を模した形式が多く、Villa dei Misteri<秘儀荘>と呼ばれた。 ローマ貴族グナエウス・ドミティウス・アヘノバルブスが所有した秘儀荘に、 秘境からシルクロードを渡って一枚の絵が持ち込まれたのは、 A.D.49年以前であったと想像できる。種々の状況から鑑みて、おそらく それはネロの少年期であったと考えるのが、妥当であろう。 一般に「帝国のmandala<曼陀羅:曼荼羅>」と呼ばれるこの宗教画には、 男女の交合と髑髏が描かれており、ネロの父母の寝室に飾られていた。 母・アグリッピナが、酒に酔わせたネロを母子相姦したその場所にも、 この曼荼羅があったと言われている。
408 :
名無し物書き@推敲終わり :02/09/06 01:48
次は、「盥」「窯」「運命」でお願いします。
409 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/06 04:54
「盥」「窯」「運命」 男は窯に組まれた鍋に水を盥ぐ。 が、鍋の底にはぽっかりと穴が開いていて、水は窯の中の火を消してしまう。 濡れた薪と灰を取り除き、一から火を点ける作業をする。 火を点け終えると、再び鍋に水を盥ぐ。 水はまた火を消し、男は再び薪と灰を取り出す。 これが男の仕事。 隣には鬼。 そう。此処は地獄。 終わる事無き男の運命。 次は「パンクス」「手」「カーテン」で。
>406 最後の行に「カラスの翼」があります。 一応、ここで継続されてきた画面の切り替えと、不吉さが裏返ること の象徴、「あほー」という鳴き声の連想からの自己批判を試みました。 …未熟なり。いえ、上2行は眉唾です。ごめんなさい。 「パンクス」「手」「カーテン」、引き続き、お願いします。
411 :
「パンクス」「手」「カーテン」 :02/09/07 01:40
薄暗い部屋の中で私は目を覚ました。まだ夜は明けていない。 唯一の光源である消し忘れたTVの中で、ライブ中のパンクスが叫んでいる。 消音にしているので迫力は無いが、激しい光の明滅が寝起きの眼を不快にさせる。 一服してから寝直そうと、私は煙草に火を点けた。やけに手がべとつく。 普段は気付かない煙草の煙が、薄暗い部屋では不思議と目に付く。 私はダルさを感じながらも、カーテンと窓を開けた。 もう秋だというのに、意外にも外は既に白み始めている。 真下の路地では、早起きな老婆が二匹の柴犬と散歩をしていた。 すっかり目が覚めてしまった私は伸びをし、牛乳を取ろうと冷蔵庫へ向かったが、 その足は数歩で止まった。 『あぁ!・・・どうするかな・・・』 私は弁当を忘れたサラリーマンのように、間抜けな言葉を呟いた。 冷蔵庫の下には、腹部の赤く染まった妻が倒れていた。 お次は『証言』『匙』『マリアッチ』で。
412 :
よくある話 :02/09/07 04:54
『証言』『匙』『マリアッチ』 「そりゃ、メキシコでマリアッチ聞きに行ったこと、あるけど・・・」 「そのレストランの名前、覚えていますか?」 こっちの問いに答えないで、男は次々質問する。 「う〜ん、スペイン語だったと思うんだけど・・・わかんない。 『金の匙』っていう意味だって、ガイドさん、言ってたかな」 「そのこと、証言していただけますか?」 「はぁ?」 ちょっとイヤミに聞こえるような口調で言ってみる。 「僕ね、あそこにいる友達とカケしたんです。あの人は、 七月二十日の夜、メキシコシティのレストランで 僕の二つ向こうのテーブルにいた人だって言ったら、 広い東京でそんな偶然があるわけないって言われて、それで・・・」 アンタみたいなウブい男はお呼びじゃないよ!と言ってやろうか と思ったが、言わないでよかったかも。 佳織は、父親と腕を組んで歩きながら、そんなこと思い出した。 今から、神父さんに「証言」じゃなかった「誓う」とこなんだ。 二次会は、もち、マリアッチで盛り上がるヨテーでっす! 次は、「ハレルヤ」「最悪」「推理」
413 :
質問(ダメかなぁ) :02/09/07 05:55
ここで質問は、ルール違反? さっきアップした >412 に関することなんですが、 今の20代の人は、「もちろん」を「もち」なんてこと、 言わないのでしょうか? う〜ん、トシがバレるけど、ま、仕方ありません。 ぜひ、教えていただきたいのです。(できれば、女性の方に)
ある貴族の屋敷にまずパートナーが向かい、続けて私が向かう事になった。しかし、 私が向かう直前にハンマーを凶器にして一人の富豪が撲殺された。 「ハンマーが倉庫内にあったのを知っていたのは、屋敷の人間以外にオーギュストさん、 貴方だけでした。貴方の戦友は結局倉庫に立ち入ってなかったのです。そしてこんな 重いハンマーを扱えるのは軍隊生活が長い貴方くらい。屋敷の人間には無理です」 「だがホームズ、動機は。動機はいったいなんだい」 「ワトソン君、私はずっと不思議に思っていた。なぜ廊下に立て掛けてある鎧人形の武 器を凶器にしなかったのかとね。答は簡単だ。あまりにも軽い武器だと、女子供でも あつかえてしまう。そう、そこのフローレンス嬢のようにね」 フローレンス嬢がはっとしたように自身の口を押さえる。 「君は本当の遺産継承者である彼女を守るため、あえて彼女には使えない武器を選んだ」 オーギュストはこちらを見て弱々しく笑い、部屋の窓を開けて制止する隙も与えずに 飛び下りた。彼は屋敷の真下にある海に飲まれ、姿を消した。 周囲の人間が口々に賞賛する中、名探偵は肩を落としてその場をはなれる。 「どこが名探偵だ。私は一人の知ったかぶりだ。それも最悪の」 「いや、君はよくやったよ、ホームズ……いや、ワトソン君」 モリアーティを追っていた私の代わりに山荘に向かったワトソンを、私は慰めた。 17行かあ。お題は継続。
その日の夜は寒く、ちょっと前まで雪が降っていた。積み木のような街並みは、白く埋没して しまい、路上だけが硬い肌をさらす。 街灯にもたれて煙草をふかしていると、ノックに近い靴音で、青年がやって来た。 「やあ、お久しぶり。今年のハレルヤはどうだった?」 「素晴らしかった。あの子は年々上手くなる。だが、最悪だった。気分が悪い」 青年は、思わず柳眉と形容したくなる眉を忌々しげに詰めて、うめいた。 「慣れないくせに、教会などに行くからだ」 私が笑っても、彼はにこりともしない。義務的に答えてくる。 「仕方がない。あの男との約束だ」 私は、煙草を足元に落として、踏み消した。 「プレゼントは、渡したのかい?」 彼は黙ってうなずいた。 「何を渡したんだい?」 「ああ。あの男のものだ。懐中時計だ。壊れていたが、修理に出しておいた。帰ってきたのは、 昨日だ」 青年は、私が殺したあの男のものだ、とわざわざ言い直した。 「ひとつ、私の推理を聞いてくれるかい?」 彼は黙って、透き通るような赤色の瞳で、私を見る。 「彼女を語るとき、君はいつも情熱的だ。君は、懺悔しているわけじゃないだろう?」 「ああ。これは、私の愛だ」 ため息をこぼすように、彼はやはり情熱的に語った。私は満足して、彼に背を向けた。 「私を殺さないのか?」 背後から、吸血鬼が尋ねてくる。 私は答えの変わりに、コートの内に忍ばせて置いた杭を、投げ捨てた。 次回お題:「時間」「継続」「お菓子」
「結局、あんたたちどうなりそうなのよ?」 「うん」と美幸は頷き、心なしか俯きかげんのまま言った。「それが、時間がないから会えないとか、今日は急用が入ったとか、そういういい加減なことばかりいって会おうとさえしてくれないのよ……」 恵子は畳の上に置かれたお菓子の袋に手を伸ばすと、手の平に載せたピーナッツを端に退かしながら言った。「それもちょっといい加減っていえばいい加減だけどさ。なんていう、このまま継続して付き合ってくとか、そういうのはちゃんと決めた方がいいんじゃない?」 「わたしもそういうのは何回も訊いてるんだけど、向こうがはっきりしないっていうか、話しさえも訊いてくれないか――」 「駄目よ! それじゃあ。あんたそんなんだから舐められるんだからさ。そういうのは全部あんたの出方次第なんだから」そう言って恵子は柿の種を指で摘んで口に運んだ。「あんたとしてはどうしたいの?」口の中でバリバリと音を立てながら恵子が訊いた。 「わたしは……」美幸は黙り込んだ。 恵子は缶ビールを口に運んだ。「あんた、別れた方がいいって絶対」 俯いたまま美幸は言った。「でも、好きだから……」 「じゃあ、このまま付き合うしかないわね」恵子は手の平のピーナッツを袋に戻し、手を払った。 「どうすればいいと思う?」美幸が訊いた。 「どうするもこうするも、結局そういのは自分で決めるしかないでしょ?」 「そうだけど……」 恵子は壁に掛けられた時計に目を遣った。「そろそろわたし行くわ。彼氏と待ち合わせしてるし」そう言って恵子は立ち上がった。そして扉の前で美幸の方に振り向き「ごちそうさま」と言って扉を開けた。 ひとりになった美幸は、缶ビールを流しに置き、もと居た場所に座った。それからお菓子の袋に手を伸ばし中を弄った。ピーナッツだけしか残っていない袋。美幸の眼からなぜだか涙がこぼれた。それはとめどなくいつまでも続いた。 次回お題:「ブランデー」「煙草」「バナナ」
>>415 ゴメン、お題を書き忘れ。ちょっとだけ推敲
あるフランス貴族の屋敷にまずパートナーが向かい、続けて私が向かう事になった。
しかし私が向かう直前に、ハンマーを凶器にして一人の富豪が撲殺された。
「ハンマーが倉庫内にあったのを知っていたのは、屋敷の人間以外にオーギュストさん、
貴方だけでした。貴方の戦友は結局倉庫に立ち入ってなかったのです。そしてこんな
重いハンマーを扱えるのは軍隊生活が長い貴方くらい。屋敷の人間には無理です」
「だがホームズ、動機は。動機はいったいなんだい」
「ワトソン君、私はずっと不思議に思っていた。なぜ廊下に立て掛けてある鎧人形の武
器を凶器にしなかったのかとね。この謎が解けた時、私の頭の中にハレルヤが響き
渡ったよ。あまりにも軽い武器だと、女子供でもあつかえてしまう。そう、そこのフ
ローレンス嬢のようにね」
フローレンス嬢がはっとしたように自身の口を押さえた。
「君は本当の遺産継承者である彼女を守るため、あえて彼女には使えない武器を選んだ」
オーギュストはこちらを見て弱々しく笑い、部屋の窓を開けて制止する隙も与えずに
飛び下りた。彼は屋敷の真下にある海に飲まれ、姿を消した。
周囲の人間が口々に賞賛する中、名探偵は肩を落としてその場をはなれる。
「どこが名探偵だ。私は一人の知ったかぶりだ。それも最悪の」
「いや、それは私だ。君はよくやったよ、ホームズ……いや、ワトソン君」
モリアーティを追っていた私の代わりに山荘に向かったワトソンを、私は慰めた。
次のお題はもちろん>417のブランデー、煙草、バナナです
419 :
「ブランデー」「煙草」「バナナ」 :02/09/07 20:47
革張りのソファの前には、ブランデーのボトルとグラス、手にはバナナ。 「いつ食べても、バナナはうまいな」 バナナをほおばりながら、あの顔が笑って言う。 「あんたは知らんだろうが、戦後しばらくはバナナは贅沢品だった。 ブランデーちゅうもんをだなチビリチビリと飲みながら、 バナナを食いたいと思ってな、ま、それが儂の原動力だった」 バナナを食べ終わると、映像の中の男は、煙草に火をつけた。 私も一緒に、火をつける。 日本の高度成長を支えた男たちの好物、嗜好品が、この映像の中に 凝縮されていた。 「ブランデーと煙草とバナナ」。 よし、構想はできた。次のノンフィクションのタイトルは、これでいこう。 次のお題は、「刺身」「かわうそ」「プリンタ」でお願いします。
420 :
、「刺身」「かわうそ」「プリンタ」 :02/09/07 21:45
「刺身」「かわうそ」「プリンタ」 「ハチ、おめぇ、かわうその刺身っての、食ったこと、あるかい」 「かわうそ・・・? かわうそって、いったいどんなもんですか、ご隠居」 「かわうそってのはな、かわうそってのはだな、川でウソつくから、 川にいるんだ。な、わかるか」 「するってぇと、川魚でやんすね」 「・・・であったと思う、であったろう、であったにちがいない」 「はっ? かわはぎって魚の刺身なら、あっしは食ったこと、ありますが」 「そうだ、そうだ、それだ、ハチ、よく言った、誉めてつかわす。 ハチ、あれはプリンタした身が、うまいのぉ」 「??? プリンとした身がうまいってこってすか? ご隠居、今夜、熱はでぇじょうぶですかい」 おあとがよろしいようで・・・。 次は「足跡」「足音」「足並み」でお願いします。
421 :
「足跡」「足音」「足並み」 :02/09/07 22:36
足音の途絶えた夜の駅に、普通列車が到着した。 「次は、東京、東京。この列車これまででございます。お忘れ物ないよう…」 疲れた足並みで、最後の何人かの客が降りる。 「この列車…これまででございます。」 ふと、車掌のアナウンスが途切れた。ほんの一瞬。 客を降ろした普通列車は、線路の端で停止した。 不意に、夜の闇から、巨大な鉄球が列車を一撃。 ゴワーン! 列車が記した何十年の足跡は、今夜で終わるのだ。 「おい、まだ人が乗ってるんじゃないか?」「まさか、それより仕事だ!」 彼等は車掌を見落としていた。何十年もこの列車と共に過ごしてきた車掌を。 グワーン!無情の鉄球が列車を打つ。 「俺も、俺も、一緒だぞ…今までよく頑張ってくれたな、キハ43」 この列車。これまで。 ※列車の名前がでたらめ… 次のお題は:「水」「ラベンダー」「列車」でお願いします(^^;
422 :
列車・水・ラベンダー :02/09/08 00:30
星の寿命は、気の遠くなるような年月ながら決まっている。 私達人類を含め幾多の生命を生み出したこの地球の寿命も、残すところ一年を切った。 私が物心ついた頃、既に砂漠化が進み、野性の動植物は消えていた。 数十年前から徐々に人類は次の星へ移住し始め、私も家族と共に現代の箱舟に乗る---- 私は今、枕木を文字通り枕にして寝ている。 列車で箱舟へ向かう途中、窓には黄土色の砂漠と瓦礫しか見えなかった。 しかし、一瞬だけ何か異質なものがハッキリと見えた。 途端に激しい焦燥感のようなモノを感じた私は、荷物と共に窓から飛び降りた。 その発作的な衝動は抑えきれるものではなかったが、それを引き起こしたのが 一本のラベンダーだったと分かった時、私は笑った。 植物を生で見れたのは初めての事で、砂漠の中に芽生えたのは奇跡と言えるだろう。 しかし、それが家族の最後の顔も見ずに列車から飛び降りる程の事だろうか。 もう、この付近に人は居ない。箱舟までは数百km。荷物の中には一本の水と衣服のみ。 私は、直ぐに最後の一滴までラベンダーへ水をやった。 お題は継続で。
423 :
列車・水・ラベンダー :02/09/08 01:41
どれ程経っただろう。 誰か、私を揺さぶっている。 放っておいて呉れ。もう疲れた。 砂漠の剥き出しの太陽に焦がされて、干からびて、何だか私はこの星みたいだ。 お似合いじゃないか。悪くない。 くっくっ、と、焼けた空気に腫上がった喉で笑った。 ポタリ。 温かな水が降ってくる。 放っておいて呉れ。目を開けるのも億劫だ。お前だろう。列車を止めて、必死で止めて、来てくれた。 でも、私はもう駄目だ。もうカラカラだ。 代わりにあの花を、ラベンダーを連れて行け。あれはまだ、充分に瑞瑞しい。 そうだ、それでいい。さあ、連れて行け。 振り返らずに、行け。 ああ、花よ、お前は笑っているね。 お題・スルメ・釣り・パイナップルワイン
424 :
列車・水・ラベンダー :02/09/08 01:52
呪文 列車・水・ラベンダー 私の家のキッチンの窓から、南北に伸びた線路が見える。 あの翌日から、午後5時になると、キッチンの窓際にあるラベンダーの鉢に 水をやるのが日課になった。南へ走る列車を見つめて。 すると、夕陽を受けた紫のラベンダーは、過去からの匂いを運んでくる。 水をやりながら、私は三度、呪文を唱える。 <You'll be back. You'll be back. You'll be back・・・.> 今日、呪文を唱え終えて、振り向いたとき、夫がいた。 「なんだか、口の中でモゴモゴ言ってたみたいだけど」 私は、笑って答える。 「幸せのおまじないよ」 夫は私に軽くキスをする。 <You'll be back in a few minuits.> 次は、「嘘」「気障」「秋の蝿」でお願いします。
425 :
お題かぶりました :02/09/08 02:20
>424 であげたお題は取り下げてください。 「スルメ」「釣り」「パイナップルワイン」でお願いします。
マナーの話ね。 ・縦に長い。 お約束に明記。個人的に20行まで。 ・横に長い。 読みにくい上に、15行ルールが意味を成さなくなる。個人的に40文字まで。 (まぁそう云っても見た目なんだがな。ホントは) ・使用お題の提示 スレの混乱を招く可能性がある。かぶったのにお題の提示がない場合、 次の投稿者が勘違いして本来イキでないお題でスレが進んでしまったりする。 また、読むときにお題チェックがしづらい。 ・次のお題を振る。 お約束に明記。お題と作品が離れるので、スレが混乱する可能性がある。 お題継続は参加者がお題を忘れた場合、スレがストップするのを防ぐための 救済措置。積極的に利用するものではない。かぶりが禁止でないのと相補の 関係にある。基本的にお題振るのまで合わせて一セット。
ふらっと立ち寄ったストレンジャーから住人まで不特定多数の人間が、 一つの流れの中で共存していくスレ。 スレの混乱を招く可能性がある行為は出来るだけ避けて欲しい。 どうしても嫌だというヒトは漏れ以外のヒトに簡素書いてもらってくんろ。 それから392はお題振ってないね。 −−−−−−−−−− 419 身も蓋もないお題消化にワロタ。反則技だな。 420 「プリンタ」のキツキツぶりにワロタ。419と同じヒトじゃないよね。 421 車掌、二階級特進。地縛霊としてスイッチ切り替え係に。良。
やべ、誤爆。簡素スレと間違えた。無視してくんろ。 現在のお題は「スルメ」「釣り」「パイナップルワイン」。
429 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/08 02:29
430 :
するめ・釣り・パイナップルワイン :02/09/08 02:34
男がひとり午前2時の部屋のなかで酒を飲んでいる。
431 :
うえのつづき :02/09/08 02:43
ぼんやりとするめを齧りながら電球をながめている。 恋人が交通事故にあった先週の日曜日を思い出しているのだ。 目の前の惨事が日に鮮明になる。 車に積まれていた男の釣竿も恋人のお気に入りのぬいぐるみもすべてつぶれた光景。 目を閉じると乾いた眼球が痺れる。 今飲んでいるパイナップル・ワインのボトルのラベルに英語でメッセージが書かれてある。 「記憶こそがすべて」 この記憶をかかえて生きていけるのだろうかと男は途方にくれる。 つぎのお題は「本」「焼き鳥」「ブーメラン」
432 :
「本」「焼き鳥」「ブーメラン」 :02/09/08 03:28
「ブーメランって知ってるか」 焼き鳥屋で、唐突に、健一が言う。 「知ってるよ。小さい頃、公園で投げて遊んだ」 「ちゃんと戻ってきたか?」 「まぁ、そこそこな」 「この間、神田の古本屋街うろついてたら、面白い本、見つけたんだ。 オーストラリアの先住民が使用していたブーメランは、 投げても元の位置に戻らないんだとさ」 「それが、どうした」 「いや、なんだか、面白いと思ってさ」 健一は、最近、同棲していた女に出ていかれた。 心底、その女に惚れてたことは、俺も知ってる。 おまえのそういうところが、彼女、つきあいきれないって 思ったのかもしれないぞ。 俺はもちろん、そんなことは健一に言わなかった。 二人はしばらく黙って、チューハイを飲み続けた。 どうもイマイチでした。 お題は、継続でお願いします。
433 :
「本」「焼き鳥」「ブーメラン」 :02/09/08 05:54
聡一は聡史を連れて、近所の縁日に行った。 「これ、なに?」 緑色をしたプラスチックのブーメランが、ほかの玩具と一緒に並んでいた。 ーーそういえば、一時、凝ったことがある。 聡一は、それを聡史に買い与えた。 ーー来週の土曜日は、聡史を公園に連れて行って、俺の腕を披露してやろう。 焼き鳥もアンズ飴も銀色の風船も、乞われるままに買ってやった。 「ただいま」 リビングに入ると、麻子は本を読んでいた。 それが、たった十日前のことだったと聡一にはどうしても思えない。 ガランとした部屋で、聡一はしぼみつつある銀色の風船を眺める。 緑のブーメランを追って、道路に飛び出した聡史も助けようとした麻子も 死んでしまった。 先週の土曜日、俺が出張さえしなければ・・・。 どうも前の内容に、引っ張られたようです。 次は、「傘」「森」「檜」でお願いします。
あの本を読むと少し ブーメランの気持が分かるような気がする。焼き鳥を食べた後に気が付いた。 眼鏡・月の輪熊・履歴書
「傘」「森」「檜」 その日は朝から雨だった。少しだけ憂鬱気分になったが、ある事を思い出した。 今日のような雨の日のために、田舎の母が傘を送ってくれたのだった。 田舎からの小包を開けてそれを見つけたときには、「もう25だぜ。いつまでガキ扱いだな」 と悪態をついてみたが、やはり母のやさしさが嬉しかったのだ。僕は身支度を整え、 母からの傘を一度だけ開いてみた。まるでそれは、深海を漂うクラゲのようであり、やさしげな傘だった。 僕はその傘を見ながら、いつものように心に誓った。 「今日こそ、彼方の森にあるという、檜チーズをみつけるぞ!」 スニーカーをはきながら、次の休みには母の待つ約束の大地を訪れようと思った。 お題「雨」「手紙」「つぶれた風船」
436 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/08 10:26
亮くんは雨の日がすき。 雨の日は、おかあさんが保育園まで歩いてお迎えにきてくれるから。 いつもは自転車で5分の帰り道を、大きさの違う傘をさして、二人で手をつないでゆっくり歩く。 「あっめあっめふれふれかあさんが〜」 長靴で水溜りをぱしゃぱしゃ蹴ったりしながら、二人で歌う。 おかあさんも雨の日がすき。 おかあさんは、雨のお迎えの時は必ずなかよし公園を通って帰ろうという。 「雨の日の公園って、森の中みたいないい匂いがするでしょ」 目を瞑って、腕と胸をいっぱい広げて、息を吸い込んでみる。 水の匂い、葉っぱの匂い。たちこめる樹々の匂い。 「こないだおじいちゃんたちと一緒に行った、温泉のひのきぶろの匂いがする!」 亮くんがそういったら、おかあさんは大きな声で笑った。
すいません、436は「傘」「森」「檜」です。
438 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/08 10:31
/⌒ヽ ≡=− ビューン / Ф \____ ≡=− ∧_∧ //J ヽ<三 (・∀・; ) // \ ____ | ≡=− オンラインサッカ コロス ⊂ ⊂ )⌒)  ̄ | | | | ≡=− ヽ ヽノ |_| |_| ≡=− (_) ≡=− ≡=−ビューン
439 :
雨・手紙・つぶれた風船 :02/09/08 12:23
強すぎる雨の夜、聡史は傘もささずに走りつづけた。 濡れた手紙を握り締めながら。 息を切らせながら赤く滲んだ胸を押さえている。 この手紙を早く渡さなければ。 男は掠れる気力の隅でなんとか意識を保っていた。 角を曲がったそのとき、黒いスーツの男が立ちすくんでいた。 右手にはトカレフ。 無表情のままつぶやく。 「残念だったね」 あわてた聡史が振り返った瞬間、銃口が音を立てる。 まるでつぶれた風船のように頼りなく聡史は沈み込む。 黒い男は落ち着いた仕草で胸元から手紙を引き抜く。 警察から暴力団への派遣者リストなのだ。 「なれない素人が手を出すからだ」 黒い男は小さくため息をついてそっと手紙を引き裂く。 つぎのお題は「シャツ」「鍵」「象」で。
>423 422の続きだと思われるんで迷惑です。
441 :
シャツ・鍵・象 :02/09/08 13:52
仕事帰りの風呂。疲れきった私の身体に欠かせない愉楽のひととき。 湯船に漬かった私は、蒸気を巻き上げる換気扇を見上げながらじっくりと汗を掻く。 汗は下界の不浄な粒子を吐き出してくれる。そういうのを如何に溜め込まないよう に出来るか……。溢れ返った便器のような社会とうまく付き合うには、それが鍵だ。 もっともそれは人によって方法が様々だとは思うが、この風呂でひとかけらの水分 も残さぬくらいに汗を掻くのが、私の遣り方だ。 私はバスタオルで水滴を拭い、着替えのシャツを探した。引き出しを開けたが、巨 大きなシャツしか見当たらない。妻の名を呼ぶが返事はない。 私は産まれたままの無垢な姿でリビングに向かう。 テレビではどこそこの芸能人がどこかの誰かと不倫しただとか、どこだかの家の子 供が親を刺しただとかいうニュースをひっきりなしと垂れ流している。 私はテレビの前に座り込んだ妻の名を呼んだ。 象のように膨れ返った手でせんべいの袋に手を突っ込んだまま妻は返事をしない。 もう一度私は妻の名を呼ぶ。だが妻は返事をしない。――私の背筋に汗が伝う。 テレビではどこかの男が女に絞殺されたというニュースが流れている。 私は手に持ったシャツを紐のようにねじり、妻の背後にゆっくりと足音を立てずに 近付いた。 ちょっと長くなってしまった。 お題は継続で。
スマソ 継続はよくないらしい。忘れてた。 次回お題「ライター」「人形」「はまぐり」 それにしても改行がうまくいかん……ブツブツ
443 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/08 14:25
444 :
ライター・人形・はまぐり :02/09/08 23:17
高校の裏庭で女の子がひとり煙草を吸う。 ガスの少ないライターを透かしてみてはうんざりしたように遠くへ投げる。 夢は人形職人なんて笑われるかな。 女の子は乾いた空をながめて将来を仮定する。 それでも私はそこそこの大学に進学して適当に就職して結婚して子育てして。 それ以上の思考を女の子は停止する。 人生の可能性を想像できないのだ。 自分の現実的な人生がかなり先まで予測できてしまっている。 どうせこんなもんというような。 深く煙を胸に満たしては隙間を埋める。 夢は夢で、現実はそんな大したことないのだから。 そのとき首筋に鋭い痛みを憶える。 手を添えた女の子は襟元に硬い物があるのに気づく。 はまぐり。 なぜはまぐり? 周りを見渡してもあたりに人影はない。 どこから飛んできたのか見当がつかない。 誰が何のために女の子にはまぐりを投げつけるのかもわからない。 でも女の子の掌にははまぐりが載っている。 現実として存在しているのだ。 想像もつかない出来事にただ女の子は呆然とするばかり。 次のお題は「バッグ」「紅葉」「FM」
445 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/09 00:02
FMラジオから聞こえてきた家の改築の話。 まるで変わってしまった家にかえってなじめなくなってしまった、というものだ。 内容を注意して聞いて見ると、本心はそこではなく、ただの惚気だということがわかる。 工事は夫の一念発起で始まったものらしかった。 そんなラジオに触発されてか、本当にちっぽけな改築(?)だが、私は押入れの掃除をすることにした。 一人で住むにはあまりにも大きすぎる家。 何不自由ない広さをもつこの家の家主として、 家の改築の話なんて本来私には何の興味も抱かせないはずだった。 でも・・・。 いつの間にか額に汗を掻くを仕事に熱中していた。 丸で何かを探すように。 ふと押入れの奥底に黒いバッグを見つけた。こじんまりした黒の・・・・・・ ・・・・・・若くして死んだ夫のビジネスバックだった。 私はもしかするとこれを探していたらしい。 中にはノートが1冊が入っていた。表紙にはこう書かれている。 「キミもうほかの誰かと結婚していたら、中身は見ないで棄てて欲しい」 ・・・・・・中には病死した夫との、最初で最後になってしまったデートの思い出。 まっさらのノートの中に一枚の紅葉が入っていた。 私は30年ぶりに夫の顔を思い出した。 家を、売ろう。私の前にはまだ人生が広がっているのだ。 むずい。 次のお題は「ゴーグル」「家庭教師」「ホワイトボード」
446 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/09 00:12
447 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/09 00:35
少女は紅葉の美しい山道を黙々と歩いていた。 あぁ、なんて美しい風景・・・でも、これが私の見る最後の風景なのね。 少女は今日、この山で自らの命を断つことにしていた。 彼氏に振られ、志望した大学には落ち、そして昨日、飼っていた最愛のペットロッキーが死んだ。 なんて可哀想な私!こんなに不幸が続くなんて・・・死ぬしかないわ。 少女はロッキーの供養を終えた後、そう思い立ってこの山に来たのである。 この先には自殺の名所といわれている、大きな滝つぼがあるという・・・ 少女はそこを目指しているのだった。 少女はバッグからそっと、遺書を取り出した。 お父さん、お母さん、先立つ不幸をお許しください・・・ 月並みな文章だが、少女は万感の思いでそれを書いたのだった。 そんな遺書をじっくり眺めながら死後の世界に思いをめぐらせていると、突然目の前に巨大な看板が立ちふさがった。 なぁにこの看板?大きくFMって書かれてあるわ! その看板には大きな矢印がついている。どこかへ誘導しているようだ。 少女は導かれるかのように、その看板の矢印の示す方向へ、ふらふらと進んでいった。 矢印の果てには大きな屋敷が現れた。どうやらここが終点らしい。
448 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/09 00:35
少女は屋敷に近づこうか近づくまいか、迷っていた。 導かれるままにここへきてしまったけれど・・・ここは何かしら?ラブホテル? 少女は躊躇している間にも、背後に何かの気配を感じ取った。 気づいたときにはすでに少女は、不思議な黒い集団に取り囲まれていた。 「あなたたちは何者!?」 「ふっふっふ、そこの看板に書いてあったじゃないか!ここはFUSIGI な MAMONO の館だ!!」 「ここは自殺の名所だからな。どうせ自ら立ってしまう命ならば、私達が頂こうと思ってな!」 「きゃー!やめて!!」 少女が叫ぶと、空から一筋の光が投げかけられた。 その光の筋に沿って、何か白い生き物が空から降りてくる。 近づいてくるにつれて、はっきりと見えてくる。どうやら、馬のようだ。 あ、あれは・・・ 少女は叫んだ。 「ロッキー!!」 そう、その馬は少女の最愛のペットで、昨日死んでしまったはずのロッキーだったのだ! ロッキーは地に降り立つと、周りの集団を瞬く間に蹴散らし、そして少女を背に乗せて、空へ再び飛び去った。 馬は高く高く飛び上がり、空を越え雲を越え、遙かなる天の高みへ帰って言った。 そしてその馬と少女が、再びこの地に降り立つことはなかった・・・
449 :
447-448 :02/09/09 00:37
駄目だー!! FMがただのラジオじゃつまんないから捻ろうとしたらこの有様・・・ 次は「雨」「影」「犬」でおねがいします
450 :
447-448 :02/09/09 00:39
あっしまった! お題は445のでいいです!
451 :
447-448 :02/09/09 00:46
ちなみに447−448のお題は「バッグ」「紅葉」「FM」です 何度もスマソ。書くのが遅かった。
452 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/09 01:10
「バッグ」「紅葉」「FM」 目が覚めたとき、昨日買ってきたFMラジオが台風の到来を告げ ていた。つけっぱなしで寝たらしい。しかし、こんな時期に台風な んて珍しい。加えて、かなりの大型だという。 僕は故郷の山を思った。今は紅葉盛りの筈だ。燃え上がるように 色づき、最後の命を燃やす森。しかしそれも、冷たい雨でサンドバ ッグのように打たれたらひとたまりも無いだろう。葉が落ちたら、 それは冬だ。僕は残してきた父母を思う。大丈夫だろうか? FM局はハワイアンを流し始めた。その後はボサノバだった。台 風だからか? 季節外れにも程があるだろう。しょうがないのでテ レビをつける。そして僕は驚きに飛び上がった。 しまった。寝過ごした。それも8ヶ月ほど。 「竜宮城」って、電気屋にしては変な名前だと思ったんだよな。 #こそっとおいらも。かぶってスマソ。 #現在のお題は「ゴーグル」「家庭教師」「ホワイトボード」
453 :
「ゴーグル」「家庭教師」「ホワイトボード」1 :02/09/09 01:51
一ヶ月前、俺は家庭教師のバイトに申し込んだ。 そのときはちょうど続けていたバイトをやめたところで、軽い気持ちで申し込んだものだった。 しかし、その家庭教師派遣協会は非常に専門的なところであり、事前に講習を受けさせるというのだ。 俺はそんなこと聞いていなかったので、非常にあせった。 軽い気持ちで申し込んだものの、今現在高校生向けの問題ができるかといわれると、非常に危うい所である。 しかし俺は結局あまり勉強することもなく、講習に向かった。なるようになれである。 その講習の会場に着くと、人のよさそうな男が挨拶してきた。 「やぁ、きみが家庭教師をしたいって言う山田君かい?なるほど、イイ男だね!」 その人のよさそうな男はそういって俺の手を握り、ぶんぶんと振り出した。 「君はきっと家庭教師に向いてるよ!サア、早速講習だ!」 男はそう叫び、ハイテンションに腰を振りながら講習を始めた。 「あれ?講習って一人なんですか?」 「そうだよ。家庭教師ってのはマンツーマンだからね!サァ始めよう!! まず最初は褒める練習から!子供は褒められて育つものサ! サアこうやって親指を前に突き出して・・・」 男はそういいながら目にも止まらぬ速度でビシリと腕を前に突き出し、 「良く出来ました!!」と叫んだ。 これは・・・CMで見たことあるぞ!でも家庭教師のCMだったかどうか。 結局この練習を3時間もさせられ、俺はへとへとになった。
454 :
「ゴーグル」「家庭教師」「ホワイトボード」2 :02/09/09 01:51
「すごいぞ山田!3時間もこの練習についてきたのは君が初めてだ!!」 男はそういって俺をめちゃくちゃに褒めた。もちろん嬉しくもなんともない。 「さて次だ!」男はそういって、ホワイトボードを引き出し、俺には物々しいゴーグルが渡された。 「子供の学力を正確に図ることは重要なことだ!そのゴーグルはスカウターといって、特殊な操作をすることで 子供の学力を数値化することが出来るのだ!!」 男はそういって、ホワイトボードにスカウターの使用方法を書き出し始めた。 「・・・これをこうして、最後にこの赤いボタンを押す。いいか山田赤いボタンだぞ?青いボタンは自爆装置だからな! 気をつけるんだぞ山田!」 「あの、質問してもいいですか」 「うむ、許そう。どうした山田」 「このスカウター、重さが10キロほどあるんですが、ずっと付けてるんですか?」 「うむ、いい質問だ山田!その通りだ!!ちなみに4時間程監視しないと学力は図れないからな!その間ずっと付けてなくちゃ駄目だ! よーし、というわけで首の運動をするぞ山田!下手をすると首が折れるからな!」 そういって男は首の運動を始め、俺はそれに2時間も付き合わされることになった。 そうして講習は終了した。 俺はげっそりした顔をして、講習会場を去った。 「二度と家庭教師やろうなんて思ったりするもんか!!」 そう心に誓いながら・・・ 男はその山田の後姿が消えるまで、ずっと夕暮れの町を眺めていた。 「彼は・・・いい家庭教師になる!俺が保障するさ!!」 そう心の中で呟きながら・・・
455 :
「ゴーグル」「家庭教師」「ホワイトボード」 :02/09/09 01:52
次のお題は「鏡」「ナイフ」「血」で・・・
456 :
「ゴーグル」「家庭教師」「ホワイトボード」 :02/09/09 01:54
ごめん、行数は決まりが合ったんだね。 ついついだらだら書いちゃって・・・
血の臭いが、濃い。 微かに甘ったるい、噎せ返るような独特の臭気が、薄暗い地下の湿った空気に充満している。 流されたばかりの、真新しい血の臭いだ。それも、大量の。 俺は、ゴクリ、と唾を呑んだ。 生きている者の気配はない。恐らく、先発隊は全滅だろう。 額の脂汗を拭い、改めて銃の安全装置と、腰の軍用ナイフを確認した。 銃を構えたまま、足音を立てないよう慎重に薄暗がりの中を進む。 分厚いブーツの底を通して、ヌルヌルとした液体の感触が伝わって来た。床は、血の海らしい。 クソッ! 思わず心の中で悪態をついたその時、踏み出した右足のつま先が何かを蹴飛ばした。 不吉な重さを持ったソレは、ゴロゴロと音を立てて転がり、何かにぶつかって動きを止める。 首、だった。 目を見開き、歯を食い縛った恐怖の形相で、首はじっとこちらを見つめている。 そして、手足が異様な角度にねじれ上がった、傍らの胴体。その隣にもう一体、ひしゃげて扁平になった誰かの上半身。さらに、その奥に… 辺りに転がる、かつて仲間達であった肉塊から目を背け、俺は壁に向かって跪いて、吐いた。苦い液体が、止め処なく込上げてくる。 これで、ハッキリした。今回のターゲットは、「奴ら」だ。 ――と、すれば…。 恐る恐る、顔を上げる。目の前の金属壁に、俺の顔が反射して鏡のように映っている。恐怖に目を見開き、歯を食い縛った、あの首と同じ顔だ。 そして、その背後で、モゾモゾと肉片が蠢き、立ち上がるのが見えた。 俺は絶叫し、振り向きざまに銃を連射する。 お題・ししゃも・アトランティス・保険
ししゃも・アトランティス・保険 私はアトランティス号の船長なのだ、ただし部下は夏休みに遊びにきた後輩 だけだ。出港から一週間、運転から通信、整備、まで船長自ら執り行う。 要するに、数人乗れる程度の小型船なわけだ。 前の持ち主が、隣の漁船と大差もない垢抜けない汎用船には不釣り合い な名前で登録していたのだ。 競売にかけられた経緯は、そいつが失踪して船だけが漂流している居るところを 発見された、ということらしい。大方、海に落ちてそのままになったのだろう。 妙な損傷が多くて修理に手間取ったが夏には間に合った。 別に後輩にセンスを疑われる為に船首に「あとらんてぃす」と書いてあるわけ じゃない。もう一度笑われたら後輩も海に落としたかもしれない。 船室内に残っていた資料には、持ち主はこの沖合いにある海に沈んだ遺跡が あるとか、財宝を守る魔物とか常軌を逸したような単語の羅列が並んでいた。 地図を見る限り釣り向きな島の話しだったので、三文小説は無視して遠出をして いる。元気だけは人並以上の後輩が釣り糸を垂らしているが、豊かな海域のはずが 不思議な程釣れない。保険で買ったきたししゃもしかおかずが無い。 下手糞めと、眼をやると、奴は甲板上で転りまわっていた。 駆け寄ると見た事も無い赤いクラゲかなにかが腕に食いついてる。急いで叩き落と し海に投げ捨てた。その瞬間、海の底から浮き上がってくる斑点の群れに驚き、 腕から血を流す後輩と船室に逃げ込んだ。それから、三十分は経つが一向に無線は つながらない。甲板上に山と群がる赤塊に船は沈みかけ、張付き、圧し掛かられて いるドアは今にも破れそうだ。無線からは奇妙な声以外聞こえてこない。
次の御題は「己惚れ・本拠・おととい」で
遅かったか! 妻はししゃもに下味を付けながら、油が熱せられるのを待っていた。 夫はキングの「アトランティスのこころ」を読みふけっている。 油がパチパチいい始めたのに気づいた夫が、本を片手にキッチンを 覗き込んだ。 「お、今日はししゃものから揚げか。うまそうだな。」 普段は寄り付こうとしないキッチンを覗き込む夫を見て、妻は決心した。 もし妻に「アトランティスのこころ」のテッドのように 不思議な力があったなら、触れただけで夫の心が分かったのなら、 相手の女に柔らかい釘を指す程度に留めただろう。 逆に夫にそんな力があったのなら、今この状況を死に物狂いで 止めにかかるだろう。 妻は、夫のケータイメールを見るまで、夫の浮気を疑ったことなど ただの一度もなかった。 夫は、部下の女性からのメールを妻に見られことを気づいていなかった。 半年後に結婚退職すると打ち明けられ、ほのかな恋心は 彼女からの着信メールと共に消し去ったはずだった。 二人合わせて総額1億2千万もの生命保険に入っている。 火災保険から住宅の被害に関する保険も支払われるはずだ。 来年大学に進学予定の息子には十分な保障になるだろう。 ししゃものから揚げは茶色く浮き上がり、なおも熱せられ続けている。 妻はコンロのつまみを更に大きくひねり、ししゃもをじっと見つめた。
461 :
「己惚れ・本拠・おととい」 :02/09/09 20:50
己惚れの本拠は、今もこの「snow whiteの館」にあります。 初代は継母を殺してから、隣の国の王子様を養子に迎えて幸せに暮らしました。 さて、ここからがあまり知られていないお話です。 彼女は毎年、コンテストの参加者を募集し、二次予選を通過した10人の参加者に、 言うことにしたのです。 「おととい、おいで。おまえたちの誰かの己惚れが私と同じくらいになったら、 その者にsnow whiteの座を譲ってあげよう」 世襲制は退廃してしまうものですが、こうして多くの女たちの中から後継者を選び続け、 さらにここ100年あまりは、女性だけでなく男性もコンテストに参加する権利をもつことになりました。 そこのあなた、ずいぶん己惚れがおありのようですね。 どうですか? コンテストに参加してごらんになっては? あっ、その前にひと言。 予選に漏れたら毒リンゴを食べなければならないことはご存知ですよね。 次のお題は「光」「琵琶」「城壁」でお願いします。
462 :
光・琵琶・城壁 :02/09/09 21:26
琵琶法師の声が鳴る夜の街で。 城壁から忍びだした黒袈裟の男が軽やかに駆ける。 小脇には旧い巻物が。 突然男の姿が堤燈の光に照らされる。 「ここまでだ。観念しろ」 数名の武士が坊主を取り囲む。 坊主は平然を装う。 「甘い」 坊主が呟いた瞬間、放り出した巻物は長く延びて柳の木に巻きつく。 巻物の端を掴む坊主は高く跳んで、武士の輪を軽く飛び越えてしまう。 着地して巻物をうまく手繰った坊主は夜の街へと溶ける。 鼻で嗤いながら。 次のお題は「白昼夢」「風」「微笑」
463 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/09 21:29
微笑む白昼夢が風邪をひいた
464 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/09 22:00
465 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/09 22:01
オンライン作家は出て行け!!
466 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/09 22:07
次のお題は「オンライン作家」「巨乳」「大神会長」で。
467 :
オンライン作家 :02/09/09 22:08
んだよ、ぼけ 俺の勝手だろてめえが出て池や 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
468 :
白昼夢・風・微笑 :02/09/09 22:43
モロッコの見世物市で私が発見した手帳。 そこには考古学的な文字と見間違うほどののたくった文字で、 あの伝説の都『黄金卿』を追い求めたひとりの男の物語が記してあった。 風が近付いてくる。足元でその予兆のように砂粒がざわざわと喚き立つ。 もう少しで捲れあがった砂漠の中になにもかも飲み込まれる。 この地図は偽者だったのだろうか……。 タンジールを出発してから五日目。一昨日から周囲の景色はなにも変わらない。 永劫を讃えた広大な砂地。我々は本当にあの黄金卿に辿り付けるのか……。 仲間がひとり倒れた。しゃがみ込んで水筒を差し出す現地のガイドに向かって 私は首を振った。水は残り少ない。なんとしてでも――例えひとりであろうとも そこに辿り付かなければならない。我々はその指名を帯びている……。 残されたのは最早私ひとりとなった。 ガイドは逼り来る強大な黄金色の壁を指差し、私になにか忠告のようなものを 与えると、そのまま悪態をついて引き返した。二時間前のことだ。 砂嵐は近付いている。 あと一時間もすれば私もこの広大な虚無の中に身を沈めることになるだろう……。 低くうねった風の音と、すり鉢でなにか磨り潰すような音。最早これまでか……。 水もなく意識が朦朧とする。白昼夢のような黄金卿。それは本当に存在するのであろうか……。 あの甘い香りと酒と女の微笑みに満ちた黄金卿……。指名料なしで朝まで千円ぽっきり……。 次回お題「はちみつ」「パンダ」「消毒」
469 :
光・琵琶・城壁 遅かった :02/09/09 23:04
燃え盛るような灼熱の太陽の下、男は一人居た。 男の目の前に広がる光景は一つの荒城と、それを囲む雑多な植物。 戦で焼け落ちたその城に在るのは、無数の傷跡、焼け果てた城壁。 周囲の大地には無数の人骨が散在している。 男は琵琶を取り出す。 琵琶が掻き鳴らす曲は辺りに漂う怨霊を光の道へと導いた。 男は立ち去り、再びこの地を訪れる事は無かった。
470 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/09 23:25
等間隔に設けられた、陰気臭い蛍光灯と、味気ない病室のドア。 キリコの絵のように何処までも続くリノウム張りの廊下には、仄かな消毒用アルコールの匂いが漂っていた。 その廊下の一番奥、1972号室に、パンダが入院している。病名は、糖尿病。 病室を訪れると、パンダは気持ちよく私を迎えてくれた。 年の所為だろうか、彼は随分とショボくれて見えた。 もし、何も言わず電車に乗っていたなら、恐らく彼がパンダである事には誰も気付かずに席を譲るのではないか。 ごま塩の頭髪はすっかり薄くなって、所々張りのないくすんだ地肌が覗いている。頬骨の上あたりに浮かんだ染みが、いっそ痛々しい。 ベッドから起き出してお茶を入れようとするのを慌てて止め、簡素な流しで二人分の紅茶を作り乍、私は何だか、ひどくしみじみとした気持ちになった。 ベッドの傍らに丸椅子を引き寄せ、私達は黙って熱い紅茶を啜った。 ふと、彼は思い出したようにベッドの下から壺を取り出し、紅茶を掻き混ぜた匙で何やら掬って舐め始めた。 はちみつだった。 彼の病名を思い出し、慌てて注意しようとしたが、止めた。 彼はパンダなのだ。パンダに、自制心は、必要無い。 お題・ロイヤルミルクティー・豊臣秀吉・ワニ
471 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/09 23:27
470のお題は「はちみつ」「パンダ」「消毒」でした。失礼。
472 :
「ロイヤルミルクティー」「豊臣秀吉」「ワニ」 :02/09/10 00:33
アマゾンの細い支流に舟をとめてから、もう3時間近く経とうとしている。 アルミのカップに口をつけた洋介は、眉をしかめて薄黒い液体を飲み下した。 ロイヤルミルクティーとまでは言わないが、せめて紅茶が飲みたい。 洋介は甘党で、ストイックなまでの紅茶派だ。それでも、僻地にワニの捕獲に来ていて、 コーヒーがあるだけでもありがたい程度のことはわかる。 いいかげん、ささいな不平が頭をよぎるのも押さえきれなくなっていた。ワニは鼻先すら も見せない。 ウグイスが鳴くのを待っていてもしかたがない。洋介は、徳川家康作戦を捨て、豊臣秀吉 作戦に変更することにした。 いまさら用意してこなかったニワトリを調達すべく、洋介は舟を出した。 お題:「ストラディバリウス」「光源」「べっこう飴」
473 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/10 00:50
「はちみつ」「パンダ」「消毒」
森の中で凶暴な人食いパンダに襲われて腕を負傷したのではちみつで消毒をしたら、今度はクマのプーさんに襲われた。
でも、プーさんは腕の傷口についてるはちみつを舐めるだけで、僕に危害を加えるようなことは一切しなかった。
それどころか、僕の怪我はいつのまにか治ってしまった。
僕はお礼に残ってたはちみつを全部プーさんにあげました。
みんなも森の中で怪我したら傷口にははちみつを塗るといいと思う。そうすれば、あなたのところにもプーさんが現れて、あなたの怪我を治してくれるかもしれない。
お題は
>>472 のやつで。
474 :
「はちみつ」「パンダ」「消毒」 :02/09/10 01:05
「あっ、僕の好きなパンダ!」 「そうよ、今日のおやつはパンダのパン。それで、パンダは何が好きだっけ?」 「ショードク」 「おりこうね。手をきれいに消毒しないと、パンダが僕を食べちゃイヤっていうのよね」 「ウン。そしたら、熊のプーさんみたいに、はちみつ付けて食べていいんだよね」 カズを他の子供たちのようにゲーム漬けにしてはいけない。カズを汚れのない童話の中で育てたい。 由紀のその願いは、今のところ順調にカズの行動に現れているようだった。 翌朝、夫を送り出してから、いそいそと由紀はパソコンを開く。 画面の中から、カズが「ママ、おはよう」と挨拶をする。 由紀は発売されたばかりの「MY LOVELY CHILD U」に夢中だ。 次は「温泉」「ライター」「携帯」でお願いします。
475 :
かぶりました :02/09/10 01:07
失礼しました。かぶりました。 お題は 「ストラディバリウス」「光源」「べっこう飴」 で。
476 :
「ストラディバリウス」「光源」「べっこう飴」 :02/09/10 03:35
若者は名器というのは時代を超えるという陳腐な言葉も、今なら素直に頷ける気がした。 「美しいだろう」 疑問ではない、問う側は問われる側に確信をもって断言する。 それも、静かに。 ゆっくりとそれを持ったまま、老人の手が差し出された。 それは天井のほの暗い光源にもかかわらず重厚に光を反射させた。 「べっこう飴みたいな光だ」 幼い頃にべっこう飴をすかして太陽を見た時に思ったなんともいえない光沢の記憶が、手の中のその滑らかなラインに重なる。 「弾いてみたまえ」 弓も渡され、体が自然にいつものスタイルを取る。 「これがストラディバリウスだ」 老人が満足げに弟子である彼を見つめる。 彼は一つ大きく深く息を吸い込むと、小曲を一つかなではじめた。 お題は474さんの「温泉」「ライター」「携帯」でいかがでしょ。
「温泉」「ライター」「携帯」〜あるいはアリバイトリック〜 東北の西村村は知る人ぞ知る温泉町である。そこただ一つの駅で、男が死んだ。 観光地とは名乗っているものの客はほとんど来ず、交通は県道と国鉄のみ。それも 地元出身の政治家がむりやり通したため、せまい村に似合わず複雑な乗り換えがあり、 やけに変則的な時刻表とあいまって、きわめて使いづらいものだった。政治家の名を とって京太郎駅。それがくだんの駅である。 その駅で、ある男が電車に轢かれた。最初は単純な自殺かと思われたが、調べが進 むと男は自殺するようなそぶりはなく、しかもその場に時間的にいるはずがないと分 かったのである。 そこで誰かが呼び出して突き落としたのではと考えられた。しかし男と犬猿の仲で あり、唯一容疑者と目された人物にも完全なアリバイがあった。 事件のあった季節は冬であり、湯治のためにお忍びで来たかとも思われたが、宿泊 した形跡も見つからない。 皆が首をひねる中、警部補は煙草にライターで火をつけるふりをして、携帯電話で 知り合いを呼んだ。登場したのが名探偵皇太郎。彼はあっという間に謎を解く。 「死者はアリバイトリックを使って、犬猿の仲であった容疑者を逆に殺そうとしたの です。冬で凍ったホームを乗り換えのために全力疾走した。転げ落ちて当然です」 どっとはらい。次なるは「水着」「防寒着」「ターバン」
478 :
水着・防寒着・ターバン :02/09/10 10:07
灼熱の大陸、インドにての思い出。 東インドのマドラスという街で、コーヒーの買いつけに行ったときのことだ。 仕事の合間に空いた時間、海で新しい水着を着た私は泳いでいた。 そして砂地の海岸でひと休みするたび、私はバッグのなかを確認していた。 パートナーは慎重だねと言って笑う。 ここはインドなのだから、慎重すぎるくらいで十分なのだ。 すると背後からターバンを巻いた数人の男たちが私たちを取り囲んだ。 狙われた。 お金を渡そうと震える手で私がバッグを探っていると、男のひとりが何かを見つけた。 男はバッグのなかを指さすと、無理やりその物を引き抜いた。 セーターだった。 何しろ日本は今冬なのだから。 よほど防寒具が珍しかったのか、奇声をあげて喜んで帰っていった。 私たちは呆然とするばかり。 こうして私はTシャツのまま、真冬の日本へ帰るはめになったのだ。 次回お題は「なると」「どぶろく」「カー・ステレオ」で。
479 :
水着・防寒着・ターバン :02/09/10 11:05
ガンジス川のほとりに座っていた私に向かって、男が話し掛けてきた。 「あなたそんなに悩んではいけません」 魚の鱗のように輝いた川面を眺めていた私は、細められた瞳のまま、 隣に立った男の方に目線を向けた。布切れを腰に巻き、頭にターバンを装着した男。 日に焼けた上半身は板切れのように痩せている。男は静かに頷くと、 私の肩に手を置きながらゆっくりと腰を降ろした。 「わたしあなたの悩みを知っています」 私は尋ねた。「なんで私が悩んでいるとわかったんですか?」 男はターバンを指で掻いたあと、一指し指を頬の上に載せて言った。 「私の眼は真実を見抜くのです」男の眼は深く澄んだ緑色をしていた。 男は言った。「なにも話さなくてもわかります。 あなたがインドの夜を知らずに防寒着を持ってこなかったことも、 ここ数日なにも口にしていないことも、この聖なる地を選んだ理由も……」 「あなたは――」 男は開きかけた私の口に指を添えると、首を横に振った。 「言葉は必要ありません。とにかく、あの川に漬かりなさい。 そして全てを任せるのです。あなたが心配する水着も必要ありません。 全てはあなた自身のままで――あの流れが受け入れてくれるのです」 そう言って男は立ち上がると、陽の射す方へと歩き出した。 やがて男の背中は照り返った光の中へと消えていった。 次回お題「カレー」「わさび」「チョップスティック」
被ってしまった。ついでにインド人も こうやって人のと見比べるとオモロイね お題は478さんの「なると」「どぶろく」「カー・ステレオ」でお願いします
灼熱の大陸、インドにての思い出。 ふと見ると、小学校6年くらいの女の子が芝生に腰を落とし、 何やらいじっている。 「何をやってる」 「フン」 可愛げのない娘だ。 いじっているのはターバンらしい。 ターバンだが、不思議に澄んだ音がする。ストリングスの響き。美しいメロディー。 おいおい、ターバンか、と思っていたら、 突然、「エスキモーのピーは冷凍ピー」と男のどら声が響いてきた。 背後から防寒着を着た数人のエスキモーたちが私を取り囲んだ。 狙われた。 エスキモーたちはバッグのなかを指さすと、無理やりその物を引き抜いた。 セーターだった。 何しろ柿色の服を着たおっさんなのだから。 よほどセーターが珍しかったのか、奇声をあげて喜んで帰っていった。 私は呆然とするばかり。 水着だったんだあれは。
ガンジス川のほとりに座っていた私に向かって、男が話し掛けてきた。 「あなたそんなに悩んではいけません」 ガンジス川の輝いた川面を眺めていた私は、隣に立った男のなるとに目を向けた。 魚の鱗のように上半身になるとを装着した男。男はゆっくりと私の肩になるとを置きながら腰を降ろした。 「わたしあなたの悩みを知っています」男は言った。どぶろくの上になるとを載せて。 「なるとは真実を見抜くのです」男のなるとは深く澄んだ緑色をしていた。 「なにも話さなくてもわかります。あなたが私を知らずに布切れ板切れを持ってこなかったことも、 ここ数日なるとも口にしていないことも、あなたが一指し指であなた自身を掻いた理由も……」 「あなたは――」 男は開きかけた私の口になるとを添えると、首を横に振った。 「言葉は必要ありません。とにかく、なるとに話し掛けなさい。 あなたが心配するカー・ステレオも必要ありません。全てはなるとが受け入れてくれるのです」 私は細められた瞳のまま、なるとへ話し掛け出した。 やがて私の悩みは消えていった。
483 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/10 13:02
暇にもほどがある。お前ら、まさに「人糞製造機」だな。最悪。
484 :
「なると」「どぶろく」「カー・ステレオ」 :02/09/10 14:38
>>483 ……「人糞製造機」ねえ、こいつァ言い得て妙だ。旦那、いいセンスしてるじゃないですか。
確かに、旦那の言う通りでさぁ……アタシらはそれこそ日がな一日、一円の得にもならねぇモンを
書いて、書いて、書きまくって……ただただ恍惚に酔い痴れる、そんな常人とは千里もかけ離れた
生き方を選んじまったんだ。それこそ暇人か……そうでなきゃ狂人にしかできねえ生き方をね。
しかしですね……アタシも実は、数年前までは旦那と同様、堅気の道を歩んでいた事もあったん
ですよ。ただ時々こんな板にフラリとやって来ては、厨房どもの言い争う様を肴に濁酒(どぶろく)で
一杯やりながら、時折茶々を入れて愉しむ……まあ、その程度の関わりでしたね。今の旦那みてえに。
そんなある日……ほんの、ふとした気紛れだったんですよ……何の気なしに、ここの連中の真似を
して文章を書き綴ってみたら……もう、体が言う事を聞きやがらねェ。それこそ阿片の中毒者みてえ
に、「これ」無しでは生きられねえ体になっちまったわけですよ。
そうなると……だ。アンタも危ねぇって事になっちまうんですよねえ……旦那。そうやって外野で
ゲラゲラ笑ってる分には何の問題もねえ……ただ、万が一にも、気慰みに筆の一つもとった日にゃあ
……旦那も晴れて、アタシら「人糞製造機」の仲間入りってわけですよ。
ただただ、テメエの下衆な快楽の為だけに腕を振るう人生……それこそ、表に停まったポンコツ車の
カー・ステレオの方が実りある人生と言えましょうが……アタシは死ぬまで、ここにいるでしょうねェ……
次は「カレー」「わさび」「チョップスティック」でどうぞ。
485 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/10 15:13
「人尿製造機」「糞スレ製造1号」「追従糞オプション」でお願いします。
486 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/10 15:21
チョップスティックって何だ
>486 箸。次からは検索しれ。
488 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/10 15:28
箸。
489 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/10 16:02
「どう、おいしい?」 ミドリは心配そうにエプロンのはしを揉みしだいている。 チョップスティックを使うのはわずらわしかったし、スシに添加されるわさびも いただけなかったが、このねっとりとした日本のカレーは、マーカスの口になじんだ。 「おいしいよ」 マーカスは久々に偽りのない笑顔を返すことができた。いつもはせわしなく揺れる ミドリの瞳が、まっすぐにマーカスを見つめている。ぱっとひろがった笑顔が迫っ てくる。 ミドリの小さな体を抱きとめながら、マーカスはそのぬくもりを逃さないよう腕に 力をこめた。そして、ミドリを傷つけるような嘘はつかないよう、固く心に誓った。 お題:「亀」「星座」「油」
490 :
亀・星座・油 :02/09/10 19:32
テレビに厭きた男の子はリモコンで電源を切る。 室内の水槽にはちいさな亀がゆっくりと這っている。 両親の帰りは遅いのだ。 でもそれもいつものこと。 台所の流しには油で汚れた食器が投げ出されてある。 男の子はベランダに出ては空をながめる。 街の空は明るくて、星座も北斗七星とオリオン座しか見えない。 男の子はため息をつく。 村で農業やってたほうがよかったんじゃないかな、なんて思いながら。
お題を忘れてました。 次は「さんま」「針」「ホーミー」でどうぞ。
492 :
「さんま」「針」「ホーミー」 :02/09/10 19:53
母は鼻歌を歌いながら、せっせと針を動かしていた。 いまどきミシンもつかわずに、なおかつ古着を仕立てなおすなんて、オールドファッションもいいところだ。 「なんでミシンつかわないの?」 ぼくが聞いたとき、母は笑っただけでなにも答えてはくれなかった。 母は、ちくちくと布をはぎあわせてゆく。なんでだかわからないけど、ぼくは安らいだ気持ちになる。 母の歌は、草原に響くホーミーだ。このときだけ、ぼくは山羊の乳をしぼる遊牧民になる。 緑の香る風すら感じながら、ずっとずっと、このまま時間が止まってしまえばいいと思うのだ。 だけど、そんなときは長くは続かない。 「お母さん、なんか焦げ臭いよ」 「あ、さんま」 ばたばたと台所に駆けこんでいく母を見て、ぼくは塾の時間が迫っているのを思い出した。 つぎは、桃・さくら・キムチでおねがいします。
男が、ふわり、と背中に手を回すと、女は一瞬、身を固くする。 優しく、長い黒髪に触れる。 真白の陶器のような耳が露わになる。 男は、その耳に囁く。 女の白い頬が、さくら色に染まる。 なおも、甘い囁き。 男は顔を女に近づける。 君は、今朝食べた桃の香りがするよ。 さくら色を通り越し、真っ赤になった顔の女は、やがて耐え切れなくなったように プハァーッ と息を継ぎ、 貴方は昨晩食べたキムチの臭いがするわ! お題・京都御所・焼肉・サッカー
竹内は自分の十五歳も年の離れたまだ小学生の弟がサッカーをしているのを遠くから眺めていた。 真新しいブルーのユニフォームが、今年のワールドカップを見て始めた事がばればれで、 我が弟ながら少し俗物過ぎやしないか、と勝手に心配していた。 二人がいるのは京都御所に程近い、某少年サッカーチームのいつも練習に使用しているグラウンドである。 調度、練習が終わり、少年は友人数名を引き連れ竹内のところに近づいてきた。 「兄ちゃん、来てたんだね」 にこにこと、満面の笑みをたたえた顔を見事に泥で汚しながら、少年は竹内に 「ねえ、このあとさ、みんなと帰るんだけど、兄ちゃん昼とかおごってよ」 と、少年らしい打算も何も無い、正直な要求を簡単に提示してきた。 なるほど、もう昼も回って、もうすぐ一時になってしまう。 「おれの給料も考えてくれよ」 竹内は一応の抵抗を示すが、少年の耳にそんな些細な言葉が聞こえるはずも無く 「焼肉ね」 無常な食欲を見せ付けるのである。しかしその、嬉々として仲間と喜ぶ弟を見ていると、 こうして一人の人間に頼りにされているのも、悪くない。と思われてくる。 なんにせよ、竹内の父親も母親も、事故で亡くなった今、自分が親代わりになって 弟を育てなければ、と思う、今日この頃であった。 次回「トップ」「飛行機」「聖なる」
495 :
「トップ」「飛行機」「聖なる」 :02/09/11 00:18
そそり立つ2本の象徴は、広がった街を睥睨していた。 いつもの朝のいつもの空気の中で、青い空は高く微笑んでいただろう。 タクシードライバー・マイケルは欠伸をしながら赤い目で窓の外を見ていた。 刹那――― ・・あれは間違いなく飛行機だった!! 巨大なビルディングの頂上付近が爆発している! 「オー、オー、オー、オーマイガッッッ・・!!」 マイケルはその瞬間を目撃してしまった。 原理主義組織の名目上のトップ・ビンラーディンの元に幹部連が集っている。 「聖なる攻撃が実行されました」 ひざまずいた若いアラブの瞳が強い意志で報告した。 彼をのぞく全員が静かにうなずきあった。 (完) 次は「コーヒー」「コーラ」「中東」で。
496 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/11 00:23
キャップ1杯を正確に量って、光二はどろどろの液体を洗濯機に注いだ。 洗剤といえばトップだ。光二は偉大な酵素の力を信頼していた。自分以外の家族が、 聖なるものとたてまつる木の像とおなじくらいに。 居間から聞こえてくる念仏の合唱から意識をそらすように、光二は洗濯機の水流をじっと見つめた。 汚物が水に溶け出す過程を見るのが、光二は好きだった。汚物を洗い流された服は、もとの色をと りもどす。 「光二、あなたもお祈りしなさい。地獄に落ちますよ」 居間から聞こえてくる祖母の声は、かつてのようにのんびりとも、ゆったりともしていなかった。 家族みんなを、洗濯機に入れることができればな。 窓の外に目を向けると、飛行機雲がひとすじ、走っているのが見えた。 つぎは、「オフィス街」「かんづめ」「闘争」でお願いします。
かぶり失礼。次は「コーヒー」「コーラ」「中東」でお願いします。
498 :
「コーヒー」「コーラ」「中東」 :02/09/11 01:12
私の朝は、いつも一杯のコーヒーから始まる。 今朝もいつも通り、ゆっくりとコーヒー豆を挽く。 ゴリゴリと単調に響くリズムが心地よい。 …今日もいい朝だ。 私はその何もない殺伐としたマンションの一室を見渡した。 スーツケースとドリップ式のコーヒーメーカーだけがぽつんと残されていた。 今日でこの部屋ともお別れか、と何だかしみじみとした気分になる。 最初、中東情勢のリポーターとして私が抜擢された時は、正直断ろうかと思っていた。 しかし、「あなたは、くいの残らない人生を送りなさい」と言う母の最期の言葉が、私の迷いを断ち切ってくれた。 日本での最後のコーヒーを入れるべく、私はコーヒーカップを探す。 そこで割れ物はすべて昨日送ってしまったことに気が付いた。 おっちょこちょいの自分にあきれていたその時、窓辺で何かがキラリと光った。 コカコーラのロゴが入った一つのグラス。 グラスにコーヒーを注ぎながら、私は何だか笑いがこみ上げてきた。 ドジな私だけどがんばるよ、母さん。
お題忘れてました。 次は「雨」「友達」「本」でお願いします。
500 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/11 01:15
501 :
「コーヒー」「コーラ」「中東」 :02/09/11 01:21
おとなになるって、ぬいぐるみなしでねむれるようになるってこと? のみものがコーラからコーヒーにかわるってこと? よくわからない。だけど、くまのちーちゃんとベッドに入ってても、にがいのみものがおいしくなくっても、わかることだってある。 こどもはあっちへいってなさいって、ママははなしてくれなかったけど、ママのかおをみたらわかっちゃったよ。 よくないことが、パパによくないことがおこったんだ。 「ここに行ってくるんだよ」 パパがちずでみせてくれたところには、中東ってかいてあった。とってもとおくて、あついところだって。 おひさまにあたりすぎて、わたしもぐるぐるしちゃったことがあるから、パパもぐるぐるになっちゃったのかな。 きっと、あついからこおりもないんだろうな。もしかすると、ママはそのことにきがついてないかもしれない。 はやくパパのところにこおりをもっていってあげよう。ママにおしえてあげよう。 パパ、まっててね。すぐにいってあげるからね。 次のお題は、ハート・みつばち・栗です。
ごめんなさい。次は498さんの「雨」「友達」「本」でお願いします。
503 :
「コーヒー」「コーラ」「中東」 :02/09/11 01:42
左右に店の並ぶこの商店街は、曇天の空模様と同じくらい燻んでいる。 実家までは、あと十分もかからない。 しかし、故郷だと言うのに懐かしさより嫌悪感が先に立つのはなぜだろう。 こんな古びた商店街を歩いていると、中東へ行った時の事を思い出す。 報道カメラマンという仕事に誇りを持って日本を発った・・・何年前だったか。 派遣された・・・国では生水が飲めず、いつもコーヒーやコーラを携帯していた。 ・・・その二つも温くなると粘った甘ったるさに変わり、 私は常時喉が渇いていた。うん。それは覚えている。 さっきから、年や国名が思い出せない。何でここへ戻ってきたのかさえ。 帰国した理由は・・・そう、目の前で老婆の頭が弾け飛んだんだ。 白昼、人で溢れ返る街中で起きたそれは、私の常識を超えていた。 民間人に銃を撃ち放つ男達を目の当たりにして、 私はカメラを構えるどころか一目散に逃げ・・・ 私も死んだんだ。 ベタな上に遅過ぎですね。お題は498さんの「雨」「友達」「本」で。
504 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/11 02:07
「雨」「友達」「本」 本は僕の一番の友達。 晴れた日も、雨降りの日もいつも一緒。 家にいるときは勿論、出かけるときもいつでも一緒。 ちなみにたくさんいる友達の中でも今一番親しくしてるのは、ブコウスキーの『町で一番の美女』っていう友達なんだ。 みんなも本屋さんでみかけたら声かけてあげてよ。 言葉が荒っぽくて下品な言葉も使うけど、ホントは繊細でいい奴なんだ。 今度、きみの友達の名前も教えてくれよな。 じゃ、またね。 お題は「黒猫」「洋館」「惨劇」です。
私のたんじょう日。 私の好物をそろえた、ごちそう。 父さまも、母さまも、にこにこ笑っている。 おめでとう、ジュリア。おめでとう、ジュリア。 10さいか、もうりっぱなレディだ。 あなたは、母さんたちの宝よ。 バースデーケーキ。 たっぷりの甘いクリームに、私の大好きなイチゴ。 10本のローソク。あたたかな、光。 プレゼントの黒猫。 エメラルド色の目。首に巻かれたピンク色のリボン。 かわいいわ。いい子ね。 背中をなぜる。母さまの、ビロードの服みたい。 待ってなさい、今名前を考えてあげる。今、名前を付けてあげる。 ガラスの割れる音。 惨劇から80年余りが過ぎた今も、あの洋館には一人の老婆が住んでいるそうだ。 ソファに腰掛け、すっかり擦り切れたクッションを撫ぜながら、呟いているのだという。 待ってなさい、今名前を考えてあげる。今、名前を付けてあげる。 お題・シャンソン・ナイアガラ・歌舞伎
506 :
・シャンソン・ナイアガラ・歌舞伎 :02/09/11 13:00
「アキコ!さあ!なにをしている!歌うのだ!」 彼女が師と仰いだ男は大仰に手をふって滝を示した。 観光客が滝そっちのけで物珍しそうにアキコと師匠をとりかこんでいた。 中には写真をとって、手持ちの紙にサインなんかねだりにきてるのもいる。 「歌だ!歌であの滝を割るのだ! 日本の歌舞伎でも役者は修行時代にそうやって歌唱力をつけるというではないか!」 どこの誰がそんな事をいうというのだろう。 アキコは目の前に激しくしぶきを上げるナイアガラの滝を見つめ遠い目をしていた。 ・・・・あたし・・・・なにやってんだろ・・・ 「歌え!アキコ!ステージはここだ!」 ・・・・あーあ、OLやめるんじゃなかったなあ 次のお題は、「からすうり」「金魚」「はまぐり」 でいかがでしょ?
あ、推敲しているうちに「シャンソン」おとしちゃいました お題継続で シャンソン・ナイアガラ・歌舞伎 でどうぞ
508 :
シャンソン・ナイアガラ・歌舞伎 :02/09/11 21:04
「ナイアガラ」の客席は、今日も閑散としていた。 飴色の照明に浮かんだ顔は、どれもステージなど見てはいない。 右に左に揺れながら、グラスの酒と対話している。 それで十分だった。彩子は自分の歌うシャンソンを聞いて欲しいのだ。 彩子を見て欲しいのではない。 歌舞伎座のもぎりも家で眠りにつくころ、銀座の細い路地裏で 彩子と酒好きたちの時間ははじまる。 春雷・蚊取り線香・雪で。
509 :
春雷・蚊取り線香・雪 :02/09/11 21:44
宇宙都市も大変だ。日光より他に入るものがないため、生産が限られる。 なんとか経済を回すため、住民があくせく働いて金を注ぎ込む需要を! …という天才的に長期的な構想より「天災システム」が設置された。 経済危機を回避するため、自動的に発生する大雪災害、飢饉、地震。 これにより定期的な復興需要が発生する。 軽いものでは、猛暑、猛吹雪、春雷を前兆とするヒョウ・アラレまで。 穀物相場の変動。クーラー、ストーブの需要もここから発生する。 生態系だって例外じゃない。 自動養殖漕に揃えられた各害虫の卵がセレクトされ、人工孵化される。 蚊取り線香の需要まで完全コントロールだ。極端な場合、戦争すらも! 遥か彼方の地球から、弱いながらもTV電波が届く。 「**工業は、天災も、病気も、飢饉もない世界を求めて…」 ふふん、と宇宙の住民は笑う。 そうなるかな、できてもならないだろうな、と。 彼等は知っているのだ。地球だってここ同様、宇宙に漂う物体に過ぎない事を。 ※お題が理想的に難かしい…悩みまくり^^; 次のお題は:「母」「丸太小屋」「都会」でお願いします。
510 :
母・丸太小屋・都会 :02/09/11 22:29
僕の母は少し変わっている。 都会の生活に厭きたとか言って、今田舎に丸太小屋を製作中だ。 以前も人生に疲れたとか言って、モンゴルに半年滞在したことがある。 親戚は呆れかえるし、僕は恥ずかしいし、困ったものだ。 しかし父だけは、笑って受け容れている。 なぜそんなに寛容になれるのかが不思議でならない。 小屋の完成直前に父とふたりで遊びに行くことにする。 森の茂みが陽を照らして、すがすがしい。 母はのこぎりを引きながら僕らを迎える。 父と母は小屋の壁を触りながら談笑する。 少し離れて僕は二人の様子を眺める。 初めて僕はふたりをうらやましいと思った。 次のお題は「肋骨」「えび」「時計」
「肋骨」「えび」「時計」〜あるいはダイイングメッセージ〜 ある町の美沙荘という旅館で殺人事件が起こった。被害者は女将である。 彼女は血の海の中でえびぞりになり、凄まじい形相で死んでいた。死因は肋 骨を通して肺を一突き。側には血で犯人らしき名前を書き残していた。 ありがたい仏さんだと被害者に感謝を捧げながら現場に向かった警部補は 思わず、なんじゃこりゃあ?!と叫び声をあげた。 死体の周りにはその旅館の従業員や客の名前が、無数に書き残されていた のである。ダイイングメッセージは死体の腕などにまで書かれていた。 被害者が自分の名前を書いたのを犯人が見たとしても、書き加えるよりは 消した方が早い。常識的な頭脳しか持たない捜査陣では、この謎を解く事は できなかった。無駄に時間が過ぎる中、警部補はいらいらと時計を見あげた。 そしてついに名探偵皇太郎がやってきた。彼は素早く謎を解く。 「犯人は被害者が自分の名を書いても確かめる術を持っていなかった。ゆえ に怪しまれないよう自分の名前をふくめて偽のメッセージを書き残した。 そう、犯人は盲目の按摩です。誰かが彼に嫌疑をかけようとした? それ ならよけいな時間をかけず、単純にあんまと書き残すはずですね」 お後がよろしいようで。次なるは「イラスト」「空気」「みの虫」
512 :
「イラスト」「空気」「みの虫」 :02/09/12 01:19
いつのまに、みの虫は消えてしまったのだろう。 学校の帰り道、たよりない糸にぶら下がった小枝のかたまりを、 棒の先でつついて遊んだものだ。 砂利の敷かれた道はアスファルトで覆われ、緑の空気は紫に変わった。 みの虫は、どこへいってしまったのだろう。 ようやくみつけたみの虫は、スケッチブックの中にいた。 イラストともよべない昔の落書きに、わずか一匹、残っているだけだ。 はい。「サバンナ」「かき氷」「風流」でお願いします。
513 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/12 01:47
今日も空気が凍ったように寒い。俺は5年前にバーゲンで買った安物のコートの襟を立てた。 靴の中に雪が侵入して、俺の感覚を奪っていく。 「あなたのイラストは何ていうか…古いんですよね。読者の人気が今ひとつで…。すみませんが、来月で打ち切りと言うことで」 俺の中に何回も何回もその言葉が反芻する。 あーあ、とうとうこれで仕事、なくなっちまった。 イラストを描くのはたまらなく好きだ。しかしこの世界に入って趣味と仕事は違うということをいやと言うほど思い知らされた。…わかってたつもりなんだけどな。 何だかすべてがあほらしくなってしまった。 安アパートへの帰路で真っ赤な南天の樹が目に付いた。枝にはみの虫が2匹垂れ下がっている。 俺は貧弱な方を道に落とし、足で思いっきりひねりつぶした。 さよなら、今日までの俺。 数年後、俺は売れっ子のイラストレーターになった。時代の先を行くイラストレーターとして。 イラストを描くのは楽しいかって?…そんなの大嫌いさ。 次のお題「麦」「アメンボ」「血」でお願いします。
かぶりすみません。 次のお題は「サバンナ」「かき氷」「風流」です。
515 :
「サバンナ」「かき氷」「風流」 :02/09/12 02:24
「かき氷は何味が好き?」と彼女が僕に聞いた。 「いやー別に…ミゾレ味かな」 僕はチカクカビンだから、氷菓子は滅多に食べないのだった。 「何それー?なんでそんないいかたすんの!?夏といえばかき氷。これ、常識でしょうが? なのにどうしてそういうどうでもいい風ないいかたするわけ?」 もう信じらんない、といいながら、彼女がスプーンでオアシス色のかき氷をすくう。 「それにしても、この大正時代のガラスの器、風流よね」 彼女の顔がグラスに透ける。ぐにゃりと曲がる。 僕はため息をついてキリンの群れに目をやる。 僕は絶対、ハワイだと心に決めていたのに。 なぜ、新婚旅行に家庭用かき氷機(しかも手動)を持ってアフリカなんかに。 「ああー哲ちゃん見て!象の親子がいるよ!」 はしゃぐ彼女の口から紫色の舌がちらりと見えた。 ここはサバンナのど真ん中。信じらんない。 次は「大型犬」「六法全書」「プテラノドン」で。
かつての愚かな動物愛護団体と生物学者達によって、 それまで動物と呼ばれていた生物は小さな脳みその国人間とコミュニケーションをとることに成功した。 それによって六法全書での「国民」の定義は動物にまで広がり 民たちは、そろって人?権を主張してくる。たいした義務も果たせないくせに... 最近では四国が土佐犬により独立し、世界初の大型犬国家が誕生した。 人気うぐいすユニット「プテラノドン」は今日も歌う。 次は「黒」「進化」「季節」
↑「黒」「進化」「季節」でお願いします。 なんか感じが悪いので書き直しました。
↑さらに 4行目 小さな脳みその国民たちは、〜 です。非常に申し訳ない。
519 :
「黒」「進化」「季節」 :02/09/12 06:24
冠に十字架を掲げた教会が、夕日の中に黒く陰影を描き出している。尖塔の鐘は鳴り終わり、世界は夜のしじまを迎えようとしていた。 彼はその教会の中、礼拝所の椅子に腰掛け、いつまでも動こうとしない。指を組み、俯いたまままるで眠っているかのようだった。 端にある扉が開く、ゆったりとした袋のような服に身を包んだ老人が、姿を現した。 「今日も来ていたのですか」 老人が声をかけると初めて男は、首を上げた。表情のない顔であった。真っ白な顔だ。 「寒くなってきましたね。どうですか、スープでも食べていきませんか?」 「神父様」 男が言った。 「どうして人は人に進化したのでしょうか。それ自体が苦しみを生むと、解らなかったのでしょうか・・・」 少し目を瞑り、老人は答える。 「人は愛を享受するために、人となったのです。他者を愛し、ひいては自分を愛するために」 「私のような人殺しに、愛を受ける資格などありません・・・・」 「いいえ。あなたはそれを悔いている。心の底からの懺悔。いつか必ず、許されるときが来ます」 かすかに浮かぶ、男の笑み。だがそれはしかしどこか自嘲的なものだった。立ち上がると、頭を下げ、出口へと足を向ける。 明日も来るだろう。あさっても。季節がうつろい、月日がたとうと、神の前に頭をたれる彼の姿は変わるまい。 老人は男の癒されるときを願い、胸元で十字を切った。
次は「忠誠」「幻想」「明滅」でお願いします。
521 :
エヴァっ子 :02/09/12 11:00
「忠誠」「幻想」「明滅」 今見ているのは幻想なのか、それとも現実なのか。 俺はよくわからなかった。 忠誠を尽くした主人とはぐれ、この森に迷い込んだ。 森は深い霧が包み、しっとりと湿った空気が俺の鼻を狂わせる。 霧の向こうでは見慣れた形の光……主人の持っていた提灯が明滅を繰り返している。 だが、それを追いかけてもそこには何もない。 今見ているのは幻想なのか、それとも現実なのか。 俺はそんなこともわからなかった。
522 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/12 11:07
最後の終わり方がΣ
523 :
「忠誠」「幻想」「明滅」 :02/09/12 12:38
従者とともに迷い込んだ森の中、私は一人の老人に出会った。 「忠誠などはない、それは幻想じゃ」 「そんなことはない」 苦楽を共にした従者を想い、私は老人の言葉を否定する。 「ならば何故、貴方様はお一人なのか?」 老人は笑いながら私の背後を指差した。 私の手の中にある提灯が、老人の指先から放たれた風によって揺らいだかのように明滅した。 指し示されるままに背後を振り返る。見慣れた姿が消えていた。 「ご老人、あれをどうした」 老人はにやりと笑う。 「まこと忠誠と信頼があるとお信じになってるのならば この森で従者をみつけられるがよい さすれば貴方様の望みをかなえましょう」 「その言葉、忘れるな」 私は老人に言い捨てると、深い霧が立ち込める森に再び足を踏み入れた。 ----------------------------------------------------------------- 521さんの話のご主人側(?)をかいてみたかったので チャレンジしてみましたーすんません。 お題がなかったので継続してみました。
あ、次のお題「かたくり」「鍋」「ひもの」でいかがでしょ?
525 :
かたくり・鍋・ひもの :02/09/12 22:01
ある冬の夜、高齢男が熱を出して寝込んでいる。 外は静まった雪に照らされた街頭の色で朱く光っている。 妻は男の枕元で鍋を持ちながら座り込んでいた。 妻はかたくりでとろみをつけたスープを食べさせてみる。 しかし男は舌に載せたまま飲み込むことができない。 こんな状態が2日もつづいているのだ。 急激に男の体は痩せ細り、まるで浜辺のひもののよう。 しかし妻はため息をつくばかりで、病院には連絡できない。 病院には行かずに、死ぬときはこの床の上だと話していたのだ。 でも実際死に逝く連れ添いの苦しむ姿を見ては、妻も躊躇せざるを得ない。 もしかしたらまだ助かるのかもしれない。 生命を尊重すべきなのか、人生を尊重すべきなのか。 答えのでない問いを妻はただひたすらに巡りつづけていた。 その間にもどんどん男の体調は悪化していく。 次回お題は「クッキー」「洗濯ばさみ」「かみそり」でお願いします。
早瀬夏実は一人でテレビを見ていた。 日も落ちかけた夏の夕暮れ、電気をつけることもなくソファに寄りかかって3時間。 行儀も悪く、両足をテーブルに乗せながらクッキーを食べている。 顔のサイドにはりつく髪とじっとりとした汗を身体に感じていたが、 動くことが億劫なのだろう、30cmほど離れた鏡台に向かって手だけを伸ばし 手探りで引き出しの中を探った。髪のゴムを探しながら、無作為に指を動かしていると、 爪に当たる軽い感触がした。 つまんでみると、それは1個の洗濯バサミ。 こんなところに入れたかしらと不思議に思いながらも、ワニのようなそれを何度も開閉させてみる。 (・・・一人暮らしで暇を持て余すなんて思ってもみなかったな) 都会に出てきたい一心で、親の反対を押し切って飛び出して1年になる。 (田舎なんて・・・飽き飽きしてたんだから) 父親と母親の姿が目に浮かんだ。出て行く時の母の温かい手のぬくもり。 そして、父のむっつりと黙った背中。父をいつも思い出すのは洗面所に立つ背中。 アナログ気質の父は髭を剃る時にも、手動のカミソリしか使わなかった。 『自分の手でできることはな、出来なくなる日までやるもんだ』 面倒くさがるそぶりもみせず、そういいながら毎朝のように手を動かしていた。 あの日だけは口癖を言わなかった。夏実の方も聞きたいなんて思わなかった。 そう思っていたけれど。 (でも、もう・・・二度と聞けない。会えない) 視界がゆがむのを感じた。口の中に残っていた甘さが妙に胸に痛かった。 次回お題は「足音」「ホッチキス」「向日葵」でお願いします。
527 :
「足音」「ホッチキス」「向日葵」 :02/09/13 01:28
ホッチキスで、プリントをパチパチととめてゆく。単調な作業である。 ホッチキスというのは人の名前だったか、メーカー名だったか。 足音がパタンパタンと近づいて、ドアの前で止まり、ノブがまわる。 「吉田先生みまわり終えましたよ」 「向日葵?」 「やだなあ、"みまわり"ですよ」 「週末の宿題作ってるんですか?」 安達先生が俺の向かいに座り、手伝いますよと言いながらプリントをペラリとつまみとる。 安達先生の指は細く長く艶かしい。 「ああ…どうも…」 「僕は美術担当だから宿題なんて作る必要ないですしね」 このときを待っていた。安達先生と共に当直当番が来るのを。 今日こそは彼をモノにしてやる。 俺はホッチキスを机の上に置き、安達先生をじっと見つめた。 次は「ビスケット」「イヤホン」「マネージャー」でお願いします。
「やだなあ、"みまわり"ですよ。週末の宿題作ってるんですか?」ですね…。 あと、安達先生と共に当直当番をする日が来るのを。です。 すみません。
529 :
「クッキー」「洗濯ばさみ」「かみそり」 :02/09/13 01:45
気が付いたら、私は洗濯ばさみをいじっていた。いつもそうだ。何かいじってないとそわそわして落ち着かない。 「…だからN大付属中には偏差値が足りないのよ。最近、あなたはあの子の勉強見てくれないし」 「そんなこと言われても、俺だって仕事が忙しいんだよ。だいたいお前がしっかりあいつを見てないからだろう」 「何言ってるんですか。私はあの子にかかりっきりで自分の時間がないのよ。とにかく来月から塾、増やしますからね」 「塾を増やしたって金ばっかりかかるだけだろう」 「じゃあ、どうしたらいいんですか!」 下の階では今日もパパとママが、小競り合いをしていた。 洗濯ばさみで手をはさむ。手は真っ赤だったけれど、今の私には気持ちよかった。 私の足元では、愛犬のクッキーが何かで遊んでいる。…パパの部屋にあるかみそりだ。 私はそれに手を伸ばし、クッキーから奪った。 …ねぇ、パパ、ママ、私の気持ちに気づいてよ。 鮮やかな赤色の水溜りに、一粒の涙が零れ落ちた。 次のお題は「ねずみ」「ばさみ」「リモコン」でお願いします。
あぁぁぁ…、すみません。ダブりの上に1つ前のお題です。 次は「ビスケット」「イヤホン」「マネージャー」です。
531 :
「ビスケット」「イヤホン」「マネージャー」 :02/09/13 21:14
私の視界に数人の女の子達がはいってきた。中学生くらいだろうか、身なりは悪くない。 楽しそうにはしゃぎながら商品棚の間を歩き回っていた。 「その連中です、常習ですので注意してください」 耳につけたイヤホンからマネージャーの声が小さく聞こえた。 応援の必要を問われたが、私は軽く手を上げて横に降る。 回りの人間は虫を払っているくらいにしかみえないだろうが、 天井についている監視カメラでみている彼には充分理解できたはずだ。 私はゆっくりと腰をあげ、手になじんだ杖をついて歩き出した。 本当ならば私は杖など要らない。 見張り役らしい女の子一人が私に気がついたが、軽蔑したような目で視線を泳がせた。 だが、ああいう者達は、元気に歩いている大人がそばに居る時より油断するのだ。 一番棚の側にいた子がビスケットの箱を手に取って、品定めのフリをして仲間に渡す。 仲間の手に次々と渡され、大きなバックを持った子がするりと自分のそれにいれた。 私はビスケットのひとかけらも無く飢えて死んだ妹が思い出した。 突然、腹の底から怒りが沸いた、血色もよくその品物を買う金銭を持ち、 飢える事も無い者が何故そんなことをするのだ。 私は背筋を伸ばし、杖を握りなおし、イヤホンを耳から乱暴に外した。 「なんだよジジイ!」 杖を振り上げた私に気がついた娘がののしった。 マネージャーの彼は責任を取らされるかも知れない、それだけは気の毒だと思った。
532 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/13 21:15
「オンライン作家は出て行け! 以上」 俺たち『才能ある将来の作家』が、こうして暗いところで苦労しているというのに 才能の無いオンライン作家達が評価されているのは不公平だろう? 某スレ一よ。なあ、そうは思わないか?
あ、次のお題は529さんの 「ねずみ」「ばさみ」「リモコン」でいかがでしょ。
534 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/13 21:20
532 名前:名無し物書き@推敲中? :02/09/13 21:15 「オンライン作家は出て行け! 以上」 俺たち『才能ある将来の作家』が、こうして暗いところで苦労しているというのに 才能の無いオンライン作家達が評価されているのは不公平だろう? 某スレ一よ。なあ、そうは思わないか?
535 :
ねずみ・ばさみ・リモコン :02/09/13 22:50
平日の動物園にて。 俺は煙草を吸いながらぼんやりと園内を歩く。 空は穏やかに晴れわたり、風は凪いでいる。 ひとつひとつの柵を丁寧に見つぶしていく。 ねずみなどの小動物からきりんや象まで。 途中枝切ばさみで樹木を剪定している職員を見かける。 煙草をベンチ横の吸殻入れに投げ捨てる。 芝生に寝転んだ俺は目を閉じる。 薄明るい陽射しがまぶたを透かして網膜を刺激する。 過去のシーンがリモコンで切り替えているように次々と移り変わる。 そういえば昔、彼女とここに来たことあったっけ。 今はどこでどうしているやら。 昔は幸せだった。 猿の鳴き声がたまに聴こえてくる。 穏やかな午後。 次は「ロバ」「カフェ」「辞書」で。
536 :
「ロバ」「カフェ」「辞書」 :02/09/14 00:16
菜の花畑の夢を見た。 私は白くて小さな蝶々。くるくると円を描きながら、菜の花畑を彷徨っていた。 一際のっぽの菜の花に「こんにちわ」ってあいさつしたら、あなたは「君だね」と微笑んでくれた。 私はすぐにあなたが私の大好きな”ロバ”だってわかったよ。 うれしくてうれしくて、私はあなたの前で何度も踊って見せたね。 あなたは笑うたびにのっぽの体が小さく揺れていたわ。 難しい医学書や辞書を読んでいる時のロバの気難しい顔も好きだけど、やっぱり私はあなたの笑顔が一番好き。 とっても楽しかったね。 でも突然大嵐が来た。あなたは私を一生懸命守ってくれたけど、あなたは風にさらわれてしまった。 悲しくて、私はそこで目が覚めた。ベッドの上でしばらく泣いちゃったわ。 そこで今日はあなたと十時に駅前のカフェで待ち合わせって思い出したの。 この話をしたらきっとあなたは「大丈夫だよ」って私の手を包み込んでくれるんでしょうね。 早くあなたに会いたいな、ロバ。 いらない補足ですが、「ロバ」は「ロバート」の略です。 次は「落語」「薬」「英語」でお願いします。
「落語」「薬」「英語」〜あるいは叙述トリック〜 『……殺してやる。この前の毒殺はよけいな人間が死んで失敗したが、今度は確実だ。 やつらは俺達の文化を真似し、侵略し、自分達の文化だと主張していやがる。経済で も調子に乗って、俺の仕事を奪っていった。あのえらが張った不細工な顔を見ると、 吐き気がする。黒い髪も気持ち悪い。観光客のマナーも最低だ……』 ある米国のホテルで見つかったメモの切れ端に、こんな呪詛の言葉が並べ立てられて いた。州警察はこっそりと韓国に恨みをもつ日本人ビジネスマンの調査をはじめた。 『やつらは落語という、つまらない一人芝居を喜んで見るらしい。理解不能な生き物だ』 だが、新たに見つかったメモにはこう書かれていた。その文面から判断し、あわてて 警察は拘束する相手を、日本を憎んでいる米国人ビジネスマンへきりかえた。しかし、 たまたま居合わせた名探偵皇太郎の推理は、さらに違っていた。 「メモには英語が使われていましたね。日本人は海外に出ても日本語を使うものです。 それに、今の日本に落語を好む人はそういません。いるとすれば東洋趣味の……」 結局犯人は皇太郎のいったとおり、日系米国人に恨みをもつイギリス人だった。 「こういう文化の衝突は特別なようでいて、欧州から米国、日本、韓国と約十年周期で くり返すものです。一部の人には良い薬となる話でしょうか」 一見、真面目なしめですなあ。次なるは「工場」「荒城」「口上」
538 :
「工場」「荒城」「口上」 :02/09/14 05:13
「荒城の月」 こうなることは、判っていたわ……。 「お宅の書生であられた荒城耕郎さんは亡くなりました」 自転車でやってきた小男の巡査が、玄関に直立して告げた。奥様にはお従 弟であられた由、ご愁傷様であります、と口上を述べながら、興奮した息遣い を隠さない。 折りからの夜風に煽られ、爛漫を過ぎて咲き熟した枝垂桜が門に近い一隅を 白ませていた。坂月春は涙を流すかわりにそれを見た。この桜は去年、庭弄 りの好きな二人が並んで植えたものである。散る花の色は耕郎の、無垢な若 さを示しているように思われた。 「バア女給、自称松ヶ枝ヒカリを、現行犯で逮捕致しました。刺殺でした。 現場は偶然にも、坂月製菓工場駐車場でした。複数の工員が事件を目撃してお ります」 二人の実家の近所に、松ヶ枝という割烹があった。女主人のお千代には娘がい た。故郷で何度か見かけただけのその少女の顔を、春はどうしても思い出せな い。それが耕郎の初恋の相手で、つい先月、彼を慕って東京に出てきてしまっ たと聞かされていた。 春は全てを悟っていた。事件の全てを影のように覆い尽くす夫の名前が見えた。 ふたりの間に気づいて以来、あの蛇のように執念深い夫が奔走して創り出した 復讐劇が、ついに実行されたのである。 お題「実力」「眼鏡」「パンク」でいいでしょうか。
539 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/14 05:55
「俺の実力を見ろ」 英彦はパンツからチンポを出し、横に振って、瞬時に、勃起させた。 「早い、早すぎるわ」 「驚くのはまだ早いぞ、おいおい、ちょっと待て! 馬鹿! 眼鏡ははずさんでいい! はずさんほうがエロい」 (何も知らんやつだな)と、英彦は思った。(セックスに関しては何も知らないらしいぞ) (だが、こっちには好都合だ) 「さあ、フェラチオするんだ。そうだ、どうだ、眼鏡をはずさないほうがエッチな気分になるだろうが」 (おっと、いかん。こいつなかなかのテクニシャンだぞ。まずい。逝かされる。まだ三十秒もたってないのに) 「おい、ちょっと股を開け、クンニしてやるから」 その時、まるでタイヤがパンクしたみたいに明美の肛門から屁が出た。 「プシュー、プシュー、プシュー」
540 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/14 06:12
「くさー、急に屁をこく馬鹿がいるか!」 「ごめんなさい、ごめんなさい。おならがとまらないの」 「まあ、泣くことはない。しっかし、タイヤがパンクしたみたいだな、どうなってんだお前の肛門は?」 「たまに、こういう風になるの。でも、すぐ止まるわ。しゃっくりみたいなものよ」 「へー、すごい肛門があるもんだね、ところでさあ、お前のフェラチオなかなか良かったよ。こんな実力隠し持ってるなんて知らなかった」 「昔、おじいちゃんのチンポ、フェラチオして遊んでたの。でも私も勉強になったわ。眼鏡かけておしゃぶりしてたらむちゃくちゃ濡れちゃった」 「だろ?」 「ありがとう」 「どういたしまして」 「あー、恥ずかしいわ、こんなに濡れたこと今まで一度もなかったのよ、信じてくれる?」 「信じるよ」
541 :
実力、メガネ、パンク :02/09/14 06:36
人に勝る実力がありながら、それを面に表さない。こいつはいつもいつも、そうだ。度の強い眼鏡の奥で、微笑んでいるかの様な目は人に茫洋とした印象を抱かせる。 だがその本性を、今目の前に転がる四人の不良たちの姿が物語っている。呻き、顔面を血だらけにしたまま起き上がることの出来ない彼らを見下ろす、こいつの目。 ぞっとするほど冷たいものだ。 不良たちに同情するつもりはない。絡んできたのは彼らの方であり、その汚い言葉やちょっかいを出してくる手に、こいつはかなり耐えていた。 キレたのは、俺が殴られた時だ。 そこからのこいつの動きは全く見えなかった。なにか武道をやっているとは聞いていたが、これほどのものとは思わなかった。 俺に目を向けると、にやりと笑ってみせる。俺は苦笑を返すしかなった。 その時、怒鳴り声が聞こえた。 見れば、男が五人ほど、怒り狂った表情でこちらにかけてくる。不良どもの仲間だろう。 やれやれと、俺は溜め息をついた。 捨てられたのだろう、道の端に放置してあるパンクした自転車を持ち上げると、俺はにやりと友人に笑いかけて見せた。そして、振り回すように放り投げる。 綺麗に弧を描いた自転車が先頭を走る男に直撃した。赤毛のそいつは見事にすっ転ぶと、後ろの奴を巻き添えにする。 俺達は笑いあい、背を向けて駆け出した。
次は「樹」「物語」「馬鹿」で。
543 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/14 06:47
「本当?」 「本当だとも。疑い深いやつだな。世界中の人々が信じなくても俺は信じるよ」 「英彦、わたし英彦が世界中でいちばん好き」 「わかってるさ、そんなこと。さあ、さっさとパンツをはけ」 「もうセックスしないの?」 「ああ。チンポが萎えた。テレビでも見るか」 明美がテレビをつけた。英彦は丸見えになった明美の割れ目を後ろから凝視した。 明美が振り返った。「いま、わたしのあそこ見てたでしょう?」 「ああ、見てたよ。悪いか?」 「エッチ!」 「男はみんなスケベさ」 「そんなことないよ、吉田君はエッチじゃないよ」 「あの自転車修理やってるやつか、あいつだってスケベだよ」 「違うわ! わたしがこの前パンクした自転車持ってったとき、スカートの裾がサドルに絡まったんだけど、吉田君わたしのパンツ見なかったもん」 「へーえ、そういやあいつホモだって噂があるしな」 「何いってんのよ! 吉田君は自転車修理しながら弁護士目指してがんばってるのよ。あんたみたいなプータローにホモ呼ばわりされる人じゃないわ」 「何むきになってんだよ。そりゃ俺だって吉田の実力は認めてるさ」 「そうよ、あんたっていつも人をホモだ、ホモだって、言うけど、あんたのアナル拡張されてるじゃない。わたし知ってるのよ。みんな知ってるのよ」 「何だと! このアマ! てめえ吉田と出来てやがるな! ちくしょう! アナルにチンポぶち込んでやる!」
その男はイツキと名乗った。 たぶん、樹と書いてイツキだろう。 彼が語ったのは、86と戦って敗れたというオナーニ丸出しの「物語」だった。 (ハチゴーでハチロクに勝つ? アフォな) そう思いながら、漏れは、水平線を眺めた。 漏れたちは、飛鳥のデッキに居た。日本人の悪いクセとでもいうか、 同朋を見ると、つい声をかけたくなるらしい。漏れは、イツキの日本語が わからないフリをして無視しようと思ったが、クシャミでバレてしまった。 「はくしょん」 そんなクシャミをするのは、日本人しかいない。 漏れは、いつ終わるともしれないイツキの話に、適当に相槌を打ちながら、 (こいつはなんて馬鹿なんだ!) と思った。そう口にするのも勿体無いので、かわりにシガーの煙を吐いた。 イツキは、慣性ドリフトがどうの、四駆にも負けないだの、ほざいた。 「さ え ず る な !」 漏れは怒鳴り、読みかけのイニシャルDをイツキの足元に叩きつけた。 カモメが泣いた。漏れはジョナサンを思い出した。 カンパンを走って去るイツキとやらの足元が滑った。 ここでもアンダーか、救えねえな。 ↑初めてこのスレに書いたけど、こんなんでどう?
545 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/14 06:58
534 :名無し物書き@推敲中? :02/09/13 21:20 532 名前:名無し物書き@推敲中? :02/09/13 21:15 「オンライン作家は出て行け! 以上」 俺たち『才能ある将来の作家』が、こうして暗いところで苦労しているというのに 才能の無いオンライン作家達が評価されているのは不公平だろう? 某スレ一よ。なあ、そうは思わないか?
546 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/14 07:05
「俺の巨根を食らいやがれ。巨根のこんはねと言っても、俺のは樹だ! 例えればな!」 英彦は明美を押し倒し、舌で明美の肛門を舐めたあと、チンポを肛門に押し付けた。 「このアマ! パンツをはいていなかったお前が悪い! 裂いてやる、お前の肛門を裂いてやる!」 明美は肛門の筋肉を閉めて、英彦の巨根を拒もうと必死だ。 「ハハハ馬鹿! そうやって肛門を閉めていればぶっさされないとでも思ってんのか? 甘いっ!」 めりめりと英彦のチンポが明美の肛門に埋まっていく。 「あふぅ……はぅふぅ……」 「痛気持ちいいのも今のうちだ。さあてと、このチンポを抜いていったらどうなると思う? 明美さん」 「はぅふぅ、はぁはぁ、お願いっ! やめてぇ、痛くしないで……」 「だったらこのウンコの付いたチンポをしゃぶれるか?」 「しゃぶります、何だってしゃぶります」 「嘘をついたら、クリトリス噛み切るぞ」 そう言うと英彦はゆっくりとチンポを肛門から抜いた。 「さあ、しゃぶれ!」 「……肛門が痛くてしゃぶれません……」明美は泣きべそをかいている。 「何だと、しゃぶれませんだと? てめえ嘘ついたな!」 「嘘じゃないんです。本当に肛門が痛いんです。私の物語を聞いてくれますか?」 「さっさと言え! くだらなかったら、わかってるんだろおなあ!」英彦は唾を飛ばして叫んだ。
547 :
マスター(エロ) :02/09/14 07:08
/⌒ヽ ≡=− ビューン / Ф \____ ≡=− ∧_∧ //J ヽ<三 (・∀・; ) // \ ____ | ≡=− エロサッカ コロス ⊂ ⊂ )⌒)  ̄ | | | | ≡=− ヽ ヽノ |_| |_| ≡=− (_) ≡=− ≡=−ビューン ∧_∧ ニヤニヤ. /⌒ヽ ≡=− ビューン ( ・∀・) グサ/ Ф \____ ≡=− (つ===つ==∽∽∽∽⊂二二二二二二二> ヽ<三 | | |. // \ ____ | ≡=− エロサッカ コ…… (__)_)  ̄ | | | | ≡=− |_| .|_| ≡=−
548 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/14 07:13
つぎは「マスター」「根」「下着」で。
549 :
マスター(下着なし) :02/09/14 07:22
∧_∧ ( ´Д`) /⌒ ヽ / / ノヽ _ー ̄_ ̄)', ・ ∴.' , .. ∧_∧ ∴.'.' , . ( /ヽ | ) --_- ― = ̄  ̄`:, .∴ ' ((( #)゚Д゚) .∴ ' \ / _, -'' ̄ = __――=', ・,' .r⌒> _/ / ・,' , ・,‘ ( _~"" -- _-―  ̄=_ )":" .' | y'⌒ ⌒i .' . ’ | /,,, _―  ̄_=_ ` )),∴. ). | / ノ | ∴.'∴.' | / / ―= _ ) ̄=_) _), ー' /´ヾ_ノ ( ) ) _ _ )= _) ,./ , ノ ' | | / = _) / / / , ・,‘ | | |. / / ,' , ・,‘ / |\ \ / /| | ∠/  ̄ !、_/ / ) |_/
550 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/14 07:32
「わたし一週間前、吉田君にレイプされたの。今のあなたのように肛門にチンポを入れられ……」 「何だって! お前、吉田とアナルセックスしてやがったのか!」 「ちょっと待ってよ! 最後まで聞いて!」 「いいや聞かん! 許さん! このアマ! てめえの尿道に名に入れてやろうか! このお!」 「待ってって! 肛門にチンポを入れられそうになったんだけど、入れさせなかったの!」 「入れさせなかったつったって、突き刺せばいいだけのことだろおが!」 「わたしがさっきみたいに校門を閉めたら、吉田君のチンポじゃ突き刺せなかったの!」 「……そりゃそうだろ、吉田みたいなホモやろうのへたれチンポじゃ突き刺せるわけがない、俺みたいな樹みたいなチンポでないとな」 「そうなの、そしたら吉田君泣き出しちゃって……」 「情けねえ野郎だなあ」 「なんか吉田君、俺には勉強しか出来ない、レイプも出来ないって落ち込んじゃってみててかわいそうになったの」 「だからってお前には関係ないだろ?」 「でも……わたし吉田君に、さっきあなたが入れようとしたとこは肛門だったのよ、本当はここに入れなきゃいけないのって……」 「お前そんなこと言ったのか?」 「うん」 「馬鹿なやつだ!」 「怒らないで!」 「で、吉田とやったのか?」 「吉田君目を輝かせちゃって、そうだったのかって言って、覆い被さってきたの」 「くそおおお! 吉田のやつめえええ!」 「でさあ、吉田君わたしが初めての女だったらしくて、もう興奮しちゃって眼鏡をわたしの肛門に入れて喜んじゃってるの」 「なんて奴だ! 気違いだ!」 「レイプだ、レイプだ、俺にもレイプが出来たって言って。でも射精したあとはもうわたしに這いつくばって許してくださいって」 「で、許したのか? お前はそんなことされて許したのか?」 「ええ……許したわ、だって、吉田君っていい人だもの、それでさあ、眼鏡の柄で肛門が切れて痔になっちゃたの」 「それで、俺が巨根を入れたから、肛門が痛くなったというわけだな、それで終わりか、その、お前の物語というのは?」
551 :
「厨房」「原チャリ」「スレ」 :02/09/14 07:32
∧∧ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ♪ ρ(゚∀゚ )< ボクタチ チュウ〜ボ〜ォウ♪ ダスレダケーニー ツイテ〜イク〜♪ 口⊇⊂ | \____♪ /"/|/ 丿┐ ///UU'//┐=3 ぶべべべ〜 ◎ ̄ ̄ ̄└◎
552 :
warota! :02/09/14 07:33
アタタタタタタッタタタタタタタタタタタタッタタタタタタタタタタアッタタ(北斗神拳でつか!?!) それとも、オラオラですか------------------------------- ?
553 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/14 07:36
ムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダァーーーーーーーーーーー!!!!
554 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/14 07:39
wannabeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee!!!!!!!! この板にピッタリのスタンドだ!
555 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/14 07:39
次は「オンライン作家」「象」「槍」で。
556 :
「オンライン作家」「象」「槍」 :02/09/14 07:41
/⌒ヽ ≡=− ビューン / Ф \____ ≡=− ∧_∧ //J ヽ<三 (・∀・; ) // \ ____ | ≡=− オンラインサッカ コロス ⊂ ⊂ )⌒)  ̄ | | | | ≡=− ヽ ヽノ |_| |_| ≡=− (_) ≡=− ≡=−ビューン ∧_∧ ニヤニヤ. /⌒ヽ ≡=− ビューン ( ・∀・) グサ/ Ф \____ ≡=− (つ===つ==∽∽∽∽⊂二二二二二二二> ヽ<三 | | |. // \ ____ | ≡=− オンラインサッカ コ…… (__)_)  ̄ | | | | ≡=− |_| .|_| ≡=−
557 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/14 07:45
オンラインサッカ「これで俺は無敵だぁあああああーーー!!」 象「振るえるぞハート! 燃えあげるほどHEAT! 2CH レクイエム!!」 オンラインサッカ「・・・!! ぐっ! な、なんだこれは!」 バーーーーーーーーーーーンッ!
558 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/14 07:49
英彦はタバコに火をつけた。 「お前のマンコでタバコ吸えるか?……冗談さ。で、お前、吉田とは一回だけなのか?」 「あ、あの……」 「あの何だよ」 「吉田君がまたさせてくれって、観音様みたいだったって、俺、絶対クンニマスターするからって、絶対明美さんを喜ばせるようになるからって」 英彦はタバコの煙を吐いた。 「それにしてもお前肛門が痛いのに良くしゃべれるな?」 「痛いのよ本当に! 信じてくれないの!」 「信じるけど……そりゃあ吉田も根はいいやつさ」 「根だけじゃないわ! 全部いい人よ!」 「あのなあ、何だってお前は吉田の肩を持つんだ?」 「だって、あなたって気に入らないことがあると肛門にチンポ入れて裂くぞって脅す人じゃないっ!」 「吉田のほうがいいってか、ふぅ、吉田とお前が出来てたとはな……おいっ! 何してんだよ! 誰が下着つけていいって言った!」 「もうあなたの言うことは聞かないわ」 「何だと? お前俺にそんな口聞いていいと思ってんのか! このアマ! おいっ! 何だそのナイフはどこから持ってきた! ちきしょお!」
おい!
>>558 新・愛の荒らし みたいな展開はNGよ!
560 :
{樹」「物語」「馬鹿」 :02/09/14 07:56
部長の樹村はその前奏を聞くなり、マイクをつかんで千鳥足で立ちあがった。 「おお、これこれ、ボクの十八番」いやらしいくらい嬉しそうである。 南の島の風景というどうでもいい映像をバックにタイトルが表れた。 「ある恋の物語」そんな歌は知らない。悦にいった樹村は、なんともやりき れないスペイン語でうなりはじめた。とても聞いちゃいられない。 われわれはテーブルの下で手を握り合った。こういう馬鹿を接待する辛抱、 これがわが国を支えてきた。 樹村の鼻毛がそよいでいる。われわれはますますやりきれなくなって、どうせ 経費で落ちる高い酒をもう一本追加するに至った。それよりほかには、やることが なかった。
561 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/14 07:58
おい、
>>560 日はまた昇る、みたいな展開はNGよ!
お題 「陣取り」「山賊」「三味線」
563 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/14 07:59
つぎは「北国」「こけし」「びしょびしょ」で
このスレくらい、均衡を保とうよ。
565 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/14 08:00
______ ______ / __ ___ \ / __ ___ \ / /_/ | \ ./ /_/ | \ | _/ \/ | | _/ \/ | | / ___ /\ | | / ___ /\ | | _____. | | _____. | \ / | \ / \ / | \ / \______/ \______/ \||||||||||||||||/ \||||||||||||||||/  ̄ | |  ̄お祭りワッショイ!. ̄! !  ̄ \\ │ | お祭りワッショイ! │ | // \\ │ | お祭りワッショイ! | | // . + | ∧__∧ ∧__∧ ∧_∧ | + |( ´∀`∩(´∀`∩)( ´∀`) O + (( O ( ノ(つ 丿(つ | | )) + | ヽ ( ノ ( ヽノ ) ) )│ |__|(_)し' し(_) (_)_)_.|
566 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/14 08:01
英彦は切りかかってきた明美の手を抑え、叫んだ。 「そのナイフでてめえのマンコ切り裂いてやる!」 二人は揉み合った。 「吉田君はへたれチンポなんかじゃないわ! あんたのよりも立派よ! 象の鼻みたいなチンポだったわ!」 「何だと! この腐れマンコ! てめえ吉田はてめえの肛門にチンポ突き刺せなかったって言っただろおが!」 「吉田君はやさしいから無理しなかっただけよ! あんたとは違うわ! あんたはわたしの肛門を裂こうとした! 絶対に許さない!」 明美は英彦の睾丸に膝を入れた。 「うほぁーっ! うほぁー、うはぁー、うはぁー、つぶれたぁー!」 畳みの上をのた打ち回る英彦の腕を、明美はベルトで縛り上げ、英彦の肛門にナイフを突き刺した。 「わーっ! あっーっ! あいたぁぎゃーっ!」 英彦の肛門から大量の血が噴出した。明美はずどんずどんとナイフを出してはまた突いた。 英彦はわめきながら立ち上がり、足でドアを蹴破り、逃走した。 オンライン作家明美はこのことを小説化しようと思った。
567 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/14 08:05
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どうもすみませんでした。注意していたつもりだったんですが、「槍」を忘れていました。 まったく恥ずかしいミスです。
>>568 いや、それはいいけど、シモとか一応、自粛ってことになってんですが……
570 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/14 08:11
次のお題は?
572 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/14 08:11
でも実際ある程度の表現は必要でしょ。
まあ、あんまし煽りとも取られかねないし…… 正論で誤魔化さないでくださいね。時には通例に従うのも一興ですから。
574 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/14 08:17
つーか正論で誤魔化される程度の通例ってなによ? 何か言いたい事があるならちゃんと理由つけて語ってくれ。
あんま荒らすなってこった
576 :
「陣取り」「山賊」「三味線」 :02/09/14 09:26
彼は死んだ。ナワバリ争いのどさくさだった。 彼は不安だった。生前は山賊という非道徳的な職業についていたから。 無限地獄、叫喚地獄、賽の河原…ここも様々な地獄が陣取り合戦をしている。 自分は天国か地獄か?どんな天国か、どんな地獄か? 小さな部屋に、パイプ椅子が10脚くらい。 背広姿の閻魔様と鬼が入ってきた。いよいよ、彼の処遇が決まるのだ。 「このプロジェクターに君の過去が映る。ウソ、三味線は無駄だぞ」 マルチタスクの閻魔様がいつもの注意を済ませて、鬼の話し合いがはじまる。 「まず、御手元の資料を。彼は20歳の頃云々」で2時間。 ホワイトボードにいろんな表が書かれる。水性マジックもきれてくる。 「よし、それでは今日の配属分けを」という頃、既に8時間を経過していた。 「ちょっと待って下さい、それでは彼の評価方式の前提が…」 会議はなおも続く、何日も何ケ月も! 彼は知らなかった、既に配属は済んでいることを。 ここが「無限会議地獄」と呼ばれている事を。 ※朝からしんどいネタ… 次のお題は:>563さんの「北国」「こけし」「びしょびしょ」でお願いしまふ。
577 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/14 10:01
オンライン作家だが、何か文句あるか? ░▒▓█▓▒░▒▓█▓▒░▒▓█▓▒░▒▓█▓▒░▒▓█▓▒░▒▓█▓▒ ░▒▓█▓▒░▒▓█▓▒░▒▓█▓▒░▒▓█▓▒░▒▓█▓▒░▒▓█▓▒ ░▒▓█▓▒░▒▓█▓▒░▒▓█▓▒░▒▓█▓▒░▒▓█▓▒░▒▓█▓▒ ░▒▓█▓▒░▒▓█▓▒░▒▓█▓▒░▒▓█▓▒░▒▓█▓▒░▒▓█▓▒ ░▒▓█▓▒░▒▓█▓▒░▒▓█▓▒░▒▓█▓▒░▒▓█▓▒░▒▓█▓▒ ░▒▓█▓▒░▒▓█▓▒░▒▓█▓▒░▒▓█▓▒░▒▓█▓▒░▒▓█▓▒
誰だかの小説で使える文字が段々へっていく、 ってゆーのありましたよね? それを元ネタとしたスレもあったような。 誰の作品か解る人おしえてください!!
580 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/14 10:25
知るかボケェ! 教えて君は逝ってよしだ、ゴルァ!
581 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/14 13:55
「北国」「こけし」「びしょびしょ」 たまたまその日は台風だった。止めても父は予定を変えなかった。上野から 電車を乗り継いで、八時過ぎにはついにアパートのドアをたたいた。 父のびしょびしょの雨合羽からは、ほのかに故郷の潮のにおいがした。 このへんで、飲めるとこはないか。土産に買ってきたと言うこけしの包みを 鞄から取り出し一息つくと、父はすぐに落ち着きをなくして言いはじめた。 わたしは家では、決して飲まない。 仕方なく、近所のカラオケパブに連れていく。父は上機嫌で酔い、「北国の春」 を二回も歌った。 明日は父と、吉岡の家の人に会いに行く。嫁に行くことが親孝行だと、父は 今でも信じているだろうか。
すいませんお題忘れました。 「しらじら」「水神」「梅」でお願いしまする。
583 :
「しらじら」「水神」「梅」 :02/09/14 14:59
十年余りにわたる戦争もようやく終り、数ケ月が経った。 しらじらと夜も明ける頃、豪奢な馬車が宿場の前に止まった。 「おお、お女将か。さっそくだが、あの赤子に会わせてもらいたい」 「はあ!?」 「ほら、水神様からの授かりものと、十何年か前に預けたあの赤ん坊じゃよ」 「敵の目を欺く為であった。今となっては唯一の王位継承者じゃ!」 女将は、呆然とした表情で部屋に急いだ。 あの女の赤ん坊。実は王家の末子だったのか。 戦いで殆どが戦死。血統が絶えそうな王家の、最後の希望の星! そうと判っていれば、ああも辛い仕事を無理にさせなかったものを。 もう一年、いや、半年早ければ… もうじき梅の花の咲く季節だ、彼女のあの病気は大丈夫だろうか。 娘の部屋に着いた。女将は、娘のドアをノックした。 5人目の客と枕を共にさせられている娘のドアを。 ※せっかくの連休なのに、こんなの一人で書いてるなんて(涙) 次のお題は:「森」「水瓶」「生活」
584 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/14 15:01
あなたの文章真面目に批評しますAは、うさぎによって荒らされました。 このスレにうさぎが来ても、徹底無視してください。 反応するとブラクラとかウイルス張られる可能性があります。
585 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/14 15:05
風が吹く。
しらじらと夜が明け、山東の海に一日で最初の光が投げかけられる頃、
少女は梅の木の下に立っていた。
結い上げられた清らかな黒髪に、朱塗りの櫛が光る。
合わせた手の指先は、朝の冷えた空気で白くなってしまっていたが、
その白い頬は瑞々しい若さを湛えていた。
梅の下には、一つの祠がある。
地元の水神様を祭った小さなものだ。けれど、少女は毎日お参りに来ていた。
雨の日も、雪の日も、少女はこの小さなほこらに手を合わせる。
水神さま、今日もお父は元気でしょうか…
しばらくして、太陽が海のへりから少し離れる頃になると、
少女は顔をあげて細い坂道を下ってゆく。
後に残るのは、小さな社とほころびかけた梅の花。
遠い海の彼方、少女の祈りに守られて、彼女の父は今日も漁を続けている。
---------
久しぶりだったので時間かかってしまいました;
次のお題は
>>583 の「森」「水瓶」「生活」で。
森・水瓶・生活 「結局のところ、水瓶座だったのが決めてだったのよ」 妻はそう言いながら、カップに少しだけ残ったスープを飲み干した。 僕は小説を読んでいたので妻の話しを途中から聴いてなかった。 「えっと、ごめん。なんの話だっけ?」僕は小説から妻に目を移して聞いてみた。 妻は飲み終わったカップを台所に運びながら、「え?何か言った?」と聞いてきた。 「いやなんでもない」僕はまた小説に目を移したのだが、「森崎さんの話よ」 妻はちゃんと僕の話を聴いていた。いつもそうなんだ。僕はなんだかこの生活に、 最近居心地の悪さを覚えていた。 けれど僕はこの生活を捨てたいわけじゃない。ただ少し満足してないだけだ。 妻は台所で洗い物を終えたらしく、紅茶を持って戻ってきた。 僕は妻の入れた紅茶を飲みながら、この程度の生活を幸せっていうんだろうと思った。 お題は「少年時代」「帽子」「めがね」
588 :
「少年時代」「帽子」「めがね」 :02/09/14 19:15
「少年時代いらんかえー」 社員旅行で立ち寄った朝市だった。足許には、太い紐みたいなものがある。 60になるかといるお婆さんは繰り返す 「あんたの少年時代、3000円にしとくよー」 「うぬぬ、これが、少年時代か」 こちらも60過ぎた会社役員、少年時代なんて記憶の彼方だ。 「わしの少年時代なんて、メガネかけて勉強ばかりの味気ないもんじゃった」 「あたいだって、娘っ子の頃は、麦藁帽子かぶって畑仕事さ」 婆さんが笑う。 「よしよし、二つ買おう。私の少年時代とあんたの少女時代だ」 「やんだぁ…5千円にまけとくよ」 彼は二本の紐をよりあわせ、神社の鳥居に結んでみた。 「少年時代かあ、勿体無いことしたなあ」「ほんに」 翌朝、彼は出社しなかった。存在自体がどこかに消えていた。 充実した少年時代が、彼を変えたようだ。 ※「紐状物体」か「青い液体」か、無意味に悩んだー^^; 次のお題は:「ふるさと」「ひきしお」「いそしぎ」で御願いします
「ふるさと」「ひきしお」「いそしぎ」 『人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける』 (紀貫之) 紀貫之は「古今和歌集」「新撰和歌集」の選者として有名な平安時代の歌人 である。冒頭の一首は左遷先の土佐時代に望郷の念を歌ったものといわれる。 「土佐日記」は土佐からの帰還の途上綴った作品であり、当時としては画期 的な仮名交じりの和文の日記文学作品である。日記は男性のたしなみ、和文は 女性の文章であったため、貫之は「男もすなる、日記といふものを、女もして みむとて、するなり」と冒頭で女性を騙っている。 日本人は権威を嫌う。堅苦しさを嫌う。言葉も文語調が廃れ、口語体になっ たにとどまらず、どんどん崩れていく。最近では携帯電話の記号メールでコミ ュニケーションが成り立つらしい。千年前ですら、貫之のように柔軟な言語感 覚を持った文筆家がいたのだから、生き物のように変化していく日本語を否定 するのは間違いなのかも知れない。 しかし、一応”文芸”を名乗るこの板で「故郷」を「ふるさと」、「引き潮」 を「ひきしお」、「磯鴫」を「いそしぎ」とするのは、やはり違和感があるの である。 次のお題は「サンダー」「ランド」「シティ」で。
590 :
「サンダー」「ランド」「シティ」 :02/09/15 00:27
もういい加減飽きてきたのだろう、部下のジェーンが俺にこう聞いてきた。 「本当にこの辺りなんですか?ぜんぜん見つからないんですけど」 「いや、この古文書によれば、この辺りの川底に沈んでいるのは間違いない」 「その古文書だって信頼できない物とされてたんでしょう?」 「確かにあの当時はそう言われていた。しかし、今現在では第一級の資料だ」 「ふーん、でも何でシティのえらい人達はあんな物に必死になってんでしょうね?」 「あの事件前に生きてたヤツが多いんで、迷信でも信じたくなるんだろう」 今から100年ほど前、ある超大国が開発した新兵器「ランドクリーナー」が 暴発し、文字通り、地上に存在するものをきれいに一掃した。 わずかに、その時地下にいた人類のみが生き残った。その時大阪と呼ばれた地域の 地下街にいた人々は、その後オオサカシティという独立した町を造った。 しかし、最近オオサカシティは外部との勢力争いに負け続けていた。 困り果てたシティ政府の長老達は、政府調査員である俺達に、ある物を発掘するよう 命令を下した。一部の古文書を手がかりとして。 俺はその古文書をあらためて見直した。 100年前「スポーツシンブン」と呼ばれていた、その書物の目立つ所にはこう書かれていた。 ”阪神が勝てないのは、道頓堀に沈んだカーネルサンダース人形の呪い!?” 次は、「駐車場」「ウィンク」「人質」でお願いします。
591 :
「駐車場」「ウィンク」「人質」 :02/09/15 01:22
「護送中の怪盗が、駐車場にて脱走しました。いまだ捜索中で…」 TVで状況を確認すると、怪盗は娘に銃を向けて言った。 「気の毒だが君は人質だ。言う通りにすれば命は保証する。」 「あわわわ…はいっ!」 男はまず食事を作らせた。娘は慣れない手つきでカレーを作る。 外を伺いながら、カレーを食べる男。 「よし…次は、ジャガイモを最初に煮てから肉を入れるんだぞ。」 「あ、あ、ごめんなさいっ」 20日後。 怪盗は夜の闇に紛れ、家を出た。捜査は続いているが、仕方が無い。 青息吐息で前かがみ。最初の元気はかけらもなかった。 「だいじょうぶ、ですか?」 怪盗は精一杯元気な振りをして、娘にウインクをして見せた。 「もちろんだとも!感謝するぞ、娘よ。」 胃に熱いものがこみあげる。ああ、胸焼けが… 彼女はカレー以外作れなかった。 ※1行オーバー(^^; 次のお題は:「リハーサル」「死」「本番」で御願いしまふ。
592 :
「サンダー」「ランド」「シティ」 :02/09/15 01:45
旅をしている青年がいた。彼の名前は夕斗。 1000年前、世界は何千ものシティが造られ、独立していた。始めのうちはシティ同士の交易もあったと聞くが、ここ数百年間は一切の交易を断っていた。 「お互いのシティは干渉すべきではない」 こう言ったのは誰だったか、夕斗は時々考える。 彼は17の時、カシオペヤシティの長である父とのいざこざで、シティを飛び出した。 夕斗は疑問だったのだ。なぜシティ同士の交易を禁止されているのかが。 自転車の前かごで旅の友のサンダーが眠そうにあくびをする。 サンダーは雷鳴の轟く嵐の日に、夕斗が拾った猫だ。安直な名前だったが、夕斗自身はとても気に入っていた。 夕斗が旅で得たものは2つあった。1つ目はサンダー。そして…。 夕斗とサンダーは1つの国に着いた。いや、正しくは「シティ」だったと言うべきか。 そこには人影は無く、荒廃の風が吹いていた。 シティ同士の交易が禁止されている理由。それは国同士の差が問題だったのだ。 貧しい国があった。裕福な国もあった。技術の進んでいる国があった。そして荒廃している国も…。 夕斗とサンダーは「シティ」だった場所を歩く。そこで夕斗は何かの硬質の物を踏んだ。 それは看板だった。夕斗はその消え入りそうな文字を凝視し、やがて寂しそうな笑みを浮かべてそこを去っていった。 ――カシオペヤランド
遅かったですね…。 書いている途中でPCがフリーズ…。後、最後の1文だったのに。 しかも長くてすみません。 お題は591さんの「リハーサル」「死」「本番」です。
訂正を…。 何をとち狂ったか、後半の部分「シティ」であるべきなのに「国」になってる…。 すみません。すべて「国」は「シティ」だと思って読んでください。
595 :
「リハーサル」「死」「本番」 :02/09/15 03:35
えー、まずはここに…。 おっとまずいまずい、これじゃあ長すぎる。…コレくらいかな。 椅子椅子…と、ああー、壊れてるじゃねえか。 仕方ねえから辞書積み重ねて代用…、ヨシ。 これに乗って、蹴る。コレに乗って、ロープに首かけて…蹴る。 リハーサルはこれくらいでいいかな…。 まさか足が床についたりしねーよな。 よし、コレから本番だ…。死、あるのみ。 「アクリル絵具」「凸レンズ」「みたらし団子」でお願いします。
596 :
「アクリル絵具」「凸レンズ」「みたらし団子」 :02/09/15 11:10
「なあなあ。絵具食ったら虹色う○こだせねーかなあ。」 「止めないけど…。アクリル絵具はやめといたら。」 本当に絵具を食べたんだろうか。 次の日、彼は学校を休んだ。 元気?が取り柄のやつだったから、みんな心配して僕に聞くんだ。 いつも一緒にいるわけじゃないのにね。 実際、タイプだってかなり違うんだ。 カチ…キュッキュッ…カチリッ 僕はこうして、ドライバーでラジカセを分解したり、望遠鏡から凸レンズを取り出したり。 機械いじりが唯一の趣味って感じで…。 「あー、俺。暇なら来いよう。暇だから。腹減ったから、途中でみたらし団子を買ってきてくれ。」 突然の電話。それだけ言って、切れた。 …腹壊したわけじゃなかったのか。 僕はちょっと、笑った。 ※お題は「自転車」「右手」「ヒーロー」でよろ。
「自転車」「右手」「ヒーロー」 正直、後悔している。六年前、俺は交通事故で死んだ。小学生の時、鼻の下にできた 大きい黒子のせいでイジメを受けた。中学になって初めて女の子を好きになった。 地味な眼鏡を掛けた吊り目の子で、けっして美人とは言えないけど、同じ演劇部で 次第に演技に対する熱意に惹かれたんだ。結果を言うと、振られたあげく、クラスの 奴らにもからかわれ、三日後に、青信号の横断歩道で車と衝突した。腰が熱かった。 指先も、唇も、腹の肉も、体の全部分が動かなかった。イジメられ続けて、振られた あげくの華の無い人生だったけど、不思議な事に痛みも後悔も沸かなかった。 そんな事を考えていたら、体内に全て氷でできたドッジボールぐらいの球が入ってきて 睡魔に襲われて、思考が止まったんだ。目が覚めると、病院の手術室がだった。 親になっている男と女は知らない人だったけど、記憶だけは鮮明に残ってた。 最初の頃は、選ばれた人間になった気がして、自分でも抑えきれないほど興奮した。 親も良く笑う赤ん坊だねって喜んでた。今は骨格が成長して、自由に行動できる。 今年、幼稚園を卒園するんだ。もう楽しくて笑えない。自転車のバランスを取る 感覚も、ヒーローのトリックも、感受性が育たなくなった。生まれてきてすいません。 右手を使ってチンポを擦る事だけが唯一の幸せだ。 「愛国心」、「サラリーマン」、「ニキビ」で書けよ。
598 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/15 12:09
今度はこのスレを潰す気か? ブラクラ野郎に発言権はないんだから黙ってろ。
600 :
「愛国心」、「サラリーマン」、「ニキビ」 :02/09/15 13:17
戦場。ニキビが残る少年から大人まで、有無を言わさず狩り出される。 妻や親、自分の社会的地位を人質にとられ、追い込まれる地獄。 …それは敵もまた同様だった。 損なわれたプライドを、「愛国心」という大義名分が埋め合わせる。 自分は仕方なく来た訳じゃない。愛国心だと。 しかし、ここに一人、明確な目的意識をもって戦場いる一人の男がいた。 その名は…サラリーマン! 「あ、曹長。今回のナパーム弾、何発使いましたか?」 「中尉殿、例の地雷100ダース発注の件、そろそろ御願いしたいのですが」 「えー、今回の新製品は、殺傷力30%アップ、価格はなんとそのまま!」 飛び交う弾丸の中で、エクセルを操るその勇姿。 目指せ、売上目標早期達成。 敵陣営の同僚に負けるな! ※ああ暗い。 次のお題は:「パジャマ」「ネグリジェ」「ジャージ」で御願いします。
引きこもりの彼にそこら辺にあったジャージを着せ、ようやく外に連れ出せた頃には、もう夜のの8時なっていた。 最初彼の部屋に訪れたのは昼の2時だから・・・・・・私は思わず溜息をつきそうになる。 私がこの企画を思いついたのは三週間前。会社のパソコンで、文章を編集をしようとした時。 アプリケーションを起動させた瞬間ふと目に懐かしい文字が飛び込んできた。 『このアプリケーションは小森マサオによってプログラムされています』 ほんのコンマ二三秒だったけれども、私が間違えるはずもなかった。それは中学の頃の恋人の名前だったからだ。 何か懐かしくて嬉しくて、私は『小森マサオ』と言う名前をインターネットで調べまくった。 彼はどうやら有名なフリーのプログラマーになっていたようだ。 私はその旨をチーフにつげ、取材にGOサインをもらった。新人ジャーナリスト初の単独大仕事だ。 公式オファーは忙しいを理由に断られたが、彼の家は昔の友達に聞くと簡単にわかった。 それでゲリラよろしく(チーフにばれたら殺される!)彼の家に来たわけだが、
・・・・・・私はさっきの苦労を思い出しまた溜息をつきそうになった。 昼の2時にチャイムをならし、中でガザゴソと音がなったから安心して待っていたが、十分待てども音沙汰なく 三十分たった所で。彼が引きこもりだったことを思い出した。学校にも3日に1度のペースでしか来ていなかったのだ。 まあそれで興味がわいて付き合う結果までにいたったのだが、とにかくそこから彼と私の根競べが始まった。 私は三十分に一度チャイムをならし続けた。連続で鳴らしたりしなかったのは、私であると思い出させるため、 声を出さなかったもの彼にヒントを出したくなかったからだ。とにかく7時のチャイムでようやくドアが開いたときには そのまま彼の家に入って「どうして私だと気づかないの!」とわめき散らしてしまった。 彼はあのときとまったく変わらない、情けないような笑顔で「三回目で気づいたけど、でも開けなかったんだ」と言った。 私はなぜだか(それは傲慢だと理解してたけど)泣きそうになってしまって、とにかく取材させての一言で彼を外に連れ出したのだ。 ・・・・・・夜道、彼は何かにためらいつつもある一言をつむぎだした。「引きこもりが一番喜ぶプレゼントって何かわかる?」 私は無言で答えたが、彼は続けて「少なくともあのときの俺にはパジャマが一番嬉しい物だった。」と言った。 私は数歩歩いて、彼の言葉の分析を終えた瞬間、今度はホントに泣いてしまった。 そのときになってようやく私は、別れる原因になっってしまった彼からの最初のプレゼントである、「ネグリジェ」の意味がわかったのだ。
603 :
「パジャマ」「ネグリジェ」「ジャージ」 ◆LvR5twj6 :02/09/15 15:00
あほほど長かった。反省。 次のお題「鍵」「殺虫」「座布団」
604 :
鍵・殺虫・座布団 :02/09/15 18:52
ある夏の夜のこと。 僕はビールが飲みたくてコンビニエンス・ストアに向かった。 地域限定のビールと、ベストセラーの小説と。 旧い友達の載っている雑誌と、それと僕の載っている雑誌と。 ひととおり買って満足した僕は支払いを済ませて家に帰る。 鍵を開けてみればいつもと同じ光景が部屋に広がっている。 部屋中に原稿用紙やら本やらが散らばっていて、字で埋もれている。 真ん中には座布団が置かれてある。 森のすぐそばなので蚊が出やすい。 静けさが闇に溶けるように部屋に流れ込んでくる。 ぼんやりとした灯りが空間を満たしている。 殺虫剤を忘れた。 買ったばかりの雑誌を開いて寝そべりながら僕は眺める。 この生活がいとおしい。
お題の提出を忘れていました。 次は「ガス」「衣服」「読書」でお願いします。
606 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/15 18:55
ほら、な。 だからオンラインは出て行けってことなんだよ。 オンライン作家ども、さっさと隔離板行けよ。 ほら、な。 だからオンラインは出て行けってことなんだよ。 オンライン作家ども、さっさと隔離板行けよ。 ほら、な。 だからオンラインは出て行けってことなんだよ。 オンライン作家ども、さっさと隔離板行けよ。ほら、な。 だからオンラインは出て行けってことなんだよ。 オンライン作家ども、さっさと隔離板行けよ。 ほら、な。 だからオンラインは出て行けってことなんだよ。 オンライン作家ども、さっさと隔離板行けよ。 ほら、な。 だからオンラインは出て行けってことなんだよ。 オンライン作家ども、さっさと隔離板行けよ。
607 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/15 18:57
うさぴょんは、オンライン作家です。
608 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/15 18:58
うさぴょんは、オンライン作家です。うさぴょんは、オンライン作家です。 うさぴょんは、オンライン作家です。うさぴょんは、オンライン作家です。 うさぴょんは、オンライン作家です。うさぴょんは、オンライン作家です。 うさぴょんは、オンライン作家です。うさぴょんは、オンライン作家です。 うさぴょんは、オンライン作家です。うさぴょんは、オンライン作家です。 うさぴょんは、オンライン作家です。うさぴょんは、オンライン作家です。 うさぴょんは、オンライン作家です。うさぴょんは、オンライン作家です。 うさぴょんは、オンライン作家です。うさぴょんは、オンライン作家です。 うさぴょんは、オンライン作家です。うさぴょんは、オンライン作家です。 うさぴょんは、オンライン作家です。うさぴょんは、オンライン作家です。
死因はガス中毒であった。私がその報を受けたのは昨日の真夜中だった。 静寂に包まれた六畳一間の私の部屋に鳴り響くけたたましい電話のベル。 受話器から発せられるキヨミの訃報を比較的穏やかに受け止めた私は 適当な衣服を身に纏い、キヨミの下宿先に向かったのだった。 繁華街でひろったタクシーの運転手に行き先を告げた私は窓の外を流れる ネオンを眺めながらキヨミのことを思った。 たいして美人でもなく、だが(少なくとも私にとっては)魅力的な顔立ちをしていたキヨミ。 流行作家を忌み嫌い、聞いた事もないような本を眉間に皺をよせて読書をしていたキヨミ。 待ち合わせの時間を一応の目安程度にしか考えず、 酷い時には6時間以上も私を待たせたキヨミ(8時間12分34秒、というのが私の最長記録だった)。 よくキヨミは「生まれてくるべきじゃなかったのよ。私も、あなたも」と言った。 その度に私は「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないわね」と言って 軽く受け流していたが、酷い生理痛に悩まされているような時は何も言わなかった。 そういう意味では、彼女は本来の居場所に戻ったのかもしれない。 キヨミの葬式に出席した私は、演技であることを悟られぬよう注意しながら泣いた。 ●「唇」「秋」「学生」でお願いします●
燃える秋の夕暮れに亜紀子は公園へ向かう。 ベンチで待つ男は亜紀子を見つけて笑顔で迎える。 抱えていたのは紅い花束。 「本当にすまなかった。もうしない」 男は頭を下げて亜紀子に花束を渡す。 亜紀子は渋い顔で花束を受け取る。 この男が学生と隠れて付き合っていたのがばれたのだ。 偶然入ったカフェで鉢合わせ。 亜紀子の脳裏にいろんなシーンが巡る。 亜紀子は口紅を引いた唇を軽く噛む。 紅い花束を空へ放り投げる。 空中で舞った花をふたりはただ見とれる。 次は「空港」「モノクロ」「言葉」で。
611 :
「空港」「モノクロ」「言葉」 :02/09/15 23:37
今日の目覚めは最悪だった。頭が割れるようにいたい。 私は、夢の中のあのぼんやりとした影を頭の隅に追いやりながら、ベッドから這い出した。 当時の私は人一倍の意地っ張りだった。今から考えると本当に若かったと思う。そして馬鹿だった。 私は洗面所の前に立って鏡を覗き込む。若い頃は自慢だった肌も今は悲しく荒れていた。 何であの時、私はあの言葉が言えなかったんだろう。 私が昨晩、偶然見つけてしまったモノクロ写真。笑っている私と亮。 幸せだったあの日はもう取り戻せない。 別れてから5年して、私は空港で亮を見かけた。小柄でかわいい女の人と2才くらいの男の子を連れた彼を。 その時初めて、私は失ったものの大きさに気が付いた。 …そろそろ出社の時間だ。 外は秋晴れだった。東の方に少しだけ、秋の魚が泳いでいた。 私はその空に向かってつぶやく。 「ごめんね」 彼は今でもあの空の上でかわいい奥さんと愛する子供と笑っているんだろうか…。 今日は彼と彼の家族の命日だった。
お題を忘れてました。 次は「ババロア」「乾電池」「熊」でお願いします。
「ババロア」「乾電池」「熊」〜あるいはミッシングリンク〜 その日、名探偵皇太郎とその友の警部補は豪勢なフルコースを賞味していた。も ちろんそれは捜査のためである。華僑の経営するこの高級中華料理店で密輸が行な われているという密告を受け、個人的に捜査を進めているのだった。 いわゆる日常の話題にとぼしい二人の会話は、自然と最近のホームレス連続殺人 事件にうつっていった。殺されたとされるホームレスは六人。 死因は失血死がほとんどで、どれも死体の体の一部が持ち去られていた。被害者 の姿形、性別年齢に共通する部分は見つからなかった。ある者は重度のアルコール 依存症者であり、またある者は肺が黒く染まるほどのヘビースモーカー。他の者も エイズの街娼や薬物中毒者、熊のように毛で体を覆われた男、乾電池や体温計を飲 み込む大道芸で生計をたてていた通称水銀男。 「失われた関係、ミッシングリンクですか。逆に考えればどうでしょう。被害者以 外に共通点があるのだと。他の被害者は、死体を利用されたので見つからないの です。被害者はほとんどが不健康。だから血抜きはされても合格せず、食べられ なかった。熊男も臓器移植等ならともかく、食用には不向きですね」 警部補は思わず猿の脳味噌と称する、手元のババロアのような物に目をやった。 マンネリ化はいかんともしがたし。次なるは「ロボット」「勝利」「信者」
614 :
「ロボット」「勝利」「信者」 :02/09/16 06:40
医療用ロボット、アビス。開発、製作に十年以上を要したその結果が、今目の前で、ようやく結ばれようとしていた。 私は深く座り込んだ椅子に背をもたれ、コーヒーをすすりこむ。一晩の徹夜が、体の芯に鉛を流し込んだかのような重みを感じさせる。 十年。ただただ一心不乱に、開発にだけ人生を費やした。ほかの事は何も見えない。結婚もしていない。信仰のようなものだろう、盲目にただ完成することを信じ続ける、信者。 今日の午後がセット、アップ・・・そして実験起動だ。まだ夜明け前、時間はあるがだが徹夜明けですら、緊張と興奮で眠れそうもない。 当然だろう。さまざまな苦難があった。不景気に、開発がストップさせられそうになったこともある。 その全てに勝利し、アビスは完成の目を見た。繊細な手術様式を展開し、決してミスなどすることのないロボット。 研究所内に少しづつ、ざわめきが聞こえてくる。所員たちが登所してきたのだろう。 眠れそうもない、だが眠っておかなければ。 私はゆっくりと目を閉じ、外の喧騒に耳を傾けた。
次は「留守番」「意外」「嬉しい」で。
616 :
◆0S/YG2ds :02/09/16 07:03
卒業式に完成したそのロボットは、加奈と名付けた。 ロボコンに出す予定だったんだけど、参加申し込みの締め切りギリギリで バグが見つかり、その年の参加は見送られた。在校生には、来年こそ 初勝利を、という言葉を残した。本当は別れの言葉を用意しておいたの だけれど、涙がノドに詰まってうまく読めそうになかったから、 スピーチ用紙は制服のポケットに入れっぱなしのまま。 後輩から餞別がわりに送られた加奈を持って、僕は校門を出た。 通学としては最後に乗り込むバスがやってきたとき、「先輩」と声がした。 見ると、長い影が僕へとのびている。 (信者か……) 我が校では後輩を信者と呼ぶ。 「先輩、そのロボット、思い出にくれますか?」 僕は一瞬迷ったけれど、結局あげることにした。 「大事にしてくれよ」 彼女は加奈を受け取ると、頭を下げ、校門のほうへと走っていった。 (そういえば、彼女の名前、真奈だったな……。やっぱり、カナは マナといっしょが似合うのか) 僕はひとり微笑しながら、つぎのバスを待った。 ※嫌なオチだな(ニガワラ
617 :
◆0S/YG2ds :02/09/16 07:06
あ、お題が出るまえに書いてたので、ゴメソ。 引き続き、「留守番」「意外」「嬉しい」で、おながいします。
618 :
◆0S/YG2ds :02/09/16 07:13
>(信者か……) >我が校では後輩を信者と呼ぶ。 スマソ、訂正 我が校では → 我が「部」では
真夜中突然電話が鳴りだす。 誰もいない部屋のなか留守番電話が廻りはじめる。 昏い部屋に響いていたのは別れたはずの男の声。 短く言葉を切ったあと意外なほど早く電話は切れる。 蒼い静寂が空気を染める。 わたしは夜のクラブで踊りつづける。 携帯電話で彼からの着信を待っても鳴らない。 本当は逢いたくてたまらないのに。 世の中に嬉しいことなんていっぱいあるのに。 踊り疲れてわたしはカウンターでカクテルを一杯飲む。 横に座る笑顔の爽やかな男が話しかけてくる。 もういいや。 さびしいわけではないけれど。 わたしも笑って答える。 次のお題は「いちょう」「朝」「音楽」でお願いします。
620 :
いちょう 朝 音楽 :02/09/16 11:55
イチョウの木から銀杏の香りが、風にのって流れてくる頃には、自室の窓からうっすらと 朝日が射し込んでいた。鼻を刺激する独特の匂いに、しかし私は昔のように毒づくこともない。 パソコンから流れる音楽を切り、大きく背伸びをする。 この山奥にある別荘を、別荘として使わなくなって早5年。海のように永遠と続く不況の波は、 まだ以前のような立派なマイホームに私を帰してはくれない。 窓からはらりと扇形の葉が吸いこまれるようにはいってきた。この落葉樹も、その名の通りの 変化を余儀なくされる季節がやってきたようだ。 「変化、か・・・」 そう、私は変化が欲しい。この生きるために苦しむだけの生活に。多くは望まない。 あの頃に戻してくれるだけでいいのに・・・。 思いにふけ、何度目かの溜息をつく。なにを言おうが、結局は努力なしでは報われないのだ。 全てを受けとめ、この大自然の中群雄割拠の世の中に名のりをあげる事。望む変化は 後からついてくるだろう。私は決意をあらたに、窓の外のイチョウの木に向かって宣言した。 「いっちょう、がんばるか」 とりあえず、秋のはじまりは真冬の真っ只中に変化した。 次は「眠い」「鬱」「不安」で。
621 :
ジェシー ◆JVR33wN6 :02/09/16 12:32
<眠い・鬱・不安> おれは医者から帰ってくると、すぐに薬を飲んだ。30分も経つと、 いつもの薬の副作用で眠くなってきた。鬱病で、不安神経症。 それがおれの病名だ。ソファーに横になると、まどろみのなかに ゆっくりと吸い込まれていった。 ……しばらくすると、これもいつものように目が覚める。 「ヤッホー、ランラランララン♪」。おれはあまりの爽快さに、 ソファーの上でピョンピョンはねながら踊りまくった。 ……おれは躁鬱病でもあるのだ。やれやれ。 次は <霧雨・腕時計・スパゲティー> でどーぞ。
霧雨・腕時計・スパゲティー 僕は昼食に食べようと思ったスパゲティーを温めながら、 昨日から読んでいる小説の続きを読んでいた。 気づくと小説に集中してしまい、とっくに茹で時間は過ぎていた。 僕は腕時計を見ながら少しだけ沈み、スパゲティーをざるに移した。 もし外が晴れていたら、ベランダにでも出て食べるつもりだったが、 あいにく今日は、うやむやな感じでもっとも嫌いな霧雨が降ってる。 僕は小説を読みながら、ミートソースを絡めたパスタを平らげた。 携帯電話にメールが届いた。仕事だ。 どうやらこの霧雨の中、また誰かを殺さなければいけないようだ。 僕はなんの感情もなく、スーツに着替えて、相棒を肩に背負い外に出た。 お題は「サリー」「おでん」「お昼の鐘」
623 :
サリー・おでん・お昼の鐘 :02/09/16 13:16
河原にたどり着いた時、亜里砂の小さなため息が聞こえた。 二人で暮らし始めて二ヶ月、会話が続かなくなっている。 出会ったのは桜の散る季節だった。 互いに翼の片割れを見つけたかのように意気投合し、出会ったその日に肌を重ねた。 彼女は家を出、そのまま俺の部屋に転がり込んだ。 相性は良かったが、それだけだった。しだいに俺は彼女の存在に異物感を感じ始めた。 たぶん、彼女も同じだろう。 「サリー、昨夜のおでん、美味かったよ」 何を言ってるんだ、俺は……。 沈黙に耐えられずに無理矢理吐き出したのがまるわかりだ。 近くにある中学校の校舎が告げるお昼の鐘が、二人の若さを嘲笑っていた。
624 :
ジェシー ◆JVR33wN6 :02/09/16 13:17
>>622 さん、うまいなぁ。
「サリー」「おでん」「お昼の鐘」
近所の小学校からお昼の鐘が聞こえた。「おっ、もう12時か」
僕は昨夜の残り物のおでんを温め、昼飯を食うことにした。
何気なくテレビをつけると「魔法使いサリー」の再放送をやっていた。
「へんだな、こんな番組あったっけ?」。僕はテレビ番組を眺めて見た。
……が、な、ない! そんな番組はやってないのだ。
「おいおい、それ、おれのビデオだぜ」。オヤジがテレくさそうに言った。
なんだ、リモコンをまちがえちまったのか。
それにしてもオヤジ、ちょっと可愛い。
次はそうだな。
「金髪」「鉛筆」「始発」ってのはどう?
最後人称が変わってしまった。 次のお題は「メロディ」「酒」「焦燥感」
あ、かぶった。
627 :
機甲自転車 ◆iVaAp0V6 :02/09/16 13:28
投稿するぞ!投稿するぞ!おおいに投稿するぞ!
628 :
ジェシー ◆JVR33wN6 :02/09/16 13:34
「メロディ」「酒」「焦燥感」でいきます。 いつものバーで酒を飲んでいた。すると、懐かしいメロディーが 流れてくる。「誰の曲だろう?」おれはふとひとりごとをつぶやく。 とてもなつかしくて、切ないインストルメンタルだ。 何ていう曲だ? おれはイラつき、焦燥感にさいなまれる。 「マスター、これ、何て曲だっけ?」おれはがまんしきれず、訊いてみた。 「ああ、『およげタイ焼きくん』をジャズにアレンジした曲ですよ」。 ……そうか、懐かしいわけだ。 初心者でスマソ。。
629 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/16 13:44
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631 :
「金髪」「鉛筆」「始発」 :02/09/16 15:06
鉛筆を片手に時刻表のページを操り、それでいて私はちっともそれに集中していなかった。 旅行が趣味である私は、この夏も一人で京都に来ていた。 そしてそれは今日で終わりになるはずだった。 切符は既に買ってある。今日の夕方に京都発、深夜には東京に戻れるはずだった。 もう旅館を出なければ間に合わない。それなのに私は動こうとしない。 頭をかすめるのは、昨日観光中に出会った金髪碧眼の娘のことだった。 京都の街並みに対するその風情は、さながら水墨画に架かった虹のようであり、 奇妙にシニカルで、強く私の印象に残っていた。 いよいよ列車に間に合わない時刻になった。 (明日の始発で帰るか……) 私は時刻表を閉じた。 次は「鎖」「蒸気」「凹凸」
632 :
「鎖」「蒸気」「凹凸」 :02/09/16 16:05
優子は鏡のまえに立った。湯船から立ちのぼる蒸気は、確認したくとも直視できない事実を あいまいにしてくれる。 いまだ凹凸の少ない体に手を這わせ、昨日とおなじ感触にため息を漏らす。 いつになったら同級生とおなじに、いや、せめて中学生くらいの体になれるんだろう。 まるで体に巻きついた太い鎖に、成長を阻害されているかのようだった。 おもいきり胸をつきだしてみる。ふたたび、ため息がもれる。 いばった小学生など、相手にされるはずがなかった。 優子は鏡から目をそむけながら、用意したハート形のチョコレートは食べてしまおうと決めた。 次は「鍛治屋」「ミルクプリン」「情報」でお願いします。
633 :
ジェシー ◆JVR33wN6 :02/09/16 16:49
「鍛治屋」「ミルクプリン」「情報」 滅び行く職人芸……。地元の新聞社の情報では、この町で、 鍛冶屋はウチだけだった。おれは親父の後を継ぎ、 今日も真っ赤に焼けた鉄を叩いている。 汗にまみれている中、恋人の美奈子がやってきた。 「ねえ、ミルクプリン作ったの。食べて」 「ばかやろう、鍛冶屋はそんなヤワなもの、食わねえんだよ」 おれはテレ隠しに、思わずそう言ってしまった。 「そう、気に入らなかった?」美奈子は悲しそうな顔をする。 「ばかやろう、溶けちまうじゃねえかよ。早く冷蔵庫に入れとけ」 おれはそう言ってしまってから、心の中でつぶやいた。 「あいつ、おれがミルクプリン好きだって、知ってたんだなあ」 鉄を打つ腕に、思わず力が入る。 ……いやあ、ムズカシい。 次は「パイプ」「ヒゲ」「未亡人」でどうでしょう。
634 :
女子中高生とHな出会い :02/09/16 16:51
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636 :
「パイプ」「ヒゲ」「未亡人」 :02/09/16 18:33
喪服の未亡人ほど男を欲情させるものはない。 ならば、このうえなく女を燃えさせる男とは、いったいどんな男なのか。 浩司は努力家だった。この俳優が抱かれたい男ナンバーワンだと聞けば、 完璧に姿かたちをまねようとし、あの高価なコロンが隠れた人気だと聞けば、 貯金を叩いて個人輸入した。 だが、浩司の頭は人気俳優よりはるかに薄かったし、過剰なコロンには誰もが眉を寄せた。 筋肉トレーニングも、ヒーローのアクションも、モテるための基礎講座も…… 浩司は、無駄な努力家だった。 いまは口ヒゲをたくわえ、パイプをくわえている。シャーロック・ホームズのような男を 女が好むと聞いたからだ。 シャーロック・ホームズとエルキュール・ポワロを微妙にとりちがえていることに、 浩司はいまだ気づいていない。 「手毬歌」「かごめかごめ」「しゃかりき」でおねがいします。
637 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/16 22:57
隣の家に数日前新しい家族が越してきた。 両親と小学校低学年ぐらいの女の子で、一度挨拶回りに来たが、なかなか感じの良さそうな人たちだった。 その小さな女の子は、恥ずかしそうに父親の背中に顔を隠して、恐る恐る僕の顔を覗いていた。 子供嫌いの僕でもかわいらしいと思う子だったし、僕の遠い記憶の中のあの子に少し似ていた。 しかし三十路を過ぎた僕なんかには、その子と関わりなどある筈もなく、僕の生活は、再び日常の中に沈んでいった。 ところが昨日、隣の女の子がしゃかりきに毬つきをしているのを見て、僕の記憶が一気によみがえってきた。 あの日は桜がとてもきれいだったということを覚えている。あの子は突然転校してしまった。 手毬歌にあわせて小さなゴム毬をついて遊んだり、他の4,5人を加えてかごめかごめを一緒にした女の子。 僕の初恋の人。 何だか、懐かしさで胸がジーンとした。あの子は今元気なんだろうか。 夕日の中で毬つきをしているその子に、僕はあの女の子を重ね合わせていた。
お題を…。 次は「亀」「雲」「マウス」でお願いします。
1日1書こと
>>622 です。
感想スレで指摘されて気づいたのですが、お題の「サリー」は、
yahoo辞書検索より
サリー【(ヒンデイー) sa】
インド婦人の民族衣装。1 枚の長い布で,ペチコートと短い上衣の上から巻きつけて装う。
でした。すいません、固有名詞禁止だと書いてあるので、気づいてくれると思ってました。
紛らわしくてすいませんした。
それと、
>>624 さんお褒めの言葉素直にありがとです。暇なときに、作品読ませてもらいます。
それでは。
亀仙人が雲にのって亀ハウスに戻ってきた。 よく見ると、悟空もいっしょだ。 (でないと、雲から落ちてるよな) 「チチさんなら、眠ってますよ。老酒飲んで、ばったり」 僕はそういって、亀仙人からお土産を受け取った。 (バイアグラ……。まだ僕、若いのに) 「まったく、夫婦喧嘩はマウスも食わん、というが、やれやれ、 世界を救った悟空も奥さんには勝てぬか」 「じっちゃん、物知りだなぁ」 「ほっほっほっ! エロと屁理屈でワシに勝てるものはおらんがな」 「……」僕は黙ってドアを開けた。「チチさんを起こさないように、 静かに、静かに入ってください」 家のなかは、酔ったチチさんが暴れたおかげで、物が散乱。音を 立てずに室内を歩くほうが難しい。留守番していた僕は改めて、 命があるのが不思議だと思った。チチさんは、それこそ満月を見た 悟空より激しかった。 悟空と僕は、武空術でふわふわ浮きながら、チチさんのいる部屋に行った。 「ほれ、チチ、けえるぞ」 反応がない。 「瞬間移動で連れてくのがよさそうだな、雲だと揺れて、起こしちゃうよ」 「そうだな」悟空はそっとチチさんを持ち上げて、右手の人差し指を額に 当てた。「じゃあな、18号によろしく」 悟空が去ったあと、僕はクリリンさん墓参りに行こうと決めた。機械人間は 歳をとらない。第二の夫として不足がないように、バイアグラでも使って みるか。それがクリリンさんへの供養にもなりそうだし。 「亀仙人、悟空、帰りましたよ」 「えっ?」 亀仙人が鼻血を垂らしている。その一滴が、手に持った雑誌の見開きに 落ちた。やれやれ、歳をとらないのは18号とこの人だけだ。クリリン さん、こんな毎日ですが、僕は幸せです。
次のお題「帽子」「捨て犬」「情けない(状態・あるいは人物)」で、 おながいします。
訂正 § チチさんのいる部屋に行った。→ 部屋「へ向かった」。 § 僕はクリリンさん墓参りに → クリリンさん「の」墓参りに 連続スマソ。 夫婦ゲンカの原因は、「亀仙人といっしょにいた」をヒントに、 想像にお任せします。次のお題は 「帽子」「捨て犬」「情けない(状態・あるいは人物)」で、 おながいします。
643 :
帽子・捨て犬・情けない :02/09/17 09:41
「あなには想像力というものがない」と彼女は言った。 想像力、と僕は呟き、それから暫く彼女が言うところの想像力について考えた。 例えばいま僕が手に持っている何の変哲もないツバ付きの帽子、零細工場で働く パートのおばちゃんが生まれたばかりの孫に買い与えるおもちゃを何にしようかと 思案しながら型紙通りにパーツを切り取って作ったのかもしれない。 あるいは浪費家の亭主との別居を考えながらミシンで丁寧に縫い合わせたのかもしれない。 いや、もしかしたら夜な夜な徘徊を繰り返す情けない不良息子の処遇についてを 思い悩みながら瞼に涙をためつつ箱詰め作業に精を出していたのかもしれない。 まてまて、こんな風にも考えられる。 この帽子を作った者は身寄りもなく四畳一間の壊れかかったアパートに住んでいて つい最近拾ってきた生まれたばかりの捨て犬を大家に内緒で飼っているのかもしれない。 仕事が片付かない時はアパートに仕事を持ち帰ってきて犬の世話をしつつ 針に糸を通しているのかもしれない。悲壮感漂う光景だ。 「あなたには想像力というものがない」と彼女はもう一度言った。 彼女の言うことはもっともだ。僕は捨て犬と暮らしながら帽子を作る人のその後を想像できない。 ●「緑」「神社」「魚」でお願いします。●
644 :
緑・神社・魚 :02/09/17 11:16
愚かな人間と云うものは確かにいるようだ。 暇だからとてさる神社内を森林浴がてら散歩していると、彼方から場違いな二人組みが迫ってきた。 皮ジャンにサングラスの男とぎりぎりまで露出した赤色のワンピースを着る女。 周辺の緑に合わせて緑色の服を着るならまだしも、目のさめるような赤である。 胸の谷間に目を向ける世の青年男子をその色で追い払う如くの赤である。 二人の会話にそば耳立てていると、思わずあんぐりと口をあけてしまうことを女はのたまった。 「ねー仏さんってどこにいるのー?」 おいおい、ここは寺院ではない。神社だ。私は女の虚をつく発言に開いた口がふさがらなくなり、 通りかかったばあさんに口の中へ郵便物を投函されそうになった。 私は親切にも「おばあさん、ポストは私ではなくあちらですよ」と、 女のほうを指差すとばあさんはどぎつい赤い女の方へ向かい、手紙をその胸の谷間にさした。 ばあさんの突飛な行動に女は摩訶不思議なものをみたように驚愕し、男は罵声を浴びせた。 御老体に些かの哀れみをかんじはしたたが、私に非は無い。非はかの女にある。あの魚以下の愚者にある。 私もある種の被害者であるのだ。この国の教養の無さを垣間見、亡国の道を危ぶまざるを得ないのだ。 私が悲壮感にさいなまれる中、ばあさんはポストを探しに、又、さまよい出した。 #次は孤独・トンネル・カラオケで。
トンネルは音がよく響く。 だから廃トンネルでカラオケ店を開店した。 店の名は、そのものずばり、「トンネル」だ。 だが、トンネルがいらなくなるような土地がらだ。ヒトなどいない。 あっというまにどころか、当初から店は赤字。 俺は孤独をまぎらわせるべく、店の中で一人で歌い続けていた。 そして今、夜ごとトンネルに、客が訪れるようになってきた。 ついにTV局までも! 「みなさん、ここがあの有名なトンネルです。 あ! 何か聞こえてきました! 歌声です! ここで首を吊った男が、今夜も歌っているのでしょうか!」
次のお題は、これでお願いします。 「化粧板」「イグニッションキー」「青色申告」
俺には書けない……
>>647 とにかく感想スレに
テクニックを教えて貰えるかも
649 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/17 20:50
「化粧板」「イグニッションキー」「青色申告」 初めて書いてみました。 その部屋は古い木造アパートの二階にある黴くさい四畳半だ。隣に建った 学生向けワンルームマンションのせいで昼でも日が射すことはない。 室内はこれといった家具もなく、天井からぶら下がった裸電球の下には量販店 で買った安っぽいテーブルが置いてあるだけだ。男はメラミンの化粧版に 頬杖をつき、埃っぽい土壁に一枚だけ掛かったカレンダーを見る。三月。 来週は青色申告の準備をしなければならないだろう。早春の野山を撮影した 美しいカレンダーの写真を見るともなしに見ながら、わずかな還付金を 得るために自分の貧しい帳簿をまとめる算段を思いめぐらしていたが、 ふと時計を見る。午後八時三十五分。早すぎるだろうか。いや、遅すぎても いけない。急ぐほどではないが慌てることもない。アパートを出ると早春の 夜風が男の薄っぺらな上着をふわりと撫でた。その風は薄い桃色をしている ような気がした。もとより空気に色などついているわけがない。苦笑しつつ 駐車場へ急ぐ足取りが次第に軽くなり、あと半年のローンが残っている 中古の軽自動車に勢いよく乗り込むと、イグニッションキーを思いきり ひねった。 次は「馬」「らせん階段」「焦燥感」でお願いします。
「馬」「らせん階段」「焦燥感」 --- 荷を満載した馬は城壁搭の中のらせん階段を登っていた。 それは石造りの階段で真中は直径10メートルほどの丸い穴が開いていて、馬が登るのにある程度は、苦ではない仕掛だった。 「そらそら」 時々渋るように馬が先に進まなくなってしまうのを、馬追いがけしかけた。 丸い穴のところに手摺りはなく、落ちてしまえばひとたまりもない。 恐いのは馬追いも同じだ。今登っている馬は、彼のただ一つの財産だからだ。 八方手を尽くして、ようやく馬は再び登り出した。 馬にしてみれば、面倒な主人だということだろう。 それでも馬が従うのは、仕事が終わった後、馬追いは自分をいたわるようにやさしい目をするからだ。 「そらそら」 馬はそんな馬追いを想いつつ、階段を登っていった。 最上階には開け放した扉があり、そこには強面の兵士が荷の点検をしていた。 搭の最上階はぐるりと周囲が見渡せるようになっており、どう持ち上げたのか砲台が一つ据えられていた。 「何をしている、早くもってこないか! 敵は待ってくれんぞ!」 彼は焦燥感まるだしの声で威張り散らした。 「そらそら」 馬追いは荷を降ろすと、再びらせん階段を降りていった。 --- 次は「ソーセージ」「バッグ」「酒瓶」で
「馬」「らせん階段」「焦燥感」 馬鹿な俺は単にお洒落だから、という理由だけで家にらせん階段を取り付けた。 しかもトイレは換気がいいようにと、3階に一つだけ。 そして今、俺は猛烈な腹痛に苦しんでいる。 さっき食べたしめさばが良くなかったらしい。 一歩歩くだけで漏らしてしまいそうだ。 はたしてトイレまでもつのか? 焦燥感だけが、俺を支配していた。 次は「違うってば」「だから誤解だって」「彼女は友達だよ」です。 気に入らない場合は継続で。
「けーた、あたいのこと嫌いなの?」 部屋の隅で膝小僧を抱えて、 すんすんと鼻を詰まらせながら、つぶらな目を涙で滲ませている。 「違うってば」 ――今後のことを、耀子に相談しに行ったら、ゆきこを誤解させてしまったようだ。 だが、子供というのは妙なところで聡いものだ。 「彼女は友達だよ」 綺麗に切り揃えられた前髪をそっと撫でてやりながら呟く。 出会った頃よりも随分背が伸びたが、それでもまだ僕の腰ほどの背丈しかない。 ゆきこは、涙を一杯ため口を真一文字に結んで、こちらの目の奥をのぞきこむ。 甲斐性のないこの身には、その純真さがつらい。 「だから誤解だって」 「あたいだって!おとなになったら、よーこせんせいくらい綺麗になるもん!」 うん。僕もそう思うよ。だからホントは背伸びする必要なんてないのに。 可哀想だけど、誤解させたままにしておこう。この少女はあまりに幼なすぎる。 おとぎ話に秘められた真実を知らせるときではない。 ゆきこのおかげで、この残された幾ばくかの命にも意味があった。 親友の忘れ形見よ。最期はこう言って別れようと思う。『ありがとう』 --- ひさびさ。 「処方」「弁護」「盲目」
653 :
「処方」「弁護」「盲目」 :02/09/18 00:18
久しぶりに孫娘の夢亜が遊びに来た。 今年で14歳になるが、夢亜も今時の若い子と同じように、 茶髪でピアスをしている…らしい。 「らしい」と言うのは、私は盲目なのだ。 まだ私が今の夢亜と同じ14のとき、東京大空襲で母と家、 そしてこの視力を失った。 「ねぇ、おばあちゃん、私、明日友達とカラオケ行くんだけど、お金無いんだ。 5000円でいいからくれない?」 私は今の夢亜の表情はわからない。 しかし、その嫁に似たずるそうな顔が見える気がした。 そう言っても、孫がかわいくないはずが無い。 私はいつも身に着けている鞄をまさぐって、財布を出した。 「ありがとう」 またあの子のヒステリックな母親に弁解するのは大変だとため息をつきながら、 夢亜を見送った。 小さい頃はよく私の代わりに手紙を読んでくれたり、 薬の処方を読み上げてくれたいい子だったのに…。 私は自分の泥沼だった青春時代を思いながら、 もう一つだけ、大きなため息をついた。 次のお題は「朝焼け」「キッチン」「ホッチキス」でお願いします。
654 :
「朝焼け」「キッチン」「ホッチキス」 :02/09/18 02:09
「秋の大感謝祭60%引き!ホッチキスで止めた封筒の割引クーポンを…」
何の変哲もない広告だったが、この一行が波紋を巻き起こした。
その夜、広告主の店の会議室は、難かしい顔をした弁護士で一杯になった。
「せっかくで恐縮ですが、この広告は回収・訂正願いたい」
「な、なんやて?」
「「ホッチキス」は明治時代に登録された、れっきとした登録商標です」
http://www.great-teacher.jp/neta/stapler.htm 談判は何時間も続いた。
ついに朝焼けがさし、スズメがチュンチュン鳴きだす。
「なあ、別にあんた方の商標でもないのに、なんでここまで頑張るんや」
「訳は絶対言えません。こういう事はキチン、キッチンとしないと…
登録商標となると、これはもう固有名詞ですから」
店長は悩む。こんな事のために朝まで粘る、彼等の動機が分からない。
彼等の、必死な目。
まるで、この世界の存亡がかかっているかの様だった。
※マックスかイトーキか、忘れたー^^;
次のお題は:「地球儀」「花嫁」「砂漠」でお願いします。
「私…砂漠地帯に行きたいな。ねぇ、路望、砂漠はこっちでいいのよね」 若い女性…と言うよりもは、まだ少女と言った方が似合うだろうか。 その少女が路望と呼ばれる10歳くらいの少年に、地図を見ながら笑顔で話しかける。 少年は一瞬困ったような顔つきになり、次に皮肉めいた笑みを浮かべた。 「紫乃お嬢様は相変わらず方向音痴なんだから。地図、ちゃんと見てます?」 路望はつかつかと紫乃という少女に歩み寄り、少女の持っている地図に小さな指で目的地を指した。 「こっちに行くんですよ。ナビは僕に任せてください」 彼は、頭脳に今駆使できる科学のすべてをつぎ込んである最新型の人型ロボットだった。 「私だってできるわよ!でも…、今は路望に任せておこうかな?」 紫乃はしぶしぶ信頼できる召使いに地図とコンパスを渡す。 「でも紫乃お嬢様、本当にあれで良かったんですか?旦那様はきっとかんかんですよ」 「いいのよ、あれで。お父様が勝手に私を結婚させようとしたんだから。 私まだ16よ。花嫁になるにはまだ早いわ」 紫乃は路望の言葉に小さく肩を竦める。 しかし次の瞬間、紫乃は開き直ったように顔を上げ、まっすぐ前を見据えた。 「それに私、小さい頃から冒険家になりたかったの。 今まではお屋敷に縛り付けられた生活に耐えて来たけど、理屈じゃなくて、 この世界って地球儀みたいに本当に丸いのか自分の足で確かめたい」 路望は温かい目で紫乃を見つめて笑う。 「僕はお嬢様にどこまででもついて行きますよ。だからその決心、途中で投げ出さないで下さいね。 …お屋敷に戻ったら、お嬢様だけではなく、僕も旦那様に怒られるんですから」
656 :
655「地球儀」「花嫁」「砂漠」 :02/09/18 03:29
途中で送られてしましました…(−A−;) さっきの題名すみません。 まちがえたんです。 しかもやたらと長くてすみません。 次のお題は「歌舞伎」「カセット」「笛」でお願いします。
657 :
◆qh/TlzQY :02/09/18 05:55
俺の演目は終わろうとしていた。 アズミが遅れてもう四十分。客もいい加減ざわついている。まさか テープを流して誤魔化すわけにもいくまい。ホールの外では芸能記者たち がトグロを巻いている。まあ、一介の笛吹きでしかない俺にとってアズミの 評価など、どうでもいいことだが……。 舞台袖にアズミの母が見えた。俺は、気合が乗ったフリをして首を 回し、横目で彼女を見た。ケータイを耳に当て、眼鏡にまで唾(ツバ) を跳ばしている。銀縁の柄が光ったとき、俺はなぜか、最後に師匠と 会った夜を思い出した。 師匠は日本刀を、正座する俺の頬に衝(つ)きつけて、いった。 「ワシの音(ね)を越えられる、と思うか?」 「いずれは」俺は頬に絶対零度を感じた。「越えねばならないと」 何かが手の甲に落ちた。それは凍らずに落ちた、一滴だった。 「で、あるか」 凍りついたのは、師匠の声だった。俺は切られると覚悟した。目の 隅から刺してくる刀の光が消え、師匠は背を向けた。 「去れ」 「はい」 俺は立ち上がった。ひざが、まだ揺れている。 「アズミのために吹くと思うな。ただただ、音の先にあるものを 追いかけよ」 俺は師匠の背に最敬礼した。血が顎(アゴ)をつたい、畳へと落ちる。 俺は増えていく赤い点を見つめたまま、「行ってまいります」といった。
658 :
◆0S/YG2ds :02/09/18 06:00
翌日、師匠は死んだ。アズミのツアーに同行する前日だった。刀に ついた俺の血を、その首に混ぜるようにして、息絶えていたという。 伝統とは、こういうものなのだろう。 「大将の御着き!」 袖から声が漏れた。アズミは、共演者にだけ伝わるように、カーテンの 奥から深く、頭をさげた。俺は自分の演目を終えた。 公演がハね、楽屋のテレビをつけると、アズミが映っていた。 「今日の歌舞伎もダブルブッキングでしたが、説明してくださいよ!」 そういってマイクを突きつける芸能記者に、アズミは、 「狂言と歌舞伎の違いもわからぬ者に答える必要はない!」と突っぱね、 ハイヤーに乗り込んだ。 「アズミはマイク、俺はポン刀、背負うものは違えど、宿命だよな」 俺は頬を撫(な)でた。傷を指で擦ると、師匠の音が聞こえた気がした。 §§ トリップの跡にお題入れたら、違うトリップに(w; 長くて、スマソ。 ルビは(カッコ)内に記しました。 次のお題は、「癖(くせ)」「カメラ」「長いお別れ」で、 お願いします。
659 :
◆0S/YG2ds :02/09/18 06:08
ごめんなさい。訂正です。 >俺は増えていく赤い点を見つめたまま、 → 見つめ「ながら」、 省略されて見づらいので、次のお題を再掲します。 「癖(くせ)」「カメラ」「長いお別れ」で、お願いします。
↑わざわざ訂正を書き込む必要はないと思うよ
661 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/18 20:03
★「癖(くせ)」「カメラ」「長いお別れ」 「会えてうれしかったよ。ただし短い間だがな」 「何それ。レイモンド・チャンドラー?」 「『長いお別れ』か。そういえばそんな科白があったな」 「・・・ねえ、あたしたち、本当に終わってしまうの」 そう言って彼女はふいに立ち上がり、窓越しに外を眺めるふりをしながら 背中を向けた。水気を含んだような、どんよりとした雲が空を覆っている。 しきりに髪の毛をいじっているのは、途方に暮れたときの彼女の癖だ。 「ねえ、どうして・・・」 「カメラだ」 「え?」 今この時を、心というカメラで写し、セピア色の写真を永久に記憶という 倉庫にしまっておこう。二人で過ごした日々は、遠い地平線の彼方にいても 輝きを失うことなく・・・ そう言いかけて、俺はあまりのクサさに我ながら 恥ずかしくなってブッと屁をこいた。 次は「ろくでなし」「モーツァルト」「宇宙」
あっ!固有名詞はダメダメ〜だったね。 次は「ろくでなし」「ジュース」「宇宙」でお願いします。
とんでもない間違いがありました。 14行目の「弁解」は「弁護」の間違いです。 すみません。 しかし、お題の部分を間違えるなんて…。
664 :
「ろくでなし」「ジュース」「宇宙」 :02/09/19 02:03
私は娼婦、寂れた店の売れない娼婦である。 けどよアンタ、そりゃ10年も前のこの国が神武だ天武だ? 金だ金だと騒いでいたときゃぁリーマン様の乾いた体を 少しでも癒してやろうとこの仕事に体にチョットは職人魂を持っていたものである。 憂いながらも客は来る、今日は何やら気の小さそうな男だ 「こんばんわお兄さん、こんな所初めて?」 この質問に男は顔を赤らめて『初めてです』と答えた、私の長年の感から行けば コイツは女の味を知らないだろう。こんな所で筆を下ろそうなんてまぁ・・・。 気だるさを抑えつつジュースを飲んでいると男は 『あ、アソコを見せて下さい。それで満足です』ときたもんだ あんたね〜と思ったがまぁ良い見せるだけで済むならそれに越した事は無い。 大股を開くと男は股間にしがみ付いて来た。 『これがこうなって・・・あぁそうなのか・・・まるで小宇宙』 ははは、私のアソコは宇宙かい?このろくでなしに体操な表現してくれるなんて 嬉しいじゃないか。 久しぶりに真面目にやってやろうじゃないか アンタ今日はこの宇宙を心行くまで味あわせてやるよ。 次のお題は「粘土」「孫」「空の缶」でおねがいします
665 :
「ろくでなし」「ジュース」「宇宙」 :02/09/19 02:08
ある村に、近所の誰もが認めるろくでなし男がいた。 しかし、その村の人々は誰も男の権力に逆らえず、金や土地を取られては嘆いていた。 ある日、男は隣村からも欲しい物を奪った。それは一匹の子猫だった。 男は子猫の可愛さに心を奪われて家に連れ帰るが、食事もろくに与えず、 子猫を眺めては自分だけ、近所から盗んだパンやジュースで腹を満たしていた。 次第に、子猫が衰弱して以前の輝きが無くなると、男は興味を失った。 ある朝、老夫婦が男の家の前へやってきた。『ウチのネコが、こ、こちらへ・・・』 玄関越しに聞こえる老夫婦の、声にならない嗚咽に流石の男も胸を痛めた。 ふと部屋を見渡すと、痩せ衰えた子猫が醜い形相で死んでいた。 『あんな可愛かった子猫が』 あんなに可愛かった子猫は、もう宇宙を探しても見つからないんだな。 そう悟ると、男は大声で老夫婦に謝り乍首を吊った。
666 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/19 02:08
かきました。 カメラの癖に、長いお別れだったな。
遅かったです。 次のお題は664さんの「粘土」「孫」「空の缶」で。
アパートの階段を昇りきると、B神社が見える。僕は幸子が帰ってくるまで、 階段に腰掛けて待つことにした。風が冷たい。空を見上げると、飛行機雲が形を 変えずに流れている。時が止まっているようだ。 境内の裏からアラレがこぼれるようにして、七五三参りに来た家族連れが出てきた。 アラレだと思ったのは、赤い着物を着た子供たちだった。顔がはっきりと見える距離では なかったが、女の子が二人だというのはわかる。ひとりは赤、もうひとりは藍の着物を羽織り、 鳩の群れを追い立てている。親を見ると、見事な白髪だ。もしかしたら、孫の付き添いかも しれない。 「あ、待った?」幸子が階段をあがってきた。 僕は、幸子のヒザについた汚れに気づいた。「シミになるよ」 「いいのよ、どうせ作業用なんだから?」 「そのうち粘土で型が取れるぜ、そのスカート」 「それもいいかも。朝倉文夫みたいで」 僕は立ち上がって、幸子を通した。ふたたび神社を見ると、家族連れはいなく なっていた。鳩たちだけが相変らず忙しい。それは動く碁石だった。 「ねえ、何かいいタイトル考えて」 幸子がカバンから一枚の写真を取り出して、見せた。 「なんだ、部屋の鍵を探してたのじゃないのか?」 僕はそれを受け取った。写真には、七部出来の原型が写っている。原型は、 粘土色をしたピザ生地を連想させた。「そうだな、『空の感』なんて、どうだ?」 「悪くないわね」幸子はやっと部屋の鍵を見つけた。 空を見上げると、飛行機雲は残っていなかった。
次のお題は、「カー消し(ゴム)」「砂金」「霊」で、お願いします。 砂金掘りをしていたら、霊に取り憑かれ、霊感のままに掘ってみたら カー消しが出てきた。というのは、NGとします。 もう訂正は、気づいてもしません。w
訂正はしないけど、このカキコフォーム(っていうの?)に そのまま文字打つと、改行の感じがつかめないね。 あ、ゴメソ、やっぱ訂正させて! 「空の感」になってる。変換ミス 「空の缶」ですた。では、 「カー消し(ゴム)」「砂金」「霊」で、どうぞ。
鬱だ! 文脈がワケ分からなくなるので、ラスト訂正。本当に連続ごめんなさい。 >「いいのよ、どうせ作業用なんだから?」 の「?」マークいりません。読んでて、「ワケワカラン」と思われた方、ゴメソ。 え? 誰も読まねーよ? だろうなぁ……。こんな訂正ばかりしてちゃあな。
↑別の場所(例えばメモ帳とか)に一旦書いて、それをコピペすれば? おいらはそうやってるよ。
引越しに伴って押入れを整理していた時、僕は錆びに塗れた古い菓子缶を見つけた。 一辺が20センチ程の正方形の箱には、子供の頃必死になって集めた玩具が 雑然と詰め込まれていた。ビニール製のアニメキャラクターの人形やスーパーカー消しゴム、 修学旅行で買った砂金入りのお守りやビー玉といったものだ。 僕は懐かしく思いながらそれらをひとつひとつ手にとり、しげしげと眺め、そして元に戻した。 過去があり、今がある。当然のことだ。 僕は金属製の缶をダンボ―ルにしまい、再び引越しの準備を再開した。 押入れを整理する作業というのは過去を掘り返すことに他ならない。 良い過去もあるし、悪い過去もある。思い出したくもない過去から、腹が立つ過去もある。 いろいろな過去があるが、例外なく一本の線が真っ直ぐと伸び、現在の僕に辿り着く。 ふと、部屋のドアを開ける音と共に「ちょっと、何これ!」という声がした。 妹だ。僕は妹に微笑みかけた。 「お母さーん、お兄ちゃんの部屋が荒らされてるよ!」 そう言って妹は足早に僕の部屋を後にした。僕は妹に向かって何度も呼びかけたのだが、 もはや霊と化した僕の声は届かなかった。 ●「生クリーム」「左利き」「スニーカー」でお願いします●
674 :
「カー消し(ゴム)」「砂金」「霊」 :02/09/19 11:02
「むむむっ!ここに宝がうまっておる!」 大げさに手を前に突き出した自称霊媒師は、庭先で叫んだ。 「掘るのだ!さすればこの館の霊は去り、ここに住むものに栄光をあたえるであろう!」 「ほらっ!先生がそうおっしゃってるんだ、新入り!」 先輩社員が俺にスコップを押し付けた。 俺は春の就職戦線におちこぼれ、コネのまたコネでこの不動産屋に中途採用で就職した。 コネのまたコネだから、どっちかっていうと猫の手よりかはましかなって具合な扱いだ。 「はい、はい」 俺ともう一人、新入り仲間の岡本とで、硬い土にスコップを入れる。 「粘土質だなー結構硬い」 「お宝って砂金とか袋に入ってるとかかな?」 ちょっと期待をこめた台詞を、岡本が俺にささやいた。 「いや、それはないんじゃないの?新興住宅地だろここ」 さっきから霊能力者先生の大声に、近所の人たちが壁越し顔を覗かせていた。 「そいや、子供の頃さータイムマシン〜とかいって庭に瓶とかうめなかった?」 「あーあったあった、俺はその時あつめてたカー消しとかいれてたな」 「そういうのがそのまんまでてきたら、それはそれでお宝かも? ほらナツカシ物ぶーむっていうかあるじゃん」 「うーん、あれはゴムだからなー」 その時、力任せに差し込んだスコップの先が、こつんと何かに当たった。 お題は「明け方」「魚」「岩」でいかがでしょ?
あ、すいませんダブっちゃいました673さんのお題でどうぞ。
676 :
「生クリーム」「左利き」「スニーカー」 :02/09/19 20:02
いきなり世界が光の洪水になった。 「いつまで寝てるの?」 カーテンを開け放しながら僕に向かって微笑んでいる彼女は、 縞のTシャツに白いコットンパンツという休日の服装だった。 洗い晒しのスニーカーを履いた小麦色の脚できびきびと ベッドに近づくと、僕の頬に軽くキスして、そのまま鏡 に向かって簡単な化粧を始める。左利きなのに器用で リズミカルなその動きを眺めながら、僕はすごく幸福な 気分になって、もう朝だというのに 生クリームの海を漂う不思議な夢のような感覚に陥るのだ。 次は「渦巻き」「麻」「悪趣味」
677 :
「渦巻き」「麻」「悪趣味」 :02/09/20 00:42
みんな、いつしか、彼女の事を忘れていた。 彼女は凄腕の秘書。どんな質問にも答え、重宝されたものだった。 しかし、知識がひとたび伝授されてしまうと…現実は残酷だった。 彼女は今、オフィスの端に押しやられている。 この一月、コピー以外何の仕事もこない。 例え、オフィスに悪趣味な壁紙が貼れても、夜中に麻雀を始めても、 忍耐強い彼女はじっと机で用事を待っている。 机上のクリップをいじくりながら、彼女は考える。 心配が悪い方向へ、悪い方向へと、ぐるぐる渦巻きを巻いてゆく。 「次に放り出されるのは自分かもしれない」と。 得意の手品で花束を出して、喝采を受けたあの頃… 手品で消えてしまいたくなる。 悪の組織の首領の様に、秘密の穴から脱出したくなる。 今日も冴子は、オフィスの端でじっと待っているのだ。 あなたがF1キーを押す、その時を。 ※イルカはあんな人気なのに(涙) 次のお題は:「ペット」「林檎」「ダンディ」でお願いします。
678 :
1日1書 ◆QaWqYmNw :02/09/20 01:22
「ペット」「林檎」「ダンディー」 「ダンディーさん、出番です」 僕は出演者である「ダンディー平塚」の部屋のドアを叩いた。 僕の仕事はADである。仕事始めてそろそろ一年が過ぎようとしていた。 1人暮らしの家にはペット、というよりも僕のパートナーであるハムスターの「マイケル」 がいるだけである。仕事に慣れてきた自分がいるのだが、同時の僕はあせりも感じていた。 果たして僕はいつ、このADの仕事から次のステップに上がれるのか?僕自身が書いた企画が、 気づけば敏腕プロデューサーの作品にされてしまったこともあり、一時は仕事をやめようと思った。 しかし、僕は夢のためにと我慢して仕事を続けてるが・・・・・・ そんなことを考えながら、「ダンディー平塚」の返事を待っていたのだが、 いつまでたっても彼は出てこない。僕は一言「失礼します」と断わりドアを開けた。 ドアを開けてみると僕にはかつて嗅ぎ慣れた匂いがした。血の匂いだ・・・・・・ 机の上には1つの林檎、そして机の向こうに、首から上がない、衣装を着た 「ダンディー平塚」と思しき人物の死体が。 どうやらまだ、「林檎殺人事件」の恐怖から僕は解放されてないようだ・・・・・・ ※お題は「テクノ」「工房」「最前線」で。 ていうか、なんとも謎まみれで中途半端な作品だ。
「テクノ」「工房」「最前線」 世の中には、最前線を生む場というものがある。 僕は、テクノDJとして、毎月二回第二と第三の火曜日にクラブで皿を回している。 ルミカを持った若者を、さながら工房で黙々と鉄を打つ職人のように、LPを選曲して空間を構築する。 スピーカーからは、重低音とシンセサイザーの音がまるで箱全体を、レイプするよに襲い掛かる。 ドラッグなんかじゃ味わえない快感だった。 ディスコからクラブへ。時代が変っても、若者が集まり音楽で狂喜乱舞する仕組みは変らない。 親から子へ、子から孫へ、そんなくだらない事を考えていると、吹き出してしまった。 今夜も僕はブースに立っている。 「火事」「ハードディスク」「蝿」
680 :
名無し物書き@推敲中? :02/09/20 02:59
「生クリーム」「左利き」「スニーカー」 僕は母さん手作りの生クリームがたっぷりのっかったプリンを食べ終えると、スニーカーを履いてコロシアムへと向かった。 「やあ、トム。どうやらおまえさんの相手は左利きの剣闘士らしいぜ。気を付けな」 やばいなあ、と僕は思った。左利きが相手だと攻撃も防御も剣でこなさなくてはならない。相手は右利きの相手など馴れているだろうから、どう考えても僕のほうが不利だ。 「頑張れよ」 同僚のマイクが僕を励ます。 「負けるもんか、負けるもんか、負けるもんか・・・」 母親と7人の兄弟たちを養うためにも僕はまだ死ぬわけには行かないのだ。 コロシアムに姿を現した僕に強い日差しと大歓声が降り注いだ。 次は「死闘」「決着」「次回予告」です。
あ、しまった。お題間違えてるし。
>>680 は無視してください・・・(恥
「火事」「ハードディスク」「蝿」 編集のK君は僕の家に来ることになっていた。僕は 間に合うだろうとタカをくくって、家を出た。フロッ ピーを切らしたのだ。ワープロ専用機で書いていると、 年に一度はこんな目にあう。 途中でK君とすれ違った。彼は、自分が買ってくる といったが、僕は自転車だからと彼に鍵を渡して、先 に一杯やっててくれといった。 フロッピーを買ったついでに、PCコーナーを見た。 僕は家電屋にいた。量販店に比べれば高いけれど、値 段は購買理由の決定的理由とはならない。 「お、先生、やっとパソコン買う気になった?」 僕は店主に首を振った。「まだあのルポ使ってるよ。 筆が、いや、指がノルんでね」 「いまの時代、珍しい」 「編集にもいわれるよ。作品をデータでやりとりでき るらしいから、便利だとは思う。でも、ハードディス クがなんたらインターネットがなんたら……。覚える の大変そう。なあ、食わず嫌いは認めるけどね」 店を出てから、近くのスーパーで刺身の詰め合わせ を買った。走ると、フロッピーと刺身パックが、籠の 中で跳ねる。すぐ食べるので中が崩れてもかまわない だろうと、そう思って角を曲がると、家が燃えている。 「火事ぃ!?」 僕は角を、曲りそこねた。ゴミ袋の山に自転車ごと 突っ込む。驚いた大量の蝿が舞い出てきた。まるで黒 火の粉だ。いまさらながら、パソコンならデータで送 れたのか、と、後悔した。
次のお題は 「時差ボケ」「サーフィン」「コーヒー」で、 お願いします。
スマソ 訂正どす。
なあ、食わず嫌いは認めるけどね」→「まあ」、食わず〜
黒火の粉だ → 黒「い」火の粉だ。
>>627 さん。どうもです。アドバイス通り、メモ帳で書くことにしました。
でも、ミスるんだよなぁ。w; 鬱
アーカイブ通り2159番地にあるバー『サーフィン』には、後ろめたい 職を持つものが夜な夜な集う。人身売買業者、覚醒剤精製工場社長、 核兵器ブローカーから玩具のコピー商品販売員まで、警察が涎を垂らしそうな 者達が薄暗い店内に寄り添う光景が広がる。 かく言う私も、彼らと同様アンダーグラウンドで生活している。 いつもの席(カウンターの左から二番目が私の指定席だ)に着くまでに、 顔見知りが顎をあげて挨拶をし、軽い会話を交わす。 「調子はどうだい?」と私。 「最近は本体よりパーツのほうが売れるね。腎臓だとか」と人身売買業者。 「痩せたんじゃないか?」と私。 「味見をしてたらこの体たらくさ」と覚醒剤精製工場社長。 「よう」私が席について店主にコーヒーを注文した時、隣に座っていた 核兵器ブローカーがこう言った。「仕事、しくじったんだって?」 「ああ。最近は地面よりも空にいる時間のほうが長いんだ。 時差ボケが治らないまま仕事にとりかかるから、失敗の連続さ」 忙しい殺し屋は世界を飛び回るビジネスマンのようなものだ。 ●「ジャム」「ネズミ」「柱時計」でお願いします●
>>◆0S/YG2ds いちいち訂正うざい ちゃんと推敲してから投稿しろ
687 :
「ジャム」「ネズミ」「柱時計」 :02/09/20 11:08
「ねぇ、聞いてくれる?うちの主人、浮気してるのよ」 「ええっ!どうして分かったの」 「簡単よ。前から怪しいと睨んでたんだけど、最近うちの 周りをチョロチョロ、ネズミみたいにかぎまわる女がいるから ピーンときて、逆にその女を尾行してやったのよ」 「あなたもなかなかやるわね。で、どんな女なの?」 「年の頃は三十過ぎてるわね。そのくせフリフリの服着ちゃって リボンなんか付けちゃって、ああこの女、きっと家に帰れば ジャムなんか手作りしてます、古い柱時計のあるカントリー風 インテリアのお部屋でメルヘンチックな生活エンジョイしてます、 て感じの、薄気味のわるい嫁き遅れだと思ったわ」 「そんなのが他人の亭主を横取りするわけ。見かけに寄らないわね。 で、どうなったの」 「女が部屋に入ったところを踏み込んで、アンタ一体どういう つもりなの!と怒鳴ってやったわよ。そしたら」 「そしたら」 「何か御用ですか?ときたもんよ。その声が妙に太くて、 変だと思ってよーく見たら、実は男だったのよ」 次のお題「強欲」「スプーン」「交差点」で
>>686 文句はいいから実際に即興で書いてみようね
>>688 即興で書いたらミスもするわと言いたいのか?
それは当然だが
>>686 はきっと訂正するまでもないことを訂正してんじゃねぇ
uzeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeといいたいのだと
それかコテハン嫌いか >>◆0S/YG2ds最近出張ってるし
ここがカミカゼイエローキャブが塵煙を上げるN.Yであろうと、そのバンはあまりに速く無謀だった。散々路上をかき回し直進を続けた車猪は、ついに赤信号を無視して交差点に進入した所を、 側方からタンクローリーに追突され力尽きた。 「早く発進させろ」助手席でエアバックに顔を埋めた男がわめく、やはりエアバックに邪魔されながらも手を動かしもがく女が叫ぶ「駄目っ、エンジンがかからないわ」二人は逃走者だった。 「ここまでか、せっかく現金輸送車を分捕ったのに」「走って逃げれるわね?怪我はない?警察は?」女がそう問い掛け目をやると、男は車体後部の金庫と運転席を隔てる扉の金具が緩んでい る部分に、スプーンを差込みこじ開けようとしていた。「なにやってるのよ!私は逃げるからね」「馬鹿が、金が無きゃ逃げたところでどうなる?野垂れ死にだ」飛び出していった女を尻目に、 男は脅し目的だった粗製銃を取り出し鉄の門番に止めを刺すと、男は扉を破り窓も無い秘密の宝物庫へ身を滑り込ませる。隠し男は笑みを浮かべながらケースを破壊し、冬眠前のげっ歯類のよ うに紙幣を服の中に詰め込む、抱えられるだけのケースを抱え金庫からでた男は窓の外を観察する。 思ったほど警官は少なかった、遠巻きに見ているだけだ。特に何かで濡れている当たりには 一人も姿が見えない。「逃げれそうだ、神様は俺についてるぜ、しかし臭い」次の瞬間、 ヘリやパトカーからTVに流されたカーチェイスショーを一番の特等席で体験していた男の視界に 突然の幕が下りた、赤黒い炎、耳を劈く轟音。 警官に取り押さえられ、油槽車から洩れ出た石油で焼き尽くされる男の車を眺める女の様を現場で、TVで 現場で凝視する無数の目。「大好きなお金のローブで天国に上れた彼は幸せだったのかも知れないわ、神様が強欲の大罪に呑まれた彼を歓迎してくれるかは知らないけど」後日の取材に答えた女の顔には安堵と哀れみさえ浮かんでいた。
*
>>690 の御題は「強欲」「スプーン」「交差点」で
*次の御題は継続で
>>627 は偽者です。他板で使ってるトリップはこれです。
>>691 お前の偽者なんて同でもいい
匿名掲示板なんだから自己顕示欲棄て書けよボケが
693 :
「強欲」「スプーン」「交差点」 :02/09/20 15:45
箸休めのシャーベットが運ばれてきた。メインディッシュに取りかかる 前にさわやかな洋ナシの香りで口中を洗うのだ。四季子のスプーンは優 雅な弧を描いて小さく濡れる唇に次々と運ばれていく。はかない淡雪が すっと四季子の中へ吸い込まれていくさまはまるで完璧な手品を見せら れているようだ。 光一はその見事なフォームに感動しながらも、つい先ほど平野町の交差 点で見せた四季子の一面を思い出さずにはおられなかった。 光一と四季子が並んで信号を待つ間、横断歩道の向こう側にいた中年女 が、落ちていた千円札を拾い、こっそりポケットにしまいこんだ。なん ということもなし、光一はその光景を眺めていた。女は卑しい笑いを口 元に浮かべていた。 その太った女を刺すように見つめ、四季子は確かにつぶやいたように思う。 「この強欲婆あ」 その直後中年女は倒れ、急死したのだ。通行人の1人が女の脈を取り、 死んでいると叫んでいた。あたりは騒然となった。倒れる人間を無視す る類の無表情な若者たちでさえ、突然の異変に興味半分で立ち止まって いる。目の前で人が死んだのだ。 それなのに、四季子は何食わぬ顔で光一の横に並び、ホテルのレストラ ンに向かおうとする。金縛りにあったように固まったまま光一は足だけ をかろうじて動かして四季子に従った。 「光一、あの女はやめておけ」 そう矢杉先輩は言っていたが……。 光一の胸は四季子への熱い想いと、粟立つような恐れが入り混じり、 この後の行動にどう歯止めをかけていいのか自分でもわからなくなっ ていた。 「光一さん、何を考えていらっしゃるの。四季子のこと?」 四季子の目がやさしそうに光一を覗き込む。黒く長い髪が風もないの に静かに揺れていた。 次のお題 「ドライフラワー」「足首」「紙切れ」でお願いします。
694 :
機甲自転車 ◆MrOd1JGM :02/09/20 17:08
>「ドライフラワー」「足首」「紙切れ」でお願いします。 「ドライフラワー向きの花をよこしてくれ」 封筒にこう書かれた紙切れが、前金にしても多すぎる程の紙幣と同封されていた。 花の種類や量に指定はなく、電話番号の類も書いてない。 「花屋の女主人がいい」とだけ書いてあるのだ。 私に配達させろという事だろう。早速、乾しても形がくずれにくい花を見繕って 配達車に積み、封筒の裏に書かれた住所に走らせた。 随分、大きな屋敷だった。門のカメラに向けて、将来の上客様に精一杯の笑顔で 到着を伝えた。「今、正面玄関を開ける」私はまもなく開いた門と正面扉をくぐり両手一杯 に花を抱えあがり込むと思わず顔をしかめた、信じられないほど乾燥しているのだ。 出迎える者はいない。こんな大邸宅に使用人もいないのだろうか。私はスピーカーの 主人らしきしわがれ声に言われるまま迷宮の奥深くに進む。外の湿気を入れない為か通りすぎた 3重の気密扉が閉まっていく。余りの乾燥に喉や目の粘膜が痛い。「その部屋が花室だ」 鉄製の扉が開かれた。お客様の花の趣味を知ろうと開けれないほど痛む目を開いた。 その部屋には確かにドライフラワーも置かれていたが、大きな人形達の方が主役といった感じだ。 奇麗に着飾ってあるなどんな品だろう?。近づいて見た人形は私の乾燥しきった唇を切る程叫ばせ、 喉からしわがれた悲鳴をあげさせた。浅黒く干からびた女のミイラと目が合ったのだ、 隣のは薫製らしい。私の心に身を切るような空っ風が吹き荒み、逃避に駆り立てる。 入った扉はすでに硬く閉められていたので、「展示品」を押し倒しすものかまわず、 無我夢中で乾物入れからの出口を探し、叫び、転倒した。床に堆積した乾燥剤に足首を 取られて抜けない。すでに紙切れの様になったしまった花と同じように、 涙も出ないほど水分を失い、苦しむ私の前に動く人形が現れた。 生身とは思えない程変質した肌の男は、硬直化し表情に乏しい顔を向けしわがれ声を発す。 「ようこそ我が花壇へ貴女のような艶花は永遠に値します」 次の御題も継続で
695 :
「ドライフラワー」「足首」「紙切れ」 :02/09/20 18:37
>「ドライフラワー」「足首」「紙切れ」でお願いします。 うさぴょんはまだ仕事みつからないの? 友達もいないみたいで可哀想だけど、いいかげんここ卒業したら? あなたの書いたもの読んだけど、あれは糞だよ。作文にもなってない。 自分が卒業した小学校の国語の先生に見せてみ。たぶん30点ももらえないと 思うから。結局君のやってる事はだね、世の中うまくいかない→その愚痴を聞いて くれる友達がいない→何か書く→評価されない→にちゃんねるでヴァカを 相手に頑張る→荒らされる。おまえはただのヴァッカバカのチューバッカ い い か げ ん 仕 事 s i r o 。 おまえはほんとキモイよ。なぜバラス?お前がただの引き蘢りという事を なぜ?グロテスクなおもちゃが勝手に壊れてどうするんだ? しかもカミングアウト後もなぜそんなにうれしそうにしゃしゃりでてるんだ? おまえはほんとバカだな。このスレはただの痰壷だ。 俺も今日ストレスがたまってるから、自分より確実に下にいるお前がいる このスレに痰をはきに来た。案の定お前はこのスレにいたからよかったけど 居なかったらイライラしたまま今日一日をすごさなければならなかったよ。 がんばってこれからも、せけんのストレスのはけ口になってろ。この糞が
696 :
名無し物書き@推敲中? :
02/09/20 18:43 うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね うさぴょん ◆Gyu73AVw は事故で死ね