第十五回「爆音」
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「それにしても」
辺りを見回す。デスクはどれも書類などで散らかっている。
パソコンの電源も点いたまま。カーソルキーが点滅している。妙だ。
「何で誰もいないんだ?」
「変ですねえ、必ず一人は誰かいるはずなのに」
そのときだった。突然、爆発音がしてビル全体が揺れた。
「なんだ!?」
「屋上からです!」
ヒトミ(犬)が駆け出した。りさと俺も後に続く。
ヘリの音が聞こえる。急いで階段を駆け上がり、扉を開けた。
「そんな……!」
転がる物体と、漂う死臭。よく見ればそれは、無残な死体の山だった。
「おかえり、ネオ。そしてりさ」
そこに立っていたのは、モーフィアス! 紫のスーツに黒いコートを纏った、スキンヘッドの男!
「どういうことなんですか、なんでこんなことに」
「どうしてお前がここに?」
「いやなに、心配になって戻ってきたんだよ」
「千尋はどうしたんだ?」
「ああ、千尋か、いやあ、どうもこうも……こういうことだっ!」
モーフィアスは両手に拳銃を構えると、俺達に向け撃った。
反射的に飛びのく。ヒトミ(犬)も間一髪で避けた。が、りさは銃弾をまともにくらってしまった。
「りさ!」 「ううっ……」 りさはその場に膝をつき、腹を押さえ倒れこんだ。
りさのもとに駆け寄る。
「しっかりしろ!」 「うう……あなた、どうして……?」
りさは枯れる声を、モーフィアスに投げかけた。
「モーフィアス……りさはお前の!」
「ふっ、そう、私の妻だ。しかし今はただの役立たずだ」
両手を挙げ、モーフィアスは言い放った。
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第十七話「跳躍」
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ビルの屋上。俺の手の甲に、りさの小さな手が覆い被さった。
「ネオ、短い間だったけど……ありがとう。ヒトミを頼み、ます」
徐々にりさの手から、力が抜けていった。
「キサマ……キサマァァッ!」
俺は走り出していた。しかし攻撃の間合いに到達する前に、モーフィアスは跳び上がった。
5メートル、いやもっと。常人には決して無理な跳躍力。しかし、ここが仮想世界というのなら、
「それも可能ッ!」
俺も、それにならい跳んだ。地面があっという間に離れ、そしてモーフィアスに追いつく。
「うらぁっ!」
蹴りを放つ。
「ふん」
俺の蹴りは片手で軽く受け止められ、カウンターにボディーブローをくらった。
「ぐぇっ」
そして脳天への強烈な一撃。俺の身体はふっ飛ばされ、屋上のコンクリートに叩きつけられた。
「ぐうぅ……くそっ」
なんとか体勢を立て直した。モーフィアスは、いったん着地すると今度は下へと跳んだ。
「待て!」
俺はビルの外壁を足がかりに跳びながら、下へ下へと降りていった。
銃を撃つ。しかし銃弾はいとも簡単に、弾かれてしまう。弾が切れたとき、とうとう地上に降りてきた。
道路のど真ん中で衝突音。モーフィアスは走ってくる車を片手で制止させたのだ。
「モーフィアス!」
俺はモーフィアスに近づき、突きを放った。しかしそのどれもが当らない。拳は虚しく風を切る。
「だいぶ成長したな。しかしまだまだ」
顔面へのストレート。目の前が真っ白になる。俺がひるんだところを、みぞおちに拳の連打。
「これで終わりだ!」
「ぐあぁっ!」
とどめの蹴り。俺の体は、そのままショーウインドへぶち込まれた。通行人の悲鳴が聞こえてくる。
俺はこのとき朦朧(もうろう)としながら、なぜだか分からないが、ヒトミがどこにいるか考えていた。
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>>137 強い主人公の視点で書くと、なかなか上手くいかないのです。
しかし、ネオはそのうち成長していくでしょう。たぶん。
第十八話「夢 その一」
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壊れたテレビのように、視界が乱れていく。指一本動かすことができない。
俺は死ぬのか。もしこの世界で逝ったら、それは現実世界での死。
あと何時間でくだばるかな。パリン、とガラスを踏む音がした。
いや、その前にモーフィアスにトドメを刺されるだろう。
「ネオ、大丈夫か?」
モーフィアスのではない、知らない声が俺を呼んだ。爺さんの声だった。
顔を拝みたいところだが、頭を上げることができない。
その誰かはガラスを踏みながら近づき、俺のポケットを弄(まさぐ)った。
(やめて。触らないで)
俺のポケットから女性用の下着が出てきた。千尋が寝ている隙に盗んだ宝物。
「……なんじゃコレは? けしからんな。コレはワシがもらっとく」
そして、またポケットを弄った。次に取り出したのは、りさからもらったゴーグルだった。
そのゴーグルを強引に頭に取り付けられた。そして5秒ほどして、今度はキーボードを叩く音。
何だってこんなときにパソコンなんかと、そこで俺の意識は途切れた。
(ここは……)
目が覚めた時、いやこれは夢だろうか? 俺は巨大倉庫の前に立っていた。
何かの工場のようだ。30メートルぐらいの煙突から、黒い煙が吐き出されている。
痛みは大分マシになっていた。何とか壁伝いに15mほど歩くと、小さな扉を見つけた。
勝手口らしい。鍵はかかっていなかった。
(中は暑いな……)
大型のプレス機やベルトコンベアがひしめきあっている。何を作っているのかは分からない。
(ん?)
ベルトコンベアの上に、一人の少女がちょこんと乗っている。体操座りでじっとしたまま。
「えっ……あの」
俺の勇気ある呼びかけには無反応で、ゆっくりと目の前を通り過ぎ、奥へと奥へと流れていった。
(行ってみるか)
ベルトコンベアに沿って歩いていくと、奥にまた扉を見つけた。ベルトコンベアはそこに続いている。
俺はゆっくりと扉を開けた。小さな書斎があった。
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第十九話「運命」
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目が覚めた時、僕は蒸し暑い部屋の中で汗だくになっていた。
「あれ? ここは?」
壁に変なポスターが張ってある。
何だろう。何かのアニメのポスター……綾波?
何のことはない、今までのことは全部夢。そしてここは俺の部屋。
「長い夢だったな」
そう呟いた。まだ寝ぼけているようだった。
「やっと起きたの?」
ふいに、扉が開いた。部屋に入ってきたのは千尋だった。
「うわっ、臭い! 何よこの部屋!」
俺は手を伸ばした。そして千尋を抱き寄せ、キスをした。
唇が離れ、しばし沈黙。
次の瞬間、俺は男の急所に喧嘩キックをくらった。
「このブタ! 何しやがる!」
その場に倒れこむ。
「うひぃ〜、うひぃ〜」
悲鳴にもならない叫びにも似た豚の物真似。僕の得意技。
千尋はそのまま部屋を出ていった。
「どうなっているんだぁ〜、千尋は俺の彼女じゃないのか〜」
あの売女、公衆便所のくせに……許さん許さん許さん……
次の日。俺は麦茶に睡眠薬を入れ、千尋に飲ませることに成功した。
無抵抗の千尋。俺はそっと彼女のキャミソールを脱がせた。
彼女の肌が露になる。
夏はまだまだ終わりそうにない。
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143 :
名無し物書き@推敲中?:04/05/29 21:35
Neoには文才がある。
テス
「サンダーボルト」(仮)
#1
ヒュゴォゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンン
(宇宙をとびまわる光景、幾億の琴線のごとく星々の光は流れていた)
今ではないいつか、ここではないどこかでこの物語は始まる
その時宇宙は新たな進化を遂げ、光と電気と電子情報の流れのみが存在する
デジタルな世界があった
やった、新連載だ!ネオさんがんばってください!
その世界では全ての人間が、時間や距離を超越し、
自由に行き来することが可能となっていた。