第三十回「無題」
「もうゾンビは出てこないようだな」
俺達の周辺は蹴散らしたゾンビの死体が散乱していた、酷い臭いが充満している。
ミサキは大丈夫だろうか?
「ミサキ・・・」
「・・・」
ミサキは言葉を失っていた、よほど怖かったのだろう、フォックスの事を見てはいるが
目の焦点があっていない様に見える。
「すっ、すごい」
「うん?」
「すごいよふぉっくすさん、すごいよ!」
どうやら俺の思っているのとまったく逆の心境らしい、俺の大立回りを見て『すごい!』だと?
「最初は怖かったけどまるでファンタジー映画の世界に迷い込んだみたい、アニメみたい」
瞳をキラキラさせて感銘をうけている、まったく最近の少女は精神が頑丈というかなんというか・・・
「フフフッ、ゾンビの死体がファンタジーだって? 心底変わってるわね、あんた」
ラグはゾンビの死体に刺さった投げ物類を回収している、結構財政難してるんだな。
「そうだなフフ」
つられて俺も笑った
「ウフフフ」
「クククク」
「アヒャヒャヒャヒャ」
緊張の糸が切れたか?
ガサッ
後ろの草叢から物音がした、同時に俺たちは弾かれた様に身構えた、
だがそれも徒労に終わる、草叢からでてきたの
はいかにも人畜無害そうな白ウサギだったのだから。
「なんだい野ウサギかい」
「ハハハハ」
「ウフフ」
「アヒャヒャヒャヒャ」
俺たちの間には奇妙なグルーヴ感が生まれていた。
205 :
Neo ◆GoP0V9Oo :02/07/17 14:59
第三十一回「疑惑」
「メイリン、敵を撃退した」
フォックスは再びサイコネットに接続しメイリンと通信した。
「すごいじゃないフォックス、私もさっきの戦いを見てたら興奮しちゃったわ」
メイリンの思考には熱がこもっていた。
「メイリン、実戦はプロレス中継じゃない命のやり取りだ、もしかしたら俺は死んでいたかもしれないんだぞ、
まあ、そんなヘマはしないがな、とにかく忘れるな、これは遊びではない」
「ごめんなさいフォックス、忘れていたわそんな緊張感なんて」
「それだ」
「え?」
「今の戦闘には緊張感がなかった、何故俺はあんな雑魚にスパイラルナイフを使ったんだ? あんな奴らなら
格闘攻撃だけで十分だったはずだ、何故俺はNAIFU能力を見せなければならなかったんだ」
「それは・・・」
メイリンは返す言葉がなかった。
「敵は弱すぎたし武装もしていなかった、ただタフなだけ、あきらかに何者かの
手によって仕組まれた戦闘だ、
たぶん俺を観察するために・・・」
「ちょっとまってフォックス、そんなの考えすぎよ」
「違う! 本当の敵はもっと離れた場所にいたんだ、衛星を使って探してくれ!」
「わかったわ、今から上に報告するわね」
「その必要はない」
突然だれかが会話に割り込んできた、この声は作戦司令部の・・・
「嶋課長!」
「君達の会話は初めから傍受していた、衛星を使っての敵捜索などする必要は無い、フォックスは
現在の任務をしろ」
「しかし課長」
「今は作戦行動中だ、『大佐』と呼べ」
大佐の理不尽なやりかたに二人はかなりムっとした。