1 :
名無し物書き@推敲中?:
登場人物:ジェイクラーム、息子ラムス、ジェイクの弟子カリューム・ネオン、
帝国所属アルニューム・ポレステル
ここは、田舎の何の変哲も無い村・・・人々は農業を営み外界との接触はほとんどなく
ごく平凡な生活をしている。唯一、平凡ではないところを挙げるとこの村では代々剣闘士を
育てている。最後のスキルを獲得したものが剣闘士の最高の称号「剣聖」となれる。
この世で一人しか存在しないと言われる「剣聖」この秘密をはるか東の地にあるアルドラード帝国が
つかんだ。人という生物は欲の塊である。特にこの国では支配欲が強い。他の地を制圧するために
剣聖が欲しいと言ったのだ。これに反対したサムジュモールの人々は戦いを挑んだ。
「お前たちには力を貸すことはできん!」
剣聖ジェイクの鋭い剣術が次々に帝国兵を捉える。瞬く間に帝国兵たちをなぎ倒していく。
「…ならば死あるのみ!」
帝国特攻部隊隊長アルニューム・ポレステルは自分の武器である黒い大きな塊でジェイクを捉えた。
パララララララララ・・・・・
軽い感じの音と共に鉄の塊がジェイクに向かっていった。これは銃という武器だ。恐らくまだ
ごく少数の者しか持っていない兵器だろう。しかしアルニュームの目の前では我が目を疑う出来事が
起きていた。普通の者であれば即死といえるダメージを負うはずがジェイクは傷ついていなかった。
いや、当たってもいなかった。剣を一振りした風圧で弾を撒き散らしたのである。
「スキル…風陣!!!!」
次々と放つ風で見事にかすり傷ひとつしなかった。
「ははは…すばらしいぞ、その力!それが、剣聖!それが剣聖のスキルか!」
淡々とに誉める言葉を発しながら冷静に大きな銃…グレイブキャニオンを構えた。
そして今度は単発で力強い弾を発射した。しかしまたも風陣で吹き飛ばされた。
「ふむ…」
やや間をあけた後、アルニュームは散弾銃のごとくグレイブキャニオンを撃ち出した!
無差別かと思われた弾だったがジェイクの弟子のカリウムの頬をかすめジェイクの息子の
ラムスの足元も捉えた。
(俺が一人で戦うことはできるがこいつらは危険だ…)
「ジェイク様!僕も支援します!」
カリュームが威勢よく言葉を発する。ちょうどその時…
ピィ〜!!!!!!
アルニュームは警戒しながら笛のような物を吹き帝国の陣営の方角に後ずさっていった。
アルニュームの使った帝国軍の合図で次々と帝国兵たちが押し寄せる!
(く…多勢に無勢…ここまでか…)
「いいか、よく聞けカリューム…この村はじきに帝国兵たちに占領されるだろう…お前は
今のうちにラムスを連れて逃げるんだ!」
「ジェイク様を残して行けません!一緒に行きましょう!」
「…今、あの銃を構えている帝国の奴に背を向けると間違い無く殺される…俺が奴を
食い止めている間にお前達は行け!」
「ならば僕も最後まで一緒に戦います!最後まで剣闘士としてこの場に!」
決意に満ちた目でジェイクをまっすぐ見ながらカリュームは叫んだ。
すると強い口調でジェイクはそれを制した。
「ならん!…お前なら立派な剣聖になれると信じている…いいか、正義の為に剣を振るうのだぞ…」
「ジェイク様…」
「なに…そう簡単にはくたばらんよ…ラムスを頼んだぞ…」
そう、言い残すとジェイクは帝国兵たちのほうに消えていった…
カリュームもラムスを抱え山を駆け登って林を突き抜けて行った。しばらくして銃声が聞こえたので
先程の場所を見るとたくさんの帝国兵たちがうっすらと見えた。
2 :
名無し物書き@推敲中?:02/03/19 13:23
2ゲットォ〜!
3 :
名無し物書き@推敲中?:02/03/19 13:24
なかなかなのでage
4 :
名無し物書き@推敲中?:02/03/19 13:26
行き場の無い作品の発表スレに行けや、つまらん。
あのね。ダメっぽいの。ダメな順にいうとね、
設定がマズー、文章がマズー、固有名詞がマズー
6 :
名無し物書き@推敲中?:02/03/19 14:02
うん、ダメ。がんばって消えてね!
7 :
名無し物書き@推敲中?:02/03/19 14:04
うっすら見えた。と思ったらただの夢でした。
---------終了----------
sage
9 :
名無し物書き@推敲中?:02/03/20 18:56
まさかNeoタンの新作じゃないよね?
10 :
名無し物書き@推敲中?:02/03/20 20:40
確かに、激しく影響を受けてるような気が・・・
11 :
名無し物書き@推敲中?:02/03/20 20:45
台詞多様し過ぎだろ。
白痴か?
12 :
名無し物書き@推敲中?:02/03/20 23:13
「トニオ・クレーゲル」トーマス・マン
敬愛する作家がこれで目覚めた、と言っていたから、読んでみた。
「風化」していた。
似たような、しかももっと気の利いたものがあるじゃん、梶井とか?
そう思った。
しかし、ミロやモンドリアンの抽象画を観て
「...これってカーテンの柄じゃん...」
とリアクションするのに似ていたかもしれない。
つまり、ネタ元はこっちだ、と。
13 :
名無し物書き@推敲中?:02/03/20 23:15
↑おもいっきしスレちがいスマソ
さて、と。
1にもありますが以下に主な設定をまとめておきます。
<地名>
・アルドラード帝国
遙か東にある帝国。以下「帝国」
・サムジュモール
剣闘士を育てている村。帝国によって滅ぼされた。
<人物>
・ジェイクラーム
最高の剣闘士「剣聖」にして渋いオヤジ。46歳。通常「ジェイク」と呼ばれる。
・ラムス
ジェイクの息子。とても無口でおとなしい。6歳。
・カリューム・ネオン
ジェイクの弟子。純朴な若者。16歳。
・アルニューム・ポレステル
帝国特攻部隊隊長。黒い頬髭をたくわえたいかつい男。銃器を主な武器とする。
鉄の胃袋を持つ36歳。ペットネームは「アル」
<その他>
風陣 :剣聖のスキルの一つ。銃弾を吹き飛ばすことができる。
グレイブキャニオン :口径の大きな銃器
11の人に文句を言われているので、「せりふ」を減らす方向で行きます。
でもある程度はせりふも必要なので、11のような人も我慢してください。
山一つ越えたところでカリュームはようやく歩調をゆるめた。
剣闘士としての修行を重ねてきたため体力には自信があったが
ラムスを背負っての一昼夜の強行軍はさすがに応えた。
(ここまで来ればひとまず危険はない)
その判断に根拠はない。だが、いずれにしてもこれ以上進むことは困難だ。
とにかくしばらく休んで、先のことはそれから考えよう。
カリュームの背から下ろされ、眠そうに目をこすっていたラムスが
思い出したように尋ねた。
「ここ、どこ?」
「多分、北の山を越えたところです」
カリュームの言葉にいつもの明るさはなかった。
なにしろ外界と交流のないサムジュモールで生まれ育ったカリュームである。
少し村を離れれば異世界も同然。最寄りの町がどの方向にあるのかも
見当がつきかねる。早い話が、彼らは迷子になったのである。
「とにかく今は休んでください。あまり眠っていないでしょう」
ラムスは黙ってその場に座り込んだ。眠る気分ではないと言いたげな表情だが、
カリュームにはそれ以上相手をしてやる余裕はない。
疲れ切った体を横たえるとカリュームはすぐに眠り込んでしまった。
寝覚めは最悪だった。
固い地面で眠ったためにこわばってしまった体をおそるおそる動かす・・・
とたんに鈍い痛みが全身を駆け抜けた。
「いてて…地面で眠るってのはひどいものだな。眠る前より、体が痛い……」
腰を伸ばすのも一苦労だ。
「うう、寒気がするな。体を冷やしたか…」
と、カリュームは重大なことに気がついた。ラムスの姿が見えない。
「ラムス様…?」
あわてて見回すが、ラムスの影も形もない。
「なんてことだ!ジェイク様にご子息を託されたというのに、僕は…」
文字通り頭を抱え、しばらくの間呆然とする。
ヒュゥゥゥ・・・
秋の冷たい風がカリュームをあざ笑うかのごとくに吹き抜ける。
(くそ!はやくラムス様を見つけなくては。食料もない。このままでは二人とも凍え死にだ!!)
ラムスがどこへ行ったか見当もつかないが、行動しなければ何も進展はしない。
カリュームは当てずっぽうに、これと思った方角に歩き出した。
やせた土壌のこの地域では植物もさほど生い茂ることがなく、森の中でもそれなりに見晴らしはきく。
カリュームはラムスの名前を呼びながらジグザグに移動した。
子供の足でそう遠くへ行くはずはないのですぐに見つかると期待していたのに、
いつまでたってもラムスの姿は見つからない。
(もう、ラムス様の身に何かが起きたとしか考えられない!)
カリュームは焦り、ますます当てずっぽうに歩き回ったが、
その足は無意識に山を下る方向へ向いていた。
しばらくするとカリュームは一条の煙を目にした。
「煙・・・人がいるのか?」
サムジュモールの外のことは時々話に聞いた程度の知識しかないが、
北の山を越えた辺りに一つ村があるはずだ。
日も傾き、炊事の煙が立ち上るには丁度良い時刻でもある。
だが村ならば煙が一つなのはおかしい。
駆け足気味にそちらへ向かったカリュームが見たのは、森の中にひっそりたたずむ一軒の家だった
カリュームが眠っている間、特に眠気を感じなかったラムスはただおとなしく座っていたのである。
しかしその胸のうちは平静とはほど遠いものだった。
蹂躙された村。父ジェイクの最後の姿。帝国から来た男の凶暴な笑い声。
それらが意識に住み着いてどっしりと根を下ろし、他のどんな考えも押しのけて迫ってきた。
それはまず恐怖であった。そして燃えるような怒りにかわり、ラムスの幼い心を焼いた。
悶々とした数時間が過ぎ、いつしかラムスの心に残るのは冷たい憎悪一つになっていた。
「そうだ、あのひとたちをころしてこよう」
ささやくように一人ごちて、ラムスは立ち上がった。
小さな足に冷静な決意を秘めて、ラムスはもと来た道を戻ってゆくのであった。
山育ちのラムスの足は速かった。山道では体の軽い子供の方が有利でもある。
カリュームが森の中の一軒家を見つけた頃、
ラムスは昨夜カリュームと越えた峠からサムジュモールを見下ろしていた。
村の建物は半分以上焼き払われて、まだ煙を上げているものもある。
いくつかは無傷で残っているらしい。帝国兵が使うために残したのだろう。
日暮れが近く、薄暗いのではっきりとは言えないが帝国兵はまだ村にいるようだ。
ラムスたちを追跡する気はなかったのだろう。
ラムスはすばやくそれらを確認し、まだ日の光があるうちに山を下った。
突然扉を激しく叩くものがあり、鍋をかき回していたナターシャは木べらを鍋に落としてしまった。
「あちゃー、やっちゃった」
ナターシャはどろどろのシチューに沈む木べらを拾おうともせず、
別のへらを取って平然とかき混ぜ続けた。
「こんにちは、だれか、いませんか」
再び扉を叩く音。
「しつこい。扉が傷むわ」
ナターシャは大げさに腹を立てながら戸口へ向かい、掛け金をはずした。
「すみません。道に迷ってしまって、えーと…」
若者はナターシャの鋭い視線にたじろいで言葉を詰まらせた。
艶のある栗色だがぼさぼさの髪。中途半端に灰色がかった眼。
甘くつけて70点、とナターシャは心の中で採点した。しかし退屈していたところでもある。
「あごの形に免じて、入ってもいいわ」
「はぁ?」
「くたびれきってるみたいね。眼の下にクマができてるわ」
「はい、いや、それよりも子供を捜してるんです。見かけませんでしたか、六歳の…」
「あなた子持ち? 六歳の? 見えないわ〜」
「まさか。師匠のお子さまで、訳あって預かっているだけです」
ナターシャはカリュームを椅子に座らせ、シチュー皿を出してやった。
「見てないけど、占ってあげようか。私わりと有名な占い師なんだけど知ってた?」
こんにちは。
占いに関して取材するためにしばらくオカ板へ潜っていましたが
結局どうでも良くなってきたので料理板へ逝きました。
カリュームは娘の問いに頭を振るしかなかった。
娘はナターシャと名乗ったが、有名どころかそんな変わった名前は聞いたことがない。
ナターシャもカリュームの名を聞いて「あなたの親ってユニークね」と顔をしかめた。
それでカリュームは早々にこの家を立ち去ろうと思ったのだが
ナターシャが自分の占いの的中率をまことしやかに語るので、とにかく占ってもらうことにした。
「言っときますけど、何もお礼できませんよ。持ち合わせはないので」
「ふふ、きにしないで。まっとうな仕事には自然と見合った報酬がかえってくるわ。
これは因果律と言ってね、占い術の基本原理でもあるの」
「はぁ…」
「とにかくちょっと落ち着いてシチューでも召し上がれ。…ちょっと煮込みが足りないけど」
「ぼくは急ぐんですけど……」
空腹と、ラムスを探さなければならない責任感に板挟みになったが、そこは若者である。
ナターシャが皿にシチューを注ぐと湯気と共に魚と玉葱とバターの重厚な香りが広がった。
(うまそうだ……)
「どうぞ。残念ながらワインがないから飲み物は水でいいわね」
「どうも…いただきます」
「パンはあるんだけど、カビてるからお客には出せないの。あなた、カビを食べた事ある?」
「……」
ナターシャの世間話はくだらなかったがシチューは旨かった。
カリュームは脈絡のないナターシャの言葉をなるべく無視しながらシチューを食べた。
24 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/20 16:27
1
食事に集中したおかげでシチュー皿はものの三分で空になった。
「ご馳走様。それで、良ければそろそろ占いをして欲しいんですけど」
「ずいぶんがっついて食べたわね。魚介類を珍しがってた様子だから、山の出身かしら。
長旅には見えないし、この辺ではサムジュモールしかないわね。あなた、剣闘士でしょう?」
「はぁ、まあ、そうですけど…?」
「噂じゃ、帝国と揉めたらしいわね。戦えるはずのあなたが着のみ着のまま逃げてきた
ということは全面衝突で村は全滅かしら?」
「…全滅とは思いません。剣聖であるジェイク様が残ったんですから」
「なるほど。足手まといになるから弟子と息子を遠ざけたのね」
「まあ、そうです」
「いつのまにかその子供が見あたらない、と」
「そうです。少し休んでいる間に居なくなっていた」
「ふうん…それは多分、まずいことになってるわ」
「いや、まずいのは分かってますよ。だから急いで探そうと…」
「違うわよ、馬鹿ね。その子は村に戻ったのよ」
「まさか!ラムス様だって危険なことは分かっているはず…」
「この辺りは見通しも良いし、地形もはっきりしてるから子供でもそうそう迷子にはならないわ。
6歳と言えば心の底から父親を尊敬する年頃よ。ひょっとして父親の様子を見るために村へ
帰ったんじゃないかしら。その子にしてみれば頼りない弟子よりも父親と一緒にいる方が安心でしょうしね」
「う…推測としては成り立つ…いや、ひょっとしてこれが占い…?」
「シチュー食べ方占いよ」
カリュームは急ぎ足でもと来た道を戻った。
ヒュゥゥゥ・・・
相変わらずの冷たい風がカリュームをあざ笑うかのごとくに吹き抜ける。
暖かいものを食べたおかげで体力は回復したが、本当にラムスが村へ向かったとすれば
今から追いかけたところで手遅れである。それを思うと不安は大きくなる一方だ。
(弱気になるな。ジェイク様を信じるんだ。数を頼んだ帝国兵たちに後れをとる方ではない!
たとえまだ戦闘が続いていたとしてもラムス様がまっすぐそこへ飛び込むものか…)
しかし、正直に言えばカリュームにはラムスの行動は予測できなかった。
ラムスは日頃から無口で、陰気ではないにしても他人にはあまり心を開かない性格だった。
カリュームが声をかけてもただ笑うか、無表情で首を傾げるくらいの反応しかなく、
会話らしいものは成立したことがなかった。
だからカリュームにはラムスが何を考えているのか見当もつかない。
ひょっとしてラムスは死ぬつもりで村へ帰ったのかもしれない。
帝国兵に蹂躙される村を見て絶望し、やけを起こしたという可能性も否定できない。
早くも夕闇が迫り、足下がおぼつかなくなってくる。空気に湿り気が混じる。
「まずいな。今夜は一雨来るか…?」
空には灰色の雲が渦巻いている。悪くすると嵐になるかもしれない
これでは月明かりも期待できない。
「あわてて飛び出したけど、ナターシャさんに灯りを借りるべきだったな…」
雨を避ける場所もないので野宿もできない。それはラムスも同じ事だろう。
体力のない子供が山の中で食料も無しにどれだけ生きられるだろうか。
状況は悪くなる一方に思える。やがて雨の最初の一粒がカリュームの頬をぬらした。
その夜、カリュームの予想通り、レスティラール島は記録的な豪雨に見舞われた。
島中で山は荒れ、橋は落ち、冬を前にして人々に大きな損害を与えていた。
山に囲まれたサムジュモールに土砂崩れなどの直接的な被害がなかったことは奇跡的だったが
皮肉にもその幸運を喜ぶ住民はすでに居なかった。
これ、一月以上やっているけどだれもつっこんでくれないんだよね。
やっぱりNeoさんやぽっぽさんは格が違うなあ……
村の中心にある寄合所は兵士たちの宿舎になっていた。
そこから少し離れた家に、帝国特攻部隊隊長アルニューム・ポレステルは居た。
アルニュームはこのサムジュモール制圧任務を自分から買って出たのである。
剣聖の力をほしがる皇帝の態度に不満を感じたからだ。
世界一の銃を持つアルドラード帝国に剣聖など無用。
アルニュームは自分の力で剣聖をねじ伏せ、そのことを証明したかった。
だが、実際に見た剣聖の力はアルニュームの想像を遙かに超えていた。
剣聖ジェイクは村人を守るというハンデを負いながら、二百の精鋭の半数を斬ってのけた。
戦いは帝国側の勝利に終わり、ジェイクが守ろうとした村人は全滅したが
一対一で戦えば自分に勝利はなかったかも知れない。いや、確実に負けていたはずだ。
(剣聖のスキルか…苛烈にして自在…俺の銃にはあれほどの力もスピードもない…)
翌朝、空は昨夜の嵐が嘘のように晴れ上がっていた。
予想以上の激戦と悪天候に疲労していた帝国兵たちも、穏やかな空模様に心を癒される思いだった。
しかし、さらなる不運が帝国兵たちをおそった。
朝食を食べた兵たちが次々に腹痛を訴え、倒れていく。
「どういう事だ!」
隊長アルニュームは炊事係を追求した。
「分かりません。材料に異常はなかったはずです」
激怒するアルニュームに炊事係はすくみ上がった。アルニュームは直感的に原因を理解した。
「そうか、水だな。住民どもが水瓶に毒を入れたのだ。」
瓶の水を一口飲んで確かめる。
「間違いない。毒草の汁が入っている。貴様、これを使ったのか!」
「は、はい…昨夜の雨で川が濁っていて…仕方なく…」
「当然それを見越していたのだ、馬鹿め!貴様は雑役に回れ。正式な処分は本国へ戻ってからだ」
アルニュームはそういって炊事場をでた。
「それにしても誇りある戦士の村かと思えば、下らぬ奴もいたのだな!」
特攻部隊の被害は大きかった。剣聖をはじめとする剣闘士たちの予想以上の抵抗と
この毒水騒ぎで、いまや部隊は三分の二以上の兵を失った事になる。
剣聖を捕獲する事もできず、部隊を壊滅させ、完全に面目を失ったアルニュームの怒りは大きい。
だがこれ以上の損害を恐れたアルニュームは、その怒りを抑えて村をでる決断をした。
怪我人や病人を抱えて村をでる帝国特攻部隊の姿は、村を蹂躙した征服者のイメージとは
ほど遠い惨めなものだった。
レスティラール島は山がちな地形で、地図上の大きさに比べて人間が活動できる地域は少ない。
実質的には沿岸の漁村や港町が島の中心であり、サムジュモールのような山間の小村は
そうした中心地域から山という障壁で隔てられた「島の中の島」である。
特にサムジュモールは、あまりに交通の便が悪いため中央の支配も届かず、
古くは日陰者の吹きだまりとして成立したという歴史がある。
近年では交通路の整備も少しずつ進み、状況は改善されたとはいえ、昨夜の嵐が
そうした長年の努力をすべて無に帰してしまっていた。
サムジュモールを出ようとする帝国兵たちは一時間もゆかないうちに、来たときにたどった道が
倒木や土砂崩れで完全に破壊されている事に気がついた。
最悪なのは渓谷に架かった釣り橋が落ちていた事である。
アルニュームの足下には切り立った崖が口を開き、その底では激流が逆巻いている。
「ふむ…これでは東に抜けるのは無理か」
アルニュームはサムジュモールへ引き返すしかなかった。
レスティラールの地図を見る限り、サムジュモールから外界へ出るにはこの山道しかない。
「ならば地元の者に聞くしかないだろうな」
35 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/27 20:50
36 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/29 20:08
とりあえずブレイブサーガとの違いを
解りやすく30文字以内で。
>36
大体同じですよ。
38 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/30 08:29
じゃ虎舞竜のロード12章との違いを。
>38
ちょっと難しくて分かりません。少しは似てるかも知れません…
「うう、かゆいな…」
カリュームは全身を駆けめぐる強烈な痒みで目覚めた。
カリュームはいつの間にかサムジュモールにほど近い放羊地に倒れていたのだ。
しばらく痒みを我慢して考えこみ、昨夜の記憶をたぐり寄せる。
「たしか嵐の中を歩いているうちにネブトカズラの茂みにつっこんで…」
それで全身がかぶれてしまったのか。かゆい筈だ…
さらに足を滑らせて谷間に転落。そこからの記憶はない。ああ、かゆい。
転げ落ちた谷が運良く村側だったのか。それにしても、どこをどう転げ落ちたのか
かゆみ以外に身体に支障がないのが驚異である。
「これも剣術の修行のたまものか…うああ、かゆいな、もう!」
「それにしても村はどうなったんだ?」
体中をかきむしり、こびりついた泥や木の葉を払い落としながら、村の様子をうかがった。
戦いの爪痕が生々しいが、帝国兵の姿は見あたらない。
「ジェイク様…」
カリュームはまなじりを決し、腰に下げた剣を確かめて、村の方へ下りていった。
41 :
名無し物書き@推敲中?:02/06/08 17:36
村は静かだった。家畜もあらかた逃げてしまったらしい。
「帝国兵は帰ったのか…」
じきに襲撃を逃れた村人たちも戻ってくるだろう。だが、肝心のラムスはどこか。
ジェイクの身も案じられる。カリュームは手がかりを求めて村中を探し回った。
ついでに悪いと思いながら、民家から食料をあさる。
ジェイクの家は焼き払われていた。寄合所には帝国兵たちが宿泊した痕跡があったが
どこを探してもラムスの姿はない。
「うっ…」
村はずれの納屋に足を踏み入れた瞬間、カリュームは吐き気を催した。
帝国兵たちは村人の遺体をすべてこの納屋に集めておいたらしい。
一様に血の気を失い不気味に白くなった顔。幾人かは手足や頭を吹き飛ばされている。
実戦になれていないカリュームには刺激の強い光景だった。
加えて血と排泄物と体液の強い臭いが鼻をつく。
新鮮な空気を求めて反射的に外へ飛び出した。かろうじて吐く事は堪えた。
「くそ、なんて事だ…」
すぐにこの場から逃げ出したかったが、やる事がある。
この中に師ジェイクやラムスの姿がない事を確認するのだ。
カリュームは二、三度深呼吸をして気持ちを落ち着けると、改めて納屋へ踏み込んだ。
折り重なった百近い死体をすべて改めるには一時間近くかかった。
隣人たちの中には、ともに剣の修行に励んだ友人もいた。
何かとよくしてくれた隣の一家、密かに淡い恋心を抱いていた少女。
かつてあれほど暖かかった彼らの表情は今は醜く歪み、虚ろな視線でカリュームを見つめている。
そのなかにジェイクやラムスの顔はなかった。
納屋から出てきたカリュームは、自分自身死人のような表情になっていた。
「カリューム君、無事だったか!」
突然声をかけられ、カリュームは腰が抜けるほど驚いた。
村長のメランを先頭に数人の男たちがカリュームの後ろに立っていた。
「うまく逃げられて良かった。帝国の奴らは今朝、東へ帰って行ったよ」
「ジェイク様は?ラムス様を見ましたか?」
「わからない…ジェイク様がいなければ私たちも命はなかったろうが…」
「剣を使える人はほとんど死にました。僕だけが逃げ出して…」
「自分を責めるな。いまは若い者の力が少しでも必要だ」
村人たちは少しずつ戻ってきた。そこへ突如アルニュームの率いる十数人の帝国兵が現れた。
「何をしに来た!?もうこの村に剣闘士はいない!」
村長のメランが問いただした。
「東の道が使えん。山に詳しいものを案内に使いたい。それから昨夜水瓶にくだらん細工をした奴を出せ」
アルニュームは銃を見せつけて村人を広場に集めさせた。
案内は村の男が買って出たが毒水の犯人探しは埒があかない。
しびれを切らしたアルニュームは村長に銃を向けた。
「やめろ!戦うのなら僕が相手になる」
カリュームが割って入る。
「貴様…剣を持っていると言う事は剣闘士か?」
「僕は剣聖ジェイクの弟子カリュームだ」
「…面白い」
アルニュームは改めてカリュームにねらいを定めた。そしていきなり引き金を引く!
パララララララララ・・・・・
「スキル、風陣…!」
カリュームはとっさに剣を振った。だがいくら形だけ真似してもジェイクのような威力は出ない。
バキィィィィン!
なんとか直撃は免れたものの数発の弾丸が腕や足に当たり、剣は折れてしまった。
それどころか流れ弾が周囲の村人にまで命中する。
「く…やはり無理なのか…!」
「取るに足らぬ奴…潔く死ね!」
アルニュームが再度引き金を引こうとした時、突然飛んできた矢がアルニュームの右肘を貫いた。
「うおぉっ!」
アルニュームが激痛にあえぐ。
「だれだ!?」
帝国兵が矢の飛んできた家に駆け寄る。
振り向いたカリュームの目に、小さな子供の影が映った。
(あれは…ラムス様!?)
「君も早く逃げろ、カリューム君!」
村長の叫び声で我に返る。村人たちは散り散りに逃げていった。
「逃がすな!一人残らず殺せ!」
背中でアルニュームが怒鳴っているのが聞こえた。
45 :
名無し物書き@推敲中?:02/06/15 17:43
えーと、実は作者も飽きてるので誰か終わらせてくれると有り難いんですが。
47 :
名無し物書き@推敲中?:02/06/27 10:12
age
48 :
名無し物書き@推敲中?:02/06/27 13:33
いや、これは面白い。
笑いのツボがそこかしこに。
どうもありがとう。
>>48 終わらせてくれる人も居ないし、もう少し続けるしかないですか。
クロスボウから放たれたボルトはアルニュームの右肘を完全に破壊していた。
出血も酷い。アルニュームはあり合わせの布を止血帯代わりにして上腕を縛り、
突き刺さったボルトを引き抜いた。肘関節は人体でもっとも痛みに敏感な場所の一つである。
さすがのアルニュームも痛みに気が遠のくのを感じた。
「隊長、お怪我は…?」
副隊長のヤーコブが駆け寄る。
アルニュームは部下に傷口を見せないように素早く布で覆った。
「どうした。奴らは始末したのか?」
アルニュームの顔面は蒼白だが、声には普段通りの威圧感があった。
「は。例の剣士ほか数名を追跡中です。案内に使えそうな男は一人残しましたが…」
「ふむ…俺を射った奴は?」
「現在、追跡中であります」
一方、カリュームたちは帝国兵の追跡を何とか振り切り、山の中の避難所に向かっていた。
かなりの村人が追っ手にやられたようだ。
ラムスの事も気にかかったが、剣も失ったカリュームには無事を祈る事しかできない。
村の南にある古い炭焼き小屋が臨時の避難所になっていた。
小さな小屋の中や周りに、40人あまりの村人が居る。
主に女性や子供で、男や若者は少ない。
「たったこれだけ…?」
「うむ…まだ山の中で逃げ延びている者もおるだろうが…」
村長は沈痛な面もちで答えた。
傷の手当を受けながら、カリュームはラムスの事を考えていた。
(ラムス様が村にいたなら、僕が探しているのに気づいたはずだ。
どうして隠れていたんだ。やはり、あの占い娘の言う通り僕はラムス様にとって頼りない
人間なのか…いや、むしろ邪魔なのか。僕はラムス様の邪魔でしかないのか…くそ…)
「村に戻ったのは私の失敗だった。奴らが戻るとは…うう…」
村長もカリュームに負けず劣らず落ち込んでいた。村人たちも予想外の展開に動揺を隠せない。
「メランさん。我々はこれからどうしたら良いのでしょう」
「これだけの犠牲が出てしまっては村の再建は難しい…」
「逃げると…?」
「うむ。このまま冬を越すのは難しかろう。いずれにせよ村を出なければなるまいよ」
カリュームは焦った。ラムスは一人で帝国兵に戦いを挑んでいる。
何とかやめさせるか、肩代わりしなければまずい。それには少しでも村人たちの力が必要だ。
「待ってください、メランさん!」
「う…なにかね、カリューム君?」
「さっき帝国の指揮官を撃って僕たちを救ってくれたのはラムス様でしたね」
「なんだと…まさか」
「確かに見たのです。ラムス様は帝国兵たちと戦うつもりらしいのです。僕はジェイク様に
ラムス様を預けられた身です。一人でもここに残ってラムス様を助けなければならない」
「むう、そうか。くれぐれも無理はするなよ。我々では何も手伝ってやれないが…」
「え…そうですか…」
「うむ、では我々は隙を見て東の山からクライベリューの村へ向かう。少々遠いが向こうの村長とは
長いつきあいだ。急場をしのぐ援助はしてくれるだろう。皆もそのつもりで準備をしておいてくれ」
メランは行動方針が決まると少しずつ落ち着きを取り戻してきたようだ。
「カリューム君、きみもできるだけ早く我々に追いついてくれ。命を無駄にするなよ」
両手を肩に置かれてそう言われ、カリュームは神妙に頷くしかなかった。
そのころ村に集結した帝国部隊ではやっかいなもめ事が起きていた。
「グレイブキャニオンを私にお預けください」
グレイブキャニオンは帝国の銃器の中でも際だった破壊力を持つ武器である。
それは同時に特攻部隊の隊長の証でもある。それを副隊長が要求すると言う事は、反逆に等しい。
だが、右腕が全く使えないアルニュームにグレイブキャニオンを扱う事はできない。
怪我の重さを考えれば副隊長であるヤーコブがアルニュームの代理となる事は至極当然である。
だが、生まれつきの負けず嫌いであるアルニュームはこう答えた。
「ヤーコブ、貴様血迷ったか?」
「しかし、その御怪我では!」
「これがどうした!?」
ドカッ!!
アルニュームは左拳でヤーコブを殴り飛ばした。出血でかなり体力を失った筈だが、
ヤーコブはそのパンチを受けて背中からまともに倒れてしまった。
「確かに、ここが戦場ならば貴様に指揮権をゆだねるところだ。だが、もう敵はいない。
もし村の者が戦闘を仕掛けてきても、この俺が右手が使えぬ位で足手まといになると思うか?」
ヤーコブはふらふらと立ち上がった。アルニュームの怪力にたじろいではいたが、
その目には何か確信めいた光があった。
「両腕が使えてもそのお怪我を負ったのです。次は隊全体が危機に陥るかと」
「!!」
パララララララララ・・・・・
アルニュームは反射的に引き金を引いていた。慣れない左手での射撃とは言え
2メートル先の標的を打ち損じるはずはなかった。
ヤーコブはアルニュームのプライドを傷つける事がいかに危険な事か知っていた。
だが副隊長として、言わなければならなかった。
そしてその責任に忠実であった事がヤーコブの命を奪ったのである。
アルニュームは激情の中で、確実に自分の人生が狂っていくのを感じていた。
戦闘力では帝国最強の精鋭と謳われる特別攻撃部隊が、崩壊を始めていた。
54 :
名無し物書き@推敲中?:02/07/11 03:52
>>54 すいません、ちょっと他のことで忙しかったので書いてないんですよ…
数日中に何とかしますので…
56 :
名無し物書き@推敲中?:02/07/13 23:36
>>56 これはどうも。批評してもらえるほどの物ではない事は分かっていますが、
ご意見いただければうれしいです。
ウザイのは承知でsage進行に甘えている訳ですが、
とにかく終わりまで書いてみたいので…
サムジュモールから東へ抜けるには帝国兵たちの知らないいくつかのルートがある。
男たちが手分けして調査してみると、普段使われない南回りの道がまだ使えそうなことが分かった。
山の荒れ具合は酷く、クライベリューへ出るには時間がかかりそうだった。
他に生き残った村人を捜したい気持ちは山々だったが
これ以上村に留まるわけにも行かず、村人たちは夕暮れ前に出発した。
カリュームは一人で残り、帝国兵の様子を探っていた。
帝国兵たちはやはり村の寄合所に集まっているようだ。
「案内人をほしがっていたが、誰か捕まっているのだろうか…?」
何よりもラムスの安否が知りたくて、カリュームは村へ潜入する事にした。
「メランさんの家の裏側から近づけそうだ…」
さすがに警戒されているが、カリュームには10年以上培ってきた地の利がある。
しかも帝国兵の数はかなり少なくなっており、もう村一つを完全に警備する事は難しいようだ。
寄合所に近づいていくと、見張りの帝国兵たちが会話しているのが聞こえた。
「逃げた奴がいるのか?」
「ああ、いるらしい。俺も気持ちは分かる」
「おいおい…」
「だがな、隊長が副長を殺すなんて正気とは思えないぜ。
私怨で村人を殺す事にこだわっているようじゃ、山を下りる前に食料がなくなる」
(なんだ、村の人が逃げた事に気づいた訳じゃないのか。脱走兵が出ている…?)
「ああ、毒水の事で村の食料には手が出せなくなったからな…」
「そうだ。それに隊長もあの怪我にはかなり参ってるようだぜ。
右腕はもう自由にはならないだろうってさ。どっちにしろ先は長くないぜ…」
「お前、声が大きいって…」
何を隠そう、ここで隊長を批判している男は毒水の件で雑役を命じられた男であるが
それはカリュームの知るところではない。
(帝国兵も大変なんだな…)
思わずそんな同情がわき上がる。そのとき、カリュームの背中を叩く物があった。
(ぐわ…!)
口をでそうになった悲鳴を何とか飲み込む。見ればすぐ後ろにラムスが剣を抱えて立っていた。
「ラ、ラムス様…!!」
ラムスは全身泥まみれで、栗色の巻き毛にも木の枝が絡みついていた。
だが表情には疲労の色などかけらもない。むしろ異様なまでの気迫がみなぎっている。
「静かに、こっちに来て」
少し帝国兵たちから離れると、ラムスはカリュームの手に抱えていた剣を押しつけた。
「これは、ジェイク様の…?」
ラムスは頷いた。
「そうでしたか…やはり…」
カリュームも覚悟はしていたが、その言葉を聞いてどっと悲しみが押し寄せてきた。
幼いラムスの前で涙は見せまいと思っても、つい目元をおさえてしまう。
「でもラムス様が無事で何よりでした。とにかく村の人たちと合流しましょう」
「まだ、あの隊長をころしてない」
「あ、そういえば。あの時は助かりました。でもとにかく一度…」
「カール…」
「うぁ?」
ラムスに愛称で呼ばれたのは初めてだったので、戸惑ったカリュームは間抜けな返事をしてしまう。
「あいつらをころすの、手伝ってくれるよね?」
帝国兵は寄合所の前に二人組の見張りを配置している。
他に村の中を警戒する見張りが二組うろついていて、村の東西南北の入り口にさらに別の見張りがいる。
ラムスはこれらの見張りを各個撃破した後、村に火を放つという作戦を提案した。
カリュームは始め徹底的に反対を唱えたが、ラムスの情熱と連日の疲れから来る混乱に負け、
いつのまにか全面的に協力する気になっていた。
基本的な戦略は、まずカリュームが物陰に隠れて十分に接近しておき、
ラムスがクロスボウを使って一人をしとめると同時に飛び出してもう一人を始末するという物だ。
ラムスの狙撃の腕は確からしいが、失敗した場合カリュームがかなり苦しい立場になる。
カリュームとしてはその辺りに不満もあったが、
とにかく失敗した場合は全力で山へ逃げ込む事に決めた。
ラムスの提案で手始めに村の中をうろつく歩哨から倒す事にした。
歩哨の歩き回る経路をすでにチェック済みである。
「ぼくは向こうから撃つから、ヘイスンさんの納屋の裏に隠れて」
「わかりましたよ…」
カリュームはやや投げやりな答え方をする。
だが、師ジェイクの剣を握りしめるとなにか闘志が湧いてきた。
こうなったらやれる所までやろう。どうせ帰る場所はもうないのだ。
言われたとおりの場所に身をひそめていると、程なく歩哨の足音が近づいてくるのが聞こえた。
(来た…!)
じりじりと近づいてくる。後5メートル。いつでも飛び出せる構えでラムスの射撃を待った。
どすっ、と鈍い音がして、一人がよろめいた。
カリュームははじかれたように飛び出した。アドレナリンの回った体は空気のように軽い。
「…!」
帝国兵は闇の中から現れたカリュームに反応できない。
カリュームの剣が男の喉をとらえた。気管を叩き潰され、頸椎を砕かれて、男は倒れた。
(やった…)
念のためもう一人の様子を見ると、ラムスの矢は男の心臓を正確に射抜いていた。
剣聖の息子とは言え、恐るべき腕前である!
「死体はそのままでいいよ。もう一組が向こうから来るから、はやく」
ラムスは素早く次の指示を出した。
夜はますます深くなってきた。ラムスとカリュームは次々に帝国兵を倒してゆく。
カリュームの剣技は敵を倒すごとに冴えを増してゆくようだ。
ラムスが一撃で仕留め損なった時も、カリュームが素早く処理してしまう。
(考えてみると、僕は今日初めて人を殺している…それがこんなに簡単な事だったなんて)
たしかに簡単だった。それはカリュームが積み重ねてきた訓練のたまものでもある。
しかも、肉を切り骨を砕く感覚がこれほど興奮する物だとは。
カリュームが初めて知る、他人を力で圧倒する事の優越感だった。
カリュームは血を吸うたびに手に馴染むジェイクの剣を見た。
(ジェイク様。あなたのかたきを取ります)
ついに二人は村はずれの見張りたちを一掃し、作戦の最終段階に入った。
いち早く異常に気づいたのは、帝国兵に捕らわれていた粉屋のケルダーだった。
縛られている上に、帝国兵に殴られた体の痛みと恐怖でほとんど眠る事ができず、
屋外の物音に気がついたのである。
ケルダーは、帝国兵の宿舎になっている寄合所から少し離れた納屋に監禁されていた。
カリュームたちが見張りを倒した場所のすぐ近くである。
始めに聞こえた戦闘の物音はすぐにやんだので、空耳かと思った。
だがやがて聞こえてきた、抑えてはいるが忙しい足音に不安を覚えた。
納屋の中に見張りの帝国兵が一人いたが、眠りこけて起きる様子がない。
柱に縛られているが、体をひねれば壁板の隙間から外の様子をうかがう事ができる。
月明かりの中、二人の人影が寄合所の前に何かを積み上げているようだ。
(ありゃあ、帝国兵じゃないな…見張りがいないようだが…?)
ケルダーはもっとよく見ようとして体を動かした。
そのとたん、ケルダーの足が壁に立てかけてあった竿を引っかけて倒してしまった!
将棋倒しに鍬や積み上げてあった桶が崩れる。
「ム…何をしている…!」
帝国兵がはっと身を起こし、ケルダーの肩をつかんだ。
「な、何でもない!寝ぼけてそこの竿を蹴飛ばしちまっただけだ!」
「嘘をつけっ!貴様何を見ていた!」
帝国兵は壁板の隙間をのぞき込む。
「なんだ…侵入者か!?見張りは何をやってるんだっ!」
帝国兵は自分が眠りこけていた事は棚に上げ、納屋を飛び出した。
カリュームたちは納屋の扉の前に薪から小麦粉まで燃えそうな物を積み上げていた。
帝国兵たちが火事に気づいても簡単には外に出られないようにするためである。
さらに納屋の周囲には油をまき散らし、火の回りをよくしておく。
ケルダーを見張っていた男が納屋を飛び出した時には、すでに準備は整い、
あとは火をつけるばかりになっていた。
「敵襲ーっ!」
帝国兵が叫ぶ。
「ラムス様!」
ラムスは篝火から取って用意していた火を焚き付けの山に投げ込んだ。
瞬く間に火がついて、寄合所の壁を伝って炎が広がりはじめる。
「ラムス様、先に逃げてください。僕が時間を稼ぎます!」
カリュームは颯爽と剣を抜いて帝国兵を迎え撃つ構えを見せる。
ラムスは素直に頷いて家の間の闇の中へ駆け込んだ。
「貴様、何者だ!なめた真似をしてくれたな!」
帝国兵も剣を抜いてカリュームに詰め寄る。
「僕…俺は剣聖ジェイクの弟子、カリューム・ネオンだ!」
カリュームはめらめらと燃え上がる炎を背に、不敵に笑った。
アルニュームが駆けつけた時、すでにカリュームの姿は無く、すさまじい勢いで燃える寄合所と
その前で息も絶え絶えとなった兵士の姿があるばかりだった。
「敵は誰だ、俺を射ったガキではあるまい」
瀕死の部下の上にかがみ込み、そう聞くアルニュームの声は怒りに震えていた。
「け…剣聖の弟子とかいう、若造です…」
(弟子…昼間の奴だと…?この太刀筋、ただ事ではないが…)
アルニュームはしばらく信じられないと言った様子だったが、すぐに立ち上がり、
少しでも部下を助けるべく炎の中に飛び込んでいくのだった。
一夜明けて確かめてみると、帝国特攻部隊の生存者はわずか15名であった。
そのうち12人が怪我ややけどを負い、装備もあらかた焼けてしまったので
まともに戦える者は半数に満たない。まさに全滅であった。
「俺の部隊が、ここまで完全に潰されるとはな…」
アルニュームは昨夜の火事で自慢の頬髭も焦げ、見るからに打ちひしがれていた。
だがやがて意を決すると、兵士たちの前に立ってしゃべり出した。
「お前たちはよくここまで生き残ってくれた。この失態は、元はと言えば
あえてこの辺境まで無理な遠征をした俺の判断ミスだ。
それに村民どもをなめてかかっていた油断…まったく不甲斐ない。
本来ならこの場で死んで詫びたいところだ!」
帝国兵たちは、普段は何があっても己の非を認めない隊長の、思いがけない言葉にどよめいた。
「だが俺は最後の意地にかけて、お前たちを生きて本国へ送り届ける。もはや一人の犠牲も出さん。
すでに俺に愛想を尽かしている者もいるだろう。それでも俺は隊長として命令する。
ここにいる15人は全員、生きて祖国アルドラードの土を踏むのだ」
帝国兵たちは泣いていた。冷静に考えれば、隊長アルニュームの言葉には反発もある。
何を今更ふざけるな、さっさと死ね、と。だが昨夜の修羅場をともに乗り越えた15人の間には、
それまでの確執や部隊でのしがらみを忘れ、理性を越えた連帯感が生まれていた。
しかも故郷を遠く離れた帝国兵たちにとって、祖国アルドラードという言葉が何よりも心に響く。
「隊長、俺たちはあなたに付いていきます!」
感極まった男が涙声で叫ぶと、他の者も次々に同調した。
その連帯感の中心で誰よりも感激し、涙を流したのがアルニューム自身であったことは言うまでもない。
66 :
名無し物書き@推敲中?:02/07/22 08:41
67 :
名無し物書き@推敲中?:02/07/27 02:01
age
朝が来ると、カリュームは自分たちが重大な問題に直面していることに気づいた。
食料がもうあまりない。昨夜の帝国兵たちの会話を思い出す。
たしか、帝国兵たちも食糧不足に直面しつつあったらしい。
「まずいな…村で火をつける前に食糧を確保するべきだった…」
その独白に答えるように、カリュームの腹の虫が鳴く。
「どうすればいいんだ?クライベリューへ向かったみんなに合流するには時間がかかるし…」
手持ちの食料はもう二食分ほどしかない。カリュームはふとあのシチューの娘の事を思いだした。
「そうだ、北へ向かう手もあるな。その方が早く人里に出られるし…」
町へ出てからはどうする当てもなかったが、何か仕事をもらって当座の食事と寝床くらいは確保できる気がする。
一方、帝国兵たちもカリュームと同じ決断をしていた。
「東への道以外で、一番近くの人里へ案内しろ」
と命令されて、粉屋のケルダーが考えたのが、峠を越えて北の町へ向かう事だったのだ。
ケルダー自身は水車の臼を買うために、一度だけ北の町へ行ったことがある。
そのときは荷物のために三日ほどかかったが、うまくいけば二日もかからないだろう。
帝国兵たちは最終的に港へ戻る事が目的だが、町に出れば港に待機している部隊と連絡がとれる。
これ以上村にいてもカリュームたちの思うつぼだと判断したアルニュームは
まだ日の昇りきらないうちにサムジュモールを出発した。
ラムスはすぐに帝国兵たちの足跡に気づいた。カリュームが同じ事に気づくにはもう一時間ほど必要だった。
「ラムス様!この足跡、帝国兵たちのものです。奴らも北へ向かっていたんです」
ラムスがつまらなそうに頷く。
「おそらく、暗いうちに村を出たのでしょうね。何人くらいだろう?」
「20人もいない。杖を突いてるのが多いね…」
ラムスはカリュームの鈍さにあきれる様子もなく、そう教えた。
「山道で不意を打てば…いや、銃を使われるな…」
カリュームは戦う気満々だった。考えてみると、帝国兵たちを倒して金を奪えば結構な金額になるのではないか。
しかし、ラムスのクロスボウは捨ててきてしまったので今はカリュームの剣だけが頼りだ。
「峠を越える前に追いつきますね。しかし、仕掛けるのは夜の方がいいかな…」
ラムスは黙って肩をすくめた。
実際、カリュームたちは峠を越える前に帝国兵たちに追いついた。
木の後ろに隠れて見てみると、帝国兵たちはかなりくたびれている感じだ。
(何だ、ぼろぼろじゃないか。人数は…16人か)
カリュームはほくそ笑んだ。
(始めに銃を持った奴を倒して、あとは囲まれないように注意すれば勝てる…)
アルニュームは意外と簡単に町へ出られそうなので、気持ちに余裕がでてきていた。
村人たちの戦力は謎ではあるが、まともな相手は例の剣聖の弟子ひとりだと見て良いだろう。
今までは撹乱戦術を仕掛けられ、不覚を取ってきた。だが、このあたりは、山の中でも視界がきく。
地形に気をつければ不意打ちや罠などはかわせるだろう。
「油断は禁物だ…だが、冷静に対処すれば、大した相手ではない」
アルニュームは自分に言い聞かせるように呟いた。
峠を越える前に道の悪くなった場所が続いて、少々手間取った。
そこから少し下るとなだらかな森が続く。アルニュームたちの一行はその辺りで野営の準備にかかった。
ケルダーには相変わらず見張りが付いていた。バズリという名の若い戦士だった。
「珍しい名前だな」
ケルダーがいうと、バズリはにやりと笑って言った。
「俺は元々帝国出身じゃないんだ。元は雇兵みたいなもんだった」
「それが今ではエリート兵士か。サクセスストーリーってやつだ」
ケルダーは口先だけは感心したように言った。
「まあな。この任務があけたら家へ帰るつもりだった。どうも、危ない感じだけどな」
バズリは屈託無く笑った。
いよいよ大詰めですが、うまく終わるんでしょうか。
下手に終わらせるよりこの辺でやめた方が夢があっていいかも。
日が沈みかけていたが、アルニュームは地形を確認するため、尾根に上がってみる事にした。
ケルダーとバズリもそれに従う。ケルダーは淡々とこの先の道順を説明した。
「海まではそれほど離れていません。右手にのびる尾根を回り込んでいくと、すぐに森が切れます。
その先の盆地に街がありますが、そこからまた峠を越えて平地に出れば、港まで三日もかかりません」
「ふむ。明日中に盆地に入れそうだな?」
「この先はゆっくり下るだけですから、多分…」
アルニュームはしばらく景色を見下ろして、何か感傷にふけっているようだった。
「あの、俺はどこまで案内をすればいいんです?」
ケルダーが不安げに言う。
「安心しろ。その盆地の街に着けば自由にしてやる」
そのとき、それまで無表情だったアルニュームが、急に何かを気にするような顔つきになった。
「む…?」
「隊長?」
アルニュームは耳を澄ませた。下の方から、風の音に混じって何か騒々しい物音が聞こえてきた。
「敵か!野営地だ、急げ!」
カリュームはアルニュームが隊を離れるのを見て、とっさに切り込む事を決めたのだった。
当然何の作戦もなかったが、自身だけはあった。ただラムスに
「ラムス様はここにいて下さい」
と言い残して、いきなり野営準備中の帝国兵の中に飛び込んでいった。
不意打ちとは言え、これに応戦できないほど軟弱な帝国兵たちではない。
すぐに武器を取って迎え撃つ。だがカリュームの剣は冴え渡っていた。
次々に相手を切り伏せるカリュームの姿は鬼神のようである。
圧倒的な人数差にもかかわらず、戦いは一方的になっていた。
「ゴミのように弱い…お前らなどにジェイク様が倒されたとは!」
「見逃してくれ、俺たちは命令に従って戦っただけだ!」
「所詮小物の命という事か。ならばなおさら潔く死ねばいい!」
カリュームが言い放って残りの帝国兵たちに斬りかかろうとしたその時だった。
「そこまでだ、小僧!」
聞き覚えのあるだみ声が山中に響き渡った。アルニュームである。
左手に銃を構え、ぴたりとカリュームの心臓に狙いを定めている。
「俺の部下…いや、仲間たちをよくも殺し放題に殺してくれたな!」
「ふん。お前たちに殺された村の人たちのことを思えば何でもない」
「威勢がいい。だが、減らず口もそれで最後だ」
パララララララララ!
アルニュームの構えた銃口から無数の弾丸が飛び出し、カリュームを襲った。
だが、カリュームは剣を一閃した風圧で弾をはねとばし、全く無傷でその場に立っていた。
「風陣…!」
「なんだと…村での時は使えなかったはず…!」
「あの時の僕…俺の剣には迷いがあった。人を殺す事を恐れていたからだ。
だけど、今はもうためらいはない。心おきなく剣を振り切れる」
「チッ…」
アルニュームはやけくそで銃を連射した。数百の弾丸がカリュームに向かって飛ぶ。
だが続けざまに放たれる風陣の前にその全てが吹き飛ばされた。
やがて弾が切れてしまい、アルニュームは銃を投げ捨てた。
「終わりか…?」
カリュームはさすがに息を切らせていたが、勝ち誇った口調で言う。
「隊長…」
帝国兵たちもかろうじて逃げ出しはしなかったが、すでに戦意を失っていた。
「たしかカリュームと言ったな。もう互いに十分殺し合った。剣を引かないか…?」
「くだらない提案だな…村の人たちとジェイク様の敵を討つだけだ」
アルニュームは生き残りの帝国兵たちに撤退の命令を出した。
「お前たちは生き延びろ。こいつは俺が引き受ける!」
「逃がすと思うのか!」
帝国兵に斬りかかるカリューム。だがアルニュームが死んだ帝国兵の剣を拾い上げ、素早く割って入った。
「あまり図に乗るなよ!何もかも好きにはさせん!」
「片腕で勝負になるか!」
二人は激しくぶつかり合った。カリュームの攻撃は鋭い。
だがアルニュームも片腕ながらも剛力を見せつける。しかも剣の技も見事だった。
二人の剣が数回ぶつかり合い、激しく火花を散らした。
(くそ…この隊長、ただ者じゃない…)
カリュームは、恐怖というものを思い出し始めていた。
75 :
名無し物書き@推敲中?:02/08/09 06:27
76 :
名無し物書き@推敲中?:02/09/08 16:45
読んでるよ!がんがれ!(一応下げておきまふ。)
78 :
名無し物書き@推敲中?:02/09/09 16:39
ageる
完結させれな。
80 :
完全サン@プル:02/09/09 18:36
ちょうどそのころ、ナターシャはポトフを作っていた。少し味見する。
「何か足りない…あ、月桂樹を忘れてた。そういえば丁度切らしてるんだったな…」
すると夏に刈り取った野生のシソが目に付いた。
これは香りがよいので、ドライフラワーのようにして天井からぶら下げて置いたのである。
「何かの役に立つかと思って干して置いて良かった。備えあれば憂いなし」
鍋の前で乱暴に叩いてホコリを落とす。
乾燥したシソはぼろぼろと崩れたが、ナターシャはあまり気にしないらしかった。
それを鍋に放り込んで混ぜはじめる。すると突然、小屋の扉を叩く音がした。
「うるさいわね。なにかしら」
ナターシャはお玉を手にしたまま扉へ向かい、掛けがねをはずした。
そこにいたのは若い、帝国兵の武装に身を包んだ男だった。
「突然済みません…あ…?」
「バズリ!」
「姉さん!こんな所でなにやってんの!?」
「あんたこそ、何やってるの?帝国で名を上げるとか言ってたじゃない」
「ああ、それがさ…結構上手くやってたんだけど、今、俺の部隊が大ピンチでさ…
ピンチっていうか、もう駄目なんだよ。実際」
「ははあ…あんたたち、サムジュモールに攻め込んだのね。返り討ち?」
「あー、いろいろあってね…剣聖の弟子とかいう人が頑張っちゃって。
今、そいつとうちの隊長が一騎打ち始めてさ。
俺はどっちにしろあの部隊やめようと思ってたから、もういいやって」
「へえ。相変わらずやる事がいい加減ね」
「だって、これから本格的に戦争するって言うじゃん。俺は今の状態ですでに一杯一杯だし。
もう、付き合いきれないっていうか。それより、何か喰わせてよ」
ナターシャは弟を招き入れ、スパイスの足りないポトフを囲んで積もる話に花を咲かせた。
カリュームとアルニュームの対決は持久戦になっていた。
カリュームが防御に転じた事に加え、アルニュームも片腕では思うように攻められずに、
互いに致命傷を与えられない状態が続いたのである。
血まみれになって剣を何度も打ち合ううちに、いつの間にか夜が更けて、朝になった。
二人とも体力が尽き果て、剣先を引きずるようにして、にらみ合っているのが精一杯だった。
真っ青な顔面、ひび割れた唇、血走った目だけが時々ぎょろぎょろと動く。
「小僧…この勝負、もうお前に勝ちはないのだぞ」
アルニュームが髭の下からぼそぼそと呟いた。
「仲間達はもう山を抜けただろう…」
「…剣を引く気はない」
そう言うカリュームの声もしわがれていた。
「意地か?」
「それもあるな」
ふと、アルニュームが面白そうに目を輝かせた。
「お前の師…ジェイクラームは…村人が逃げおおせた事を確認すると、自ら剣を捨てたのだよ」
「何?」
「フフフ…奴が本気なら、俺も今まで生きては居られなかった。ようやく分かったよ。
奴が剣を捨てたのは、それ以上余計な人間を殺したくなかったからだ」
そう言うと、アルニュームの手から剣が滑り落ちた。
「殺せ。俺はどのみち国へ帰っても命はないのだ。
どうせなら詰まらぬ奴から死ねばいい。お前は良い剣士になるだろう…」
しばらくの間、カリュームは動けなかった。
「ジェイク様はお前達に情けを…」
ようやくそう呟いた時、カリュームの視界の隅で何かがさっと動いた。
「ラムス様!!」
カリュームが止めるまもなく、横から飛び込んだラムスの剣がアルニュームの喉を貫いた。
「ごぼっ…」
アルニュームは不気味な音を立て、首から大量の血を吹き出すと、その場にばったりと倒れた。
日が高くのぼった頃、森の一軒家に訪問者があった。
若い剣士と幼い子供の二人連れである。
小屋には人の気配はなく、扉に小さな紙片が打ち付けてあった。
剣聖カリューム様。
急に弟が帰ってきて、当分家を空ける事になりました。
鍋の中の料理は食べてくださって結構です。
出発の際は後かたづけと戸締まりをしっかりとお願いします。
――占い師ナターシャ
(おわり)
完結です。これだけですが…
半年がかりとは思えない内容のなさですいません…
2chでの連載は、無視されたり気づかれなかったり読んでもらえなかったりと
大変でしたが、なんか「終わった」というだけで感無量です。
励ましのレスを入れてくれた人たちには本当に感謝しています。
ありがとうございました。
お疲れ様でした。良かったら次回作期待していますので、お願いします!
86 :
名無し物書き@推敲中?:02/09/18 20:11
87 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/17 15:11
88 :
名無し物書き@推敲中?:02/11/04 22:55
89 :
名無し物書き@推敲中?:02/11/05 00:07
aaa
もしやここには誰もいないのか……? では、再利用でも……しようかな……
91 :
名無し物書き@推敲中?:03/01/02 10:34
気が向いたら再利用するかもしれん。
お気に入りにいれとくよ、このスレ。
(^^)
(^^)
95 :
名無し物書き@推敲中?:03/01/22 10:17
94 :山崎渉 :03/01/19 03:58
(^^)
最近、ここを読んだ者です。
まずは、1さん、連載、お疲れさまでした(もう見てないかもだけど……)
復讐の終わったカリュームとラムスがその後どうなったのか、気になります。
放浪の剣士としてどっかの国の傭兵部隊に潜り込み、名をあげちゃったりするのか。
それとも、もう戦いはこりごりで、市井の民としてラムスを育てながら、
平穏な日々を送ることにしたかも、なんていろいろ想像しました。
ナターシャとバズリの姉弟も、意味ありげのような、そうでないような……
そのうち、あれれっ!? って感じで姿を消してしまって、
ちと釈然としないものがありましたです。残念。
反面、アルニュームの苛烈な性格とかよく伝わってきました。
また、気が向いたら、作品をupしに来てくださるといいな、と思います。
(後日談を、ということじゃなく、まったく別の作品でも)
と、書きつつ、実は、90さん、92さんについで3番目のスレ利用希望者です。
90さん、92さん、再利用の目途はつきましたか?
お二人の準備が整うようなら、そちらの作品upが終わるのを待ちます。
あるいは(もし良ければ)ハンドル名のところに作品タイトルを記名するようにして
3人平行して連載させるということもできるのでは、と思います。
でもこれはちょっとずうずうしい提案かもしれないですね。
こちらは今書いてる途中なので、できれば3月半ばあたりから、このスレを
利用させてもらいたいんですが……。どうでしょう?
保守
このスレの1の文章は「行き場のない作品の発表」スレにも
書き込まれていました。
そこでは「ブレイブストーリー」という題名でした。
そして最近宮部みゆきが出した冒険ファンタジーのタイトルが…
バスターの件といい、あの人はすごすぎます!
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( ^^ )< ぬるぽ(^^)
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ピュ.ー ( ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
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= ◎――◎ 山崎渉
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|( ^^ )| <寝るぽ(^^)
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\ |⌒⌒⌒~| 山崎渉
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|( ^^ )| <寝るぽ(^^)
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\ |⌒⌒⌒~| 山崎渉
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│ ^ ^ │<これからも僕を応援して下さいね(^^)。
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(_)(_) 山崎パン