二月末日夜のことです。
夜11時頃だったでしょうか・・・。
僕は大隈講堂前の階段に座って一人でわせ弁
(ホカ弁のような店)の弁当を食べてました。
ちょうど照明が落とされ、あたりが真っ暗になった時でした。
音も無く、僕の目の前に一人の女性が現れました。
50〜60歳くらいでしょうか。
大きな眼鏡(暗くて分からなかったが、たぶん色眼鏡)をかけた、
ほほのこけたオバサンでした。
彼女はいきなり、
『アンタ早稲田の学生?』
と言うや否や、僕の返事も待たずに一冊の文庫本を手渡してきました。
『これ、アタシが書いた本なの。今度直木賞取るからよろしくね』
と言い残し、僕から数メートル離れたところにいたカップルの元へ
スタスタと行ってしまいました。
そのカップルに向けて同様の事を言い、二人に一冊ずつ手渡しているのが、
暗いながらもはっきり見えました。
いぶかしがりながらも僕は、文庫本に目をやりました。
『いのちの電話』というタイトルでした。
作家名を見ても聞いた事がありませんでしたし、
(作者名はあえて伏せます)
その版元の●代●藝社という名も、背表紙に記された●レビ文庫
という名も聞いた事がありませんでした
何なんだ一体・・・その文庫本から顔を上げると、
そのオバサンの姿はいつのまにか消えていました。
何だか薄気味悪くなった僕は、急いで弁当をたいらげ、
アパートに帰りました。
自分の部屋に戻って人心地ついた僕は、さっきの出来事を
思い返し、とりあえずその本を読んでみよう、と思いました。
5 :
名無し物書き@推敲中?:02/03/02 04:37
∧__∧ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
∩゚Д゚) < それこんなコピペが書いてなかったか?
□………(つ | \___________
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
. いのちの電話 |
. |
文庫本の裏表紙を見ると、著者近影があります。
和服をまとった女性が写った白黒写真です。
30代半ばくらいでしょうか。
そのふっくらとしたほほを見るに、とても
さっきのオバサンと同一人物には見えません。
『いつの写真だよ・・・。
いや、もしかすると、あのオバサンはこの作者の
熱狂的なファンだっただけなのか?』
あのオバサンのげっそりしたほほを思い返して、
そう考えたりもしました。
裏表紙の、著者近影の右隣には、本文の抜粋があります。
今、手元にありますので紹介させていただきたいと思います。
『ちょっと待ちなさいよ。まだ何も解決してないでしょう。
約束が違うと思いません?薬もくれないで!
せめてあなたの名前を言いなさい。
遺書をあなたに書いて死んでみせますから』
このまま電話を切られては、自分が傷つくだけだと思った。
(続き)
『いったいあなたに何がわかるというのですか。
自分で自分の命を断ち切ることのできる人の、
真の強さが・・・・・・
食べて寝るだけでは生きているとは言えません。
ムダな消費は罪悪です』
(本文「いのちの電話」より)
・・・以上、裏表紙の本文抜粋を原文ママで記しましたが、
いかがでしょうか?
かなりダウナーな臭気が、部屋に立ち込めてきた気がします。
一体、いつ書かれた本なんだろうか?
最近の本で、本当に直木賞候補だったりするんだろうか?
そう思い、奥付(と言うんでしたっけ)を見ました。
すると・・・一九八九年一二月一五日発行、と書いてありました。
『十数年たってまだ初版かよ!!
こんなのが直木賞取るわけないじゃんか。
あのババア、頭オカシイのか・・・』
思わずゾッとしました。
そして、奥付には著者略歴が書いてあります。
そこには、作者名、本名、そして出身(関西某所とのこと)
が書いてあります。
わざわざ本名を書くか・・・そう思った次の瞬間、
我が目を疑いました。
現住所まで書いてあるのです!!
『●●●● ●−●●−●』と。
早稲田大学から数キロもない地域です。
ようやく、さっきのオバサンが作者本人であり、
わざわざ自分の本を配っていたのだと確信しました。
僕は恐ろしさを抱くとともに、好奇心に駆られていました。
一体どんな小説なんだろうか?
目次によると本作は、表題作の「いのちの電話」から始まり、
「いずこへ」
「比肩の女」
「さぼてん」
「月下美人」
「終わりの日」
「暑い夏」
「ごみ屋敷」
と、都合8篇の短編からなっています。
試しにぱらぱらと斜め読みしてみました。
すると、各々の短編がある共通項をもって
書かれていることが分かりました。
『主人公は中年〜熟年の女』
『離婚ないし生涯独身の寂しい生活』
『関西出身』
『精神の崩壊』
これって作者自身のことなんじゃあ・・・
いよいよもって身の毛がよだつ思いです。
こんな本を手渡されて、僕は今、非常に気が滅入ってます。
一体どうしろと言うのか。
はっきり言って「実話」です。
マジで。
この不思議な出来事を誰かに話さずにはいられず、
2chに書くことにしました。
こちらの板で板違いにならないか心配ですが、
他の板でも収まりが悪いようですし、
ひとまずこちらに書かせていただきました。
皆さんのご感想をお聞かせください。
14 :
名無し物書き@推敲中?:02/03/03 03:08
自費出版で売れ残った本を通行人に配っていた作者、
という解釈じゃ駄目なの?
15 :
名無し物書き@推敲中?:02/03/03 03:13
1話ずつゆっくりでいいからアプきぼーん(w
>>14 正解、でしょう。
ただ、10余年前の本をいま手渡してきたわけですよね。
ということは、10年余新作を書いていないのか、と。
にもかかわらずはっきりと
「こんど直木賞取るからよろしく」
と言ったわけですよ。
その辺に何か、山岸涼子の短編漫画のような・・・・・・
そんな怖さを感じたんです。
>>15 実はあれから本作品をきちんと読んでみたんですが・・・。
あとがきによると作者は、「朝日カルチャーセンター京都」とやらで
「小説講座を受講」した事から、執筆活動を始めたようです。
どうりで、文章があまり上手ではないというか、言葉も陳腐な・・・。
台詞回しも稚拙というか、リアリティがないというか・・・。
そもそも、8篇中6篇が、不幸な生い立ちから偏屈になり、社会
から疎外感を感じて生きる女性が主人公の物語、しかも内5篇が
(おそらく執筆当時の彼女の年齢であろう)50歳前後の女性
ですからね。
「いい加減他にアイデアがねえのか」とツッコミたくなるような、
そんな感想しか思い浮かびません。
ハッキリ言って作者(十勝花子似w)の狂いっぷりの方がよっぽど
小説になるよ!という。
それでも良ければ、以下、いくつかあらすじをご紹介させて
いただきたいと思います。
表題作「いのちの電話」:あらすじ
主人公は50歳前後と思われるバツイチの女。
愛人をつくって逃げた夫から送られる生活費で、
京都市内の小さなマンションで無為に暮らしている。
一人息子は東大に合格するも、上京の日に、今後家族で
あることを止めよう、と母に告げた。
彼女は実は、祖父が発狂、父親が自殺、夫の自殺を知った母も発狂、
そして親類のもとで育てられたという生い立ち。親類や隣近所の者
たちの好奇の目から、不眠症となり、性格的に破綻していく。
看護婦になるも、長続きしない。そんなある日、自殺しようと街を
ふらついているときに知り合った、これまた自殺しようとしていた
男と心中を決意。が、決行寸前に思いとどまり、何となくセックス、
そのまま結婚。姑からのイビリ。夫の浮気、そして離婚・・・。
息子は、崩壊しきった家族を、とりわけ「きちがいの家系」である
母を憎んでいたのであった。
生来の自殺願望と偏屈な気質に加え、息子を失った喪失感が
いっそう彼女を孤独のふちに追いやっていた。
今日もまた、狭い部屋の中でうだる暑さと不眠に悩まされながら、
また自殺について考えている。そしてふと、「いのちの電話」の
存在を思い出し、電話してみる。が、相談員相手にヒステリーを
起こしてしまい、さらなる自己嫌悪に陥る。
そしてふと、東京にいる息子に会いに行こうと思い立ち、最終の
新幹線に乗り込む。
表題作「いのちの電話」:私の感想
まず、東大に現役合格したという息子が上京の日、
自分の母親に訣別を宣言するシーン。
そんなときに母親を「ママ」と呼ぶ東大生ってのは
いかがなものか。
おそらく、「高学歴=マザコン」的な極めて陳腐なバイアスが
なせるわざであろうw
それと、「いのちの電話」に電話するシーン。
相談員がきちがいのたわごとにアドバイスをしたり、
ムキになったりするんだが、これは事実誤認ではないか?
聞いた話では「いのちの電話」の相談員というのは、
『ひたすら相手の話を聞く』ことだけを要求される
仕事らしいのだが。
少なくとも喧嘩腰で反論する、というのはあそこの
相談員の服務規定に違反していると思われる。
・・・取材もなしに憶測で書くんじゃねえ!!
ってトコでしょうかw
関西には得得うどんってチェーン店があるんだ。
ひとたまでもふたたまでも値段はかわらない。
21 :
名無し物書き@推敲中?:02/03/13 14:42
おもしろそうじゃんW他のあらすじもきぼーん
22 :
名無し物書き@推敲中?:
tamori