世界で一番厳しい世界ー2ちゃんねる。
ここでくじけなかったら、何処へ行っても頑張れるだろう。
クロック(1)
チャイムが、鳴った。
篤は立ち上がり、教室を出た。手ぶらである。
まだ帰らない。用事があった。
階段を上がる。
少女が、級友らしい女子と降りてくる。篤に気付くと、
「あれぇ、畑中君カバンは?」
と言った。
篤は、無視した。
「ねぇ、今度どっかいこうよ、また三人でさぁー」
少女は、篤の背中に向って、言った。
少し、寂しそうだった。
ドアを開ける。
「よぉ、きたな」
初老の男が、篤を出迎えた。
男は、篤を上がらせ、ストーブにかけてあるやかんをと取ると、
急須に湯を注いだ。
「どうだい、最近は」
「・・・・」
男は、篤と自分の湯飲みに茶を入れた。
「まあ、そんなに神経質になることもないさ」
篤は目をむいた。
「そんなに・・!?・・はっ、あんたはいいさ・・だけど俺は・・
俺は・・・!!!」
男は慌てた。
「わ・・悪かったよ、そんなに怒るなって・・これでもおれぁ、心
配してんだぜ・・?」
ここは、用務員室である。
畳敷きの六畳で、いわば休憩室であった。
男は、神崎重雄といった。
この高校の用務員である。もう二十年になる。
重雄は、息子以上に歳の離れた篤に、諂う様に笑みを浮かべて、
言った。
「・・・まああんたにとっちゃあ、不幸だったわな・・・でもよう、
ここは一つ、運命だと思って諦めてくんねえかなあ」
言うが早いか篤は重雄に殴りかかった。
「このやろう!!殺してやる!!」
重雄は、されるがままにしていた。
「・・・くっ!!」
篤は重雄を突き倒して、部屋を出て行った。
「くくくくははははは!!!」
重雄は大声で笑っていた。
(続く・・)
なかなか謎めいてていい感じ。
がんばってね。
有難う。
みんな、寝る前に批評してくれ。
会話ごとに状況説明が入ってて見るに堪えない。駄作。
「くくくははははは」ってセリフが微妙。
ついでに言うと「俺は…俺は…!!!」だの「…くっ!」だの言う表現も
あまり好きじゃない。
>4
美しくないかもしれんけど、わかりやすくていいんじゃないか?
台詞が2つ3つ続いた後に入れる方がいいけどな。
「少女」と「級友らしい女子」の女の子人称の使い分けも微妙
>4
>次郎吉
ふんふん。なるほど。
参考になる。
もっと批評頼む。
10 :
小説 次郎吉:02/01/12 00:18
正直冒頭だけしかない作品の批評はムズいので
続きを書いて欲しい。
11 :
小説 太郎吉:02/01/12 00:20
>7 ふむぅ。
>くろとしろ 「少女」が「名前」の方が良かったか。
12 :
名無し物書き@推敲中?:02/01/12 00:23
もう少し状況描写や人物描写をした方が良いんじゃないかな。
あっさりし過ぎのような気がするな。
つうか、このレベルで連載されたら、たまんねぇよ。
ただでさえ厨房であふれてるのに、ますます板のレベルが落ちる。
出なおしてきてくれ。頼む。
>12
同意見です。
どんなストーブで、どんな状態のやかんで、
どんな急須で、どんな用務員室なのですか?
描写するならきちんとする、
リズムを保つために意図的に描写をおさえるのなら、
きちんとカットしたほうがいいと思います。
あと、ここにスレを立てなくても、虎の穴などで
創作してみてはいかがでしょうか?
がんばってください。
う〜ん、この頃あんまり「オレの小説を読め」系のスレって
いい顔されないんだよね・・・・
1さんはそのへん考えて人に最初質問した方がよかったかも。
太郎吉よ。ちみは創作文芸板で嫌われることしているぞ。
小説の冒頭だけを気まぐれで書き散らし、完結させることも
せずに、批評を求める行為だ。例えるならば、カラオケで
自分が曲を入れたくせに、ダラダラとやる気なく歌いだし、
そのくせ周りには歌を聴くことを強要し、あげくの果てに
途中でマイクを投げ出すような行為だ。
17 :
名無し物書き@推敲中?:02/01/12 00:50
>>13 同感。
まだ、「2チャンで連載してみる」という野望を
掲げる程のレベルに達していないと思われる。
12の言う様に状況描写や人物描写のないためか、
逆に話のテンポが崩れてしまっている気がする。
俺だったら「チャイムがなった」の後にそういった描写を
三行ほど入れるけどな。
↑どういう三行ですか?
よければ、描写してくださいよ。
>>18 あんま、こういうスレを育てるようなことは言わないでください。
sage
>>19 すみません。
でも、俺もすごくレベルが低いから、
勉強になるんです。
このスレは太郎吉さんの真面目さが伝わってきて、他の連載スレより
好感が持てると思うな。ただし、続きを書かないといかんよ。
22 :
名無し物書き@推敲中?:02/01/12 01:17
「…」ではなく「・・・」を用いるような文は…
連載の是非はともかく、sage進行にしたら?
続き云々もいいんだけど、ここまでで見えてる問題点を
検討してほしい。
あんまりこのスレを育てたいとも思わないけど、
技術議論をする魅力には勝てないでしょ?
>>4 前の台詞にドラゴンボールみたいに「!」を重ねといて
「男は慌てた。」はないよなあ
>>24 いやさ、まず誉める所が見つからないじゃん?
この程度の作品上げて議論するのが難しいんだよ。
文章の基礎とか、市販の本でいくらでも勉強できるんだから
せめてそれ読んで、理解してから公表して欲しい。
俺が書くとこんな感じになる。
すまん三行というより、書き直ししちまった。
チャイムが鳴った。
授業終了を告げるそれは廊下、教室、校庭と鳴り響き、
解放した空気を全校にばらまいて行った。
一瞬の弛緩、そして喧噪。
放課後特有のざわめきの中、篤は立ち上がった。
そして教室を出る。
手には何も持っていない。
まだ帰るつもりはなかった。用事あったからだ。
窓から差し込む斜陽を身体に浴びつつ、篤は階段を上がった。
用事は上の階にある。
途中、二人の女子学生が談笑しながら跳ねるように
降りてくるのに気が付いた。
その内の片方は見覚えがある。
その女子学生は篤の視線に気づくと足を止める。
「あれぇ、畑中君。カバンは?」
篤は視線を逸らした。
そして無言で、その女子学生の隣を過ぎ去る。
「ねぇ、今度どっかいこうよ、また三人でさぁー」
少女は、篤の背中に向って、言った。
少し、寂しそうだった。
>27
文学っぽくっていいけど、なんかカタイ感じがする。
当たり前すぎるんじゃないかな。上手いけど。
今は「きゃい────ん☆!!」とかそういう文体が幅を利かせているから
読まれにくいんじゃないかな。文体くらいは本人の好きにさせたら。
完成させるまでは、
>>27のような餌を与えてはいけません。
>>17 ありがとうございます。
なんか、すごいですね。参考になります。
俺もちっとだけ書いてみました。はずかしい。
チャイムが鳴らされ、生徒たちの顔に笑みがこぼれる。
机と椅子ががたがたと音を立て、かるい足取りで男子たちが出ていく。
残った生徒たちの間では、とりとめのない雑談がかわされはじめる。
テレビ、部活、新しくできたテーマパークの話題。
しかし、それも篤の耳には入らない。考えこんでいるような顔つきでじっと
黒板を見すえている。そしてやがて、意を決したように席を立ち上がると、
カバンも持たずに教室を出る。
すみません。調子に乗りすぎました。
つたない文章だから、すごく恥ずかしい。
しかも、
>>14のレスとは矛盾したことやってるし。
32 :
小説 太郎吉:02/01/12 02:12
二話めが、「改行が多すぎます」と出て消えました。
一時間が泡となりました。
その間に、こんなにレスが。
むぅ。やはり2ちゃんねる。胸がいてぇ。
でも、最後まで書きます。
えーとね、だから、sage進行にした方がいいですよ。
こういうのは、ひっそりマターリやるのがおすすめでし。
>>32 ちょっと待て。
推敲もせずに行き当たりばったりで書いてるのか?
そんなもん、駄作になって当然
ブコウスキーもいきあたりばったりみたいなもん。とにかく続き書いて。
>>34 このしとは勢いでいいでし。勢いで最後まで書く!書き上げる!
これでし。これがいわゆるひとつの成功体験というやつでし。
今から寝るでし。朝までに書き上げておくようにするでし。
ひとつアドバイスすると、どんな形でもいいから、とにかく最後の
終わりかたを考えておくでしw。でないと終われないでしw。
完成してたら感想かくでし。
37 :
小説 太郎吉:02/01/12 02:27
クロック(2)
運命というものが、ある。
「寿命」も、そのひとつだろう。誰にも変えることができない。
重雄は、ガンを宣告された。
二ヶ月前の事である。
重雄は、愚鈍ではあったが、真面目で、人にも好かれていた。
しかし、関係無かった。
悪人でも、百まで生きる。生まれてこなかった善人もいる。
重雄はそういう運命だった。
>32
せめてメモ帳とかに書いて保存してからアップしたら?
一時間書けて書いたもの見たかったな。
句点が多目なのが気になるけど、まあ頑張って。
なんか、クロック(1)と(2)は、別の作品みたいなトーンですね。
sage
下げろっつうの。メール欄にsageって書くんだよ。
あと、最後まで書きますじゃねえだろ。他の人のレスちゃんと読め!
いきあたりばったりで書かないで、できあがってから自分でよく熟考したものを出せよ!
それもしないで、人に添削してもらおうなんて甘すぎんぞ、てめえ。
もしかして、太郎吉さんサゲ方しらない?
42 :
小説 太郎吉:02/01/12 02:42
あのうすいません。
一晩一話位のペースで、一週間位かかるかと・・・
文芸サイトにも連載してましたが、一ヶ月位
かかりました。
でも完成させましたから、途中で放り出す事は、無いです。
ちなみにいつも行き当たりばったりです。
構想立てても、書き出すと違う話になるんです。
批評は、その場では受け入れて無くても、自分の中で消化しきれたら
受け入れるので。意見は無視しません。時間がかかるだけで。
情景描写不足等の意見、大変参考になります。
拙く、批評の対象にならないかもしれませんが、描きながら上手くなり
たいと思っていますので、どうか宜しくお願いします。
>>42 君は名前欄に「小説 太郎吉」と書いたね。
その横にE-mail欄があるだろう。書き込むボタンを押すときは
名前だけでなく、そこに「sage」と書きなさい。
そうすれば皆の迷惑にならずに連載が続けられるから。
44 :
名無し物書き@推敲中?:02/01/12 02:57
別に迷惑じゃないよ、今んとこ重要なスレあがってないし。
>42
行き当たりばったり道でがんばれい。
45 :
名無し物書き@推敲中?:02/01/12 03:03
俺が上げちゃったよ…
>>42 他人の意見を採り入れて自分のものにするのって、難しいですよね。
描写が甘いなんてことは、本人でもわかることが多いじゃないですか、
本読んでて、ある程度自分の作品を客観的に見つめられるのなら。
だから、指摘されても素直に耳をかたむけることができるけど、
その先が進まない。時間がかかるし、かなりしんどい。
才能がある人は別にして、推敲って作業は根気がいるし、なにより
モチベーションを持続するには、書くための決意、みたいなのが必要。
それに、自分の文章で何を表現したいか、
他人にどう表現し、どう伝えたいかって、日頃から考えておくことも。
偉そうに言ってるけど、俺にはそういうのが足りてないです。
でも、1さんは大丈夫そう。真摯な姿勢と、ひたむきさがある。
いつかきっと花開くと思う。
↑
読み返したはずなのに、二行目に「こと」ってのがかぶってる。
自分でつくづく嫌になる。すみませんね、この板でこんな文章読ませて。
クロック(3)
重雄は、荒れた。
今までの自分を否定するような行為を、幾夜も繰り返した。
女も買った。
家族は重雄を見捨てた。
重雄は、正に人生の底辺に、いた。
篤と出会ったのは、そんな折のことだった。
「やっぱさぁ、山がいいよ、やま」
「蚊に喰われる」
「あたしも山がいい!だって泳げないもん」
「はいニ対一!あんたの負け〜!!」
映子は、嬉しそうに手を叩いた。奈津美もそれに、倣う。
篤は頭をかいた。
奇妙な関係だった。
篤には、彼女がいた。
そして、映子や奈津美にも、彼氏がいるのである。
友達とは少し違っていた。
しいて言うなら「兄弟」、に近いかもしれない。
今も、こうして三人は夏休みの旅行の計画を立てている。
楽しそうだった。
映子が立ち上がる。
「じゃ、二十一日、朝六時に駅前でね」
「しつこいって」
「だって畑中君、頭悪いじゃん?」
「そうそう」
奈津美も合いの手を打った。皆、笑った。
程無く三人は別れた。
だいぶいい感じになってきたね。ただもう少し、どういう場所にいてどういうキャラ
なのか(髪型はどう、服装はどうとか)があると読み手は想像しやすいと思う。
あえて書かない作品も多いけど、端的に触れるくらいにはした方がいいかな。
読点の場所がおかしい。まず声に出して読み、読点があることでテンポが
悪くなりそうなら付けない。ちょうど息継ぎする所で付けてみて。
あと、ここが掲示板だからかもしれんけど改行が早すぎる。
> 映子は嬉しそうに手を叩いた。奈津美もそれに倣う。篤は頭をかいた。
> 奇妙な関係だった。篤には彼女がいた。そして映子や奈津美にも彼氏が
いるのである。友達とは少し違っていた。しいて言うなら「兄弟」に近い
かもしれない。
> 今も、こうして三人は夏休みの旅行の計画を立てている。楽しそう
だった。映子が立ち上がる。
(三段落目に、ちと無理があるか)これで良いと思うよ。
>>49は、いまいち小説に見えない。なるべく「連続した一つの物事」は
同じ段落で語ってくださいな。分けるのも手だけど場合による。
!のあとはスペースを一つ空けるなり。「〜です! だけど〜」こうね。
「・・・」は三点リーダー→「……」を使うべし。
ひらがなで「てん」を変換する。
ついでに篤を主人公に、一人称で書いた方が良いよ。
三人称多視点(に見えるが…)はレベル高すぎです。
てーか、「小説の書き方」みたいな本はみたことないの?
傷付くだけだから、この段階で発表するのは止めときなよ。
上の方にあるレス、いくら太郎吉が丁寧な受け答えしてても
「人の添削や批評に甘えるために無理矢理続けてる」って感じもする。
優しい人もけっこういる板だが、頼りすぎだよ。
クロック(4)
夕暮れが、街を染めていた。
商店街が活気付く時間帯である。篤は、人込みをぬって歩いた。
夏休みが近いせいか、自然と、子供達の顔が綻んでいるように見える。
篤は上機嫌だった。
熱さも、人の多さも苦にしない程余裕が有った。篤は血の気が多かったが、今なら、
人に絡まれてもやんわりと謝る事が出来そうだった。
信号で足を止める。
国道で、車の往来がはげしい。篤は、行き交うそれらを眺めながら、次の夏は免許を
取りに行こう、などと考えた。信号が青に変わると、篤は、誰よりもはやく横断歩道を渡った。
>40
>51
そのとおりです。40さんの言葉は、正直泣きそうになりました。
しかし、一番胸に響きました。。
51さんの言うように、小説のいろはも知りません。
出直した方がいいのかもしれませんが、でも、それはできません。
最後まで書きたいんです。
私的に板を使って大変申し訳ないと思っています。
行き当たりばったりですが、決して適当に描いている訳ではないんです。
それだけは分って頂けたらと思います。
クロック(5)
重雄は、河原に寝そべっていた。
髭は伸び、服も乱れ、汚れていた。乞食同然の格好といっていい。
人は近寄らないだろう。重雄も、それを望んでいるようだった。もう三日も家に帰ってない。誰とも触れ合いたくなかった。
「死」
を背負ってしまった重雄には、誰もが疎ましく、憎らしく、家族でさえも憎悪の対象になった。
家を出る前、必死に気遣う妻を殴り飛ばした。結婚以来初めての事だった。
すっかり人が、変わってしまった。
元々そういう人間だったのか、「死」に対する恐怖が重雄を豹変させてしまったのかは、この際どうでもいい。
要は、ここにひとつ残骸が有った。
生きながら腐臭を発していた。これほど惨めなものは無い。河原の雑草や、川のにおいが僅かにそれを打ち消していた。
読んでるよ。はよ書けw
クロック(6)
無視すればよかった。
哀れみだろうか。人は、幸福なときに道を踏み外すものかもしれない。
篤は、重雄に気付いた。
帰り道である。橋を渡るとき、何気なく河原に目をやると、ぼろきれのような重雄が転がっているのが見えた。
重雄とは面識があった。
一度、映子らと宿直室で茶を馳走になった。談笑し、気分良く別れたのが半年前である。
それ以外でもゴミ捨てなどの時に会い、軽く立ち話をする間柄だった。それ以上でも以下でも無い。
篤は橋を戻り、階段から河原へ降りた。
「神崎さん」
篤は軽く笑みをこぼして話し掛けた。状況が普通でない事は察知していた。笑みは、気遣いである。
重雄は反応しなかった。聞こえていた筈である。無視していた。
「あの……どうかしたんですか?」
馬鹿げた質問なのは分っていたが、他に言葉が浮かばなかった。かといって、沈黙に耐える事も、無視して上へあがる事も、篤にはできなかった。
重雄は、答えない。
篤は苛立った。やはり、声をかけるべきではなかったと思い始めていた。風が、二人の間を駆け抜けていく。生温かった。
五分、経った。
篤は限界に達した。重雄に背を向けて階段へ向った。その時、
「あんたはいいよな」
と声がした。しゃがれて、耳障りが悪い。篤は、足を止めた。
重雄は、ゆっくりと、朝、寝床から起き上がるように身体を起こした。篤のほうは見ずに、川に向ってぼそりと呟いた。
「あんたは、いい」
篤は、不快になった。重雄の言葉には、よどんだものが充満していたからだった。
不機嫌を隠さず、篤は問い返した。
「なにがです?」
「未来がある」
重雄は立ち上がった。だが、まだ篤を見ようとはしない。篤は、重雄の言わんとする事が何となく解った。
(愚痴か)
大方家で、夫婦喧嘩でもして、その際に甲斐性の無さでも論われたのだろう、と解釈した。ありふれた話である。
篤は、この哀れな老人を慰めてやる事にした。
「何言ってんですかぁ神崎さん……まだまだ人生これかれっスよ!」
と、ひどく軽い調子で言った。これが、まずかった。「残骸」と化した男の逆鱗に、触れた。
重雄は、ゆっくり振り返った後、篤を睨みつけながら、言った。
「なんだと……貴様、適当なこと言うんじゃねえよ」
また明日、書きます。
やっぱり三点リーダだときれいって気がする。
まあ続けて書いてみて。
しかし本当に人の意見を取り入れる人だ。今時珍しくて清々しいくらいだ。
ホント、その辺にいる厨にこういう態度を見せて小一時間程説き伏せたい。
だからよう、三点リーダーなんてどうでもいいから描写を見習えYO!
27と30が書いてるじゃねえか。27のはちょっとむずいかもしれんが
30のレベルならなんとかなるだろう?
このままじゃあ見るにたえんよ。
60 :
名無し物書き@推敲中?:02/01/13 14:01
↑
参考にならないでしょ。
どっちもレベルが低すぎて。
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>>60 27は大丈夫だろ。30は短かすぎてようわからん。
どうでもいいけどageんな。
篤は、「鬼」というものを見た事が無い。
しかし、それはまさしくこのような顔をしているのではないか、と思った。
憤怒である。それ以外の何物でも無い。篤は身震いした。
「あ……?『これから』だと? はっ……! 笑わせるんじゃねえよ!!」
篤は動けなかった。重雄に、胸倉を掴まれているような気がした。
重雄は天を仰いだ。紅く染まっている。その彼方に向って、重雄は、吼えた。
「なんで……なんでおれなんだ? ほかにもっといるじゃねえか……ぼんくらがよお!!」
重雄は叫びながら泣いている。異様な風景だった。篤は呑まれてしまった。次の己の一挙手一投足が、刃となって返ってくる気がして動けなかった。一種の防衛本能かもしれない。
川はとうとうと流れている。風も無関心に雑草を揺らす。篤は、自然がうらやましかった。
重雄は吼えるのをやめた。
一瞬の静寂だった。しかし、篤はその一瞬の内に、この世の全ての風景が、息づくのをやめたような気がした。
(死神―)
紅く染まった重雄は、まるで、返り血を浴びた悪魔そのものだった。篤は魂を掴まれた。
そして―
とっさに浮かんだこの言葉は、篤の、これからの人生を左右する存在になる重雄へ対する、ささやかな贈り物となる。
この時をもって、篤と重雄の「運命」は、交錯した。
64 :
名無し物書き@推敲中?:02/01/13 15:23
これって、何系?
純文じゃないよねえ?
63は時代小説みたいな文章だな。
65 :
名無し物書き@推敲中?:02/01/13 15:43
>>60 27は筆が硬すぎて好き嫌いが分かれるかもしらん。
30は軽いけど読みやすいから、あんがい受けはいいかも。
漏れはこれが個人的には好き。
あと、何人かが指摘しているとおり、太郎吉の文章は
統一感がない。もしかして別人が書いてるのか?
クロック(8)
「え〜! 行かないって、どういうことよ!?」
受話器の向こうで、映子が喚いている。篤は、「体調が悪い」「夏風邪だ」等ありったけの言い訳を尽くし、説得した。映子は諦めたのか、声のトーンを落として、言った。
「奈津美にはあんたから言っときなさいよ」
電話は、切れた。篤は溜息をつき、廊下に座り込んだ。ひんやりとして、心地よい。
メモ帳をめくりながら、篤は二人のことを考えた。
山下映子と河奈津美―
ふたりと知り合ったのは、中学三年の時だった。きっかけは忘れたが、映子のカラカラッとした笑い声が、胸に残っている。
映子は、バレー部だった。主将で、当時、もう引退していたが、教室に訪れる後輩達の多さが、映子の人柄を物語っていた。
男子の人気はかなりのものだった。性格は明るく、ショートカットで、笑うとえくぼができる。美しく、すらりとした肢体は当時から羨望の的であった。成績はさほどではなかったが、反ってそれが良かったのかもしれない。
篤は、この美少女と男子との間を、何度も橋渡しをした。
この少年は、頼まれると断れない所が有った。無論、誰にでもという訳ではないが、友人の頼みは、殆ど受けた。それに、
「お前、山下の事好きなのか」
と言われると引き受けざるをえない。当然嫌いな訳は無かったが、この場合の「好き」に当てはめたくなかった。ひどく安っぽい気がしたのである。
かくして、そのうちの一人と映子は付き合いだした。
それが今も続いている。その彼氏が、篤と映子の付き合いに口を出さないのも、これによる。少なくとも、愚痴程度に留めていた。
時折冗談混じりに、
「あんたばっかよね……わたし、あんたのこと好きだったのに」
と映子が口にする度、篤は動揺を隠す為苦労した。
>65
全部、僕が書いています。
統一感が無いのは、意見によって試行錯誤しているからだと思います。
今日は休みなのでまた、書きます。
68 :
名無し物書き@推敲中?:02/01/13 16:30
↑
意見によって試行錯誤? ほんとかよ? すげーな。
おい、みんな、もっといろいろと批評してやれよ。
てゆーか、あんたも虎穴に出せばいいジャン。
69 :
名無し物書き@推敲中?:02/01/13 16:37
じゃ、非表シマス。
読むに堪えない。
登場人物
畑中篤
高校生。本編の主人公。ガンを宣告され絶望していた神崎重雄と出会う。
神崎重雄
畑中篤の通う高校の用務員。二ヶ月前にガンを宣告され、死に対する恐怖から荒れた生活を送るようになった。
山下映子
畑中篤の友人。数年前まで畑中篤のことを好きだったが現在は畑中篤の取り持ちで別の男と交際中。
河奈津美―
畑中篤の友人。
71 :
名無し物書き@推敲中?:02/01/13 16:44
書き終わって虎穴に投稿したら呼んでね。
それじゃ、バハハーイヽ( ´∀`)ノ
72 :
名無し物書き@推敲中?:02/01/13 16:46
さきにプロットだけ書いてくれよ。
文章読むのがきついからさ。
そのプロットをほかの奴らがなぞってなればいいじゃん。
27とか30みたいなおせっかいなやつがさ。
篤は、奈津美のアドレスをながめていた。
他の乱れた文字の中で、明らかに浮いていた。達筆だが、奈津美の高踏ぶらない人柄がにじみでるような文字で、篤は可笑しくなった。
奈津美は秀才だった。
中学でもトップクラスの成績で、何処の高校も確実と言われていた。
が、現在、篤と映子と同じ高校に通っている。
中程度の公立で、奈津美が行くような所ではなかった。別に奈津美の成績が落ちたわけではなく、奈津美の意志だった。
「あたしのすきにさせてください」
と、両親や教師に懇願した。双方困り果てたが、奈津美の熱心さに、やがて折れた。
理由はなんだったのか。
篤には解らない。頭の良い人間の考える事は、理解できない所があるからな、と処理していた。しかし、一方で、もしかして自分に好意を抱いているのではないか、という妄想も捨てきれなかった。
が、所詮妄想である。奈津美には当時から彼氏がいた。
橋渡しは、篤である。
しかし、映子の場合とは少し違っていた。奈津美から、好きな男がいるから相談にのってほしい、と頼まれたのである。篤は引き受けた。
ただ、映子には内緒にしてほしいと言う事であった。理由は解らない。篤は前述通りに解釈し、詮索しなかった。
ふたりだけで、篤は週に二、三度相談を受けた。
場所は、学校の帰り道にあるちいさな公園だった。人工でない緑が残る、美しい場所である。寂れているわけではないが、いつもひと気は少ない。ブランコに揺られながら話す二人は、傍から見れば恋人同士に見えなくも無かった。
「ね、どうしたらいいかしら」
そう言って覗き込む奈津美の顔は、可愛かった。大きな眼が絶えず動き回っていて、目標を見つけると今度は、じーっ、と見つめ続ける。小さな子供のようだった。
クラブには入っていない。塾を掛け持ちしていたらしい。小柄で、映子に比べると見劣りするが、柔らかそうな身体は、胸を突くものがある。
活発ではなかったが、影は無く、その笑顔は、充分人を惹きつけた。
篤は、心臓の高鳴りを抑えつつ、平静を装ってこの少女の話を聞いた。
結局、奈津美は相手を射止めた。
篤は、喜んでいいのかどうか解らなかった。「相談」の為にふたりで会っていた一月ほどの期間が、まるで、短かった蜜月のように感じた。
それから。
高校生になり、篤にも彼女ができた。
よかったのかもしれない。ふたりへの思いを断ち切る、いいきっかけとなった。と、篤は思っている。
篤は手帳を閉じ、電話のボタンを押した。
ageてる人らのいうことは、ageてる時点で説得力がないね(プ
>63
>73
(7)と(9)が抜けてました。まあ、どうでもいいかもしれませんけど。
(10)書きます。
クロック(10)
コールは三回で止んだ。
「はい。河です」
篤は何故か、この奈津美の声を聞くと噴出してしまう。それで、奈津美には篤だと解った。
「ああ、あっちゃん? だから、なにがおかしいのよ、笑わないでって言ってるのに……」
篤はいつものように、ゴメンゴメンと軽い調子で謝ってから、本題に入った。
「実はさ、旅行、行けなくなった」
「……」
受話器の向こうが静かになる。奈津美は、映子のように「なんで」「うそぉ」という言葉を用いる事は無い。この場合に限らず、人の言葉の真意を、ひとつ、ひとつ吟味しているように思えた。
数十秒程で、奈津美は、カラッとした声で言った。
「そっか……ざんねんだけど、またこんどね」
奈津美のこういった、詮索せず、相手の意向だけを汲み取る態度は、母性的であった。篤は、母親に甘える子供のように、全てをさらけ出したくなった。
「……ちょっと悩みがあるんだよ」
夏休みに入る前。
篤は、学校で皆と旅行の計画をたてた日の帰り、重雄と接触した。
それ以来、今日まで、重雄に会う事は無かったのだが、あの日の重雄の姿が、胸に焼きついて離れなかった。
(嫌な予感がする)
あの日に、重雄に胸座を、いや魂を掴まれたままのような気がして、落ち着かなかった。なんともいえない不快な気分だった。旅行などに行く気には、なれなかった。
その旨を、たどたどしい言葉で奈津美に伝えた。篤は、奈津美のように頭が良かったら、と舌打ちした。
奈津美は黙っていた。そして、数分後、ポツリと呟いた。
「あっちゃん……だいじょうぶ?」
これが映子なら、「アタマ、大丈夫?」という意味に採れた。しかし、奈津美の言葉は、そんな類のものではなかった。篤の身を、ふかく、心配していた。
篤は、
「大丈夫だよ」
と言った。しかし、全く根拠が無い言葉だと、自分でも思った。
受話器を置いてから、篤は、自分の身体が、少し震えている事に気付いた。
篤の予感は、あたった。
事件が起きたのは、それから一週間後のことだった。
その日は快晴で、気温は三十度を超えた。篤は、彼女とプールに来ていた。
といっても市民プールである。篤金は小遣いだけで暮らしているので、金が無かった。
「篤ってさあ、まだあのコらと付きあってんの?」
水の中で漂いながら、美紀は尋ねた。篤も、水に浸かっているだけで泳いではいない。
人が多すぎた。
さして大きくも無いこのプールは、暑さを嫌う大人や、暴れまわる子供、そして篤らのような金の無いカップルで埋もれていた。
篤は、美紀の言葉を無視するように、水中へ潜った。無数の足。脚。篤は目の前を通り過ぎた女子高生らしい脚に、目を奪われた。
次の瞬間、美紀が篤を引っ張り上げた。
篤は、いつもこの美紀の問いには苦労していた。
皆、同じ学校である。が、クラスはばらばらだった。美紀には、篤が話さない限り、映子らとの接触が分らなかった。尤も、篤は三人で学校内で会う時、細心の注意を払っていたのだが。
「あんた……本気で男女の友情なんて信じてるクチ?」
その言葉には、完全な否定が言外にあった。いつものことながら、篤は、少し腹ただしくなった。
「ほっとけよ」
と、少し強い口調で言った。美紀は、眉をしかめた。そして、持ってきたゴムボールで、篤の頭を数回殴った。
篤も苛立っていたので、
「てえな! なにしやがる!」
と怒鳴った。美紀は一切引く事無く、水面を叩きながら、言った。
「可笑しいと思ったのよ……美人だもんね、あのコ達……あのコらに比べたら、どうせ私は……。けどねえ、あんただってたいした事無いじゃん! もっとさぁ、身の程をしったら?」
篤は、美紀の頬を叩いた。
美紀は、涙目になってプールから上がり、人込みの中を駆けていった。篤はボールを放り投げた。
これが、二人の今生の別れとなった。
>77
また(11)付け忘れた……。
>77
すみません。三行目 篤金は… になってますね。篤の間違いです。
疲れてきたので休みます。
おいおい。
推敲どころか読み返してもいねーのかよ!!
>80
読み返しているのですが、昼からパソコンの前に座っているので、疲労で見落としてしまいました。
以後気をつけます。
47のやつが甘い文章は自分でもわかるって書いてるけど、
太郎吉、おまえ、わかってないだろ?
おまえって、幾つなの? 若いだろ?
こんな糞スレ見なきゃいいんだろうけど、俺もおまえみたいなとき
があったから(五、六年前くらいか)、気になるんだなあ。
>77
三行目じゃなくて四行目でした。
返す言葉もありません。反省してます。
>82
22です。
やっぱ、若いね。
どうせ、プロットを早く早く書きたくて、
描写ができないんだろ?
俺はそうだった。
すんげープロットができててさ、そいつを早く書きたいばっかしに
文章をおろそかにしてた。
太郎吉くん、きみのプロフィールが知りたいナリ。
好きな作家は? 何冊くらい読んだ?
いつから創作をはじめた?
そういうのが知りたいナリよ。
拙者はきみの応援者ナリよ。
>86
有難うございます。
今まで読んだ小説は、お恥ずかしいのですが、五十冊に満たないと思います。
二十歳になるまで、漫画しか読みませんでした。
某文芸サイトに投稿したのが、書き出したきっかけです。
好きな作家は、司馬遼太郎です。といっても読んだのは「北斗の人」だけです。
ああいうあっさりした描写が、僕は好きです。
>86
書き出した時期は、去年の十一月頃です。
まあ何でもいいよ。とにかくこの文芸板を利用して(目立たないようにsageで)、
上手くなっていけばいいじゃん。がんばれい。
ホントは上手くなってもらうより、面白くなってくれた方がいいけどな……。
その辺はいろんな意味で経験積んでいくしかないよな。考えるだけじゃ限界があるし。
クロック(12)
その日は、朝から雨が降り続いていた。
夏も終わろうとしている。篤は、部屋で涼んでいた。
篤の家は小さな四階建ての集合住宅で、コーポと言ってもよかったが、表記はマンションだった。
四畳半の部屋は、きちんと整頓されている。別に篤が綺麗好きな訳ではなく、母親が毎日掃除するからだった。
篤は読んでいた車の雑誌を放り投げた。
床に寝そべったまま、首を持ち上げ窓の外を見た。雨はしとしとと降り続いている。止みそうに無かった。
窓をつたって流れ落ちる雨粒をぼんやり見つめながら、篤は美紀のことを思い出していた。
プールの一件以来、電話もかかってこない。篤も、かけなかった。が、篤の場合は、単に気まずかったからである。
(頑固女め)
篤は、溜息をついた。
腹ただしかったのは最初の数日だけで、後は後悔だけが残った。なぜ打ってしまったのかとしきりに反省した。
美紀と知り合ったのは高校一年生の時だった。席が隣で、親しくなるのに時間はかからなかった。付き合い始めたのも、ごく自然の流れによる。
ふたりは似た者同士で、良くも悪くも、あっさりして拘りが無かった。
「あんたの背伸びしないとこが好き」
と美紀が篤に言った言葉は、篤の美紀に対する想いでもある。
容姿は、映子や奈津美に比べると劣る。しかし篤は、美紀の自分に似た性格や、何気なく髪をかき上げる仕草などが好きだった。
(電話……してみようか)
篤は、窓の外のよどんだ雨空とは裏腹に、すっきりした気分で立ち上がった。美紀にかける最初の一言を、心の中であれこれ考えながら部屋を出た。
クロック (13)
七回、鳴った。
美紀は出なかった。留守だろうか。「後でかけなおそう」と、篤は受話器を置いた。
次の瞬間、コール音が鳴り響いた。
ドクッ!
篤の心臓が、鳴った。コールに驚いた訳ではない。
(とったらだめだ)
とっさに、思った。しかし、篤の意志とは無関係に、篤の手は受話器をとった。
「……はい」
篤が出ると、受話器の向こうから、静かだが重い空気が伝わってきて、篤は思わず唾を飲み込んだ。
そして、弱弱しく、枯れた声が耳を伝った。
「あの……田所です」
美紀の母だった。篤は、これだけで、鼓動を抑えることができなくなった。
(ドクッ……ドクッ……ドクッ……ドクッ……)
間は、数秒に満たなかったが、篤にとって無限のように感じた。
篤は、それに耐えかねて、言葉を吐いた。
「な……なんでしょうか」
「娘が……美紀が……しにました」
次の瞬間、篤は受話器を置いた。
胸が高鳴る。心臓が飛び出そうに鳴った。篤は床にのたうち、それから吐いた。
(なんだ……何を言ってる……「しんだ」って? しんだ……死)
汚物に塗れながら、篤は高鳴る心臓と、反して酷く冷静な頭で考えた。やがて、理解した。
「美紀……」
涙が頬を伝って、汚物の海に混じった。その量がどんどん増える。
篤は血が、全身を駆け巡る様を感じた。
見開いた目には、美紀の拗ねた顔が映った。
「俺は……お前の事が好きだったんだよぉ……ウソじゃない……ウソじゃ……」
篤は大声を上げて、泣いた。汚物の匂いだけが、篤をやさしく包み込んでいった。
クロック(14)
篤は、人の生死について深く考えた事は無い。
尤も、生気に満ち溢れている若者は、皆そうかもしれない。
彼らには未来があった。僅かな過去は、光り輝く天を仰ぐ為の足場に過ぎない。足場は、足場である。目を向ける必要は無く、ただ踏みしめてさえいればよかった。
しかし、今、篤は「足場」に目を向けた。
身近な者の死が、篤に己の過去を反省させた。僅かながら、自分の歩いてきた道のりをひとつひとつ、篤は確認せずにはいられなかった。
(人は死ぬのか)
当たり前のことを、篤は美紀の葬式の間中、何度も考えた。葬儀は、美紀の自宅で行われた。篤は、美紀の家に来た事が無かった。これがはじめてである。
美紀の家は、大きかった。
和風建築の平屋で、部屋の数は、七つほどある。その中の、十二畳の和室で美紀がねむっていた。
弔問客は、親戚と、美紀のクラスメイトやクラブ仲間、それに教師たちが訪れていた。
(………)
篤は、ぼんやり部屋を見渡した。
喪服の人々、線香の香り、花、そして美紀の横たわる、木の棺。大きな写真がその上に掲げられている。写真の中の美紀は、無邪気に笑っていた。
篤は焼香のため立ち上がった。脚が痺れていたが、縺れるほどではない。ゆっくりと、「美紀」に近づく。
………
焼香は一瞬で終わった。しかし、篤は席へ戻らず、そのまま目の前の棺に目を落とした。
棺は、美しかった。
死因は、駅の階段から転落した際に、頭を強打した事であるらしい。二日前、友人と行った遊園地から、帰る途中のことだった。
(美紀……)
本当に、死んだのだろうか。篤には信じられなかった。人は、こんなにあっけなく、命を終えるものなのか。
(まるで虫けらだ)
と、篤は思った。どこかで、人間は特別だという思いがあった。しかし、単なる生き物だということを、篤は認識せざるをえなかった。
篤は美紀の顔を見なかった。ただ、他の弔問客の誰よりも長く棺の前に立ち尽くしていた。帰り道、篤は蒸し暑い街の中を歩きながら、涙を流さず泣いた。
クロック(15)
夏休みが終わり、新学期が始まった。
九月の末にもなると、夏服の者はいなくなり、風景も秋に染まってゆく。篤は鬱になっていた。
友人とも、クラスメイトとも交わらず、クラブも辞めた。皆、理由は分っていたので詮索しなかった。
ただ、映子だけは違っていた。
この少女は、篤の態度が気にくわず、何度も発破をかけた。時には篤の傷口を開くような素振りも見せ、周りの者はひやひやした。が、当の篤は、
「ほっといてくれ」
の一点張りだった。その声は、覇気が無く、死人のようだった。
映子は、悲しくなった。
映子にとって、篤の存在は友人以上だった。好き嫌いを超えた、「家族」のようなものだった。美紀とは顔を知っている程度の面識しか無く、正直、映子は篤を腑抜けにした美紀を、恨んだりもした。
奈津美に相談しても、「そっとしておいてあげよう」と言われるだけであった。映子は、腹が立ってきた。
(みんな、薄情だわ)
映子の観念からすると、周りの者の態度はそう映るらしかった。映子はある決心をした。
放課後の事だった。
チャイムとともに、皆クラブや遊びへと散らばってゆく。それぞれが若者らしく、活気付いていた。
篤だけが、違っていた。
だんだんと静かになってゆく教室の、窓際の一番後ろの席で、ひとり、篤は眠りについていた。
窓からの暖かい日差しが、篤を包む。篤は胎児になっていた。
(このまま死ねたらどんなにいいだろう)
死ねば、美紀とも会える。そしたらふたりで仲良く暮らそう、などと篤は妄想した。
生きる屍だった。
重雄がそうであったように、篤は最愛の者を亡くす事により、自身の人生を放棄した。
後は朽ち果てるのみである。その日は、遠くなかった。
篤が本当に眠りにつこうとした時、教室のドアが開いた。映子が立っている。
映子は篤を見つけるや否や、篤に向ってズカズカと歩いてきた。篤は関心を示さなかった。
篤の前に立つと、映子は、
「あつし」
と呼んだ。
篤は顔を上げた。篤を「あつし」と呼ぶのは、美紀しかいなかった。一瞬、美紀が帰ってきたような気が、したのだった。
が、前に立っているのは映子である。篤は、自分で自分が可笑しくなって笑ってしまった。
「なにがおかしいのよ」
映子はそう言いながら、久し振りに見た篤の笑顔に、安堵した。
「まあいいわ……ね、わたし決めたから」
「? ……なにを」
「あつし」
もう一度、映子は言った。映子は篤の事を「畑中君」と呼ぶ。名前で呼んだのは、これが初めてではないだろうか。
映子は呼吸を整えて、一気に、口走った。
「わたし……あんたの恋人になるから」
クロック(16)
篤は閉口した。
映子は篤に「恋人になる」と言った。聞き間違いではない。
「もう決めたから」
映子は、篤を見下ろしながら、言った。冗談だろうか。篤は映子を見た。その顔は、笑っていない。
篤は立ち上がった。言葉の真偽はともかく、映子の真剣な眼差しが、今の篤には耐えられなかった。
映子の横をすり抜け、ドアへ向う。映子は追いかけなかった。ただ、篤が教室を出る際、ポツリと言った。
「わたし、篤のこと好きだから」
篤には聞こえないほどの、小さな声だった。篤は足を止める事無く教室を出た。窓の外は、もう陽が落ちかけていた。
クロック(17)
それから、数日が過ぎた。
秋の色は一層深まり、景色もそれらしくなっていく。色付いた落ち葉が、雨に濡れた小道を埋めていた。
映子と篤は、「恋人」として歩いていた。
篤は映子を受け入れた。何の抵抗も無かった。周りは不謹慎だと思ったことだろう。しかし、今の篤には周りを気遣う余裕など無かった。
つまりは、やけくそである。
映子を好きか嫌いかと言う事は関係無かった。篤は、単に「安らぎ」を求めて逃避したに過ぎない。
映子も、それでよかった。
「家族」としての思いやりは、そういうものだった。一切の打算は無く、受け入れる。やはり映子は篤を「異性の他者」としては見ていなかったのだろうか。
ふたりは、公園に入った。
学校帰りであったので、もう陽は暮れていた。映子はベンチに腰掛けた。篤もそれに倣う。
「やっぱ、いいよねぇ」
映子は、誰もいなくなった公園を眺めながら言った。椅子の壊れかけたブランコ、ペンキの剥げ落ちた滑り台、そして、子供達が忘れていったのだろう、バケツやスコップの散在した砂場。山も、残っていた。
映子は立ち上がり、滑り台へ上った。子供の為のそれと映子は、明らかにアンバランスであった。映子は滑り台の上から、景色を望んだ。
映子の目に、夕暮れに染まった街が映る。公園は高台にあったので一望できた。
「わたし、この街って好き」
そう言って、映子は滑り台を駆け下りた。滑るには、映子は大きすぎた。
滑り台の下には砂場がある。映子は、足元のスコップを拾った。そのスコップで篤を手招きした。
篤はのろのろと立ち上がり、砂場へ入った。映子は篤にスコップを手渡した。
「お城、作ろう」
映子はそう言って、残されてあった砂山をを削り始めた。砂は雨で湿っていたので、やりやすかった。
篤は黙って砂を掬った。映子も無言である。ふたりは「恋人」となってから万事この調子であった。ただただ、このような児戯めいた事を繰り返すだけで、およそ世間一般の「恋人」には程遠い。これが、ふたりの互いの思いに対する「答え」だった。
やはり、篤と映子は、美紀の一件のあるなしに関わらず、互いに「恋人」にはなれない存在であったのかもしれない。そう覚ったとき、映子は、抑えることができなくなった。
「……うっ」
映子は泣いた。泣きながら、山を削った。篤は終始黙ったまま、砂を掘ったり、山に穴を空けたりしていた。
クロック(18)
結局ふたりは「別れ」た。
その後僅かな期間を置いて、普通の友人に戻った。呼称も「畑中君」になった。あっさりしたものだった。
(やはり「運命」というものはあるのかもしれない)
美紀の件、映子の件で篤はそう思うようになった。絶対的な道が、この世に生まれた時点で足元に敷かれているのではないか。
篤のこの「思想」は、能動の放棄でもあった。
何をしても同じなら、何もしない方がよい。怠け者や、人生の落伍者に余ほど都合のよい論理であった。
「運命論者」を貶める気はないが、このようなものに端を発している場合が多いのは否めない。篤はその一人だった。
冬が、近付いた。
学校も、あと少しで終わりである。街には気の早いクリスマスソングが流れ出した。
篤は、相変わらずであった。
映子のおかげで幾分ましになったものの、陰が篤の目を覆っている事には変わりなかった。皆が盛り上がる季節の中、篤だけが闇の中にいた。
そんなある日の事。
篤の家へ、一人の少女が訪れた。映子でも、奈津美でもなかった。
「はい」
篤はインターホン越しに答えた。少し間を置いて、柔らかい声が篤の耳を伝った。
「あの……私、金谷というものですが篤さんはご在宅でしょうか」
篤はドアを開けた。ドアの外に、見知らぬ少女が立っている。少女は篤を見て言葉に詰まったのか、ひどく居心地が悪そうに口を噤んだ。
篤はぼんやりと少女を眺めた。同じ歳頃だろうか。ポニーテールで眼鏡をかけていた。眼鏡は、だての様だった。
少女の持っている傘から、雨粒が滴り落ちていくのを見て、篤は初めて雨が降っている事を知った。今はテスト休みで、篤は家に閉じこもっていた。
「あの……お話したい事がありまして…… 今お時間、いいですか?」
金谷と名乗る少女は、ひどく丁寧に言った。篤は反射的に「はあ」と言ってしまった。
「あの……私、美紀の友達なんですけど……」
金谷は、静かな声で呟いた。
――ドクッ!!
篤の心臓が、強く鼓動した。篤は、恐怖で我を失いそうになった。
クロック(19)
四畳半の部屋は、きちんと整頓されている。
篤は、金谷を部屋に入れた。篤が、外に行くのを拒んだ為であった。
「適当に座ってて……なんか持ってくるから」
篤がそう言うと、金谷は遠慮したが、篤は金谷の言葉を無視し黙って出て行った。
キッチンで、コーラや菓子を盆に載せながら、篤は自分の手が震えている事に気付いた。
それは、恐怖からだけではなかった。
喜びが、恐怖と混ざり合うように篤の心にあった。何故だかは解らない。金谷が、美紀を連れて来てくれたような気が、したのかもしれなかった。
篤は手の震えをを抑えながら盆を運んだ。
「おまたせ」
篤は、柄にもない事を言って、盆を置いた。よほど動転しているのか。
金谷は頭を下げ、黙って篤の座るのを待った。篤は、窓際に腰を下ろした。
部屋は暖房が効いていない。かなり寒かった。金谷が震えるのを見て、篤は慌ててヒーターをつけた。
「………」
雨の音が大きくなる。
金谷は俯いていた。喋りだすタイミングを、窺っている様にも見えた。
篤が菓子の袋を開けたとき、金谷は、口を開いた。
「あの……私あの日の帰り、見たんです」
(…ドクン……)
「私そのときすごい混乱してて……その、見間違いかなっ……て思ったんですけど……」
(…ドクン……)
「だから警察の人にも、だれにも、言わなかったんですけど……」
金谷は、黙った。金谷の話は、支離滅裂だったが、篤には何を言おうとしているかが解りすぎるほど解った。
しかし、金谷の言葉を待った。金谷は、じっと自分の手の甲を見つめた後、ぼそりと呟いた。
「美紀は……脚を滑らしたりなんかしてない………誰かに背中を押されたのよ」
次の瞬間、篤は床を思い切り殴りつけた。その音は、一瞬雨音を打ち消した。
クロック(20)
テスト休みが明け、終業式を迎えた。
明日から冬休みである。皆、心なしか声が上擦っていた。
終業式は、体育館で行われる。校長の挨拶や、クラブ活動の表彰式などで時間は流れた。
それらが終わると、教室に戻り通知表が配られる。皆、騒がしくなった。
「畑中」
教師が篤を呼んだ。篤は、のろのろと立ち上がった。
「お前もつらいだろうが、しっかりせにゃならんぞ」
と、その年配の教師は言った。篤の成績はガタガタだった。
「お前には、未来がある」
そう言って篤の肩を叩いた。篤は、「はあ」と言って通知表をカバンに放り込んだ。
チャイムが、鳴った。
「じゃあみんな、また来年な」
教師の言葉に素直に応じ、皆教室を出て行った。どの顔も、喜びにあふれていた。
篤は、席に座っていた。
ポケットに手を突っ込み、足を広げ、ぼんやりと宙を見据えていた。窓からの日差しは弱く、冷たかった。
やがて、誰もいなくなった。
篤は、金谷の言葉を考えていた。
美紀の友達であり、また、最期をみとった者だった。彼女の言によると、
「美紀は、誰かに背中を押された」
という事だった。
「誰か」とはだれか。篤が尋ねると、金谷は「判らない」と首を振った。ただ、「誰か」が故意に美紀を突き落とした事は間違い無い、と金谷は言った。
篤は「誰か」とは重雄ではないか、と思った。
憶測である。何の根拠も無い。そんな偏見(と言うより妄想)で物を言おうものなら訴えられるかもしれない。
重雄は病人である。重雄が、ガンに冒されていることを篤は担任から聞いた。
「真面目な人なのになあ……世の中は不公平だよ」
と担任は言った。
篤はこれにより、重雄の河辺での惨状を理解した。が、しかし、
(あれは狂人だ)
と篤はひそかに思っていた。単なる自暴自棄ではない。それは、あの光景を見た者しか持ちえない感想だった。
そして、驚くべき事に、篤は重雄が仕事に復帰している旨も知った。
「最期まで職務を全うしたいんだって……本当、素晴らしい方だわ」
国語担当の女教師が、やや目を潤ませていった。篤は、恐怖で体が震えた。
(奴がこの学校にいる)
今、その事を思っただけで背筋が凍りつきそうになった。なんてこった! みんなだまされている………
篤はポケットから手を抜き、立ち上がった。
(放っては置けない)
篤は、重雄に「会う」決心をした。
傍から見れば、篤の方が狂人に見えるだろう。篤は、それでもよかった。
脚の震えを必死で抑えながら、一歩、一歩ゆっくりとドアへ向って歩いた。
カバンは、持たなかった。
クロック(21)
用務員室は二階にある。
篤の教室は一階なので、篤はそこから一番近い階段へ歩いていった。二十メートル程であろうか。生徒の姿は無かった。
(俺は、とんでもないことをしているのかもしれない)
冷静な顔とは裏腹に、篤の心臓は激しく胸を打っていた。脚も勝手に歩を刻む。もう引き返す余地は無かった。
階段にさしかかる。
大きく深呼吸してから、篤は一段、また一段と階段を上がっていった。
踊り場を経て、次の階段に足を運ぼうとした時、上から映子が降りてきた。友人も一緒だった。
その所為か、映子は、篤のただならぬ雰囲気を察知してはいたが、
「あれぇ、畑中君カバンは?」
と、どうでもいいような言葉を口にしてしまった。
篤は、無視した。
映子に限らず、今の篤には他人に構う余裕など無かった。歩くことに全てを集中させているようだった。
やがて、篤は階段を上りきった。
用務員室は、すぐそこにある。篤の鼓動はますます速まった。
映子は、たまらず声を張り上げた。
「ねえ……またどっか行こうよ! 三人でさぁ………」
しかし、その声は篤には届かなかった。篤は振り返らず、用務員室へ歩いていった。映子は、その背中を見ながら、篤が、このまま消えていってしまうのではないかという気がして、しらぬうちに泣いていた。友人は驚いて映子の肩をゆすった。
100 :
名無し物書き@推敲中?:02/01/16 20:01
たまにはageろって。
クロック(22)
「よぉ、来たな」
初老の男が、篤を出迎えた。
男の名は、神崎重雄といった。この学校の用務員で、もう二十年になる。
重雄は篤に上がるよう促した。篤は、黙って靴を脱いだ。
用務員室は、教師の宿直室のようなものだった。畳敷きの六畳で、質素ながらキッチンもあり、テレビ、冷蔵庫、ストーブなど、だいたいの物が揃っていた。
押入れがあるので、おそらく布団もあるのだろう。何日でも泊り込めそうだな、と篤は思った。
重雄は、ストーブにかけてあるやかんを取った。急須に湯を注ぎながら、独り言のように、言った。
「どうだい、最近は」
「………」
篤は、答えなかった。
重雄は、生徒がここを訪れると、その生徒と面識があっても無くても、
「よぉ、来たな」
「どうだい、最近は」
と、声をかける。生徒達はこれを面白がり、真似たりもした。
馬鹿にしている訳ではなく、むしろ愛着の現れであった。篤も真似たことがある。
しかし、今はそれが恐ろしかった。
篤がここに来た所以については、前に述べた。
その篤にとって、重雄の応対は、まるで篤を待ちかまえていたかのように思わせ、不気味極まりなかった。変わらぬ風景も、見る者の心情によって豹変してしまう。篤は、それを心底実感した。
重雄は、立ち上がり、キッチンから湯飲みをもうひとつ取った。篤の分である。
それを卓袱台の上の、篤の前に置いた。篤は黙っている。視点も定かではない。
重雄は急須を両手でやさしく包み、篤の分と自分の分に、交互に茶を注いだ。
(毒――)
一瞬、そんな言葉が篤の頭を過ぎった。薄緑色をした茶が、ひどく汚いものに見えて、思わず篤は目をそらした。
重雄は、茶を入れ終わると、ゆっくりと急須を卓袱台の上に置いた。
>100
いやあ、最後まで書いたら上げさせていただこうかと。
しかし、皆さんに教えて頂くまで、「sage」と書かないと、一番上にくるとは知りませんでした。
今考えると、すごいあつかましい事してたなあと反省しています。
ちなみに「age」の意味も解らず「なに?アージュのファン?たくさんいるなあ」(笑)と馬鹿な事を思っていました。
後どのくらいで終わるのか分りませんが、とりあえず(1)とつじつまが合いそうなのでほっとしています。その場、その場で考えているので。真剣ですが。
ではひっそりと続き頑張ります。しかし誰か読んでくれているのかなあ。
読んでますよ。大丈夫。
>103
有難うございます! 嬉しいです。
休憩した後、また書きます。では。
クロック(23)
篤は、沈黙している。
重雄も黙っていた。尤も重雄は、生徒が尋ねてくると何時もこうであった。相手の話に黙って耳を傾け、「そうかい」「ほお」などと言うだけだった。年寄りにありがちな、人生の先達としての説教など、毛の先ほども口にしない。重雄が好かれる要因の、ひとつであった。
(………くそっ!)
篤の脚が、勝手に震えだした。卓袱台に隠れているので、重雄からは見えないが、そういう問題ではなかった。
重雄は茶を啜った。この初老の男は、ひょっとしたら自分が訪ねてきた理由を知っているのではないか、と篤は疑った。
(それなら、何を考えている)
重雄が、知っていてこのような振る舞いをしているのなら、一体何のつもりなのか。篤は探る様に重雄の顔を覗った。
「実はね………」
篤は思わず声を出しそうになった。重雄が突然口を開いたのである。
「俺は、ガンなんだよ」
重雄は、湯飲みを眺めながら言った。
篤は、黙っていた。
「あと少しで、あの世いきだ」
重雄は再び茶を啜った。この男の物言いは、万事この調子である。多くを語らず、しかし端的であった。尤も、単に無口であるともいえる。
篤はまだ黙っている。顔も、下に向けていた。段々と頭に血が上ってくる様が、自分でも解った。
「人は死ぬ」
「………」
「あんたなら、よくわかるだろう?」
……… ?
篤は、瞬きを忘れていた。眼がひりひりと痛んだ。少し間を置いて、重雄はゆっくりと、溜息をつくように言った。
「惚れた女が逝っちまったんだもんなぁ」
篤は、両拳で思いっきり卓袱台を叩いた。湯飲みがひっくり返り、茶が流れ出した。
重雄は黙って立ち上がり、キッチンから布巾を一枚持ってきた。
そして、二つ折りにすると、それで篤の溢した茶を拭き始めた。
篤は、肩で息をしている。興奮して、自分が何をやったかも判らなかった。
「やけど、しなかったかい?」
重雄は優しく言った。篤は、阿呆のように首を上下させていた。
クロック(24)
修羅場とは、正にこういった場面を指すのではないか。
表面的には、初老の男と若者が、ただ向かい合って座っているだけである。だが、内情は違った。
少なくとも篤はそうだった。
重雄の方はさっぱり判らない。篤の、突然の激昂を見ても全く動じず、至って平静だった。
年の功だろうか。性質かもしれない。が、そう言った風に片付けるには幾分矛盾があった。
何故、謝らないのか。
重雄の発言は、明らかに篤を侮辱するものだった。本人にその気が無くとも、篤の様子を見れば解りそうなものである。
美紀と篤の関係は、美紀の死後、噂の少ない学校の事だから、生徒を通じ重雄の耳に入っていてもおかしくは無い。が、しかし、「惚れた女が逝っちまった」などという発言は、常識ある大人が、彼から見たら、まだ子供に過ぎない篤に言うべきものではなかった。
(挑発、してるのか)
と篤が考えたのも無理はない。
篤は、やや落ち着きを取り戻し、自分の心臓音を数えられるまでになっていた。その回数が、一分間に八十回をきったところで、篤は顔を上げた。
(のってやる)
重雄の態度が、こちらの意図を知っての上での行為なら、受けて立ってやる、と篤は決心した。
篤は、ぼんやりと宙を眺めている重雄に向って、静かに言った。
「あの……神崎さん」
「なんだい」
「おれ……実はあなたに聞きたい事があって、ここに来たんです」
「ほお」
「………」
篤の心拍数が、上がった。おちつけ! おちつけ! おちつけ! ………そう何度も繰り返した。
重雄の耳に届いたかもしれない。口走っていたのである。しかし、どうでもよいことだった。
篤は、唾を飲み込み、初めて重雄の目を見据えて、言った。
「………美紀は………殺されたんです…」
クロック(25)
重雄は黙っている。
どういう状態かは、説明の使用が無い。至って「普通」なのである。
しかし篤の方は、自身の口から言葉を紡ぎだすことさえ苦労していた。その口は、何度も空気だけを吐き出した。
溺れる魚の様だった。重雄は、そんな篤の様を、嘲ることも、また気遣うこともなく、ただただ眺めていた。
篤は気ばかりが焦り、なかなか次の言葉が出ない。何度か太腿をつねった後、篤の口はやっとの思いで音を発した。
「つまり……事故じゃないんです」
馬鹿な事を言った。しかし、一定の順序を辿らねば、篤の腹に抱えている「言葉」を発する事はできない。恐ろしかったのである。
篤は、片手で軽く畳を叩き、拍子をとった。それに合わせ首を上下する。十回をまわった所で、再び口を開いた。
「事故じゃないってことは、犯人がいるんです」
「………」
「俺は事故と思ってたから……事故と思ってたから、諦めたんです」
「………」
「でも、殺された…んなら諦められない、認められない、許せない……!」
「………」
「俺は犯人を許しません」
「………」
「もし……もし犯人が目の前にいたら俺はそいつを………殺すかもしれない」
篤の声は震えていた。眼には涙も溜まっていた。しかし、その両眼の光は、重雄を貫いていた。
重雄は、目を閉じていた。後ろのやかんから蒸気の音がする。重雄は、その音に合わせ、機械が始動するように眼を明けた。
「ちょいと、説教させてくれんか」
クロック(26)
重雄は、生徒に好かれていた。
穏やかで、気さくな人柄は、人を自然と惹きつけ、生徒達のよき相談相手になった。
しかし、高慢に助言と称した説教などはせず、ただ黙って話を聞くのみであった。これが、良かった。
生徒達は、言葉が欲しい訳でなく、言葉を聞いて欲しかった。自分達と距離があり、それなりに「歳」をかさねた重雄は、相手として理想的だった。
その重雄が、「説教させてくれ」と言った。
篤は緊張した。一体この男は、自分に何を言うつもりなのか。自然と、身構えていた。
重雄は、薄くなりつつある自分の頭髪を撫でながら、言った。
「さっきも言ったがな、俺は死ぬ……まあ荒れたよ、あんたも知ってのとおりだ…」
河辺での事を言っているのだろう。重雄は少し照れたように俯いた。
「女房にも迷惑かけちまったが…まあ長い付き合いだからな、おおめにみてくれたよ」
「………」
「だがな」重雄は、篤に笑みをこぼした。
「俺は死ぬんだなぁ……ってよ、認めちまったら急に、なんかアタマんなかがぱーっ、とすっきりしてよ……『なんだ、当たり前の事じゃねえか』ってな……」
一呼吸おき、重雄は言葉を続けた。
「『運命』なんだよ人がおっちんじまうのは! その辺の虫けらとかわんねえんだ……ただ人だけが認めねんだな、だからこええんだ…おれにゃあ学はねえが、それだけはいえる」
重雄は湯飲みの茶を一気に飲み干した。口の隙間から茶が滴り落ちる。重雄はそれを拭おうともせず、勢いよく空になった湯飲みを卓袱台の上に置き、言葉を吐いた。
「最初から決まってるのさ……ほら、胸にてぇ、あててみな……聞こえるだろう、どくん、どくんってよ……こいつが、おれたちの『時間』だ」
重雄は篤を見つめた。篤は、怯えている。汗が流れ、体が震え、歯が鳴った。やかんの蒸気音が速くなる。篤の心拍数は、限界に達した。
「変えるなんてできっこねぇ……とまったらそいつの『時間』はそこまでだったんだ……運命だったんだ………!!」
「やめろ!!」
篤は叫んだ。震える体を御しながら、重雄を睨みつけた。
「美紀は生きるはずだった! あんたに何がわかる! 運命だと! 時間だと! ………勝手に決めるんじゃねえ!!」
「決めてない、決まってるんだ」
重雄は強い調子で言った。篤は叱りつけられた子供のようだった。重雄は、ぼろぼろと涙をこぼしている篤の肩に手をかけ、優しく言った。
「なああんた……あんたは若いからわからんかも知れんが、何事にも陽と陰があってな……たとえば俺が死んだ日にゃあ、どっかで誰かが生まれている……そういうもんなんだよ」
「………」
「あんたの女が死んだときも、どこかで誰かが生まれている………こっちではあんたが悲しみ、向こうでは誰かが喜んでいる、世の中ってのは、そういうふうにできてんだ」
「みとめられない」篤が涙声で言った。
「みとめなきゃあ、いつまでたっても苦しいままだ……それであんた、残りの人生、棒に振っていいのかね」
「みとめられない」篤は繰り返した。
「あんたの『時計』だって、いつ止まるかわからんよ?」
重雄は、篤の肩から手を離した。
篤は泣いている。重雄は、水の少なくなったやかんをストーブから上げ、立ち上がるとキッチンへ向った。
109 :
名無し物書き@推敲中?:02/01/18 07:50
しばらく見ないうちに随分長くなったねい。こんな真面目にやる人は最近珍しい。
スレだけ立てて投げ出すやつが多いのに、本当に真面目である。よってあげ。
結局途中切れになったんかな、と思ってたらちゃんと続けてたんだねぇ。
なんか良い感じ。少なくとも最初に書いた奴よりはよっぽど上手くなってる。
頑張ってくれ。チョト応援したくなたよw
セリフがちょっと演出過多かなぁとか思う。
>109
>110
有難うございます。最後まで、頑張ります。
台詞、についてもおいおい勉強してゆきたいと思います。
ついつい乗り移って(笑)。
クロック(27)
重雄は「哲学」を持った。
およそそんな高尚ぶったものとは無縁の男である。しかし、己の死に直面し「生と死」について考えざるをえなくなった。
(生きるとは何か、死ぬとは何か)重雄は模索した。もがき、苦しみ、やがて、一つの結論を得た。
――なんだ、あたりまえじゃねえか
否定しなければよい。認めてしまったらいい。否定するから、苦しくなる。重雄の心は、秋の空のように澄みわたっていった。
これだけなら、よかった。
重雄は、水を足したやかんを再びストーブにかけた。
じゅうううっ、と音がする。重雄は座った。顔は、紅潮している。
篤は、泣いていた。
ここに来た意図も忘れ、ただただ、美紀の事を思い出し泣き続けていた。そして、いかに自分が美紀の事を愛していたかも、覚った。
部屋は、暖かかった。
ストーブと、狭い部屋に男がふたりいるせいであった。共に体温が上昇している。
重雄は首を掻いたり、「ふふっ」と笑ったりしていた。どうやら話の続きをしたいらしかった。
篤が顔を拭うと、それを合図に、重雄は言葉を発した。
「なぁあんた、突き落とした奴が憎いかい?」
重雄は臆面なく言った。
「………」篤は黙っていた。
重雄は、卓袱台の上で両手を組み、篤の顔を覗き込むように、ひどく真面目な顔で言った。
「けどそれは、おかどちがいってもんだ」
「……なぜです」
「何度も言うがな、それは『運命』なんだ……あんたの女が生きる運命なら……『時間』がまだあったのなら、死んだりしなかったはずだ」
「………」
「ほら、『九死に一生を得る』って聞いたことあんだろ? あれさ……生きる運命だった奴は、みなそうさ…どんな事があっても死なない」
「………」
篤は、少しずつ冷静さを取り戻してきた。それと同時に、この初老の男が言う言葉に、だんだんと、違和感を感じ始めていた。
「だからよ」重雄は、恐るべき事を口にした。
「試してやんたんだ……あんたの女の、『時間』をよ……」
時間は止まった。重雄の顔は、笑っていた。篤には、その顔が見えていたのかどうか判らない。
「魂」を抜き取られていた。
クロック(27)
奈津美は、学校に残っていた。
今日は、終業式である。明日から冬期休暇であった。皆、解放されたように学校を出て行き、校内は閑散としていた。
奈津美には恋人がいる。中学校の同級生で、現在は別の学校に通っていた。その少年から昨夜、
「おまえ、いいかげんにしろよ」と、電話越しに言われた。
奈津美は、クリスマスの誘いを断ったのだった。原因は、篤である。
篤の落ち込む様を見て、奈津美は居たたまれなくなった。また、映子の行動を目の当たりにして、何時の間にか、「自分にとって、篤の存在とは何か」と常に考えるようになった。
友人―そんな言葉で片付けたくはない。しかし、恋愛の対象であるかというと、そうとも言い切れない何かがあった。
(映子は、何故別れたのかしら)
奈津美はひとり、教室の隅で小説を広げながら考えた。外は冷たい風が吹いている。
映子と篤が付き合うことを聞き、当初、奈津美は驚いたが、すぐ、
(そうよね)
と、妙に納得する自分に嫌気がさした。奈津美は、自分のことを偽善者だと思っていた。
奈津美は賢すぎた。何か問題にぶつかると、瞬時に「正しい」道が頭の中に示され、それに従わねばならないという強迫観念めいたものが、この少女の中にあった。
それに逆らう事は、自身の否定に繋がる。「優等生」の奈津美にはできない事だった。
(ばかだわ)
奈津美は小説を閉じた。自分は、こうして十数年間生きてきた。今さらそれを否定した所で何になろう、そう思いながら奈津美は席を立った。
「」を多用すると読みにくい文章になるよ。注意ね。
>114
どうも、体質なのかねちっこい文章になりがちです。
さらっと読みやすい文章になるよう心がけます。
今、読み返すと、仰るとおり「」が不要な語句が多々ありますね。以後、気をつけます。
クロック(28)
奈津美の教室は二階にあった。
十字路を想像してほしい。横に走る廊下の、左の突き当たりが奈津美の教室だった。
四組である。隣に五、六、七と全部で四クラス並んでいた。篤は一組で、奈津美の教室の真下にあった。映子は、篤と同じ一階で、三組である。
二年生の教室は、全部で七つあり、一、二階に渉っていた。全て左側である。縦に走る廊下を挟んで右側は、一年生の教室だった。
一年は五クラスしかない。原因は児童の減少等が挙げられるが、この物語に関しないので略す。問題は、空き教室にあった。
二階は五組だけで、右隣二教室は開いていた。その一番端、廊下の突き当たりが用務員室であった。
元々は一階だったが、年々入学する児童が減り、空き教室が増えた為、移転に至った。
奈津美は、廊下を歩いている。
階段までは、二十メートル程だった。別に、早く帰る必要もないのでゆっくりと歩いていた。
その時。
ドン! と何かを叩く音がした。奈津美は眉をひそめた。
「きさまぁ!!」
誰かが怒鳴った。奈津美は肝をつぶした。廊下の突き当たりから聞こえてくる。奈津美は、恐る恐る足を進めた。
廊下を渡る。
一年生の教室には誰もいない。その隣は空き教室である。奈津美は、用務員室に近付いた。
「もういっぺん、いってみろ」篤は凄んだ。
「おれが、突き落とした」重雄は、淡々と言った。
篤は混乱した。重雄の言は、軽くない。しかし、重雄の音は、それと対照的に空気の如く軽かった。これにどう対処すればよいのか。篤は、唇を噛んだ。
重雄は、ずっと胡坐をかいていたが、それを解き立ち上がった。そして、篤に向って語り始めた。
「いいかね、俺はあの日の晩、ひどく明るい気持ちでホームに居た。覚ったんだ。家に帰って女房に謝ろうと思ってな…電車を待ってた……少しして電車は来た。そしたら、あんたの女が友達と楽しそうに笑いながら降りてきた」
重雄は、身振り手振りを交え、淡々と、しかし強く、篤に言い聞かせるように話した。篤は、黙っていた。
「俺は思った。こいつに、あとどれ位の人生があるんだろうってな、十年、二十年、おそらくそれ以上か……とにかく、俺は猛烈に試してみたくなった」
重雄は深呼吸した。興奮しているようだった。三秒ほど目を閉じてから、話を続けた。
「簡単だったよ、あっけなかった……女はポリバケツみたいに転がっていった……隣に居た女が『きゃー!』とかいってな、うるせえったらありゃしない…そんで終わりだ、女は起き上がってこなかった。俺は、満足して電車に乗った」
重雄は、死人のような篤の前へ屈み、顔を覗き込んでいった。
「なああんた、やっぱりな、運命ってのはあるんだよ……俺は、あの女があんたの女って事は知らなかった、偶然なんだ…しかしよ、こんな偶然ってあるかい? 偶然じゃねえだろこれは…あんたと俺は河辺で会った……やはり、運命だったんだよ」
「運命……」篤はかすれた声で呟いた。
「そう、運命だ」重雄は満足そうに言った。
それから、長い間二人はそのままでいた。やかんの蒸気が、静かに部屋を包み込んでいた。表では、奈津美がガタガタ震えていた。
クロック(28)
中のふたりは、奈津美に気付いていない。
奈津美は、足が竦んで動けなかった。生まれて初めての経験だった。必死で膝を抑えたが震えは止まない。唇の色も生気を失っていた。
どうする事もできず、奈津美は、とうとう座り込んでしまった。スカートを挟まなかったので、尻が直に、床に触れた。床は、氷のようだった。
中は静まりかえっている。奈津美は、胸に手を当て波打つ鼓動を抑えながら考えた。
(どうすればいい…どうすればいい…)
いつもなら光が差し込むように、鮮やかに答えが出た。が、初めて感じた恐怖に、奈津美の頭は冷静さを失っていた。
奈津美は深呼吸した。いつも、緊張は大抵これで収まった。一回、二回、三回……七回繰り返す。今までで、最高の回数だった。
奈津美は落ち着いた。震えはまだあったが、寒さによるものだと自分に言い聞かせ、考えを廻らせた。
中に、用務員の神崎と、篤がいる。神崎は篤に向って「お前の女を殺したのは俺だ」と言った……。
これが本当なら、篤は殺人犯と向かい合っている事になる。何が起こるかわからない。奈津美は、よろよろと立ち上がった。
(とめなきゃ)
奈津美の下した判断は、人を呼んでくることであった。職員室に教師がいるはずである。奈津美は、壁に手をつきながら場を離れた。
ところが――
奈津美の足は、進むのをやめた。恐怖で、動けなくなったのではない。奈津美の中の何かが、その判断を拒んだのだった。
(いっちゃだめだ)
もし奈津美がこの場を離れた後、篤の身に何かあっても、奈津美が責められる筋はない。奈津美は、自身にできる最高の行動をしたのだから、寧ろ称賛されるだろう。
しかし、奈津美の胸には生涯闇が残る。
(あっちゃん………)
奈津美は、篤とはじめて出会った頃を思い出していた。寝癖が残った頭で、優しく笑いかける篤の姿が、目に浮かんだ。
(あたし……あなたを失いたくない)
奈津美は、およそ正しくない事をしていた。しかし、その顔には迷いがない。奈津美は、女になった。
が、ドアに手をかけようとした瞬間――
「このやろう!! 殺してやる!!」
と篤の声がし、同時に、激しく音が鳴った。何かが倒れる音である。その後、数十秒経ってから篤が飛び出してきた。
篤は奈津美に気付かず、そのまま階段を駆け下りていった。奈津美は状況を把握できず、抜け殻のように突っ立っていた。中からは、
「くっくっくっく……はっはっはっはっはっは!!」
重雄の狂ったような笑い声が聞こえてくる。奈津美は、青ざめながら篤の後を追って階段を駆け下りた。
クロック(29)
篤は公園まで駆けた。
学校の帰り道にある、小さな公園である。ここはいつもひと気が少なかった。尤も、冬の事だからどこも一緒かもしれない。
篤はベンチに腰掛けた。風が、冷たい。しかし、篤の身体は火照っていた。それは走った所為だけではなかった。
ひじを膝の上に置き、両手を組んだ。眼は、その手を見つめている。手は固く結ばれ、震えていた。
篤は、興奮を冷風に晒すことによって、心が冷静になるのを待った。篤の期待通り、次第に心は落ち着きを取り戻していった。そして、用務員室での出来事を振り返った。
あれは一体なんだったのか。
夢ならばいい。しかし、拳に残る痛みは、重雄を殴りつけたものである。現実だった。
(俺は…どうしたらいい)
警察に通報した所で何もならない。美紀の両親は望むだろうが、少なくとも、篤にとっては無意味だった。
重雄は死ぬ。そんな男を牢獄に入れたところで、全くの笑い話である。重雄は狂っているのだから、精神鑑定云々と裁判中に世を去るかもしれない。
多少、気は晴れるだろう。だが、美紀は戻ってこない。それに実際、遺族である美紀の両親らにとって、美紀は事故死である方が幸せなのではないか。
知らぬが仏という言葉がある。先程の重雄の演説を、彼らが聞いたらどう思うだろう。
(警察へは、行かない)
篤は、それだけ決めた。後の事は、おいおい考えよう。篤は組んだ手を解き、空を見上げた。
空は蒼かった。雲の流れが速い。公園には誰もいない。風の音だけが篤の耳を擽った。
篤は昔、この公園で奈津美に恋の相談を受けた事を思い出した。篤は乾涸びた老人のように、あの時は良かった、などど呆けた頭で考えた。
篤は今、精神の安定を保つ為、一時的に逃避していた。
これは一種の防衛本能で、篤自身、意識しての事ではない。
篤は十七歳である。この現実は、荷が重すぎた。重雄の言う運命というものを、篤は受け入れかけていた。
「認めちまったら楽になる……」
篤は重雄の真似をして呟いてみた。我ながら良く似ていると思い、思わず吹き出した。
奈津美が息を荒げて公園にやってきたのは、ちょうどそんな時だった。
ああ。人間って文章書いてると、本当に上手くなるんだなぁ(w
もちろん、
>>1に比べてだけどね。
>奈津美は、足が竦んで動けなかった。
>篤は、興奮を冷風に晒すことによって
こういう意味のない読点がよく見られるけど癖なのか? テンポが悪くなるんだ。
120 :
くろとしろ:02/01/20 08:49
>>91>>「娘が……美紀が……しにました」
ここ上手い。ひらがなで意味を剥奪する。
>>1001と場面が重なっているのはわざと?おもしろい遊び方。
ageちゃった。ごめんw
>119
読点を打つ位置は悩みます。
どうも音より見た目で打つ場合が多いようです。気をつけます。
>120
98から117までは全て1です。
2から116までは…前置きになるんでしょうか。(笑)
文もそうですが、1でふった話を何とかしなきゃいけないと思いまして。
今ようやくどんな話になるか見えてきました。あまり話を拡げない様にしないと…。では。
クロック(30)
奈津美はベンチに座っている篤を見つけた。
息を整え、そっと近付く。篤は振り向こうともせず、ぼんやり空を見ていた。が、実際は眼を開けているだけで何も見えていないようだった。
奈津美は黙って篤の隣に座った。どう声をかけてよいのかわからない。何を言っても戯言のように思えた。
(あっちゃん…)
奈津美はこの哀れな友人の力になりたいと思ったが、自分の非力さを噛みしめるばかりでどうする事もできなかった。奈津美は唇を噛んだ。
篤はゆっくりと目線を落とした。地面には蟻が這っていた。篤はそれを無言で踏みつけた。それから、この蟻の生について考えた。
(こいつはなんなのだろう……穴蔵で生まれて、始終えさを探し回って、挙句の果てに俺に踏まれている……これがこいつの運命か? あほらしい! ……こいつら一体何のために生まれてきたんだ?……)
篤は蟻を哀れんだ。それは自分に対する慰めでもあった。俺は蟻と同じだ、と篤は思った。
(美紀…美紀、美紀、美紀、美紀! )
篤は頭をかきむしった。全てに嫌気がさした。もうどうでもいい、楽になりたい、誰か俺を殺してくれ……。
次の瞬間、奈津美は篤を抱きしめた。篤の身体は冷たかった。ふたりは誰もいない公園で大声を上げて泣いた。子供のようだった。
クロック(31)
冬は日の暮れが早い。
公園の時計は六時を少し回ったところであったが、辺りは暗かった。篤と奈津美はベンチでたこ焼きを食っていた。
人間、どうあっても腹は減る。白い息を吐きながらたこ焼きをほおばる二人の姿はなんとも滑稽であり、可笑しかった。
たこ焼きの紙皿はふたりの間に置かれている。二人は交互にそれをつついた。
「あっちゃん、今日イブなの知ってた? 」
奈津美の言葉に篤は黙って頭を振った。奈津美は三つ目のたこ焼きを口に放り込んだ。
篤は奇妙なほど落ち着いていた。
奈津美の所為だった。この少女は自分の一切を知っている。これだけで篤の心は救われた。この世で一番の幸せは理解者がいることかもしれないな、と篤は思った。
奈津美は自分の手に息を吹きかけた。外は寒い。奈津美の手は氷のようになっていた。
篤は黙って奈津美の手を引き寄せ、自分の手で包んだ。
奈津美はされるがままにしていた。緊張や興奮はない。ただ寒そうにしている自分を見て、篤がそのようにしたことが解っていた。しかし、凍えている友人の手を温めてやりたいという純粋な思いが伝わってきて、奈津美は幸せだった。
(誰にも渡したくない……映子にも………美紀さんにも)
奈津美は思った。奈津美はこのように自身の欲望を肯定した事はなかった。いつも正しい道を選択することだけがこの少女を支えていた。が、それが今もろくも崩れ去った。
奈津美は篤の手を解き、あらたに自分の手で篤の手を包んだ。
「あっちゃん…心配しないで……あなたは私が守るから」
奈津美は篤の手を一層強く握った。篤は奈津美の目を見た。大きな眼。昔この瞳に恋をしたことを篤は思い出していた。そのままふたりは吸い込まれる様に唇を重ねた。
クロック(32)
重雄は街を彷徨っていた。
今日はクリスマス・イブである。陽が落ち、灯が増えるにつれ街は若者であふれていった。
重雄は人込みに押されてよろけた。睨みつける若者に卑屈な笑を浮かべ頭を下げた。
「年寄りが出歩くなよ」若者はそう吐き捨て去っていった。
重雄は怒る事も無く、再び歩いた。重雄の心には余裕があった。
(俺はお前らとは違う)
自分は覚ったのだ。馬鹿なお前らはせいぜい浮かれているがいい。そう思っていた。
(人の命は果敢無い。それを真に知っている人間がどれだけいよう! 俺は知った。人間は死ぬ。それは生まれたときから決まっている事だ。誰にも変えることはできない……)
重雄は街を抜けた。辺りは急に暗くなった。そして、寂しい道が重雄の前に続いていた。
後ろで賑やかな音が響いている。重雄は所々ひび割れたアスファルトの道を一歩、また一歩と歩いていった。
途中街灯が灯っていない所で、重雄は陥没した地面に足を取られ転んだ。
膝を強く打った。痛みが体中を走る。重雄は歯をくいしばり身体を起こした。
顔が青ざめている。
身体も小刻みに震えていた。寒さも、膝の痛みも重雄の身体を震わすものではなかった。
恐怖だった。
重雄は死に対する恐れから身体を震わせていた。それ以外の何物でもなかった。しかし重雄は認めなかった。自分は死を克服した人間で、特別であり、絶対であり、恐怖などという陳腐な物を感ずる筈が無いと自分に言い聞かせた。が、震えはとまらない。
(くそ! くそ! くそ! )
重雄は震えを無視して再び歩き出した。心は無意識の内に光を求めていた。そして、しばらく歩くと重雄は小さな公園にたどりついていた。
クロック(33)
重雄は公園を眺めた。
狭かった。グラウンドとは名ばかりの庭のようなものが重雄の前にあった。その奥に遊具が並ぶ子供の遊び場が見える。
重雄はそこのベンチに人が座っていることに気付いた。ふたりいる。カップルだろうか。重雄はゆっくりと近付いた。
グラウンドと遊具広場は植え込みの木を挟み分けられている。重雄は木の陰から二人をのぞき見た。顔は見えない。ふたりとも黙って身を寄せ合っているだけなので声も聞こえなかった。
重雄は昔を思い出した。自分もあのような頃があった。愛する者があり、毎日が喜びにあふれ、そして輝く未来があった…。
重雄の体から全身の力が抜けた。
(帰ろう……明子のもとへ)
重雄は身を翻し、弾むような足どりで公園の出口へ向った。俺はひとりじゃない、妻がいる、愛する者がいるんだ…そう思った途端、雲が吹き飛ぶように重雄の心から闇が消えていった。
公園を出た。道の脇、側溝には枯れ落ち葉が溜まっていた。そこに、枯葉に紛れ、子供が忘れていったのか金属バットが転がっていた。
(………)
重雄は何となくバットを拾い上げた。ひんやりとして、重い。まだ新しかった。最近の子供は贅沢になったなあ、などと笑みをこぼしながら重雄は溜息をついた。
重雄はバットを手にしたまま公園へ引き返した。
奈津美は篤の肩に頭を乗せていた。
篤は奈津美の肩を優しく抱き、黙っていた。ふたりともあれから言葉を発しなかった。必要なかったのかもしれない。
人と心が通じ合うのはなんて幸せなんだろう、と篤は思った。奈津美もそう思っているに違いない、と篤は決め付けた。奈津美は、自分を愛してくれている。俺も奈津美を愛している。そう、ずっと前から……篤は奈津美の肩をさらに引き寄せた。
「河……俺はお前が好きだ」
「うん」
「ずっと前から好きだったんだ」
「うん」
ふたりは寄り添っていた。心も、身体も溶け合うようにふたりはもう一度唇を重ねた。唇は温かかった。
互いの顔を間近で見ながら二人は笑った。額が軽く触れ合った。幸せだった。
「ねえあっちゃん、中学の時さあ、ここであっちゃんに相談したじゃない? あれね、口実だったんだよ」
「口実?」
「あっちゃんとふたりになるための…ほら、いつも三人だから」
「ああ」
「でもあっちゃんが真剣に話、聞いてくれるから言い出しにくくなっちゃった」
奈津美は篤の首に手をまわし、その眼を見つめて言った。
「あたしは出会ったときからあなたが好きでした……いまも……ずっと……これからも」
篤は涙があふれてきた。涙で奈津美の顔が見えない。思わず目を擦った。
「もう〜おおげさなんだからぁ」と奈津美の声が聞こえた。篤は目を抑えながら笑った。
それは、一瞬の事だった。
ガコッ!
篤が眼を明けると奈津美が足元に倒れていた。そして、その頭から赤い液がどくどくと流れ出していた。篤は震えながら顔を上げた。
後ろには笑みを浮かべた重雄が立っていた。手には血の滴った金属バットを持っていた。篤は狂ったように叫んだ。
クロック(34)
篤は重雄を見た。
重雄は笑っている。何が可笑しいのかとても楽しそうであった。篤は重雄に向って行った。
二人はもみ合いになりながら地面を転げ回った。篤は何度も重雄の顔を殴りつけた。重雄も篤の顔を殴り返した。
血が飛ぶ。互いの顔面と拳からソースのように赤い液が飛び散った。やがて重雄は吐血した。しかし篤は殴るのをやめなかった。
ひとつだけの街灯に照らされ、ふたりは殴り合っていた。傍に血だらけの奈津美が転がっていた。辺りは静かで誰も邪魔する者はいない。
「死ね!! ゴミ!! カス!! 」
篤は何度も叫びながら重雄を殴りつけた。拳にはもう感覚が残っていない。重雄は疲れたのかされるがままにしていた。
篤は殴るのをやめた。
重雄を放り出し、奈津美の傍へ駆け寄った。抱きかかえ、公園を出、夜の街を走った。
「奈津美…奈津美…奈津美…!! しぬな!! しぬな!! しぬな!!!」
自分がどこへ向っているかもわからなかった。振り返る人々をかき分け走った。顔は血と涙でぐしゃぐしゃだった。
やがてどことも知れぬ道端で座り込んだ。そして、大声を上げて泣いた。
サイレンの音が近付いてきたのはそれから数十分後の事だった。
年が明け、春が来た。
篤は三年生になった。受験生である。一応進学校ではあったので、篤は嫌々ながらも親の勧めで予備校へ通うようになった。
予備校は篤の街から二駅離れたところにある。繁華街で、寄り道には困らなかった。
今日も篤は予備校の友人とゲームセンターで時間をつぶしていた。始業まではまだ時間がある。
他のゲームセンターに比べると汚く小さかったが、篤はここが気に入っていた。
「おい、ピッチ鳴ってるぜ」
と友人に言われたが、篤は無視した。どうせ母親だ。電話を持ってからしきりに用事を頼まれるようになった。が、料金を払って貰っている身なので文句は言えない。篤は微かな抵抗として無視をすることにしていた。
しかし、余りにしつこいので篤は出た。すると若々しい声が篤の耳を伝った。
「ああやっとでた……あんたねー、耳つまってんじゃない? 映子だけどいまヒマ?」
「ゲームしてる」篤はスティックを動かす手を止めずに言った。
「相変わらずひまねぇー…じゃ、今すぐウチに来なさい、遅刻厳禁! 以上」
電話は切れた。同時に篤はゲームオーバーになった。「KO!」と言う声が汚い店に響く。
篤は立ち上がった。
「おい、予備校は?」
「腹が痛くなった…って言っといて、百二十円」篤は硬貨を三枚、友人の少年に手渡した。少年は眉をしかめて、篤の背中に向って言った。
「俺にも誰か紹介しろよなー!」
篤は振り返らず手を振って店を出て行った。
クロック 最終話
「おっそーい! なにやってたのよ」
出迎えた映子が篤に言った。篤はあれこれ言い訳しながら、二階へ続く階段を映子と上った。
映子の家は三階建てである。篤はここへ来るたび自分の家と比べ憂鬱になった。
階段を上って右へ曲がり、長い廊下を歩くと映子の部屋があった。
映子はドアを開けた。
「あっちゃん」
「よお」
奈津美が嬉しそうな顔で篤を見た。ショートカットになった奈津美は実に可愛らしく、篤は自然と綻んでいた。
「なにやらしい顔してんのよ」映子は篤の尻を蹴飛ばした。篤はよろけながら部屋に倒れこんだ。
三人はゴールデンウィークに、高校生活最後の旅行へ行く計画を立てていた。
奈津美が退院した日に映子が言い出し、皆で映子の家に集まってあれこれ話し合っている。今日で七度目である。
意見がまとまらなかったのは、篤が「山は嫌だ」とごねていたからであった。
「蚊が多い」篤は今まで何度も口にした台詞を繰り返した。
「あんたねー、いいかげんにしなさいよ……自然の素晴らしさがわかんないの?」
「虫は嫌いだ」
「あっちゃん、ここなんかどう? そんなに虫いないよ?」
奈津美はカーペットの上に拡げられた無数のパンフレットの中から一枚を取り上げ、篤に見せた。
篤が覗き込もうとすると、映子は奈津美の手からパンフレットを取り上げた。
「だめよ甘やかしちゃあ! 自然はね、虫が多いのは当たり前なの! 」
三人は毎回このようなやり取りを繰り返していた。皆旅行がどうこうというよりも、このように集まって話をする事が楽しいようだった。
その後映子にさんざん毒づかれ、九時をまわった所で篤は奈津美と共に映子の家を出た。
空には星が出ていた。
二人は黙って歩いた。この辺りはひと気が少なく、少し不気味だった。奈津美は篤に寄り添った。
だが、身体は触れない。二人の関係はそういうものに戻っていた。
「ねえあっちゃん」
「うん」
「………」
奈津美は黙った。篤は奈津美の言おうとしている事が解ったので、もう忘れよう、と呟いた。
重雄が今朝、死亡した。
重雄は結局懲役する事無く、病院で息を引き取った。
ふたりは重雄の妻からそれを聞いた。新聞には載らなかった。篤は複雑な気分だった。憎くてたまらなかったが、死んだと聞いた時なぜかぽっかりと胸に穴が開いたような気がした。
信号にさしかかった。信号は赤だったのでふたりは足を止めた。流れ行く車の群を見ながら、奈津美が呟いた。
「ねえあっちゃん……あたしT大受けようと思うんだ」
「え…まじかよすげえなあ」
「うん…なんていうか…あたしやっぱり勉強好きだから」
「そっか…がんばれよ」篤は奈津美に笑いかけた。
「あっちゃんはどうするの?」
奈津美は篤の顔を覗き込んで言った。
「そうだな……とりあえず夏に車の免許取りに行く」
「もお〜なにのんきな事言ってるのよ…大学行きたくないの?」
「行くさ…でもまずは免許を取って、お前らとドライブしたい」
「あたしあっちゃんの車に乗りたくないなあ…遠慮しとく」
「お前は俺の隣だ」
「やだ〜!」
信号が青に変わった。
二人はふざけあいながら横断歩道を渡った。空の星がふたりを包み込んでゆく。それはまるで彼らの明るい未来を祝福しているようだった。(終わり)
129 :
小説 太郎吉:02/01/22 00:34
ようやく終わりました。
読み返してみると、誤字や表現上おかしな部分が多々あり恥じ入るばかりです。
しかし、書ききった事だけは自分を褒めてやりたいと思います。(笑)
もし、全部読まれた方がいらっしゃったら、文章もそうですが、内容の感想を頂けたら幸いです。
最後なので上げさせて頂きました。今までこのようなものを続けてしまって申し訳ありませんでした。
そして、大変勉強になりました。どうもありがとうございました。では。
130 :
名無し物書き@推敲中?:02/01/22 19:15
ちょい待てい。寂しいじゃないか。
みんなの簡素を聞け。
おい、みんな批評してやれよ。
厳しくてもいいだろ?
ん、今から書きこもうとしてたのにw
アンチ時系列の話の組み立てだったのね。
で冒頭にもってくるシーンにしてはインパクトが弱いのがイマイチ。
美紀が死んだシーン辺りから始めて見るのも面白いんじゃないかなと個人的に思って見たり。
あとは重雄の人物像の掘り込みが浅かったように感じる。自分がまだ健康だった時の回想とか、もっと入れて欲しかったなぁ。
と、こんな所です。
しまった。ミスったw
三行目にある「で冒頭に〜」
は「でも、冒頭に〜」の間違い。
133 :
小説 太郎吉:02/01/23 01:42
>130
>131
有難うございます。別に2チャンから去った訳ではないので(笑)。
だれも書き込んでくれなかったらどうしようかと思っていたので嬉しいです。
厳しくても全然構いません。40さんのコメントを見た時に受けたショック以上のものはもう無いでしょう。
あれはこたえました。一日中胸が痛かった(笑)。でもあれのおかげで頑張れたのかもしれません。感謝しています。
虎の穴に丸々載せられたらいいんですけどねぇ。作品の欄にアドレスだけ書くとか。(w
ああ〜スイマセン! sageを消した事を忘れてました!
なんてこった。(謝)
今週は忙しいので、週末にまとめ読みする。
時は移ろいゆきて 物は皆失われ 心に浮かぶ影は人の想い
むぅ……根に持ってるな(w
ってか、そんなにショックだったのか? まあ言葉は悪かったよ。すまん。
私スレだけ立てて、完結させず放置する輩も多いのでその類かと最初は思った。
だから最後まで書き終えたのは、評価に値すると思うよ(当たり前のことなんだが)
さて。暴言のお詫びに俺も簡素を書くよ。
まず、わりと好みの内容だったこともあって、けっこう面白かった。
疑わなくて良いよ、本当。ただ俺は文章のレベルで、読み方を変える
人間なんだけどね(w 何も考えずに読めば、魅力的なプロットではある。
しかし、前半と後半の書き方が違いすぎるせいで批評し難いな。
文中で、小説である事さえも傍観した視点がたまにあるけど、やめときなよ。
せっかく入りこんでたのに、現実に戻された。
表現法も貧弱かも……数字や回数で表記する部分がちょっと多い。
(ところで「二十メートル」って、何か狙ったのか? 効果ないぞw)
五章と十三章のラスト部みたいな表現は良かった気もする。
良かったというか「気になる」かな。特に十三章は俺なんかじゃ判断つかない。
地の文がうまくなれば、もっと効果的に使えるようになると思う。
あと重雄の公園での暴挙、変だよ? 唐突すぎてビビった。
長いから突っ込む部分も多い。ポイントだけ書いとく。
解り難かったら説明する。↓↓↓
沈黙を記号で表すのが多すぎ。
三人称多視点なら( )で括るモノローグはいらない。
篤、キャラなさすぎ。勘が良すぎ。
映子の存在意義なさすぎ。
ラストが弱すぎ。
プロット立てて書けば半分の長さになる(?)
場面転換多様が鬱陶しい(たぶん掲示板だから)
虎に出すなら、カナーリ推敲する必要がある。
>137
いやいや(笑)根になんか持ってませんよ。
ちょっと言葉が足りなかったので、補足しておきます。長くなりますが了承下さい。
実は僕は漫画家志望で、以前はシナリオを書いていました。
文章についてもそれで納得して頂けるのではないかと思います。
情景描写不足はその所為です。シナリオは場面の最初に例えば「居間」と書き、あと全体的な様子は書きますが、詳しい描写はしません。物語に必要な分だけです。
そのクセが抜けなくて苦労しました。また、くどい表現を余り好ましく思っていないので、風景や人間の様子に形容詞を多用することは苦手です。
「〜をした」など行動を単に書き表しただけの文章が多いのは、これらによるものです。後は…勉強不足です。
40さんの意見が胸にこたえたのは、自身の小説に対する認識の甘さについてです。怒られる事を承知で書きますが、小説を書き出した経緯は、物語の訓練です。
また、画力不足等から漫画にできなかった話を、とりあえず形にしておこうと言う考えもありました。
文芸サイトでは余り批評などはされないので、そういう浅はかな考えを自覚する事はありませんでした。
つまり「自分は小説家を目指している訳じゃないし」という思いが常にあったんです。
40さんの言葉は、そういういい加減な自分の姿を鏡に映されたような気がして、辛かったんです。
それで、137での感想・ご指摘についてですが全くその通りだと思います。(笑)
いや、僕も同じ様な事思っていたんです。書き終えて、ですけど。
数字、回数の多用は仰る通り表現力不足です。二十メートルと言うのは単なる思い付きで、何ら意図するものはありません。(W
また、重雄の公園での行動が不自然な感を受けるのは、僕の力不足です。
狂人というものが上手く書き表せていたら、おかしくは無かったと思います。ただ、狂人を書くことは(32)の時点で挫折したんです。
自分には無理でした。百年早かった。単なる死に怯えた哀れな老人を書いただけになってしまいました。
あと、指摘された部分についてですが…
・「………」これは漫画の影響です。
・()好みです(W 。文章の作法としておかしいのならやめます。
・自分でも何考えてるか解らない主人公(笑)。まあ、巻き込まれ型ですから…。勘が良いのは物語を展開させるため(W…すみません実力不足です)。
・用務員室で話が終わっていれば、彼女がヒロインでした。しかし映子は一度見せ場(恋人の回)をつくったのに、奈津美には無かったのでバランスが悪いなあと思いまして…。
それで奈津美に目撃させたら、あららふたりがくっついちゃった(笑)。と言う訳で、すっかりヒロインの座を奪われてしまいました。合掌。
ラストについてはひとまず置きます。
・「プロット立てて…」そうですね。ただ、僕は最初に段取りを決めて書けないんです。決めても、書き出すと違う話になります。前にも書きましたが。
・場面転換が多いのは逃げです(W 先が思いつかないからとりあえずこっちの奴に触れよう、みたいな。ああ〜すんません!
・虎の穴には出さないと思います。仰るとおり推敲がものすごい量になるでしょうから。いや、決してめんどくさいと言う訳では…。
ラストについては次に書きます。
で、ラストについてですが。
本来なら、奈津美は死ぬ筈でした。
(34)の真ん中、奈津美を抱いて道端で泣き伏す、というところ。あれが本来のラストになる筈でした。
テーマとしてもそのほうが良かったでしょう。テーマが何なのか僕にはわかりませんが(w 。
しかし、あまり人を殺すのもどうかと…ハッピーエンドの方が良いだろうと思って方向転換しました。
だから印象が弱いのは仕方ありません。なんか、青春物みたいだなあと自分でも思います。重雄がいなかったら学園ものですね(w 。
あと、書き忘れていた「小説である事さえも傍観した視点」についてですが…。
完全に司馬遼太郎の影響です。自分のレベルを横において話をしますが(w 、僕は黒澤明の望遠レンズを多用する画面、岩明均の人間を生物として観る視点、そして司馬遼太郎の一種「語り部」として小説を語る視点、これらにすごくリアリティを感じるんです。
突き放した視点、天の視点、色々呼び方があるのでしょうが。あとR・ポランスキーの視点も好きです。
倣岸なのではなくて、僕自身、集団に違和感を感じる人間なので、それらにリアリティを感じたのかもしれません。
だから、以前誰かが「三人称多視点は難しいから一人称にしたら」と仰いましたが、変えなかったのは、それが書く理由だからです。
テーマなどは持っていませんが、自分のみている世界を表したいという欲求があります。漫画、それに映画を志したのもその所為です。
ちょっと話がそれました。これで、終わります。
40さん、僕はあなたを恨んでなどいません。寧ろ感謝しています。
小説を応募してみます。勿論、これじゃありませんが(w 。 では。
>135
ぜひお願いします。
>136
ええと、(笑)有難うございます。
マンガ……マンガ、ね。どうりで俺の書き始めた頃の文章と
欠点が似てると思ったら、同じ穴のムジナかよ(w
結局、小説もマンガと一緒だぜ。書きゃある程度上手くはなる。画力と一緒だ。
>小説である事さえも傍観した視点はやめれ。
これは無視して。使う場所が悪かっただけかもしれない。
時代物が苦手なんで司馬せんせはみたことないけど(ヘボくてスマンな)
さすがに話が盛り上がってる最中は、こういう視点は使わないんじゃないか?
本当は虎に出せば、少なくとも俺よりはイイ批評してもらえると思うんだけどな。
ま、一定の水準超えてないと良い感想もつかねえとこだから、なんとも言えんけど。
重雄と篤の会話の「殺したいほど憎い人間が、死の恐怖を凌駕してる」みたいに
みえた部分が、俺には魅力的だったんでそこを掘り下げて欲しかったな。個人的な感想。
まあ、がんばってな。あと歩き方スレが復活したみたいだから、そこで宣伝すれば?
読んだ。
技術的な話はつまらないので書かないことにして、個人的に興味を持った部分を少し。
この物語の主キーになっている重雄。物語中で唯一、個性のある人物にして、物語の
エンジン役。こいつについて少し。この人物の決定的なポイントは、ガンを宣告されて
「生と死」について独特の考えに至る点なのですが、この部分の描写がほとんど無かった
のが不満です。
最近私が興味を持って読んだ本に、死刑囚の精神状態を分析したものがありまして、
被疑者(控訴中なので)が、凶暴で看守に殴りかかったり、精神を破綻させた
ように独り言を呟きつづけていたり、はたまた、独房で被害妄想が果てしなく強く
なっていく例をヒアリング調査した結果が記録されています。
はたから見ると、これらゼロ番囚(死刑宣告者)の行動は不可解で、気が狂っている
としか思えないのですが、数多くのサンプルを丁寧に読んでいくと、彼らの不可解な
行動にはひとつの共通点が見出されます。それは、彼らの行動の全てが、明日には
自分の命がないという切羽詰った極限状態で、「生きること」をできるだけ濃密に
実現させようとする点です。それがまるでV.E.フランクルのように昇華されるかどうかは
まあ、置いておいて、彼らは死を宣告されると、生きることに対して強い執着を
持つのです。事実、彼らは死刑を免れ、無期が確定(未来を約束される)すると、
狂気じみた行動は影を潜めてしまうそうです。
さて、話を戻しまして、重雄。彼が独特の哲学を持つに至る過程を推察してみると
諦めというか、虚無的な思想に基づいているような気がします。彼は、ガンを宣告された
残りの数ヶ月、生きる運命から逃れることはできません。彼の哲学は、残りの数ヶ月を生きなければ
ならないという運命を否定しているように見えます。まるで、こけても自分で立ち上がれずに泣き
続けている子供のようです。
想像するに、重雄はとても精神的に弱い人間で、あまり自発的に行動することのない人間なのでしょう。
そういう人は世を呪いながら、黙って死んでゆくのではないかと思うのですが、彼が他人の
「運命を試す」行動にでる積極さはどこから来るものでしょうか。
自らの生ですら死の淵へ追い落とし、気まぐれに人の運命を試す(おそらく自分の運命と比較して
いるのでしょう)その精神をもっと突き詰めて欲しかったです。
>142
同じ穴のムジナですか(笑)。
で、歩き方スレというのは、
「創作文芸版の歩き方」というやつですか?
そうですね。書き込んでみます。どうもありがとうございました。
頑張ります。40さんも頑張ってください。では。
>143
読んで頂けましたか。有難うございます。
で、重雄についてですが、ふむぅ…なんか自分の事言われているみたいだなぁ(w 。
次郎吉さん、亜連さん、40さん、くろとしろさん…皆さんの感想を読ませて頂いて、ああ、いろんな見方があるんだなあとしみじみ思ってしまいました。
僕自身、書く時は物語として体裁が整う事だけを念頭に置いています。というかそれで精一杯です。
書き終わって、ああ、こんな事が書きたかったのか、と自己嫌悪に陥る(w 事度々です。
それは人に言うべきものではないので言いませんが、篤にしろ、重雄にしろ、映子も、奈津美も全てのキャラクターが、自身の表れなんです。
だから余り言いたくない。(笑)くろとしろさんの仰るとおり、死を背負った人間の描き方としては不充分だったと思います。
もうちょっと書きたいことがあるのですが、バイトに行かなければいけないので(笑)。続きは帰ってから…
145 :
名無し物書き@推敲中?:02/01/26 14:59
せっかくまともに完結した連載なんだから、みんなもっと感想書いてあげてよ。
>145
有難うございます(笑)。
>くろとしろ
ええと、話の続きですが。
143で書かれている話は非常に興味深いです。ははあ、と頷く事しきりです。
で、自分で改めて読み返してみたのですが、ひとつ、解った事があります。
それは、「やはり自分は映像志向だ」ということです。
つまり心理を描写する際、言葉で書き連ねるよりも、キャラの仕草などで表現したいという欲求があるみたいです。
それが叶ってないと(笑)。実力不足ですね。完全に。
くろとしろさんや他の方々が、描写不足を感じるのはその所為だと思います。
えっと、虎の穴に「灼熱」という作品を投稿してきました。
書きかけなんですが…(連載できるんでしょうか?)
良かったら読んで下さい。
148 :
名無し物書き@推敲中?:02/01/27 20:42
いまから逝ってくるわ。
一応ageとくな。
まあ、文芸の道は一日にしてならずぢゃ。
気長に頑張ってとしか言えん。
がんばります。読んで下さって、有難うございました。
151 :
名無し物書き@推敲中?:02/02/10 19:22
152 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/01 18:19
街が夕暮れを迎えている。夜が近づくにつれて空気の冷たさが体を刺すと
おれはまた昔の事を考え始めた。
見知らぬ誰かを探すためにさまよい歩いたこの街は、ただ健康的な出会い
を果たす事に憧れていたおれの思い出の街だ。あの頃心許せる人を探してい
たのか、むしろ孤独になりたかったのか、そんな事はわからない。
ただ自分が自分足りうる由縁を見つけたかっのかもしれない。
憂鬱な日々の連続。気がついたらおれは病院に入れられていた。
「あなたのような症状には原因があり、しかも誰にでも起こりうる事
で、もっと余裕を持った生活をせにゃなりません」
いつ病院に入ったのかよく覚えていないが目の前で医者がそう告げて
いる。おれは自身に余裕などない気がして尋ねた
「例えば、どのようにです」
「一概には言えませんが趣味を持つとか、楽しめる事をしたり具体的
な生活習慣を変えてみるとかそういう事です。ま、当分ここからは出
られませんが」
「楽しい事ならありますよ」
「それはどんな事です?」
おれは自分の趣味と、その素晴らしさについて医者に説明した。
「それは結構な事ですな」
「先生もそう思いますか」
「人の趣味を無理に咎める事は出来ませんから」
その日は早く寝るように言われそれ以上医者と話す事もなく個室に入
れられた。言うまでもない事だが、おれはこんな場所から早く抜け出
したいと思っていた。
その夜おれは悪い夢を見た。
>153、154
…感想ですか? だとしたらすごく的を射ていますね。病んでいたのかもしれません。これを描いていたときは。
ついでに書きますと、虎穴の小説は挫折してしまいました。書き方を変えたのが災いしたようです。あと批判が殆どなかったのが(笑)。
ここでは叩かれに叩かれましたからねぇ。なにくそ! と思う気持ちが原動力でしたから。
スレが倉庫に行く前にかけてよかった。では〜。
156 :
153.154:02/04/02 01:58
感想ですm(− −)m
書いてみた駄作の書き出しでもあるけど。
今日の朝から大学だぁー
独房の中で考えた。
夢なら覚めてほしいと願った。きっと夢なんだ。ただ長すぎる夢・・
でもそれを彩る天使がいない。どこへ行ってしまったんだろう。
おれは待ち続けた。日に二度看守が運んでくる食事を何度貪ったの
か。でもいつまでだって待ってやるから安心しろ。
今は単なる空白の時間と成り果てた日常をおれは生きている、そ
んな気がする。最初はつまらなかったが今はもう慣れた。人が言う
ほどおれはおかしくないはずだ。でもお前は本当にどこへ行ったの
だ?違うな。見捨てたのはおれだったのだ。おれはどうやらその事
も忘れていた。こうなった全ての責任をお前に擦りつけるためおれ
はお前を捨てた事を忘れた。夢なら覚めろ。
寒気のせいで右手の親指の部分から血が出ている。おれはそれを
少しやぶって、壁に、ほとんど自分でもよめないくらい薄く、次の
ような事を書き綴った。
君はいつもおれのそばにいたね。それは知ってる。でもどうして
だろう?僕はもう君の存在に気付く事がなくなった。君が現実だと
わかったとたんに君がわからなくなった。君も同じだったのか?だ
とすればあの頃のままでいたかった。当分あわせる顔がない。だか
らしばらく考えない事にするよ。つまり、小説を書かない事にする
よ。
さよなら
158 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/17 00:48
age
もっかいここで連載してみようかな…なかなか消えないし。
こんどはもうちょっと健全なのを(w。