某板でのGANTZ連載小説の続きをキボンするスレです。
51さんカモン!
51さんが来なかったら本スレが轟沈させられたときのための
補完スレってことで。
基本的にsage進行でいきましょう。
難民に逝け、ヴォケ!
3 :
名無し物書き@推敲中?:02/01/05 14:25
期待上げ
4 :
名無し物書き@推敲中?:02/01/05 15:48
それじゃお言葉に甘えまさせて頂きます。
鼬害かも知れないのでsageで貼りますね。
前置きです。
この小説は漫画板に僕が書いた、以下のような解釈を元にしています。
51 名前:名無しんぼ@お腹いっぱい 投稿日:02/01/02 05:03
ここが本スレでいいの?
今日面白い解釈を思いついたんだけど、ここに書いていい?
今までの解釈を見ているとふざけた宇宙人がサバイバルゲームをさせて
楽しんでいるって説が多かったけど、俺は違うと思う。
宇宙人は大まじめなんだけど地球人のことをよく理解していないって説。
ちょっと複雑だけど、一言でいうなら
西「ここにいる人間は……信長の野望のキャラクターなんだよ。」
つか、余計わかりにくいけど(汗
52 名前:51 投稿日:02/01/02 05:03
まず地球にいる宇宙人を倒しにやってきた宇宙人がいる。
でも自分達の手を汚したくないので死んだ地球人を蘇生させて戦わせることにした。
しかし宇宙人は地球の言葉を理解しない。
ひょっとしたら地球人とは思考形態そのものが違うかもしれない。
直接命令するのは困難だ →よし、通訳兼指揮官を用意しよう。
それが球体の中の男(地球人)。
彼は玄野たちと同じく一度死んで転送された人間。
眠りながら宇宙人からのメッセージをヴァーチャル体験を通じてインプットされる。
そして彼のアウトプットは球体にリダイレクトされて玄野たちに伝えられる。
つまり宇宙人は彼に暗示をかけることで指令を与え、彼の言語中枢を介することで
玄野達にメッセージを伝えていた。
で、具体的な暗示のかけ方、これは彼らが地球人を観察していて発見した方法、
シミュレーションゲームだった。
宇宙人たちは地球人がゲームをするのを見てとても不思議に思った。
モニターに向かって何やら操作し、返ってくる変化を楽しむという、
現実に何も働きかけない行為に地球人は夢中になっている。
それなら敵宇宙人を倒すというゲームを作って地球人にプレイさせれば
望む結果が得られるんじゃないか?
この辺は「エンダーのゲーム」というSF小説にヒントを得たんじゃないか
と思ってるんだけど(宇宙人じゃなくて奥がな。当然だけど)
上のつづき
53 名前:51 投稿日:02/01/02 05:04
で、宇宙人の誤算というのはゲームというものが不真面目にプレイする
遊びであることを知らなかったということ。
宇宙人だから遊びという概念を知らないということも考えられる。
球体の男は夢うつつの中で宇宙人殲滅シミュレーションを楽しんでいる。
死にかけている人間の中から面白そうなキャラクターを選んで味方ユニットにする。
男の考えた装備を宇宙人が実際に製作して玄野たちに与える。
敵宇宙人の名前がふざけてるのは球体の中の男が心の中でそう呼んでいるから。
ネギ好きの宇宙人キャラクター(名前はない)→んじゃコイツはネギ星人
作戦の成功条件がやけに厳しいのは、シムピープルでシムを殺しまくりたくなる
心理というやつ。
シミュレーションゲームで飽きてきて、徹底した自殺作戦やったことない?
まあそういうこと。
どうだろ?
つづいて、今まで貼っていた分です。
加筆修正した部分があるので新たに貼りなおします。
とうとう最初の満点達成者が出た。
それは決して玄野たちの予想を裏切ることなく、また、実際途中経過として彼らに与え
られる点数が示す通りに、最も身体能力に優れ、時として自分の命を顧みずに仲間を守る
男、加藤だった。加藤は今日、恵を庇ったことで左脚と、左腕の肘から先を失いながらも
マラソン宇宙人・宗星人と死闘を繰り広げ、宗星人(兄)と同(弟)を共に一人で捕獲すると
いう難業を成し遂げたのだった。
これをガンツは高く評価したらしい。作戦後の採点で加藤は緒戦での玄野と並ぶ、38点
という大量点を獲得し、一足飛びに100点という大台を達成したのだった。正確には16点
オーバーの116点というトータルスコア、誰もが加藤の姿を明日の自分に重ねながら、次
にガンツが加藤をどのような言葉で労うのか、あるいは加藤の身にこれから何が起こるの
かを注視していた。球体は加藤が100点を達成したことをその面上に大きく示し、ドラク
エのレベルアップの音楽にも似た調子外れのファンファーレを鳴らしていた。玄野や北条
(ホモ)達は口々に加藤を祝福し、はなむけの言葉を贈っていた。
最後は恵の番だった。恵はそれがどういう意味を持つのか、おそらく玄野と、もしかし
たら加藤とにしか解せない涙を両の目に溜めながら、ただ一言、
「おめでとうございます、加藤君」
とだけ言ったのだった。その真意を知る玄野の胸がツンと痛んだ。加藤は無言で恵の言葉
を聞き、しばし恵の頬を伝う涙に目を留めたあと、玄野の方に目を移した。玄野は自分の
気持ちをおくびにも出さず、いつものポーカーフェイスの上に友人としての微笑を浮かべ
ていた。
不意に加藤の顔が曇った。困惑したような皺を眉間に浮かべ、加藤は球体の方へ向き
直った。そして数秒考え込んだ後、誰にも聞こえないような声で一言、「決めた」と呟い
た。加藤は小さく息を吸い込むと球体に向かって叫びだした。
「ガンツ、聞いてくれ!」
「俺と計ちゃんが死んだのは、元はといえば俺が原因だ。だから俺は自分の命よりも何よ
りも、計ちゃんの方を優先したい。俺は一からやり直しで構わないから、だから計ちゃん
を先に自由にしてやってくれ!」
「加藤……。」
数秒の沈黙を経て、玄野が口を開いた。ひょっとしたら、加藤に自分の気持ちを見透かさ
れるかも知れない。玄野は伏目がちに加藤に向かって首を大きく二、三度横に振った。加
藤は玄野のほうに向き直り、そのままもう一度、球体に向かって叫んだ。
「ガンツ!!」
加藤の声に応えるように球体が一瞬光に包まれた。加藤が振り返った直後、加藤の身体
は頭から少しずつ、再びどこかへと転送され始めた。加藤はみたび叫んだ。
「ガンツ!!」
加藤の身体は既に眉のあたりまで転送されていた。玄野はふと気付いた。《もう一度戦闘
させられるのか?》……有り得ないとは言えない。ガンツについては分からないことだら
けだ。
玄野は加藤のスーツを目で探した。《どこかその辺に脱ぎ捨ててあるんじゃないか?》
部屋中を見回し、そして加藤の傍に寄り添う恵の姿を認めた。恵は既に加藤のスーツと銃
を両腕で抱え、加藤にそれを手に握らせようとしていた。しかしもう既に肩まで消えてい
る加藤の身体は硬直し、何故か銃もスーツも握ろうとはしなかった。
「加藤!!」誰かが叫んだ。あるいは玄野自身だったのかも知れない。
加藤の脚にスーツを巻きつけようとする恵の努力も空しく、加藤の身体は完全に消え去
り、スーツと銃だけが床の上に残された。
恵はそのまま床の上にぺたんと座り込んだ。
「……まだわからねーだろ?」
長い沈黙の末、北条が口を開いた。
「無責任な事は言えねーけど、先入観は良くないぜ。」
しかしそれじゃ加藤は一体どうなったというのだろう?
誰もが茫然と立ち尽くしていた。
一体どれだけの時間が流れただろう。玄野がふと目を上げると、球体が今まさに一条の
光を発し、一人の人間の姿を描き出そうとし始めているところだった。皆も既に気付いて
いたのだろう、光線が刻一刻と誰かを転送しているさまを固唾を飲んで見守っていた。し
かしだんだんとその人物の姿が現れるにつれ、期待は失望へと変わっていった。球体が転
送している男は加藤とは似ても似つかなかったのだ。刻一刻とその全身を現していく男。
その男は全裸だった。また誰か死亡して転送されてきたのだろうか。しかし玄野は男の顔
を見て気付いた。この男の顔には見覚えがある。懸命に記憶をたどる玄野。そして突拍子
もない結論にたどり着く。この男は……髪と眉さえ無くせば球体の中の男、ガンツに瓜二
つだ。
「……ガンツ」
玄野の発した言葉に恵はハッとなる。そして次の瞬間には球体へ駆け寄っていた。球体を
覗き込み、叫ぶ恵。
「加藤君!!」
その言葉に残りの全員が弾かれたように駆け出す。球体の中にいた男は、髪も眉もなく
なっていたが、紛れもない加藤勝だった。
球体を取り巻く玄野たちの後ろで、床の上に倒れこむガンツ。転送が完了し、そしてど
うやら気を失っていたようだ。
ガンツが目を覚ました。玄野たちの見守る中、ガンツはゆっくり全員の顔を見回す。矢
継ぎ早に質問を浴びせ掛ける玄野たち。ゆっくりと首をふるガンツ。しかしどんな問いを
投げかけても、ガンツの返事は簡潔すぎて、この奇妙な状況の全体像の把握を余計困難に
するだけだった。北条はついに、質問を投げかけるのではなく、ガンツの語るに任せよう
と提案する。ここはどこか、君達は何者なのか、どういう理由でここまで連れてこられ、
自分がここに現れたのはどういう理由で、あるいはどういう出来事の結果としてだったの
か。ぽつぽつと質問するガンツ。そしてやがて語りだした。自分のこと、彼の知っている
限りの現在の状況、ときには玄野たちに確認しながら。やがて玄野たちの前に自分達の置
かれている状況、ガンツの境遇がおぼろげながら見えてきた。
ガンツもまた、玄野たちと同じく、一度死んだところをあの球体によって転送され、あ
の狂ったゲームに参加させられていた一人なのだった。ガンツはいつも孤独だった。何人
のメンバーがいても、結局生き残るのはいつも自分だけ。彼は天性の素質で数々の修羅場
を何十回となく潜り抜けてきた。そしてとうとう100点を達成したその日、ガンツもまた
加藤と同じくどこかへ再び転送されていったのだった。
ガンツはそこで長い、とても長い夢を見ていたようだと語った。その夢の中でまるで自
分は神のように振る舞い、そして宇宙人を相手にシミュレーションゲームのような戦争
と、おかしな妄想とを繰り返していた、と。その世界ではあたかもシミュレーションゲー
ムのミッションのようにどこからともなく宇宙人のイメージが降ってきて、自分はそれを
倒すために宇宙人を倒すビジョンを思い描いては、いつも壊れたビデオデッキのように、
自分が死ぬ姿を最後に夢の冒頭に巻き戻されるのだ、と。殺しても殺しても蘇り、別の姿
に変身する宇宙人、登っても登っても登りきることのない長い坂、ガンツの夢はまるで悪
夢のように、恐ろしい反復性に満ちていた。そしてその夢の、まさに最後に玄野たちが現
れたという。玄野たちの存在はガンツにとって救いだった。悪夢のイメージの、永遠の反
復。玄野たちはそれを覆してくれた。しかし玄野たちが勝てば勝つほど悪い想像が掻き立
てられた。死のイメージはガンツの絶望感と強く結束しており、いつもガンツが何かに希
望を見出すたびに増長しては玄野たちを覆い尽くそうとするのだった。
そして、玄野たちが閉じ込められているこのマンションの一室。これこそがガンツがか
つて球体によって命を救われるまで住んでいた部屋なのだという。ガンツ自身が宇宙人と
戦うたびに連れてこられた部屋、それはこの部屋ではなく、もっと別の部屋だったとい
う。少しずつ明らかになっていく全体像。
「それじゃあんたの前にも誰かが球の中に閉じ込められていて、あんたがゲームを抜ける
のと引き換えに出てきたって事か?」
北条の問いにうなずくガンツ。
「それじゃ最後に聞くけど、あんたは一体何年この球に閉じ込められてたんだ!?」
力なく頷くガンツ。
「それを聞くのがとても怖かった。あんた達の格好でどれだけの時間が流れたのか、俺に
はちょっと想像もつかなかったからな。」
「???どういうことだ?」
「最初の質問に答えるために、まずは教えてくれ。今年は昭和何年なんだ?」
驚愕する玄野たち。
恵が泣き出した。
無理もない。突然加藤が目の前から消えて、そしてともすれば十数年にもなる別離を宣
告されたのだ。玄野は迷った。なんと言葉をかければいいのだろう。それ以前に俺の言葉
なんて本当に恵の心に届くんだろうか。……そうだ、加藤じゃなくて、俺ならずっと側
に……。いま玄野の心は一つの方向に向かって勢いを増していた。今こそ言え、言うん
だ……こんな時にか?……こんな時だからこそ……。
───加藤のいない今だからか?───。
「あのさ……。」
恵に話し掛ける玄野。しかし続ける言葉が出てこない。玄野の眼を見つめる、涙で赤くは
らした大きな恵の瞳、その瞳を覆い隠さぬように見開かれた、透明感のある、今は青ざめ
て白く映える目蓋……。玄野は射すくめられるような思いがした。玄野の頭の中はめまぐ
るしく回転し、玄野の意思とは裏腹な方向への道を模索し始めた。
「ほら、加藤の場合は違うって。」
「他の全員が死んでるわけじゃなくて、加藤を助けようと考えてるし、それに北条なんか
今60点だし。そしたら今度は北条の番でさ……」
恵の頬に赤味が差していく。目蓋をこすりながら健気に笑ってみせる恵。しかしその笑顔
は本当は、加藤に向けられているのだ。玄野の胸の中でしぼんださっきまでの気持ちが、
今ははじけた風船のカスのように玄野の心にこびりついていた。
玄野は心の中に引っかかるものを残しながら、今や身動き一つしない親友の姿を眺めて
いた。やがてふとあることに気付いた玄野は、それまでの気持ちもしばし忘れ、唖然とし
て親友の姿を注視した。
(で、でけぇ〜〜〜!!)
身長が190cm近くある加藤の「それ」は、玄野がアダルトビデオでしか見たことがない
くらいだった。玄野がふと我に返ると、玄野の表情に気付いた恵が玄野の視線の先を追っ
ていた。
「あ。」
一声驚き慌てて目を逸らす恵。
玄野は恵の恥じらう様子に思わず心を打たれた。そんな恵が可愛いと叫びだしたい衝動
にかられた。しかしやはりその表情も加藤のものなのだった。すべてが加藤のものなの
だ。玄野は再び、さっきまで自分を支配していた感情に飲み込まれていた。
加藤はすぐに自由になれるだろう。でも俺は?
体格的に決して恵まれているとも言えず、かといって西のような狡猾さももてない玄野
は、加藤に助けられ辛うじて生き残ることもしばしばだった。緒戦においては大量点を得
たものの、その後はあのときのような僥倖にも恵まれず、時々他のメンバーのおこぼれを
拾える程度だった。点数もようやく50点に届こうかというくらい。加藤のいなくなったこ
とを一番悲しむべきはむしろ玄野なのかもしれなかった。その加藤が、今やものも言わ
ず、ただそこに居、夢見るだけで恵に思われている。玄野は自分の中に沸き起こる嫉妬心
を否定できなかった。そして親友に嫉妬することしかできない無力な自分自身が、何より
虚しく惨めだった。
玄野たちは球の中に加藤を残して部屋を後にした。
ガンツもまた部屋を去らざるを得なかった。今やあの部屋には何もない。生活能力もな
いガンツは一度故郷にでも戻るしかないのだろう。全員が外に出る。すると扉はまたいつ
ものように硬く閉ざされるのだ。再び玄野たちが呼ばれるときまで……。ドアノブを握
り、本当に扉が開かないことを確認するガンツ。しかし今日は様子が違った。ノブはす
るっと半回転し、そして扉は開かれたのだ。
「ガン!」
チェーンがかかっていたのだろう。ドアはわずかに開いて止まった。奥からスリッパの足
音がする。廊下の電気がついたのか、薄暗いドアの隙間から光が漏れてきた。
「おかえりなさい?」
女の声がした。驚く玄野たち。
「あ……」
ぽかんと見ていた恵が何かに気付いた。
「表札、ホラ……」
今まで空白だったネームプレートに名前が入っていた。その下にはNHKと水道局のシー
ル。ドアの上の電気メーターはその円盤をゆっくりと回転させていた。何から何まで生活
感があふれている。およそあの部屋には似つかわしくない。
「どなた?」
女がドアの隙間から顔を出した。
ガンツはこの女性に口早にいろいろ質問していた。昭和60年頃この部屋に住んでいた男
と、その同居人のこと……。管理人や、当時のことを知る住民の部屋……。しかしガンツ
の望むようなことは何も分からなかったらしい。結局北条達とともに、自分がかつて暮ら
した部屋に別れを告げた。
最後に、ガンツはウチに泊まれという北条の言葉を固辞し、必ず連絡先を教えるとの約
束に、何度も念を押されながら夜の街へと消えていった。あの部屋は球体が描き出したも
のだったのか……。玄野の胸中を様々な思いが去来する。きっとそれは誰もが同じだろ
う。あの部屋を最初に訪れたとき、それがこの世のものとは思えなかった。少なくともこ
の次元のものではなかったということなのか。加藤と、あの球体はどこに消えたのか?
「どこに」消えたのかはわからないが、「いつ」再び現れるのかの問いには誰もが確信に
近い答えを持っている。玄野たちはまだ解放されたわけではないのだ。
この世界のものではない部屋。ガンツの悪夢と同じく球体が描き出した部屋。あの部屋
はいつ醒めるともしれないガンツの悪夢そのものだったのかも知れない。
その晩、玄野は朝まで一睡もできなかった。初めてあの部屋にきた日、それ以上に今日
はいろいろなことがあった。ガンツの正体、球体に取り込まれた加藤、そして恵の涙。す
べてが順番に玄野の頭の中をぐるぐると、とめどなくまわっていた。玄野の今までの人生
と同じだけの時間を悪夢の中で過ごした男、その気の遠くなるほどの長い空白を、あの男
はどうやって埋めるのだろうか? 答えの出ない問いに疲れ、恵のことを思う玄野、しか
し恵の顔はやがて加藤を思う涙に濡れ、その眼差しの先にある加藤の顔は、ガンツに叫び
かけた、あの加藤の顔に変わっていくのだった。ものいわぬ加藤を見つめる恵、加藤の裸
を見て恥らう恵の姿は、恵と加藤の性的な結びつきを玄野に連想させた。そしてそれらす
べてのイメージが、何度めぐってもまったく姿を変えることなく、順番に玄野の頭の中を
埋め尽くし、そして塗り替えていった。
玄野は跳ね起きてコンビニに向かい、ここ数ヶ月の間、恵の生活費のために控えていた
ヤングジャンプを買ってきた。巻頭の乙葉のグラビアで頭の中の恵を塗りつぶし、いつも
は読み飛ばす漫画をむさぼるように読んで、頭の中の加藤やガンツを追い出した。巻末ま
で読み終わると最初に戻り、また繰り返す。すでに文字もコマも、意味を持つ塊から分解
され、玄野にはただの記号《コード》として、ただ今日一日の記憶を押し流すために使わ
れるのみとなっていた。
夜が白んだ。玄野はそのまま朝を迎えた。
ちなみに、
>記号《コード》
こういうのはルビのつもりで読んで下ちい。
瞬間《とき》みたいな感じで(w
次回貼る分の後半と、その次の回は前スレ(STAGE 9)が壊れて
dat落ちする寸前に貼ったものです。
加藤が球体に取り込まれ、いわばこの狂ったゲームのゲームマスターになってから、
ゲームは次第にその質を変えていった。最も目に見える変化は球体が玄野たちに与える
メッセージだった。
お前らの命は、
なくなったんす。
新しい命を
どう使おうと
自分の勝手っす。
加藤の言語中枢を介して伝えられるメッセージは、まだおかしなところを残しながら
も、加藤のボキャブラリーそのままという感じで、玄野たちに加藤が目覚めているかのよ
うな錯覚を与えた。
スーツの箱や採点画面に示される玄野たちの呼び名も変化した、玄野は「計ちゃん」に
なり他のメンバーもそれぞれ加藤の言葉で呼ばれるようになった。文字そのものも時々反
転したりすることはあっても、おそらく加藤のものである、妙に角張った金釘流の字に変
化した。
次第に恵は、球体の中の加藤に話し掛けるようになった。突如失踪した加藤の代わりに
加藤の弟の食事を作りにいっている恵は、毎回作戦が終了してから、時には数時間以上も
ひとりで部屋に残り、ものいわぬ加藤に弟の話を聞かせるのだった。
戦闘の度に玄野たちが連れてこられる部屋、それもまたかわった。それはあの東京タ
ワーを望むマンションの一室から、加藤が両親を亡くし、今の伯母の家に引き取られるま
で暮らしていた、そして今は取り壊され、もうこの世に存在しない筈の加藤の家に取って
代わったのだった。かつて玄野が幾度も遊びにいった、あの懐かしい加藤の家だった。
しかし最大の変化は誰かが死ぬたびに連れてこられる補充メンバーの顔ぶれだった。今
ではヤクザや珍走団はまったく現れず、替わりに不慮の事故で死んだ幼い子供や、犯罪の
被害者が多くなった。しかしそういった人々ほど、どれだけ北条達が彼らを助けようとし
ても、再び死の恐怖と苦痛を幾度となく味わうことになり、そしてしばしば最悪の結末を
迎えるのだった。そのせいだろうか、次第に加藤の人選も変わっていった。次に多くなっ
たのがスポーツ選手、登山家、消防士など体力に長けた人々だった。生き残り組、経験に
富んだ「リピーター」が増えていき、また北条の提案したフォーメーションが次第に浸透
していったことで、今や玄野たちの生存率は西のいた頃とは比べ物にならないほど上昇し
ていた。しかしそれをあざ笑うかのような意地悪さで敵宇宙人の強さも上昇していった。
ここで北条は一つの決断をした。全員が生き残るために、全員が無事に生還するため
に……。今や紅一点となった、そして最も生存の可能性の低いであろう恵を最優先でクリ
アさせ、恵の抜けた分の欠員補充で全体の戦闘力を底上げする……。確かに名案といえ
た。しかしそれは恵にとって最も残酷な決定とも言えた。加藤が解放される代わりに恵が
取り込まれる。恵は目覚めた加藤に会うこともできず、いつ目覚めるとも知れない悪夢の
中に取り込まれるのだ。生存率が向上したとはいえ、全滅の可能性は未だに否定できな
かった。このころから恵は目に見えて口数少なくなっていった。玄野もまた恵にかけてや
る言葉を見つけられないばかりか、以前より恵を意識しすぎるようになり、ギクシャクし
た関係が続いていた。玄野と恵の共同生活も、今では殆ど会話も交わさず、ただのルーム
メイトよりも疎遠な関係になっていた。
玄野は自暴自棄になっていた。ゲームマスターである加藤の意思か、それとも空の上の
何者かの打算か、タイムリミットや戦闘エリアといったルールは既に撤廃されていた。実
際そんなルールがなくなっても北条達は意欲的に敵と闘い、そして勝利を収めていたの
だ。玄野はこれを利用した。西の使っていた「隠れ蓑」、光学迷彩装備を用い、他のメン
バーが作戦を終了するまで徹底して逃げ隠れしていた。当然点数は1点も与えられない
が、マイナスされることもなかった。恵も北条も、玄野の気持ちを知ってか知らずか、そ
れを咎めたりはしなかった。それが玄野の猜疑心に火をつけた。北条が玄野を気遣って、
話しかければかけるほど、玄野は過敏に反応した。どうせ自分が死ねば誰かが補充され
る。それまでの間、少しでも長く生き延びてやる。玄野は西と同じことをしている自分に
いらついていた。西への怒りは自分自身に向かい、鬱積した感情は、しばしば自己肯定の
ために、北条たちへの怒り、不満に結びついた。しかしそれを前面に出すことをよしとし
ない玄野は、北条達を徹底して避けることで自らを守るようになった。玄野は自ら孤立を
選び、孤独を好んだ。
一方北条の提案した作戦───基本的に敵を捕獲し、恵に止めを討たせることで恵に点
を集める───は順調にその成果を上げていた。いよいよ、恵が100点を達成する日が来
たのだ。
球面上には恵が100点を達成したこと、そして恵への祝福のメッセージが表示されてい
た。北条たちひとりひとりの目を見つめ、礼をいう恵。その後ろで部屋の隅に座り込み、
そっぽを向いている玄野。
恵の身体が消え始めた。見送る北条たちの前で、恵は最後に一言、
「ありがとう」
とだけ言い、それから部屋の隅にうずくまる玄野に目を移した。相変わらずそっぽを向い
ている玄野。恵はあの真っ直ぐな眼差しを玄野に向け、そしてそのまま消えていった。
そして……。長い空白の時間を経て、とうとう加藤の身体が、その姿を現し始めた。
「ハッ!」
転送がまだ終わらないうち、肩まで現れたところで加藤は目を醒ました。慌てて周囲を見
回す加藤。
「計ちゃん……。」
部屋の隅に蹲る玄野の姿を認め、涙を流す加藤。転送が終わり、身体が自由になるが早
く、玄野のもとに駆け寄る加藤。
「良かった、計ちゃん。無事だったのか……。」
涙を流しながら微笑みかける加藤。既に部屋にいた面々を見て、加藤は自分が何処かへと
転送されてから既に幾ばくかの月日が流れたことを悟っていたのだ。
「ああ。」
素っ気無く応える玄野。察した北条が加藤の肩を叩いた。
「まずは聞きたいことがある。」
促す様に言った。
しまった。
加藤が独立したので巨乳は玄野の部屋に戻らなくても良かったんだっけ。
おまけに他にも泊まるとこあるみたいだし。
この辺は大目に見て下ちい。
まず加藤は北条の持ってきた着替えを渡された。北条の頬は、心なしか紅潮しているよ
うに見えた。着終わると、北条は、何もいわずにただ今まで加藤の経験したことを仔細に
話してくれ、と言った。加藤は乞われて、自分が取り込まれてからのこと、球体の中で見
た夢のことを語りだした。しかしそれらは目覚めてから思いかえす夢の内容のように、加
藤の中で急速に形を失い、色あせていった。加藤の語る内容は次第に抽象的、断片的なイ
メージばかりとなっていき、北条は結局、加藤の夢の中から、ガンツの語った以上の意味
のある情報を拾い出すことはできなかった。
次に北条は加藤が眠ってからのこと、ガンツのこと、この複雑な状況のこと、これから
のこと、全てを筋道立てて、よどみなく完璧に説明した。加藤は質問することも、聞き返
すこともなく聞き入っていた。
全てを聞き終えると加藤はすっくと立ち上がった。玄野の方を一瞥する加藤。目を逸ら
す玄野。加藤は今また球体に向き直り、そして言った。
「岸本、さん」
「やっぱり俺は戦いたい。計ちゃんと最後まで、だから……」
球体は何の反応も示さなかった。果たして球体の中の恵は聞いているのだろうか? 考え
る加藤の脳裏に、西がガンツに話し掛ける光景が甦った。「おい!!ガンツ」「シカトすん
な」ガンツの耳に指を突っ込む西……加藤は球体に近寄ってみた。
そこにはやはり恵がいた。頭も身体も、全身無毛になり、丸くなって眠る恵の姿はまる
で赤ん坊のようだった。赤面して目をそむける加藤。そこで加藤は、自分と同じく球体の
中の恵を覗き込む男たちに気付いた。ただひとり冷たい目で恵を見つめる北条を除いて、
屈強な男達の、恵を見る目……。加藤は決意を新たにした。
「やっぱり、俺がいなきゃ……」
23 :
名無し物書き@推敲中?:02/01/06 22:54
ひっかかる所も多いが、力作だ
しかし、どうまとめるne?
24 :
名無し物書き@推敲中?:02/01/06 23:02
虎穴かまたりにまとめてくれ
25 :
◆gaNTZIZM :02/01/07 09:12
>>23 どうもです。オチですが、一応当初からこれというのは決めてあり
それに向けて伏線をちらほらと撒いています。
今まで戦闘シーンを一度も書いていないので最後に戦闘描写を
入れて、謎明かしをして終わりたいと思ってます。
原作の展開次第では早々に破綻する可能性が大ですが。
ちなみに次回からミッションに入ります。
>>24 すいません、よくわかりません。とらのあなのことですか?
それとまたりとは?
5巻が出たらディテールのつじつまを合わせようと思ってますが、
それまでに新展開があって賞味期限切れになってしまうかも。
先の読めない原作の勝手オチを書くのは予想外に大変でした。
26 :
名無し物書き@推敲中?:02/01/07 11:56
>>gaNTZIZM殿
珍をもっと出してくれよぅ・・。
29 :
名無し物書き@推敲中?:02/01/24 19:42
30 :
名無し物書き@推敲中?:02/02/07 18:07
人が死んだり、重傷に遭ったりする度、たしか岸本とかいう、例のタイプのヒロインが、
眼を背けたり、悲しんだり、怖がったりするんです。新しい趣向じゃのお。
32 :
名無し物書き@推敲中?:
それで?