カンソウ、ヒヒョウキボーン
2 :
プレリアルの少女:01/11/23 11:47
「ねらいすぎ。もう少しバラしてよ。」
「・・・はい。」
3日前に14歳になったばかりのステア=オーファノが、作戦機動連隊を指揮する様は、ゲームに興じているようにしか見えない。
などと、ステアにいったら、睨みつけられ、そして、しばらくは口もきいてもらえないだろう。
たしかに見た目は華奢な体の女の子だが、すでに3年以上の戦闘航海で、数限りなく実戦を経験している、いまどき数少ない歴戦の勇士なのだ。
海軍時代の3年間で付いたあだ名は、史上最悪の破壊王、恒星の天敵、神殺しのステア等、物騒なものばかりで、本人だって結構気にしている。
「超視程射撃」
戦闘指揮所には、もう一人。
極度に当たり障りの無い外見をした金髪の青年。
名前はフレッド。
いや、彼は人間では無い。
マーク12コミニュケーターと言って、人間と、超光速で機動する戦闘艦の各種エキスパートシステムとの間に入って、相互の意思交換を円滑するための、擬人化された立体映像である。
ステアとは、海軍時代からの長い付き合いで、自己増殖型プログラムのおかげか、コミニュケーター使いの荒いステアにも大部慣れてきた。
今日も、「少しバラして」などという、いいかげんな、いや、抽象的な命令を必死に解釈して、各種エキスパートシステムに伝達する。
エキスパートシステムは、定理証明系といわれる、算術プロセッサや、さまざまな制御機器からの情報を統合し、フレッドに送り返す。
「方向5の10、4発、10秒間隔、どうです。」
「射撃開始。」
かつて、地球に住んでいた人々は、宇宙は、音も空気もない静かな所だと思っていた。
200億キロもある太陽磁気圏の壁の内に暮らしていれば、そう思ってもしかたない。
「初弾、弾着まで30秒」
ステアは、息を吸い込んだ。
ここは宇宙。
硬X線の豪雨が降りそそぎ、重粒子の暴風が吹き荒れる。
重力の波がうねり、星間分子の霧が視界を閉ざす。
3 :
名無し物書き@推敲中?:01/11/23 12:02
続きをどうぞ
4 :
名無し物書き@推敲中?:01/11/23 12:13
ファンタジースレみたいに批評や添削で切れるなよ?
いや読んでないんだが。
スレを立てるなよ。
8 :
プレリアルの少女:01/11/23 21:14
レスアリガトウ。
>>3 ちょっとまって。
>>4 キレタリはしないよー。
>>5 タテチャイマシタ
>>6 そうかもしれないです。
>>7 サンクス
9 :
名無し物書き@推敲中?:01/11/24 05:07
>>8 迅速に続きを書け。迅速に完璧な推敲を行え。
たまにこういう事を考える。
世の中でどれだけの人が、自分の境遇に満足しているのだろうか?
世間で功なし名を遂げた人間というのはごく一部である。残りの大部
分の人間は名も知られずに死んでいくだけだ。普通のサラリーマンや
農民、カメラ屋の店員、タクシー運転手などは自分を知ってくれてい
るのは家族や親戚、同僚、友人たちだけであるはずだ。彼らは自分が
全く無名の人間として死ぬ事に対して恐怖を感じないのだろうか?
俺は恐怖を感じている。それと同時に自分が世間に少しでも名を残
せるような才能など皆無である事もよく認識している。だから、どう
しようもない。このまま生きていかなくてはならない事に絶望を感じ
る。それだから、俺は疑問に思うのである。俺以外の無名のまま死ん
でゆく世間の大部分の人間は、なにも感じないのだろうかと。
割り込んでスマン
俺も書いてみちゃいました...
12 :
プレリアルの少女:01/11/24 13:20
>>9 ツマリマシタ、これから主人公が出てくるんだけど、問題発生中。
>>10 >>11 ベツニイイケド、ジブンデスレタテルノモ、イイカモ。
批評が欲しいなら虎穴か文庫へ逝けよ。
>>12 なんだ、これプレリアルの少女のスレだったのか
スマン、もう割り込まないから
15 :
名無し物書き@推敲中?:01/11/26 11:49
週明けたぞ。続きは?
結局立てっぱなしか。
続ける気がないならスレなんか立てるな。
ほんと 根性無しだな
18 :
名無し物書き@推敲中?:01/11/30 10:53
>>18 無理だって。
虎の穴にさえ投稿できないような意気地なしだぞ(藁
つーか、
自分の頭の中では設定がまとまってるんだろうが、
実際には文章に出していないため、
ん? とか どーやって? とか思わせてしまうかも。
「超光速戦闘」「超視程射撃」「太陽系外の宇宙」についてが主かな。
い、い、い〜ちよ来い(ほ、ほ、ほ〜たる来い)
22 :
プレリアルの少女:01/12/01 13:11
10秒間隔で発射された、4発のマーク42熱核誘導弾は、強い向かい風を物ともせず、分子雲に向かって突進した。
パネル上に表示されたマーク42の速度を示すラインは見る見る伸びていく。
「初弾弾着確認。」
一番先頭を走っていたマーク42が核融合反応を起こす。
そのささやかなエネルギーの光は、ほん少しだけ、暗い宇宙を照らし出した。
後方に続く3発のマーク42の複合センサー群は、その僅かな明かりの中に敵艦を探し出そうと目をこらす。
「敵影を発見。」
「やっぱりいたでしょ。」
ステアが唇をちょっと舐めたころには既に、残り3発のマーク42は、軌道を修正し予測位置へ飛びこんでいった。
「次弾のマーク42が着弾。」
残りの2発のマーク42が、その周辺を観測する。
「はずれました。しかし、次は当たるかも知れません。誤差修正します。」
さらに10秒後に3発目のマーク42が反応し、エネルギーをまきちらすが、敵艦には命中しなかった。
「最後のマーク42が着弾。」
もはや、観測するマーク42が無いので、結果は判らない。
ステアの作戦機動連隊からは、観測するには遠すぎた。
光速で動いてる目標に命中させるのは、結構むずかしいのである。
「おそらく取り逃がしました。」
「ああ、もぉー」
「あのタイプの巡洋艦は加速性能がいいので超視程射撃では無理です。」
「でも、あたしの言う通り、あの雲の中にいたでしょ。このまま、あの雲に入って。砲撃戦用意。」
ステアの作戦機動連隊は、滑るようにして、雲の中に入っていった。
「何も見当たりません。もう雲から離脱したと思われます。」
ステアは砲撃戦が苦手なので、ほっとした気分になり、背もたれに体をあずけた。
「電波発信源を一つ探知。」
ステアはちょっとだけ、びくっとし、飛び起きる。
「電波発信源って何?。敵?。」
「違います。意味のある信号のようです。」
迷子になった移民船かもしれないけど・・・何かのワナかもしれない・・・無視しちゃおっかなー。
「迷子になった移民船かも知れません。」
「もしそうだとしたら、我々には救助する義務があります。注意して近づいて。」
迷子の移民船団の探索は重要な任務だったので、無視するわけにはいかなかった。
「どうやら、小型の宇宙船のようです。敵国のものではないようです。」
「うーん、回収。ストラスブールに。」
「了解。」
23 :
プレリアルの少女:01/12/01 13:14
ショウジキ スマンカッタ
>>光速で動いてる目標に命中させるのは、結構むずかしいのである。
それ以前に効率の悪いことやってんな。
ただの文章の練習と言うなら構わんけど、もう少し頭をひねったらどうだい?
25 :
名無し物書き@推敲中?:01/12/03 10:12
よくやったあげ
ガンダムみたいなものか?
しかし、24氏のいうことはもっともだ
27 :
プレリアルの少女:01/12/04 21:34
>>24 グサっときたよ。
一応、超光速で、マジで戦闘したらどうなるのかって、考えるうちに、
こうなちゃいました。
>>27 超光速戦闘を想定したなら
高速戦闘用の脳内アクセラレーター見たいな物が必要になってくるかと。
脳内アクセラレーターってのは1秒を捕らえる感覚を
10秒や、極端に言えば1日、1年に出来る物らしい。(うろ覚えなので違うかも)
例えば30万kmを通り過ぎる時間がほんの一瞬だと反応しきれないけど、
1時間や1日なら細かい行動や反応も可能になってくると。
使わないなら相手の行動や周囲の環境からこちらの取るべき行動を考え
一括して記録させるという方法もあるけど、これも効率は悪い。
後、面倒くさければ無視していいけど、どうやって超高速度を出してるの?
確か実験で亜高速まで近づくと、加速率が低くなり結局は高速を超えられないという結果が出てたはず。
ここら辺も、小道具として使えると思うから、余裕あったら考えてみたらどうかな?
29 :
プレリアルの少女:01/12/05 06:40
>>28 高速戦闘用の脳内アクセラレーターを付けると、文章もはやく書けるかな・・・。
一応、一回の戦闘は1日〜3日くらいという設定があって、それに合わせて
いろいろ設定を考えていましたー。
あと、超光速のギミックですが、光の速度が異常に早い亜空間を
クラインの壷に一次元たしたもので、スムーズに通常空間に接続したもの。
みたいな設定ですー。はっきりいってワケ判らんです。
ここらへんにツッコマレるとボロがでるのでかんべん。
30 :
名無し物書き@推敲中?:01/12/05 09:33
ぶっちゃけた話、小難しい設定にはまったく興味がない
それよりも主人公ステアがどういう人間的魅力を備えてるかの方が気になる
そこら辺をないがしろにしないよう頑張ってくれい
>>30 上で言ってるのは
それらが世界観確立の道具である事と
この文章が練習的なものであることを前提としてじゃないか?
>>30 そうそう、ステアは主人公じゃない・・・
というかまだ主人公自体、出てないらしいよ。
世界観や主要人物の説明を早めにやったほうがいいんでないの?
いきなり戦闘じゃワケワカランよ。
言い訳してる暇があるならさっさと続きを書け。
34 :
名無し物書き@推敲中?:01/12/06 02:21
超高速のギミック 光の速度が異常に速い亜空間 クラインの壺
ってなに???????????????????????
35 :
プレリアルの少女:01/12/06 07:30
>>30 実は私は、小難しい設定満載な小説すきなんですよ。
バクスターとか・・・。
でも、人間的魅力のある人物も好きです。
>>33 Uボートとかが、好きなもので・・・。
遅筆ゆるしてくれです。
高速執筆用の脳内アクセラレーターを付けたい。
>>34 超光速のギミックは、光より早い速度を出そうと言う、SFの世界では、人気のある設定のことです。
そこで、今回は、光の速度が異常に速い亜空間と言うのを考えてみました。。
相対性理論では、光の速度が上限速度というのがあるのですが、だったら、上限速度をあげちゃえ、と言う設定です。
メビウスの輪というものがありまして、平面の裏表がつながったものがあるのですが、
これに一次元足したものが、クラインの壺です(だったような)、これに、さらに一次元足して、亜空間と通常空間を繋ぐことにしました。
なんで、こんなことするかというと、戦闘シーンの都合上、亜空間と通常空間がつながってないと、攻撃が大変だからです・・。
舌足らずで、スマソ
ここらへんは、ツッコマれるとこまるんです。
読者の便宜を考えるなら、SFヲタの常識もわかりやすく解説すべきと思うがね。
もちろん、作中で。
37 :
プレリアルの少女:01/12/06 22:39
>>36 むずかしいですねー。でもがんばってみます。
38 :
プレリアルの少女:01/12/08 22:36
>>22に加筆
「あと、お誕生日おめでとうございます。」
「・・・ああっ、もう3日もシャワー浴びてないよ。髪の毛ボサボサ・・・」
ステアご自慢の黒のロングのストレートは、言うほどボサボサでは無かった。
「かみきりてぇー、前髪じゃまくせぇー。」
可愛い声で、悪態をつく。
39 :
プレリアルの少女:01/12/08 22:36
「はじめますよ。」
眼鏡をかけたアジア系の医者が、見おろしていた。
医者は、白い小さなスプレーを鼻に近づけた。
シュッと音がして、いやな臭いに顔をしかめる。
すぐに、視界が狭まっていき、体の力が抜ける。
ただ、医者達の話し声だけが聞こえる。
・・・耳の感覚が最後に残るってのは、本当だったな・・・
何も聞こえなくなると、急に寒さを感じたが、もはや寒さにふるえることるできず、ただ耐えるだけだった。
そして、寒さは収まり、何にも感じなくなる。
あとは、何も感じず、何も思わず、静寂と闇が世界を支配する。
不意に体が暖かくなる。
暖かさはだんだんましていき、どこからか、水の流れる音がした。
急に闇の中に、明かりが灯る。
光は、だんだん明るくなっていき、眩しさが柔らかな苦痛になる。
。
水の流れる音は、激しくなり、
体に感じる暖かさも、強くなっていく。
そうこの暖かさは・・・・・・
「熱いぞ、ゴラァ!」
あまりの熱さに身もだえし、叫ぶ。
太い声が狭い室内によく響く。
体に力が入らなかったが、それでも、必死に思いで置きあがろうとする。
眩しさにたえて、目を開けると、自分が、バスタブのようなものに入っているのに気付く。
ジャバジャバとお湯を掻き分け、フラフラしながら立ちあがった。
「・・・あー・・・うぁー・・」
思わず自分の四肢をみる、黒い手と足・・・オレの体だ・・・。
室内には、蒸気がもうもうと立ちこめ、湯気にむせる。
コードがたくさんつながったバスタブから出ると、今度は寒さに震えた。
鼻に入ったお湯が痛い。
部屋の外から話声がきこえる。
「いったいどうなったんだ?」
ようやく扉を見つけるが開かない。
「どうやって開けるんだ!」
押したり引いたりしているうちに、ガラガラと開く。
「手動かよ!」
フラフラしながら、湯煙を掻き分けると、金髪の青年と、黒髪の少女が立っていた。
「おーい、どうなってるんだ。説明してくれよ。たのむ。」
そう言って、ふと自分の姿が気になる。
よかった、黒のブリーフを履いてる、全裸なんてサマにならんしな。
しかし、海軍の厳格な作法が染み付いてるステアには、そう思えなかった。
・・・すっぱだかだよ、おっさん・・・
40 :
名無し物書き@推敲中?:01/12/08 22:48
>39
よみやすくていいよ!好き
個人用途ならsageてくれないか。
>ID:RxXv7AEg
いえすたでーい
44 :
名無し物書き@推敲中?:01/12/17 13:38
あんげ
45 :
プレリアルの少女:01/12/21 04:11
「ストラスブールにようこそ。第104作戦機動連隊司令、尾羽野ステファニー海佐です。」
「あいにく当艦は艦長が不在ですので。わたくしがご案内いたします。」
ステアは、隙きの無い動作で、ぴっと敬礼する。てっきり金髪の青年が方が口を開くと思っていたので、意表をつかれる。
・・・ハァ?。なんだそりゃ、こんな子供が海佐って、そんなに偉いのか?。
襟章をみると、たしかに、エラそうな襟章しているし、子供しては、軍服をきっちり着こなしている。
外見はアジアの極東かな、オ・ファ・ノ?。子音から言って、日系か?。
もう一人の白人は・・・イギリス人かな?。
それにしても、えらくラフな格好をしているな。船に乗り込んでいる民間人かなにかだろう。
「今年は、何年だ。」
「西暦3570年です。あの・・・なんとお呼びすれば・・・」
「リンコン。エドガー=リンコン。お嬢さんは、ステファニー?。ステフってよんでいいか?。」
・・・しつれいなやつだな。
ステアは少しムッとしたが、顔には出さなかった。
「まわりの人からは、ステアと呼ばれています。好きな方で呼んでください。」
「ああ、それとアンタは・・・」
「フレッドです。ステアを補佐するホログラフィー画像です。気にしないでください。」
リンコンは、フレッドをしげしげと見つめたが、まったく意にかいさないようで、どうやら、本当にホログラフィーらしかった。
「自己紹介は、ともかく、いったいどうなっているのか、オレにはよく判らんのだ。」
「正直申しまして、私達も貴方については、戸惑っています。見たところ貴方の宇宙船は、相当古いタイプですし。一人乗りということから考えて、宇宙移民とは、思えないのですが。」
「嗚呼、オレの方は、ちょっと事情があってな、西暦3500年に、冷凍睡眠で、未来旅行に出かけたんだ。」
「70年前・・・、というと、戦争が起こるまえですね。」
「戦争?。オレが寝てる間に戦争があったのか・・・、とうとう議会の左派と右派が、仲たがいでもしたのか?」
「いいえ、大体20年くらい前に、異星人と遭遇して、戦争になりました。」
リンコンは、そりゃもう驚いた。
「異星人?。宇宙人が、いたのか?。知的生命体なのか?。宇宙戦争でも、やってるのか?」
手を広げて大げさに叫ぶが、本人は、少しも大げさなつもりは無かった。
「はい、最初の内は。」
ステアは、あくまでも事務的に答える。
「宇宙戦争だって、なんてことだ、オレは・・・」
オレは、ハッピーな未来を求めて、時間を旅してきたってのに。
「なぁ、もっと詳しく聞かせてくれよ。聞きたいことが山程ある。」
ステアは、リンコンが震えているのに気がついた。
「・・・あ、あの・・・作業着でよろしければ、体に合うものがあるとおもいますが・・・」
「ああ、たのむ、寒くて死にそうだ。ところで、なんで、アンタみたいな、子供が軍艦に乗っているんだ?」
「昔は、大人の人って、たくさんいたんですか?」
「あ?、ああ。今は、いないのか?」
「ええ、リンコンさんくらいの人だと・・・一番近くにいる人は0.5光年先のOMR101(第101作戦機動連隊)のバーノン海佐ですね。多分、この恒星系を挟んで向こう側にいると思います。」
「この船には・・・」
「私しか乗っていません。」
そう言うと、ちょっと微笑んだ。
48 :
名無し物書き@推敲中?:02/02/06 21:25
50 :
名無し物書き@推敲中?:02/03/08 22:13
おお!まだこのスレ残ってたのか!
ていうか二ヶ月以上経ってるぞ。1よ、どうした?
51 :
プレリアルの少女(横取りマン):02/04/09 13:50
裸のエドガーは、ステアに命ぜられるままに、キャビンでスペーススーツに着替えた。
アフリカ系黒人種である彼は、身長190センチを越える大柄な体をベージュ色のスーツに
包ませると、けだるそうに肩を揉み、腕を回した。皮膚に密着した合成繊維の布地の下で、
太く逞しい筋肉がうねり、波を打つ。見事に鍛え上げられ、かつ均整の取れたその肉体は、
ミケランジェロの刻んだダビデ像を連想させた。いずれにせよ、そのシルエットは、この黒人
の男性が、普通の日常生活者でないことを雄弁に物語っていた。
壁に空いた舷窓の外には、宇宙の漆黒の闇が見えている。エドガーは狭い船室の低すぎる天井
に頭をつかえそうになりながら、窓ガラスに近寄った。ガラスの向こうには、極低温の真空を
通して、無数の天体の光が、パレットにぶちまけられた絵具のように、浸透し合い、渦を巻い
ていた。
煙るような星雲の輝きを眺めてるうちに、エドガーの頭にさまざまな追想が轟々と去来してい
った。幼少の頃から、成人してまでのそれら心象風景のどれもが、血の匂いを濃く漂わせている。
彼の人生は飽くなき闘争の連続だった。
70年。すると、俺は今105歳ということか。
若過ぎる肉体を持った老人は、真っ赤な唇の口元を歪めて笑った。彼が眠りにつく前、執拗に
狙い続けていた多くの「敵」も、そのほとんどが既に死に絶えてしまっているのだろう。彼が
自身の手で裁きを加えるはずだった者たちは、彼の知らない内に「時」が残らず片付けてしま
ったのだ。恐らく平穏無事な人生をまっとうして。
エドガーは鋼鉄の壁に寄り掛かると、無性に煙草が吸いたくなった。熱く、香りの濃い、むせ
るような紫煙を肺に流し込めば、なにか良いアイデアが浮かびそうにも思える。
その時、キャビンに電子音混じりの、奇妙な男の声が響いた。
「気分はどうだ?」
エドガーは振り向いた。
52 :
プレリアルの少女(横取りマン):02/04/10 11:18
「気分はどうだ」
奇妙な電子音混じりの声に、エドガーは振り向いた。
見ると入り口扉の近くに、一台のロボットがうずくまっている。
円錐形の滑らかな曲線で構成された金属製のボディは、キャビンの照明に照らされ、白銀色に
輝いている。背丈は低く、エドガーのベルトの位置にしか届かない。しかし、末広がりの胴体
はたっぷりとしたボリュームがあり、全体としては相当な重量がありそうだった。
ロボットは円錐の頂点に付いているテニスボール大の丸いセンサーを、凝っと相手に向けてい
る。エドガーはその一つ目を睨むと、肩をすくめて見せた。
「悪くない。強いて言えば、視界はぼやけ、耳鳴りが絶えずし、吐き気がして、頭が金槌で一
晩中叩かれ続けたように痛む。それ以外は至って爽快だ」
「そうか。それは何よりだ」
「あとは寝覚めのシガーでも一服吸えれば、もっといい」
ロボットは腹部の蓋をカタリと開けると、中から煙草とライターをマジックハンドで取り出し、
差し出した。エドガーは感心するとそれを受け取る。
「用意がいいな」
壁から突き出したベッドに腰掛けると、エドガーはくわえ煙草に火を着けた。そして、改めて
目の前のロボットを眺め直した。スピーカーから流れ出している声は、先ほど見たホログラフ
ィーの白人青年のものだろう。煙を吐き出すと、
「お前がこの船の制御プログラムか」
「まあ、そうだ。厳密には違うが」
「何?」
「自分では、より高度な存在だと思っている」
エドガーは眉をひそめた。ロボットの丸いセンサーが倣岸な笑みを浮かべたように見
えたのだ。錯覚かと思いつつも、目を鋭く細めて相手を観察する。しばらくしてエド
ガーは静かに聞いた。
「・・・さっきの娘は?」
「ステアは『風呂(タンク)』に入ってる」
ロボットのスピーカーを通して、「声」は言った。
「その間、君の相手をするようにとの、御命令だ」
53 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/23 10:31
プ
54 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/25 21:37
55 :
名無し物書き@推敲中?:02/06/05 23:52
もうね、みんな、本とか読むな。
だから、作家になりたいなんて雑念が生まれる。
豚は豚らしく、生きろってこった。
57 :
名無し物書き@推敲中?: