407 :
名無しの与一:
大島桜が散り始め
染井吉野が綻び出す
沈丁花が息絶える
春は花咲き散る
花の命が終わる季節
ねえ、みんな浮かれているよ
花が咲いたと、浮かれているよ
花は死に逝くだけの為に咲き誇るというのに
ねえ、人は浮かれているよ
花に酔いしれ、浮かれているよ
もうすぐ死に絶えるというのに
あたしは寒椿が好きだと言った君は
春待ちきらずにぼたりと逝ったね
あたしは花のまま堕ちる
寒椿が好きだと
ねえ、みんな浮かれているよ
花が咲いたと、浮かれているよ
春だから、浮かれているよ
きみのいない春なのに
寒椿はとうに土に堕ちて朽ち果てたのに
花が咲いたと、浮かれているよ
椿の咲かない
木だけの春に
きみのいない
凍えそうな春に。