288 :
名無しの与一:
日付の変わる15分前
バス停に佇む君
もうバスは来ないよ
明日の朝まで
それでもきっと
君は佇むんだろう
もうバスは来ないよ
僕の呟きが
届かないから
そこから見える
高架の高い空を滑ってく
どこか遠い街へ行く夜汽車
日付の変わる10分前
バス停に君は佇み
もうバスは来ないと
明日になるまで
知っていたとしても
知っているはずだとしても
もうバスは来ないよ
皆知ってるのに
誰も君を咎めやしない
立体交差で交わる刹那
高架を滑る列車の窓から
どこか遠い街へ行く
夜汽車の窓から
僕は知っているのに
君に小さく呟くだけで
瞬く間に通り過ぎる
もうバスは終わったよ
明日の朝には
きっとまた訪れるだろうけど
今日のバスは終わったよ
きっと君の待ってる、
君が待っている、
バスは
ねえ、
もう
来ないんだよ。
289 :
名無しの与一:2011/12/11(日) 17:17:21.96 ID:Ec5ciIMN
誰かが死んだ話をしていた
午前8時の地下鉄の中
話し声以外は妙に静かで
聞かせられている人たちは
みんな死んだ誰かの
そんな気分になってただろう
響き渡るヘッドホンから
絡み付け死者への会話
ふと思うんだ
ぼくらは生きていたのだろうかって、ね
駅が迫ってブレーキが軋んで
会話はふと途切れて
席を立つ老婆が蹌踉(よろ)めいて
誰かが死んだ話は消えて
午前8時の地下鉄の中
無言でドアを目指す人たち
棺桶からきっと
心の中は出て行くような
そんな気分になってただろう
290 :
名無しの与一:2011/12/11(日) 17:22:04.80 ID:Ec5ciIMN
誉れに汚れてゆき
すごいね とか
よくできたね とか
子供は誉れに汚れてゆき
美しきは誉れだと 誰がが見聞を間違えた
誉れこそ美しきと 誰かが見聞を広め誤り
大人さえ誉れに汚れてゆき
悔し紛れの言葉 ありきと
気付かぬままに
全てが誉れに汚れてゆき
気付いている 誉れが過ちだと
悟っている 誉れが苦しみだと
気付かぬふりのままに
誉れに汚れてゆき
誉れ誉され誉れつき
都会の煉瓦を覆うあの白い誉れは
今日も貴方の上に降っていたのだろうか
私の放つ誉れが
嘘だと気付かぬままに。