260 :
名無しの与一:
たぶん
忘れる事はないから
だったら
思い出さないことにしよう
つきあたった
ひさしぶりの迷路の奥で
たぶん
思い出せないから
だったら
いっそなかったことにしよう
つきあたって
もどり道も風が流れて
たぶん
季節も変わって行くから
だったら
君もぼくも
たぶん
261 :
名無しの与一:2011/12/11(日) 01:28:00.42 ID:Ec5ciIMN
終わらない雨に閉ざされて
ぼくらは隔離されたまま
終わる時に阻まれて
ぼくらは幽閉されてしまった
始まらない夜に誘われ
ぼくらは迷走したまま
始まらない君と闇に
ぼくらは邂逅してしまった
風に似た嘘が粒となり
巡る千の夜と丸の死
電波になれ
ラジオは誰かの告白を
終わらない雨と嘘の風が
遮ったまま
幽閉されたこの空間
いまもうどの世界にも属せない
一条の線で
誰かを描き斬った
始まらない過去と未来の狭間に
幽閉されたまま。
262 :
名無しの与一:2011/12/11(日) 01:29:18.82 ID:Ec5ciIMN
ぼくらは
まるで
下り坂を
勢いをつけて
駆け上がるように
記憶して
ぼくらは
まるで
上り坂を
肩を落として
転がり下るように
忘れていく
残酷なのは過去より未来より今
たぶんこうして偽りがなぞり続けた平面を
まるで何も無かったかのように色褪せさせて事実を記憶を歴史を
なかったことにしようとしてる事だ。
263 :
名無しの与一:2011/12/11(日) 01:30:26.32 ID:Ec5ciIMN
世界中の午前零時
その鼓動が
いくつだったか数えてみようか
その朝に
瞳に映った光の量は
その世界全ての
何万分、何億分、何兆分、何京分だったか
走り出す季節が
桜を幻へと変えてしまうけど
幻も夢の中では
ほら、現実に代わる
世界中の午前零時
その幻想が
いくつあったか数えてみようか
その世界に
夢に映えた光の量は
その朝全ての
何万倍、何億倍、何兆倍、何京分だったか
走り出す時計が
幻を現へと色褪せさせてしまうけど
現も、ほら、おいかけてみれば
また夢のあとさき。
264 :
名無しの与一:2011/12/11(日) 01:32:20.86 ID:Ec5ciIMN
日付の変わる15分前
バス停に佇む君
もうバスは来ないよ
明日の朝まで
それでもきっと
君は佇むんだろう
もうバスは来ないよ
僕の呟きが
届かないから
そこから見える
高架の高い空を滑ってく
どこか遠い街へ行く夜汽車
日付の変わる10分前
バス停に君は佇み
もうバスは来ないと
明日になるまで
知っていたとしても
知っているはずだとしても
もうバスは来ないよ
皆知ってるのに
誰も君を咎めやしない
立体交差で交わる刹那
高架を滑る列車の窓から
どこか遠い街へ行く
夜汽車の窓から
僕は知っているのに
君に小さく呟くだけで
瞬く間に通り過ぎる
もうバスは終わったよ
明日の朝には
きっとまた訪れるだろうけど
今日のバスは終わったよ
きっと君の待ってる、
君が待っている、
バスは
ねえ、
もう
来ないんだよ。
265 :
名無しの与一:2011/12/11(日) 01:33:14.38 ID:Ec5ciIMN
今朝見た夢は
良くも悪くもなくて
思い出せないけれど
永遠なんて言葉で
染められてた
嘘だらけの世界は
それはそれで
キライじゃなかった
永遠なんて言葉は
嘘と同じ意味でしかないって
捨てゼリフが
温い風に溶けた
8月はまわり続ける
そろそろ針がなくなりそうな
レコードみたいで
からみつく粘度と
滴る汗とで
それはそれで
キライにはなれない
嘘なんて永遠は
繰り返し染められていく黄昏
今朝見た夢は
良くも悪くもなくて
思い出せないけれど
永遠の果てにたどり着くなんていうストーリーは
それはそれで
キライになれやしない
永遠の果てに
266 :
名無しの与一:2011/12/11(日) 01:33:51.11 ID:Ec5ciIMN
誰かが呟いた
夜がいい、
夜じゃなくちゃだめだ、って
濡れたウソの匂いが
夜だと見破れないから
ねえ僕にそんなコト
あれからわざわざ呼び出して
耳元で呟いたのは
本当の気持ちを
悟られたくなかったからでしょう?
星だけは綺麗なのよ、
それしかないじゃない?
夜がいい、
夜じゃなくちゃだめだ、って
濡れたウソがヤミに紛れて
光点にちらばった本音が
この街の夜なら
綺麗に看取れるでしょう?
ねえ僕にあんなコト
あれからわざわざ呼び出して
耳元で呟いたのは
本当のヤミに
紛れたくなったから
光をすべて消してしまいたかったから
濡れたウソの匂いに
本当は気づいて欲しかったから…
なんでしょう?
267 :
名無しの与一:2011/12/11(日) 01:36:55.17 ID:Ec5ciIMN
爪の先から闇に浸して
欠けた月の裏側なぞる
描いた円で叶うのなら
この夜が明けないように
まだ少し冷たい風が
眠る横顔を撫でたから
夢の中から伸びた手が
隣の熱を捜しだす
願いはまた叶わないまま
窓を閉めて横になる
すぐ重い腕に捕まって
その温もりに落ちていく
どうせ明けてしまうなら
白い光とおいしいコーヒー
優しい声に起こされて
気だるい笑顔で迎える朝を
268 :
名無しの与一:2011/12/11(日) 01:37:17.88 ID:Ec5ciIMN
君は彷徨う
出口ばかり求める
ドアを開けて見つけるものは
いつも出口のように惑わす行き止まりだけ
君は求める
彷徨うことを拒む
出口の案内に縋って
たどりついてもそこは新たな迷路の入口
君は疲れ果てて
へたり込んで涙を零す
見つけられないものに
振り回されているだけと知っているのに
君はまた彷徨う
出口だけを望んで
体力と気力とわずかな望みを費やして
時間を捨てて出口を求める
君は救いを求めて
地図を買いあさり磁石を幾百並べ
誰かの指す赤い光に惑わされ
駆け抜ける
たとえそこに
出口があったとしても
君はもう気づけない
永遠の迷路を
作り続けているのは
他ならない
君自身だから。
269 :
名無しの与一:2011/12/11(日) 01:37:46.81 ID:Ec5ciIMN
たぶん全てが寝静まった夜
星さえも吐息をついて
たぶん全てが止まった刹那
背中の荷物を
半分背負った
君の細い項から
あれから幾つの星が流れ
あれから幾つのヤミが明けて
あれから幾つの戦争が終わって始まって
半分の荷物は
世界のどこにいま
転がっているのだろう
たぶん全てを忘れて
寄せる波さえも消えて
たぶん君は
なにもかもを憎んだまま
肩の荷はきっと
重くなりつづけたまま
270 :
名無しの与一:2011/12/11(日) 01:38:15.17 ID:Ec5ciIMN
バス停を越えて
坂道をのぼって
夜の川面が鏡のようで
街灯りが映る
見上げて
歩くと
欄干の
隙間から
半月
これから満ちるか
これから欠けるか
わからない半月
何を思い出して
何も忘れていく
半月
時が過ぎ
欄干を
越えて
岸の向こう
街灯りが揺れる
夜の川面はただ鏡のようで
坂道をくだって
半月に照らされて