他にもイレズミをした男がすれ違いざまにぶつかってきたとき、飛び上がって
正拳突きを叩きこんだとか、日本刀をもって暴れている男と対し、下駄で刀を
受けて倒したとかの話もある。倒し方はすべてストレート一本。一本拳をつか
って捻りこむようにして入っていった。一発でほとんどの相手は倒れた。
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ヽ / ̄ ̄ ̄`ヽ、
| | (・)。(・)|
| |@_,.--、_,> ”武術は試みだよ、殺すんじゃないよ”
ヽヽ___ノ
ってのが、師匠の口癖でしたね。武術は実戦を通じて学ぶってことですね。
それから合戦するときの心構えといいますか、必ず逃げ道を確保しておけと
言っていましたね。”武道家が何故やられないと思う。パッとやってスッと退く
からだよ。だから一発で倒せ。グダグダ長引かせているから、刺されたりする
わけだ”とか”三つ突かれて避けられなければこっちの負けだよ”なんてことも
言ってましたね」
他武道が絡んだ話も当然多い。朝基はどんな武道に対しても
「やってみなきゃわからん」と言いながら、必ず手合わせをした。
「京都の武徳殿に行ったときですね。柔道着の有段者が五十人ばかりズラーっと
並んでいるわけですよ。ごっつい連中がね。まあ、是非とも手合わせを願いたいと
言われまして、その中から三十人ばかり選びまして、対戦したんですよ。実戦じゃない
から当てることはありませんでしたが、誰一人として師匠を投げることは出来ませんで
したね。銃剣術とやったこともあります。師匠はもちろん銃剣術なんてやったことはなか
ったんですが、すべて制しましたね。
それからこんなこともありました。今の合気道、当時は植芝柔術と言っていた
んですが、そこへ師匠と私で行ったんですよ。こちらとしては何やるわけでもなか
ったんですが、師匠が見えたら稽古をパッとやめちゃいましたね」