マリ見ての支倉令

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8名無しさん@お腹いっぱい。
「押忍」
「オス」
男臭い朝の挨拶が、澱みきった池袋の朝にこだまする。
故マス・オーヤマのお庭先に集う内弟子達が、今日も鬼のような浮腫みきった仏頂面で、背の低い門をくぐり抜けていく。
世間の辛さを知らない心身を包むのは、薄汚れた道衣。
上衣の袖は乱さないように、やたらと長い帯は翻らせないように、
蟹股で歩くのがここでのたしなみ。
もちろん、遅刻ギリギリで走り去るなどといった、はしたない内弟子など存在していようはずもない。

大道塾池袋本部。
平成X年創立のこの道場は、もとは格闘空手の内弟子のためにつくられたという、
伝統あるフルコン系空手道場である。
東京都下。赤線廃止前の面影を未だに残している風俗店の多いこの地区で、アズマタソに見守られ、
内弟子から一流選手までの一貫教育が受けられる漢の園。
時代は移り変わり、格闘空手から空道に名称が変わった今日でさえ、
三年通い続ければ温室育ちの純粋培養空手バカが箱入りで出荷される、
という仕組みが未だ残っている貴重な道場である。