25 :
名無しさん:
その夜、父は農家の長男として眠りについた。が、夜中にふと目が覚めてしまう。
寝ぼけた目であたりを見渡すと、暗闇に紛れて農家の両親が末娘の布団の傍らに跪いているのが目に入る。
何をしているのかと目を凝らすと、なんと両親は末娘の顔に濡れた布を被せて窒息死させようとしていた。
驚いて止める父。しかし両親は、仕方がないんだと涙ながらに言う。
貧しいこの村ではこういった口減らしがよく行われているのだった。
しかし父は納得できない。脳裏に、無邪気に笑っていた幼い妹の顔を思い出し涙を流し叫んだ。
「だからって、親に子供の命を奪う権利なんて無いはずだ!」と。
次の瞬間、父は現代に戻っていた。
悪い夢でもみていたようだと今までの自分を省みながら髭をそり身支度を整え、
これからまた再就職に向けて一から努力しようと考える。
その顔はリストラされる以前の、優しかった父のものに戻っていた。
実は父の中の悪いものは座敷童子が食べてしまったのだ。
不幸は自分にとってのご馳走なのだと座敷童子は言う(不幸を食べるから幸せしか残らないという仕組み)
優しい父親が戻ってきたと大喜びの少女。
座敷童子も喜んだのだが、家に充満していた”嫌な感じ”の原因である父の中の悪いものを食べたにもかかわらず
まだその”嫌な感じ”が家に残っていることに気付き微かに不安を覚える。
身支度を整え終わった父はこれまでのことを詫びようと母の部屋へ向かった。
途中に少女が話し掛けたが、父はなぜか少女には構わない。
もしかして何か怒らせたかな?と不安がる少女。座敷童子も不思議がる。
と、ちょうど母が部屋から出てきた。化粧をし荷物を持ち、まるで家出でもするかのようないでたちで。
「どこに行くんだ」そう尋ねる父に、母は「家を出て行く」と答えた。
父はこれまでのことを謝ると共にこれからまた頑張っていくということを話すのだが、
母は決して聞き入れようとはしない。彼女は更に「好きな人がいる」と告げた。
仕事を探そうともせず酒に溺れ暴力をふるう夫とは違う優しい人なのだという。