BUBKA 06年10月号 「真樹日佐夫・マッキーにおまかせ!」(聞き手:吉田豪)より
―まず判定がおかしいとか大騒ぎになっている亀田の世界王座獲得問題から
聞いてみたいんですけど。試合はご覧になりました?
「見てねえよ、あんなもん!切符はもらってたんだけど、弟子に切符やっちゃったら
やっぱりガッカリして帰ってきたな。」
―試合の結果を聞いた上での感想は?
「あれは負けた方がよかったよ。負けといた方があいつのためだったし、おかしいよ。
あれ片八百長だろ(キッパリ)。最後、止め刺さしにいかなかったの、あれわざと
じゃねえか。怪しいねえ。」
―協栄ジムは、そういうのが多いですよね。
「多いとはいえ、あれじゃファイティング原田がコメントもしねえで早く帰ったっていう
のがわかるよな。目も当てられねえよ。誰も亀田が勝ったと思ってねえんだから、
汚名を返上するにはもう1回ランダエタとやるしかねえだろ。ホームタウンデシジョン
があるから、引き分けだったら亀田の勝ちでいいだろうけど、最低3ポイントの差は
あったよ。亀田はKOされる寸前だったじゃねえか。」
―あれじゃあガッツ石松さんとか具志堅用高さんが厳しく言うのもしょうがない、と。
「具志堅の言ってることは正論だよ。まあ、亀田の場合は親父が悪いんだけどな。」
―ダハハハハ! でも面白かったですよ、テレビで亀田父とガッツさんが対決したのは。
「あ、そう? ガッツ辺りは鍛え直したいと思うんだろうな、ああいうのを見てると。
いや、素質はあるんだよ。とにかくあそこまで持ったからな。途中ちょっと盛り返してさ。
ただ、報知新聞から電話かかってきて、『亀田親子のスパルタ教育は“巨人の星”の
星一徹と飛雄馬を彷彿とさせるってみんなが言ってるんですけど、そう思いますか?』
って聞かれたから、『思わねえ!』『どこが“巨人の星”だ、ふざけんな!』って言って
やったんだよ。」
―ダハハハハ! マスコミ向けの特訓とかが梶原一騎っぽいと思われたんでしょうね。
「アイデアだけだろ。あの2人の結びつきは違うよ。どうしてもそういうふうに持って
いきたいみたいだから、剣もほろろで俺が相手にしなかったけどさ。
それでまた試合後も生意気だったのが余計に顰蹙買ってな。少しはじっとしてなきゃ
ダメだよ、反省しなきゃ。負けたのは誰よりも本人がわかってんだから。
親父だって信じられねえって顔してたじゃねえか! 判定勝ちを告げられたときに。」
―あのキャラでやって来てる以上は、生意気なまま押し通すしかないんでしょうけどね。
「そういうキャラクターとかドラマの作りもテレビ局が糸引いてんだろ?
TBSが金にあかせて作ったもんだからさ。だけど、テレビって本来、もっと使命感が
あるものじゃねえか。それがあんな試合を日本全国に垂れ流して、テレビ局も反省
しなきゃダメだよ。」
―結果的に視聴率取れちゃったからOKみたいなのがあるんでしょうね。
いまの時代にあれで50%ぐらいいっちゃうっていうのは。
「他の局が一生懸命足引っ張ってたけど、あれも見苦しかったな。ただ、今回の試合
で初めてダウンしたって時点で、いかにロクなヤツとやってなかったかわかるよ。
みんなロートルだろ。こないだのは現役で強いからな。」
―ただし階級が下だったという。
「勝算あったんだろうな、親父には。てめえのせがれの実力がわかってねえんだよ。」
―亀田父は、あれだけ階級の差があればイケるだろうと思ったんでしょうけどね……。
「ああいうのって、ほとぼりが冷めないんだよ。亀田が試合やることになったら、また
みんな思い出すだろ? 今までみんな亀田亀田で来ただけに『なんだ、あんなヤツ
だったのか』ってなるじゃん。だからこのバッシングは普通と違って燻り続けると思うよ。」
―最近は亀田批判の傾向が敬語を使えないのがよくないみたいな感じになってるん
ですけど、その辺に関してはどうですか?
「もうちょっとジェントルマンシップを持つべきだよな。国際式ボクシングっていうのは
紳士のスポーツで、それを守ってきたために他のいろんなスポーツとは一線を画す
もてなしを昔からずっと受けてきたわけだろ?」
―ただ、礼儀正しいボクサーが注目を浴びにくいっていうのも、また事実なんですよね。
「その方が話題にはなりやすいだろうけどもな。でも具志堅なんか全然そういうとこ
なかったよ、腰が低くて。原田だってそうだろ。世界を獲った人間っていうのは、みんな
どこに出しても恥ずかしくない男だったよ。」
―やっぱり真樹先生は梶原一騎先生同様、ボクシングに対する思いが強いみたい
ですね。
「強いよ。兄ちゃんの受け売りじゃねえけど、国際式ボクシングに尽きるな。
兄貴も『巨人の星』は嫌々書いてたけど、『あしたのジョー』への思い入れは大変
強かったね。不朽の名作が出来たから。
『ジョー』は絶対忘れられないよ、ボクシングが存在する限りは。」
―「巨人の星」は嫌々だったんですか?
「嫌々というより書かされたんだよ。編集部が作ったレールに乗せられただけでさ。」
―そういえば花形満主役で「巨人の星」のリメイクが始まりましたね、「少年マガジン」で。
「ああ、なんかそんなこと言ってたな。まだ見てねえや。川崎のぼるが描いてんの?」
―全然! (本を出して)こんな感じです。
「……なんかパッとしない絵だなあ。」
―ダハハハハ! 非常に同感です!
「花形は兄ちゃんが俺をモデルにしたって言われてるのにダメじゃねえか、これじゃ!
まあ、亀田はそんなとこでいいだろ。興味ねえんだよ。あんまりガサツで無神経な
ヤツって好きじゃねえんだよな。悪くたって、悪いなりにカッコよくて筋が通ってれば
いいんだけどさ。筋が通ってねえよ、映画のキャストにたとえたら大根なんだよな。
ああいう役を演じさせてもさ。」
―悪ぶりが板についてない感じですよね。
「そう。不良が持ってる匂いみたいなものがあるじゃねえか。誰も醸し出せないような。
そういうのがなければああいうキャラで売らない方がいいよ。田舎の不良だよ、あれ。」
(以下略)