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│ この物語はフィクションです。 │
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│登場するすべての個人・団体・競技等は架空の物であり │
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│ 実在する名称とは一切関係ありません。 │
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2 :
名無しさん名無しさん@腹打て腹。:03/02/14 18:45
新世紀のはじめ、ひとつの格闘技が壊れた。
世界挑戦試合での相次ぐ惨敗、安易な国内マッチメーキングに
危機感を覚えた日本ボクシングコミッションは
ある暴挙に出た。
現役、OBを問わず96名のボクサーを
瀬戸内海に浮かぶ周囲8kmの無人島に拉致。
3日分の水と食料、それに各々武器を配布し、
島中に散開させた。
島から出る方法はただひとつ。
「最後のひとりになるまで生き残ること」
いま、鍛え上げられたボクサーたちの
命を賭けた戦いが始まる……
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│ B O X E R │
│ R O Y A L │
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「これで殺し合えって言われてもなぁ……」
歌舞伎町の路上でワゴンによって拉致された
渡辺純一(楠三好=SB)は、考え込んでいた。
湿り気のある薄暗い草むらには、植物特有の匂いが満ちている。
彼に配られた武器は5尺の木刀。
入門前にはヤンチャで知られていた渡辺には
いかにも使い慣れた武器である。
しかし渡辺には、いまだにこの状況が信じられなかった。
当然だろう。
リングの上では命がけで戦うボクサーだが、
実際に人を殺せる奴がいるとは思えない。
さきほどの集合場所(古い校舎か?)には、元世界王者を含め
多くの有名ボクサー・関係者が集まっていた。
きっとセレモニーか何かの余興にちがいない……
手にした木刀を軽く素振りし、
ヤンチャ時代の感触を微笑ましく思い出していた渡辺の身体は、
その瞬間、大きく跳ね上がった。
【残り96人】
「い、痛てェ……」
胸が熱かった。振り返る間もなかった。
背後からの銃弾は渡辺の肋骨の間を貫通し、
次の瞬間、渡辺から意識と身体機能のすべてを奪った。
渡辺は相手を確認することができなかった。
しかしそれは、このゲームが確かに転がりだしたことを
意味していた。
【残り95人】
震える手でベレッタM92Fを握り締めたまま、
柳光和博(CQ渡辺=SF)は動けずにいた。
まさか本物だとは思っていなかったのだ。
「やばい……だろ、これは……」
柳光は慌てて渡辺の亡骸に駆け寄った。
とりあえず死体を隠さなければならなかった。
たとえ不可抗力とはいえ、柳光には人を殺してしまった事実が
重くのしかかっていた。
渡辺の身体を抱え上げようとした、そのときだった。
柳光は激しい嫉妬を覚えた。渡辺の左肩に触れた瞬間である。
見事にパンプアップされたその筋肉は
紛れもなく国内最強の左だった。
同じサウスポーとして……俺にこの左があれば……
ガサッ。
柳光の背後に草を踏む足音がした。
【残り95人】
柳光は反射的に落ちていた木刀を拾い上げ、
音のした方向へ振り向けた。
「なんだぁ、柳光さんじゃないっすかぁ?」
驚くほど能天気な声の、金髪の青年が立っていた。
その青年、徳山昌守(金沢=SF)の手には
小型の目覚まし時計が握られていた。
「なんなんすかね? これ。こんなんで人殺せって、ハハ」
くったくなく笑う世界王者の目には、微塵の疑いも恐怖もなかった。
まだ渡辺の死体にも気がついていないようだ。
柳光の目の奥が疼いた。眼底骨折、忘れられない痛みだった。
そしてこの異常な状況における世界王者徳山の精神的余裕が、
たったいま人を殺してしまった柳光には
耐えがたい侮辱のように感じられた。
【残り95人】
「こういうことでしょ? ねえ、徳山さん」
小さく呟くと柳光は左足を踏ん張り、
利き腕に握った木刀を徳山の金髪めがけて振り下ろした。
柳光の目に殺意を感じ取った徳山は、とっさにバックステップを切った。
追いかける柳光。しかし相手は世界王者であり、
柳光の追い足が徳山を捕らえられないことは、
すでに試合で証明済みである。
木刀の大きなスィングを見切った徳山が、
右ストレートを柳光の顔面にカウンターした。
「ウッ……」
顔をしかめたのは徳山の方だった。
「ハッ、得意の右も素手じゃ諸刃の剣だな」
しかし徳山は素早くステップインすると柳光の左肩に組み付き、
木刀の動きを封じてそのまま覆い被さるように倒れこんだ。
地面に軽く後頭部を打った柳光。刺すような視線で徳山を見上げている。
【残り95人】
徳山は柳光を押さえ込んだまま、冷静に尋ねた。
「なんのつもりっすか? 柳光さん……」
すでに木刀は地面に転がっている。柳光は口を開かない。
「まさか、試合に負けたから、とか……?」
「冗談じゃねえよ! 試合に負けたから相手を殺す?
そんなことするわけねえじゃねえか!
……俺は、お前が嫌いだったんだよ。
試合のずっと前からだ。試合が決まったときは狂喜したぜ。
やっとお前を叩き潰せる、ってな……」
徳山は戸惑った。心当たりがなかったのだ。
徳山は大阪、柳光は東京が本拠である。
私的な会話など、ほとんどしたことがなかった。
「柳光さん、いったいなんで……? 俺、なんかしました?」
柳光はここでやっと、徳山から目をそらした。
【残り95人】
「あの彼女だ……」
「……ハニーっすか?」
「そうだよ。あんなかわいい彼女、見せびらかしやがって。
5年前のレセプションで見たときからだ。
ずっと心に残っちまって夜も寝られねえ。
やっとお前を潰して彼女を奪おうって試合のときもだ。
おかげでオーバーワークになって
生命線の右肩を壊しちまった。
アレさえなきゃ……」
「ちょっと待ってくださいよ柳光さん。
ハニーのことはいいっすよ。
アレさえなきゃってなんすか?
右肩さえ怪我してなきゃ俺に勝てたって言うんですか?
それはちょっとボクサーとして……」
【残り95人】
「ハッ。優等生だなホンチャンス」
徳山は柳光の目を見据えた。
「左だけでも……強い奴は強いっすよ。
柳光さん、アンタは俺より弱かった。
だから負けたんです。
悔しかったら、またここまで
這い上がってくりゃいいじゃないですか」
それは徳山の優しさから出た言葉だった。
徳山はボクサー柳光を尊敬していた。
そしてもう一度、万全の柳光と戦いたかったのだ。
「ホンチャンス、お前ひとつ忘れてるよ」
「え? なんすか?」
「あのときは確かに左一本だった。そしてお前に負けた。
だが、今の俺は……」
「あ、ちょっ……」
徳山の返事を待つまでもなく、銃声が響いた。
徳山の後頭部からは、脳漿が噴出していた。
「……右手も使えるんだぜ?」
柳光の右手で、ベレッタM92Fが硝煙を吐いていた。
【残り94人】
誰か続きを。
14 :
名無しさん名無しさん@腹打て腹。:03/02/14 23:56
最後に生き残ったのは中野さんでした
おしまい
脳 内 で や れ
てより、削除依頼でてたが・・・
ということで、めでたく終了。