「青臭い議論だけで、宋を倒せるのでしょうか、晁蓋殿?皆殺しです。抗う者は、兵であろうが民で
あろうが皆殺しです」
楊令は、杯を置いて酒を注いだ。酒といっているが、中身は水だった。
「青臭いか。私は、そうは思わないな。正しいことを言ったら青臭く聞こえるほど、この世は濁り、汚れ
ている。違うかな?」
「梁山泊軍は、宋軍に勝てません」
「それだけで片付けるのか。清河も濁る。しかし魚は生きる。当たり前のことだ。問題は、濁った水が
腐りかかっていることだと、私は思う。腐った水の中で、魚が生きられるか?」
「魚は皆殺しにすればよいのです」
「殺すために、殺したか」
「まさしく」
「梁山泊軍が、再結集する」
「頭領かどうかはべつとして、俺はいま、梁山泊軍に戻ろうとは考えていませんよ」
「誰も戻れとは言っていない。私が女真の地にわざわざ来たのは、一生梁山泊に戻るなと、おまえに
伝えるためだ」