「文体が重いにもかかわらず、喋っている内容が薄すぎるのだと思います」
聚義庁は、重い沈黙に包まれた。
「もう少し申してみよ、蒼貴」
「はい。たとえば。『大事なのは、おまえがおまえであることだ』とか、それに答えて『俺は、俺ですよ、
どんな時でも』といった意味のない会話を重い文体でやっていると、滑稽に見えるということです」
再び聚義庁は、重い沈黙に包まれた。
「内容のない確認ばかりをしているということか、俺たちは?」
「はい。『雨は、空から降ってくる』といった誰にでもわかることを重苦しい文体で書き、それに答えて
『ただ雨が降っている』というような意味のない返事が多すぎるのです。だから、物語が先に進みません。
一節読み終わって、この節はいったい何のために存在したのだと疑問に思うことがしばしばあるのです。
一行あれば済む話を、意味もない確認のために、何頁も費やしているとしか思えないのです。それでいて、
『岳飛は百人の敵を馬から叩き落した』などと面白くなりそうな部分は一行で済ましてしまいます。
どこに頁を費やすべきかの選択が、従来の作品とは異なり、不適切な場合が多いのです。だから、
読者の共感を得ることができません」