いま眼をむけるべきなのは、岳家軍と張家軍だろう、と花飛麟は思っていた。
「金軍とは、当面は闘わないと、楊令殿と兀朮殿の間で話がついています。南宋は遠い。そんな
重々しい文体で、岳家軍と張家軍に眼をむけるべきだと言う必要がありますか?」
「わかりきったことであっても、確認する意味はあるのだ、蒼貴」
花飛麟が、再び重々しい文体で述べた。
「そうでしょうか?ジャイアンツと日本ハムの試合が始まる前に、ジャイアンツの選手は、今日の敵は、
日本ハムなんだな、と確認するでしょうか?あまりにわかりきったことを言うと、言った人物が馬鹿に
見えます」
「兵力が、足りんな」
花飛麟は、蒼貴の言葉を無視した。
「西へむかっている五万を、止める兵力は確かにありません」
「きさまの方が、わかりきったことを言っていないか?」
「まあ、この小説は、最初から最後まで、この調子ですから」