「羨しかったな」
「なにが?」
「旅の帰りに、杜興が出会った男」
「岳飛か」
「供二人で、のんびり旅をしていたという。俺も、そうしてみたいと、何度も思った」
「いますぐ、旅に出られてはいかがですか?ものども。楊令殿が、旅にお出かけじゃ」
呉用の眼が、輝いた。
「いや、待て、呉用。新しい国のかたちが整うまでは・・・」
「お出かけじゃ。楊令殿の、お出かけじゃ」
いつの間にか、聚義庁には、主だった幹部が集まり、口々に楊令の旅立ちを祝っていた。
いつもは軍議に顔を見せない史進までが、楊令の草鞋を持って駆けつけてきた。