「いよいよ、明日、決起だな」
李四は、十万の兵を前に、そう宣言した。
「われら梁山泊の民は、梁山泊軍を倒し、絹の道の利権を、楊令から民の手に奪う。われら
は絹の道の利権を奪うことによって、いっそう豊かになれる」
梁山泊の民は、大量の馬と武器を揃えていた。梁山泊の税は一割と格安であったので、
馬と武器は、いくらでも買えた。しかも、梁山泊で始まった徴兵制のおかげで、それまで一度も
戦に出たことのない農民や町人までが、梁山泊の兵と比べても遜色のない兵士に育ったのだ。
その点、曽潤の調練は卓抜したものだと、李四は思っていた。ただ、曽潤一人だけで、徴兵で
集められた十万の素人を調練できるものなのか、李四は疑問に思っていた。しかし、楊令伝は
空想小説だ。細かいことは、考えないことにした。
「打倒!楊令!」
李四が叫ぶと、十万の兵は唱和した。
自分が行くべきところがどこなのか、わかっているような駈け方をシンザンはしていた。李四は、
シンザンの脚にすべてを任せた。