【本村洋】天国からのラブレター19【新潮社】

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21無名草子さん
差し戻し控訴審における争点を紹介する前に、
多くの人たちが光市事件の被告人は悪辣な人間だと思う大きな原因ともなった、
F君の「不謹慎な手紙」について説明しておかなければならないだろう。

事件後、一審公判中の1999年11月から無期懲役の一審判決が宣告された
後の2000年6月にかけて、F君が友人宛てて書いた手紙が、今なお、F君の
「悪質性」を証明するものとして、繰り返しマスコミで報道されている。

【無期はほぼ キマリでして、7年そこそこで地表にひょっこり芽を出すからよろしくな】

【被害者さんのことですやろ?知ってます。ありゃー調子付いてると僕もね、思うとりました。】

【知ある者、表に出すぎる者は嫌われる。本村さんは出すぎてしまった。私よりかしこい。
だが、もう勝った。終始笑うは悪なのが今の世だ。ヤクザはツラで逃げ、馬鹿(ジャンキー)は精神病で逃げ、
私は環境のせいにして逃げるのだよ、アケチ君】

【犬がある日かわいい犬と出合った。・・・そのまま「やっちゃった」、・・・これは罪でしょうか】

【五年+仮で8年は行くよ。どっちにしてもオレ自身、刑務所のげんじょーにきょうみあるし、速く出たくもない。
キタナイ外へ出る時は、完全究極体で出たい。じゃないと二度目のぎせい者が出るかも】

確かに、このような事件を起こし、2人のかけがえのない尊い生命を奪った被告人が、
いかなる状況においても欠いていいような内容では決してないし、あまりにも不謹慎な内容であること、
F君の反省内容が真摯でなかったことは、否定しようがない。

しかし、これらの手紙はF君自ら進んで積極的に書いたものではなく、拘置所で知り合った友人、
A君からの手紙や面会時に触発されて、「迎合」して書いたものなのだ。
 
 A君というこの友人は、F君から届いた手紙を検察庁に提出し始めた後も、
さらにF君を煽り立てて手紙を書かせ、それも次々と検察庁に提出していた。
過去の記録にも、F君は周囲の期待に合わせておどけに見せる傾向がある、と記載がある。
22無名草子さん:2008/07/22(火) 00:05:57
>>21

 A君は、本村洋さんの著書『天国からのラブレター』をF君に差し入れ、
【こんなん書いているけど、どう思うや?】と、ことさら、本村洋さんに対する反発心を煽った。

【被害者さんのことですやろ?ありゃー調子付いてると……】と言う手紙ある。また、
【7年そこそこで地表にひょっこり芽を出す】と書いた手紙は、少年法の規定では
無期懲役でも最短7年で仮釈放になることをほのめかしており、これを受けマスコミでは
F君が法制度を熟知した知能犯であるかのような報道がなされた。
 だが、これについてもA君が差し入れた『天国からのラブレター』の初版に、
「編集部注」として、「少年法では、無期懲役でも7年で出獄される」と書かれていたのを
F君が鵜呑みにしたに過ぎない。
現実には、無期懲役を宣告されてた少年がわずか7年で仮出獄されることはあり得ないのだ。
なお、この記載は現行の出版では削除されている。

同様に、F君が、
【五年+仮で8年は行くよ。】と書いたのも、法制度の運用に詳しい証拠として報道されている。
本当のところは、A君とは別のB君という友達から来た手紙に、
【周りの奴らに聞いてみたが、君の場合、5+仮で8くらいじゃないの】と書いてあり、
単なる受け売りを記しただけなのだ。

もちろん、本や、手紙の受け売りであっても、やはり不謹慎極まりない内容には違いない。
ただ、狡猾な知能犯であるかのようなイメージは、全く誤った認識なのだ。
むしろ、この一連のやり取りを見ると、人の言うことを無批判にすぐ鵜呑みにする単純性が
現れて見て取れる。

F君は、家族からも「死んで償え」と言われて見放され、裁判でも自分の認識とは違う態様の
事実について追求され、さらには、当初無期懲役を示唆するような「生きて償いなさい」という
検察官の言葉で、捜査官が見立てた筋書きを受け入れてきたのに死刑を求刑され、
戸惑う孤独な状況に中、数少ない友人に見放されるのが怖く、繋ぎ止めておきたい一心から
相手が期待するような「ワルぶり」を演じてきたのだ。
23無名草子さん:2008/07/22(火) 00:07:16
>>22
そのような未熟さがあったとはいえ、自分のおかれた状況や立場からは決して発せられるべきでない
不謹慎なことばだったことは、今ではF君もよく理解し反省している。

手紙のセンセーショナルな部分のみを切り取った上繰り返し強調し、F君の実像を推し量ろうとするのは
誤謬であるし、明らかにマスコミのミスリードだ。

これらの手紙のやり取りについて聴取すべく、僕は手紙の遣り取りをしていたA君に連絡を取ろうとしたが、
対応した彼の父親によれば、「(A君は)交通事故に遭って植物状態で話はできない。」と言うことだった。

なぜ僕は、「悪魔」と呼ばれた少年を助けようとしたのか
第7章 光市母子殺害事件[後編] 〜元弁護人から見た光市事件の真相〜
不謹慎な手紙 209-222p