>>21 A君は、本村洋さんの著書『天国からのラブレター』をF君に差し入れ、
【こんなん書いているけど、どう思うや?】と、ことさら、本村洋さんに対する反発心を煽った。
【被害者さんのことですやろ?ありゃー調子付いてると……】と言う手紙ある。また、
【7年そこそこで地表にひょっこり芽を出す】と書いた手紙は、少年法の規定では
無期懲役でも最短7年で仮釈放になることをほのめかしており、これを受けマスコミでは
F君が法制度を熟知した知能犯であるかのような報道がなされた。
だが、これについてもA君が差し入れた『天国からのラブレター』の初版に、
「編集部注」として、「少年法では、無期懲役でも7年で出獄される」と書かれていたのを
F君が鵜呑みにしたに過ぎない。
現実には、無期懲役を宣告されてた少年がわずか7年で仮出獄されることはあり得ないのだ。
なお、この記載は現行の出版では削除されている。
同様に、F君が、
【五年+仮で8年は行くよ。】と書いたのも、法制度の運用に詳しい証拠として報道されている。
本当のところは、A君とは別のB君という友達から来た手紙に、
【周りの奴らに聞いてみたが、君の場合、5+仮で8くらいじゃないの】と書いてあり、
単なる受け売りを記しただけなのだ。
もちろん、本や、手紙の受け売りであっても、やはり不謹慎極まりない内容には違いない。
ただ、狡猾な知能犯であるかのようなイメージは、全く誤った認識なのだ。
むしろ、この一連のやり取りを見ると、人の言うことを無批判にすぐ鵜呑みにする単純性が
現れて見て取れる。
F君は、家族からも「死んで償え」と言われて見放され、裁判でも自分の認識とは違う態様の
事実について追求され、さらには、当初無期懲役を示唆するような「生きて償いなさい」という
検察官の言葉で、捜査官が見立てた筋書きを受け入れてきたのに死刑を求刑され、
戸惑う孤独な状況に中、数少ない友人に見放されるのが怖く、繋ぎ止めておきたい一心から
相手が期待するような「ワルぶり」を演じてきたのだ。
>>22 そのような未熟さがあったとはいえ、自分のおかれた状況や立場からは決して発せられるべきでない
不謹慎なことばだったことは、今ではF君もよく理解し反省している。
手紙のセンセーショナルな部分のみを切り取った上繰り返し強調し、F君の実像を推し量ろうとするのは
誤謬であるし、明らかにマスコミのミスリードだ。
これらの手紙のやり取りについて聴取すべく、僕は手紙の遣り取りをしていたA君に連絡を取ろうとしたが、
対応した彼の父親によれば、「(A君は)交通事故に遭って植物状態で話はできない。」と言うことだった。
なぜ僕は、「悪魔」と呼ばれた少年を助けようとしたのか
第7章 光市母子殺害事件[後編] 〜元弁護人から見た光市事件の真相〜
不謹慎な手紙 209-222p