村上春樹21【ダンスダンスダンス部会】

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730無名草子さん
(完訳)
 
もし高くて硬い壁があり
それにぶつかって壊れそうな卵があるとしするとしたら、
どんなに壁が正しくどんなに卵が間違っていようとも
私は卵の側に付くだろう。
何故か?
それは我々一人ひとりがひとつの卵だからだ。
壊れやすい卵に収められたユニークな魂。我々はみな壁に立ち向かっている。
壁とは、われわれを強制するシステムのことだ。
私が小説を書く理由はひとつだけだ。
それは個人のユニークな神性(divinity)を引き出すことだ。
ユニークさを満足させることだ。
システムが我々を混乱させるのを防ぐためだ。
だから、私は人生の、愛の物語を書く。
人々を笑わせそして泣かせる。
我々はみな人類であり、個人であり、壊れやすい卵だ。
我々は壁に対して勝ち目が無い。
壁は高すぎるし、暗すぎるし、冷たすぎる。
壁と闘うために我々は我々の魂を暖かさと強さのためにつながなくてはいけない。
システムにコントロールされてはいけない。
我々は我々自身を創らなくてはいけない。
システムを作り出したのは我々なのだ。

イスラエルの人々よ、私はあなたがたに感謝します。
私の本を読んでくれたことに。
我々の間に何か有意味なものを共有できることを望みます。
それが、私がここにいる最大の理由です。
731無名草子さん:2009/02/16(月) 23:19:32
>>730
今日のNHKドキュメンタリー、沸騰都市の東京モンスターの続きみたいな話にも感じた
732無名草子さん:2009/02/16(月) 23:21:18
システムとの闘いってのはエッセイでも折にふれ書いてたし、小説でも初期から一貫して通底してたモチーフだね
初期三部作ではそれに対する諦念が感じ取れた
733無名草子さん:2009/02/16(月) 23:26:09
年金システムがモデルとして想定するような人物を描いた作品はさぞつまらないだろうな
734無名草子さん:2009/02/16(月) 23:32:54
壁と卵って、壁の上にいるハンプティ・ダンプティみたいだよね
735無名草子さん:2009/02/16(月) 23:34:55
>>734
多分、それの隠喩でしょうね
736無名草子さん:2009/02/16(月) 23:35:33
「そういうわけで私はエルサレムに来ました。小説家として。つまり嘘の紡ぎ手としてです。
小説家だけが嘘をつくわけではありません。政治家もです(失礼、大統領)。外交官もです。
ですが小説家が他と違う点は、我々は嘘をついても訴追されません。誉められるのです。
そして大きな嘘をつくほど誉められるのです。
我々の嘘と他の嘘との違いは、我々の嘘は真実を引き出す手助けになることです。
真実を総体として捉えるのは難しい。だから我々はそれを虚構の領域に移し替えます。
しかしまず、真実は我々の中にあるということを明らかにしなければなりません。
今日、私は真実を話すでしょう。年に二、三日だけ、私にも嘘をつかない日があります。今日はその一つです」
737無名草子さん:2009/02/16(月) 23:36:06
もし高くて硬い壁があり
それにぶつかって壊れそうな卵があるとしするとしたら、
どんなに壁が正しくどんなに卵が間違っていようとも
私は卵の側に付くだろう。
何故か?
それは我々一人ひとりがひとつの卵だからだ。
壊れやすい卵に収められたユニークな魂。我々はみな壁に立ち向かっている。
壁とは、われわれを強制するシステムのことだ。
私が小説を書く理由はひとつだけだ。
それは個人のユニークな神性(divinity)を引き出すことだ。
ユニークさを満足させることだ。
システムが我々を混乱させるのを防ぐためだ。
だから、私は人生の、愛の物語を書く。
人々を笑わせそして泣かせる。
我々はみな人類であり、個人であり、壊れやすい卵だ。
我々は壁に対して勝ち目が無い。
壁は高すぎるし、暗すぎるし、冷たすぎる。
壁と闘うために我々は我々の魂を暖かさと強さのためにつながなくてはいけない。
システムにコントロールされてはいけない。
我々は我々自身を創らなくてはいけない。
システムを作り出したのは我々なのだ。

イスラエルの人々よ、私はあなたがたに感謝します。
私の本を読んでくれたことに。
我々の間に何か有意味なものを共有できることを望みます。
それが、私がここにいる最大の理由です。