【本村洋】天国からのラブレター16【新潮社】

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9無名草子さん
思えば3人ともまだ18歳で、本当に他愛のない恋愛ごっこをしていた
のです。当時の私なんかいっぱしの大人ぶって、彼女達の前でカクテ
ルなど飲んでみせてはいましたが、本当は、酒の味なんか全然分か
っていなかったのです。
しかし、男女三人のこんな楽しい友人関係が崩れたのは、平成6年の
11月27日のことでした。その夜は、近くのコンビニでしこたま酒やツ
マミを買い込んで近所の弥生の家に押しかけ、3人で飲み会をやった
のです。ところが、しばらくすると中原さんが酔いつぶれて眠ってし
まい、いつの間にか弥生と私は面と向かい合って酒を飲み、話に興じ
ていたのです。そのうち、私は酒の勢いもあって、
「実は最初に会った時から、弥生が好きだった」
と、自分の気持ちを正直に告白してしまいました。すると弥生も、
「私も、ずっと好意を持っていたんだけど……」
と応じてくれたのです。これはショックでした。弥生に好きな男性が
いるものと思い込んでいた私は、勝手に弥生との距離を置き、その空
白を中原さんで埋めていたことになるわけです。
しかし、弥生の本心を知ったその時は、喜びで胸が一杯になりました。