【本村洋】天国からのラブレター16【新潮社】

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「天国からのラブレター」141〜142ページより

前に他の男性からデートを申し込まれた話を書いていましたが、本
気で心配させられたことがありました。

ある夜、弥生がバイトを終える時間を計って家に電話を入れたのですが、
出ませんでした。翌日、どうしたのかと思って再度、電話を入れたら、

「交 際 し て く れ っ て い う 男 の 人 が 、 車 で 家 に送 っ てく れ る

って言うから送ってもらったの。

そ の つ い で に ド ラ イ ブ に 付 き 合 わ さ れ た ので、帰宅が遅く
なってしまったの。ごめんね」

と、気軽に言うのです。
さすがの私も本気で怒った記憶があります。

「俺の気持ちを知りながら、知らない男の車に乗るとはどういうこ
となんだ!」という筋の通った怒りでした。

が、しつこく怒っているうちに、今度は弥生のほうが逆ギレして
しまいました。

で、「そ ん な に 言 う な ら 自 分 で 迎 え に 来 い。
だいいち、洋 の 存 在 が 薄 い か ら、私がい ろ ん な 男 の 人 に声を
掛けられるんじゃないのよ!」と言うのですからね。

呆 れ て 物 が 言 え ま せ ん でした。

が、結 局 は この喧嘩私が負けて、いつもの降伏の印でもある
「ア・イ・シ・テ・ル」サインを送ったのは私のほうでした。