【感動】読書して感想カキコするスレ【体験】

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30【扉の外V】 土橋信二郎
<感想>
シンプルな舞台、最小限かつすべてが必要な要素のみに絞られた設定。
そして、読みやすくテンポのいい文体に乗って展開する、リアルな人間群像劇。
作者の手から放たれるこの弾丸は、ライトノベルの王道を貫く至純の面白さに満ちている。

人間世界の縮図ともいうべき船上(戦場)で生徒たちを翻弄する第三のゲームは、
しょせんゲーム、たかがライトノベルという枠を踏み越え、読む者にさまざまな感慨を呼び起こす。
それはあたかも、第三の扉に到達し、肉体のない意識体となり生徒を見つめる存在となった
主人公・中山美鈴のポジションと符合する――。

そして、相手の事情や人間性に意識を向けることもなく、
”狩り”の楽しさに群れ集い、弾丸を放ち狂喜するゲーム狂集団は、
自らは安全圏である現実世界に身をおきながら、狭いモニターの向こうの掲示板で、
対話もなくののしりあいを繰り広げるアニメやゲーム板に常駐する一部2ちゃんねらーと酷似する。
おそらく、彼らだけがそうした攻撃性を発露する理由もまた、対話もなく、弾丸だけが価値観を決めつける
アニメやゲームの世界に脳がなれきっているからだろう。

普通のゲームならば、制作者の意図をプレイヤーが考える必要はない。
ただ命じられるまま、迷いなく横に進み邪魔な敵を踏みつぶすだけでお手軽に快楽と達成感が得られる。
だが、それはゲームだけのルールだ。

物語のラスト。
ゲーム世界に没頭し、現実感覚を喪失した生徒たちの前に委ねられた拳銃と、弾丸。
その重みは、この本を読んだ我々の手にもまた、存在するのではないか?