【感動】読書して感想カキコするスレ【体験】

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102神は沈黙せず
思わず図書館で手に取ることをためらう分厚さだったが、
実に読みやすい文章と、わかりやすいSF設定の説明で3日で読了。
一言でいうと、非常に面白かった。

内容は、アマゾン・レビューにもあったが、
と学会・会長として活動し、その間、作者が感じた様々な思いや感想を
小説仕立てで一冊にまとめたもの、という感じがしっくり来る。

物語は、「神」に対しての考え方やラストで明かされる衝撃的な事実もスリリングだったが、
それ以上に、加古沢レイを中心とする、彼の取り巻きたちの引き起こすネット社会の動きが面白かった。
彼らこそ、まさに大和田がいうところの、「事実より自分の信念を先にもっていく盲信者(=ビリーバー)」なのだろう。
ここでいう「事実」とは、モニターの向こうに生身の、名も顔も心も持ち、それぞれの人生を歩んできた
一人の人間がいる、という事実である。

彼らは、自らの信じる<信念>に突き動かされ、
モニターの向こうの異なる信念を持つ人間をただの敵、異端者と認識する。
そこに対話は存在しない。
一方的に言葉の刃で、打ちのめそうとする。反論は許されない。論理的な言葉も許されない。
ただただ、数の暴力で一方的に世論を作り上げ、その濁流にのみ込もうとするのだ。

彼らにとって、嘘や事実など、そんな違いは些細な問題ですらない。
優歌の学校の校長が語った、「嘘は強い」の言葉とおり、むしろ嘘をこそ武器と変える。
(まさに、2chのゲーム狂達がソニーのPSPに対して行った、フライングUMD現象などはその最たるものだろう。
 あれは完全な捏造であり、彼らはそれに気をよくして今も妄想同然のネガキャンをネット中で行っている)


……歪んだ信念に突き動かされる人々につきだされた<真実>は無情だった。
その内容は正直、一発芸ともいえるアイデアだが、その一発は極めて深く重く、衝撃的なものだ。
山本弘はこのアイデアにふさわしい世界を見事に創造した。

『アイの物語』とセットで、すべてのネットユーザーに読んでもらいたい一冊である。