豊後の尼御前
島津勢をてこずらせた女傑吉岡妙麟尼についての雑記。
彼女の活躍時期は、「夏草の賦」に書かれた戸次川の戦いの後。
ネタ本は「豊薩軍記」であるが、この本は、彼女の闘いについては詳しいが、
人柄については何も書かれていないらしい。
女ながら鶴崎城に篭り、島津勢を迎え撃つ動機については、司馬は二説を挙げる。
@クリスチャンの殉教精神―もちろん妙麟尼がクリスチャンであったかどうかは不明
A次男統定を島津に討たれた恨み―司馬はこっちかなと言っている。
司馬は、妙麟尼の物語を小説にする気はないと述べているが、客観的な軍事行動以外、
人柄に関する史料がないという点では、小説の題材としては格好の人物だと思う。
司馬は、この時期になると、ほとんどフィクションに興味がなかったらしい。
もっとも妙麟尼が闇討ちというルール違反をしており、小説の主人公にはしにくかったと判断したのか?
しかし、これも、島津に恨みを抱くくノ一を妙麟尼の影武者として登場させ、
乙津川の闇討ちは、そのくノ一の仕業にすれば、解決できたと思う。
小説の中の妙麟尼は、@クリスチャンの殉教精神から島津と戦うが、実戦を指揮する能力は皆無。
そこで、A島津に恨みを抱くくノ一が影武者として活躍。ところが勢い余って撤退する島津を闇討ち。
妙麟尼の不興を買う。