国盗り物語 開運の夜 〜 奈良屋のお万阿
松波庄九郎 赤兵衛 青烏帽子の源八 お万阿 杉丸
永正14年(1517年)/春夏悪右衛門/松波左近将監/西ノ岡/妙覚寺竜花院/荏胡麻油
御所紫宸殿/法蓮房/衣棚押子路/後土御門帝/後柏原帝(当今)/左兵衛督宿所
奈良屋又兵衛(東洞院二条)/赤気
サンデー毎日昭和38年8月11日号〜41年6月12日号
主人公庄九郎は、詐欺師としか言いようのない大悪人なんだが、完璧な悪事というものは、
美しくすらある。杉丸と赤兵衛は、善悪両極端なんだが、他人に無邪気に懐いてしまう性格は、
昔よくいた日本人の典型。いま読むとオレオレ詐欺の被害者タイプにしか見えないが、これが
普通の日本人だったような気がする。半世紀も経たないうちに、変れば変るものだと思った。
国盗り物語 運さだめ 〜 小宰相
松波庄九郎 お万阿 杉丸 赤兵衛 小宰相(綾小路中納言女)
山崎八幡宮/有年峠/若狭野/真殿/黒鉄山/数珠丸恒次二尺七寸/身延山久遠寺/尼崎本興寺
赤松氏/東播州・別所氏/姫路・小寺氏/有年備中守
神仏を自分の家来のように考えているところや、「庄九郎の哲学では、女は犯されるために存在する」と
いうところは、新鮮だったな。乱世でなければ、犯罪者にしかなれなかっただろう。
全体にとても明るいタッチで描かれているから、嫌味なところはない。
国盗り物語 京へ帰る 〜 淫楽
松波庄九郎 赤兵衛 有年備中守 福岡肥前介 杉丸 お万阿
備前福岡/長船村/黒田如水/浦上氏/宇喜田氏/伏見/一遍宗
永正15年(1518年)/高倉通/花園左大臣廃邸/有馬温泉寺/奥之坊/御所坊/蘭若院
孝徳天皇/西国街道/有馬街道/行基/華葱窓
この作品、女性の登場人物が多いし、エロい描写も多い。
先に登場した小宰相は、15〜6歳ぐらいなのだが、大人の女性の扱い。
今日の感覚と、ずいぶん差がある。
お万阿は、司馬の全作品中、もっともエロい。
他方で、10行〜20行の余談がふんだんに挿入され、豆知識が増える。
備前は、播州赤松氏の家老浦上氏の勢力が強かったが、その家来宇喜田氏の勃興期でもあり、
地侍たちは、複数の触頭に帰属していたこと。備前福岡の土豪黒田氏が博多に移封されたとき、
郷里の地名に変えたこと。有馬の湯は、奈良時代に僧行基が開いたことなど。