司馬遼太郎をあれこれ語る 19巻目

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158無名草子さん
「国盗り物語」や「新史太閤記」は、主人公個人の魅力で読ませる小説だったが、
「播磨灘物語」「箱根の坂」は、主人公のパーソナリティを育んだ時代背景を克明に描く。

鎌倉・室町の幕府を支えた御家人が貴族化して力を失う。鎌倉幕府成立当時は、
武装化できなかった農民が、国人・地侍となり、当時の御家人ぐらいの武装を整える。
早雲は、その国人・地侍の力を糾合し、貴族化した旧支配者たちと戦う。
新しい勢力の勃興を、一向念仏や連歌の隆盛等、文化の側面から描いている。
159無名草子さん:2007/09/03(月) 17:23:14
「箱根の坂」は、古典をモチーフにしたエピソードが満載で、格調高い。
とくに恋愛に関して、「伊勢物語」や「無名抄」を使っているあたりがニクイ。
中世までは、歌が恋愛の仲介をしたから、当然のことなのかもしれないが、
飲酒が恋愛の仲介をすることが多い現代は、みっともないな。
人間の行動を美しく見せる規範が崩壊して久しい。
160無名草子さん:2007/09/03(月) 17:24:23
箱根の坂 面白の都や

伊勢貞宗の伝聞により、加賀一向一揆が語られる。
>>158をもっと分かりやすく解説したような章だ。
「余談」ではなく、早雲と貞宗の会話、早雲と加賀介(加賀国守護富樫政親が通った遊女)
の会話で進行する。

「そのような惣が、加賀一国に何百とあって一枚の岩のように結束したとあれば、富樫が勝てる
はずもなかったということか」
「もとはといえば、年貢」
と、早雲はいった。
「富樫の年貢は法外に重うござった。一向坊主の寺はうそのように軽うござる」
「ご公儀の台所が苦しいのは、その方も存じておろう。財政再建こそ、まず我らがやらねばならぬことと存ずる」
扁桃腺を切除したかなようなしわがれた声で、貞宗はいった。
161無名草子さん:2007/09/04(火) 12:03:48
箱根の坂 伊豆の山〜修善寺の湯

全体を三つに分けると、1.応仁の乱、2.駿河の内訌、3.北条氏の領国確立、となる。
ここからが、3の戦パート。
発端は、堀越公方足政知が、実子茶々丸に暗殺された事件から。
なお、生き残った異母弟義遐(よしはる)は、のちの第11代将軍義澄。