小説の匠(たくみ) 吉村昭スレッド2

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655ミステリ板住人 ◆0FE6khB7i2
「破船」を読むたびに、ポーの「赤死病の仮面」を想起してしまう。
下手に書けば単なるおどろおどろしい因縁話に堕してしまう恐れがある
題材でありながら、吉村作品には怪奇・猟奇性は全くと言うてよいほど感じられず、
凄惨さよりも、極限状況で生きる人間たちの悲惨さの方を強く感じさせるものがある。
この辺は、究極のリアリスト吉村昭の面目躍如と言うたところか。

吉村昭この1冊、迷いに迷うが、自分の場合はやはり「羆嵐」か。
短編には日常に材を取った好短編も数多いが、沖縄の学童疎開船対馬丸撃沈を乗船した
ひとりの少年の目を通して描いた「他人の城」が印象深い。
吉村氏の場合は、多彩な作を書いているため、戦記もの、歴史もの、動物もの等、
ジャンル別(長・短編も別)に「この1冊」をセレクトするべきかもしれぬ。