■□ スティーヴン・キングPart9 □■

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756無名草子さん
「ろくずーしあい」巨人が会話に加わった。
「この分じゃはぢがづまで行きづがないどおぼぶ」
「具合が悪そうだな」と横浜。
その声には密かに安堵する様子が用心深く込められていたようだ。
「ありがだいごどに、おでのせんりょくはぎょうだいだ」巨人が陽気に言った。
「しゅじくが2割2分みだいだ」
「それでどうやって戦ってるんだ?」横浜が、畏怖するように聞いた。
「おれが?おでのごどをいっでんのか?」と巨人。
「あいづをみろよ!どうやってだだがいづづげでるんだ?あいづは?おでの方がしりだいよ!」
そう言って、広島に親指を立てた。
広島は尾形が靭帯断裂してからというもの、一言もしゃべっていない。
新しい戦力も働いていない。完投を続ける黒田にみなの貪欲な視線がちらっと注がれる。
黒曜石のような目はじっと前方を見つめていた。20試合のひげでぶちになった顔が、病気の鯉のようだ。
後頭部の巻き毛や額にたれている髪の毛さえも、彼の姿全体が与える食屍鬼めいた印象を強めていた。
唇は干からびて膨れ上がり、下唇の上に垂らした舌が、洞穴の淵で死んでいる蛇を思わせる。
それも健康な桃色は失せ、灰色だった。埃がこびりついている。
「せめて先発をそろえてくれないかなあ」横浜が神経質そうにささやいた。