大藪春彦の本について語るスレッド  2

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894書斎魔神 ◆qGkOQLdVas
単なるコテハン叩き(大藪作品には無知)も混じっているようだが、
俺に言わせれば、大藪作品の重要部分を改変してしまっている映画を肯定する連中の方が、
全然わかっていないということだ。
「映画は映画って…」、本当に大藪ファンかと思ってしまうぞ。
大藪ファンであるなら、スクリーンに大藪ワールドがどの程度再現されているかを
重要視して当然である。
金狼も前述したような問題有りだし、
角川の「野獣死すべし」のようなテーマの映画はあっても良いが、
原作のビッグネームに頼らずにオリジナルでやれということだ。
これは日活の「野獣の青春」なんかも同様で、コメディタッチのアクションをやりたい
なら、大藪作品以外でどうぞと言いたい。
映画「蘇える金狼」に対する多くの大藪ファンのストレートな感想は、
やはり>>852に集約されよう。
895書斎魔神 ◆qGkOQLdVas :2005/11/04(金) 22:50:21
「角川映画とこれに関連したキャンペーンにより、大藪作品はあらたな読者を獲得した」
というのが、よく言われているところだが、この言に関しては、俺はかねてから
疑問を抱いている。
検証は無理としても、角川映画化前から大藪ファンは相当いたわけだが、
当初は単行本が多く、ファン層が比較的若いことを考慮すると、次々と大藪作品を
読んでゆきたい、新作を読みたいと思いながらも、価格面で手が出なかったという
時期が続いたわけである。(この辺の事情は、熱烈な大藪ファンである鏡明氏のエッセイ等にも詳しい。回し読み、貸本屋、古本屋等により当時のファンは大藪熱を諌めていたとの
ことだ)
時代が少し下り、リーマンにはともかく、学生には徳間のホットノベルス(新書)でも
続けて購入するにはきついものがあったのである。
角川の映画化とこれに伴うキャンペーンの一貫として、大藪作品は次々と文庫化されて
いったが、この時点で文庫販売数の伸びに貢献したのは、新しいファンではなく、
かねてからの大藪ファンだったのだと思う。
やっと楽に手が出るところに来た(射程距離に入った)ということだ。
むしろ、角川映画の大藪作品を見ていた連中の大部分は、本なんか読まないか、
買っても、せいぜい映画化された作品の単品のみだったのではないか。
(実際「映画で見たから、もういいやという」考えも有りだったわけである)
これでは、大藪文庫化作品の部数全体の大きな伸びは期待出来ないのである。
896書斎魔神 ◆qGkOQLdVas :2005/11/04(金) 22:51:33
次に「蘇える金狼」の件だが、作家である以上、目的地(結末)を念頭に置きながら
書くのが通常であり、大藪春彦という作家をこの例外とする理由は無い。
すると、本作は、ラストの空港におけるサクセスストーリーの完結を目指して
書かれているものと理解することが可である。
実際、多少のご都合主義は見られるにしても、朝倉の計画はかなり練られたものであり、
もし、他の大藪作品にある自爆パターン(朝倉の死、ただし映画版のようなヘタレた形のものではない)を取ったすると、唐突さ、不自然さを感じさせるものがあったであろう。
結局、大藪氏が本作で書きたかったのは、「血の訪問者」で成し得なかった、
サクセスしたジュリアン・ソレルなのであろうかと思う。