【盗作猿】ランディの日記を先取り予想だ!【パクルな】2

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401無名草子さん
*バレンタインの日、なにしてました?

昨日はバレンタインだった。でも特にこれといって何もしなかった。
チョコをあげたいと思うような男もいないし、OLじゃないから義理チョコとも
無縁だ。

娘は甘いものが嫌いなので、子供のためにチョコレートを買うってことすら
しなかった。近所のスーパーに行っても、そろそろ雛まつりだなあと思うだけ。
うーーん。これでいいのか、私。

当たり前であるが、私だって、昔からこんな枯れたバレンタインを過ごしていた
わけではない。

少なくとも、19歳の頃、1980年の私は全然違っていた。

19歳の頃、私は吉祥寺のアパートに住んでいた。アパートの名前は松美荘。
隣の部屋に石井君って男の子が住んでいてね、私は彼の部屋に入り浸りだった。
と言っても、同棲していたとか恋人だったというわけじゃあないんだ。石井君
には他に彼女がいたし、私も他の人とつきあったりしていた。

彼の部屋には怪しい人たちがたくさん集まってきて、世界の成り立ちについて
飽きず議論していた。その部屋が私にとっての大学で、そこで哲学や心理学の
勉強をさせてもらっていた。お互いの人間関係は交錯しまくっていて、もう
ぐちゃぐちゃ。夏の陽が照り返すトタン屋根の下の熱い部屋。ああいうのを
青春と言うんだろう。
402無名草子さん:03/02/16 00:41
(>>401続き)
そしてバレンタインの日。私は高熱を出して、うんうんうなっていた。なんて
ことだ。愛しい雄一郎君のために、チョコレートを買いに行くこともできや
しない。

私は石井君に、チョコレートを買って来てと頼んだ。彼は「まかしといて」と
言って吉祥寺までチョコレートを買いに行き、なんと手ぶらで戻って来た。
「女の子が売り場に群がっていて、どうしてもそこに割って入れなかった、
ごめん」
石井君は土下座せんばかりに謝ったけど、19歳の私の気持はおさまらない。
石井君に冷やしてもらった氷まくらの上で、石井君を「ばか!いくじなし」と、
ひたすら罵倒していた。

その石井君と20年ぶりに再会したのは1999年のことだ。私がインターネット
に書いたコラムを見てメールしてきた彼と飲みに行った。

「あんときは、ほんと、どうしても女の子の群れに混じってチョコレートを
買えなかったんだよ。今なら図々しく買えるんだろうけどさあ」

その時の私は、あの頃の彼の気持がやっと理解できるようになっていた。だから
その一年後に書いた『アンテナ』の主人公の祐一郎に、当時の石井君の心理を
代弁させてみたりした。

   池袋地下街の喫茶店で、僕はガラス越しに彼女たちを眺める。皆、争う
  ようにチョコレートを買っていた。安いチョコから高いチョコまで、一人が
  数個を購入する。
   彼女たちの頭の中には今、男の顔が錯綜しているのだ。男はランク付け
  され、チョコの値段で整理されていく。なんという単純な合理主義だ。
  女は苦手だ。剥き出しで生々しくて、どう接していいのかよくわからない。

再会した石井君は、ナイーブでとんがっていた若い頃の石井君ではなかった。
今の彼なら、女特有のエグサも生々しさも平気で受けとめられるだろう。
403無名草子さん:03/02/16 00:43
(>>402続き)
彼は、あの1980年の夏を封印してしまっていた。哲学からも心理学からも神秘学
からも背を向けて、普通の高校教師になる道を選んだ。彼の影響でヘーゲルを学び、
ユングを知り、神話を学んだ私は、こうやって文章を書いて暮らしている。

彼とは、しみじみと昔話をして、そして別れた。ところが、2002年の冬、私は
19歳の頃の隣人と再び20年ぶりの再会を果たすことになる。

吉祥寺でやったトークショーの帰りに、私は偶然彼と道ばたで会った。

この晩のことは、『ハーモニーの幸せ』の「記憶、過去、そして歴史」という
エッセイにも書いたのだけれども、とにかく妙な夜だった。酔っていたせいなん
だろうか、自分が19歳のように思えてならない。現実にはいい年をしたオバサン
だってことはちゃんと自覚しているのに、左脳の認識とはまったく別に、とてつ
もないリアリティを従えて、19歳の頃の吉祥寺の空気が立ち現われ、空間全体を
支配していた。

私は自分の部屋に向かって歩いていた。お風呂屋の角を曲がった奥にある松美荘
の101号室。場末のパブでホステスのバイトをしている私。

  とぼとぼと歩いていくと、道の先に誰かが立っていて、長いシルエットが私に
  向かって伸びていた。
  「あれ」と、人影がいった。「あ……」私は驚いて顔をあげた。山崎君だった。
  「山崎君、どうしたの?」「君こそ、どうしたの?」
   山崎君は私のアパートの隣の部屋に住んでいた大学生だ。
   お金のない私はいつも給料日前になると山崎君に借金をしていた。ご飯も
  たくさん食べさせてもらった。風邪を引いたときは看病してもらった。山崎
  君は就職してアパートを出て行った。以来、会っていない。ほんの一年の間、
  私と山崎君は小さなアパートで隣り合って、まるで家族のように過ごした。
   そして、さよならも言わずに別れた。
404無名草子さん:03/02/16 00:49
私たちは、井の頭公園のそばにあるラブホテルに入った。山崎君と伍勢屋に焼き
鳥を食べに行くときに、いつもそばを通っていた「ホテル井の頭」に。

ラブホテルというものに行ってみたことのなかった19歳の私は、「ねえ、いつか
ここ入ってみようよ」と山崎君に言い、「そうだねえ、おもしろそうだね」と、
山崎君は言ったけど、私たちはとうとう「ホテル井の頭」に入ることがなかった。

ミズゴケの匂いのするホテルの部屋でビールを飲みながら、私たちは話した。

  「あたしさあ、たぶん、すごく好きだったんだと思うんだ。あなたのこと。
  いまだから言えるけど」
  「僕も、君のことが好きだったよ」
   とても真剣に山崎君が言うので、私はビールを吹き出した。
  「いいわよ、そんなふうに合わせてくれなくても」
  「そうじゃない。ほんとうに、好きだったよ。好きじゃなかったらあんなに
  長いこといっしょにいられなかったと思う」

そうだったの……? いくら私が誘っても、ラブホテルに入ろうとはしなかった
山崎君だったのだけれど。彼はこうも言った。
  「君は、いつも、右の目で今を見て、左の目で、どっか遠くの未来を見ていた。
  その遠くの未来は、僕には見ることができないほど遠いところで、なぜか知ら
  ないけれど僕はいつも、君においていかれるような気がしてた」

不思議だ。私を置いて、黙って引っ越していったのは彼の方なのに。それに彼は
なぜ、私がエッセイに書いた一節をここで繰り返しているんだろう。どうして
こんなに私の言って欲しかった言葉だけを言ってくれるんだろう。
405無名草子さん:03/02/16 00:53
やっぱ見分けつくね。
ランディのあのネバネバ感はだせてない。
406無名草子さん:03/02/16 00:57
(>>404続き)
   明け方に浅い眠りについて、うたた寝して目が覚めたら、もう山崎君は
  いなかった。
   でも、夢じゃなかった証拠にホテル代は払ってくれていた。

酔っぱらった私が、ホテル代を前払いしたとか、そういうことは絶対にない。
現実に夢が溶け出してくるような、そんな不思議な夜だったんだ。そういうことも
人生には、ままある。

ううん、夢ならば夢でもかまわない。私は何度でも恋の夢を見る。かつて
私を愛してくれた人からの、時空を超えたメッセージを繰り返し受け取る。
そして「気づかなくてごめんなさい」というメッセージを、そっと虚空に
向けて解き放す。願わくば、遠い雲の上にいるあの人も、いつか私のメッ
セージを受け取ってくれますように。

参考: http://www.hotwired.co.jp/opendiary/randy/19991002.html
『アンテナ』P.52
『根をもつこと、翼をもつこと』「パズル遊び」
『ハーモニーの幸せ』「記憶、過去、そして歴史」P.229〜242
407無名草子さん:03/02/16 01:07
>>405
今回はだいぶコピペ率が高いのですけれど、やっぱり瓜二つまでは
いかないですか。(完全にそっくりと言われると、気分が微妙に凹み
ますのでいいのですが (w)。

>>403>>404>>406の二行下げの部分は、『ハーモニーの幸せ』の
「記憶、過去、そして歴史」からの、ほぼ忠実な引用です。
改行を省略したり、〈中略〉表記なしで途中を抜かしたりはしてしまって
います。