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>>372続き)
だから、どうしてそれを書かないんだ、って?
うーん、私が書きたかったことは、すでに他の人が書いているから……かな。
ヤスケンさんは、高橋伸児さんの文章をもうお読みになりましたか?
> 昨年11月、ご自宅にお見舞いしたあと、帰り際、
>「会社の愚痴ならいつでも聞いてやるから、またおいで」
> 安原さんは言った。自分の肉体が滅びようというときに、まだそんなことを言って。
>僕は泣きそうになった。
> マンションの玄関を立ち去るとき、
>「またねー」
> 安原さんは手を振った。別れてしばらく歩いてから──自分でも理由がわからないの
>だけど──振り返った。すっかり小さくなった安原さんはまだニコニコして手を振って
>いた。子どものように。安原さんはそういう人だった。
生前のヤスケンさんにボロカスに言われて怒っていた人だって、これを読むと思い出して
くれると思うんだ。ヤスケンさんは、この世の誰にも負けないくらい、やさしい心、
暖かく熱い心をもっていた、すごくよい人だってこと。
だけどね、高橋さんの書いたメッセージを読んで泣いて感動したのも本当なのに、私は
それを読んで激しい嫉妬の念にかられ、そして恨みに思いもしたんだ。高橋さんではなく、
彼の書いたそのヤスケンさんに彼を出合わせ、そして彼にこの文章を書かせた運命の巡り
合わせとか文章の神様とかいうものに。