【盗作猿】ランディの日記を先取り予想だ!【パクルな】2

このエントリーをはてなブックマークに追加
2821/3
†悲しき
 腹の虫の
 おしらせ

 ああいやだ。このところ連日連夜悪夢にうなされて目が覚める。
じゃなま昆虫が体中をざわざわと灰まわっている気持ちの悪い夢だ。
夜中にばったり飛び起きて,喉が殻からでウッと嗚咽が起きる。
そうだ、昔、幻冬舎の死端さんからもらったドンペリエがまだ冷蔵庫
にあるはずだ。いろいろと腹が立つことがあったんだけど捨てられず
に残っていた。フランス産直のソ−ダ水でのどごしを清めよう。
 自慢の大型冷蔵庫をあけるとぶったまげて枯死を糠しそうになった。
冷蔵庫のなかで大人ほども身長がある巨大な昆虫が、残り物のもんじゃ
焼きをむさぼっていた。虫と目があった。またもぶったまげた。お世話に
なってる転載編集者の安腹先生ではないか。
 「あ、先生。おはようございます。」 あたしは思わず会釈した。
 だけど挨拶したのに安腹先生は目をギラギラさせてあたしを睨むばかりだ。
 なんで安腹先生があたしの家の冷蔵庫のなかにいるんだろう。あたし
は混乱してめまいがしてきた。ふらふらと書斎に戻ってとりあえずお気に
の掲示板に何か書き込んで気を紛らわそう。マックの電源を入れてあたしの
ファンたちが屈折した愛情を自慢しあっている某掲示板をみる。高性能の
パソコンでマルチタスクだできるから,ついでにメ−ルをチェックした。
2832/3:02/11/02 08:24
 100通ばかり溜まったメ−ルに目を通していると、ああ懐かしい、暗藤
くんからのメ−ルが届いていた。暗藤くんは有名な業界トップのネット
書店人で、あたしの力になってくれた人だ。でも使い込みがばれて書店を
追い出されたらしい。あたしは一緒に飲むたびに,泥棒は鬼畜大宴会の
始まりだから絶対するなって教えていたのに、若毛の怒りでやってしまた
んだろな。いまも元気で書店人やってるかな。ちょうど気になってたんだ。
 暗藤くんのメいルのサボジェクトは「おしらせ」となっていた。何だろう。
開けてみるなり、びっくりした。心臓が泊まりそうだった。メ−ルには
こうかいてあった。
 「かねてより病気療養中だった安腹先生が長寿石で本日未明に旅立ち
ました。腸がランダムに重なってしまう病気だったので最後は何も
食べられずに、お気の毒でした。」
 長寿石がおなかに詰まったんだろうか? とにかく食べられなかった
なんて気の毒だ。では冷蔵庫のところで見たあれは何だったんだ?!
 大急ぎでキッチンに戻って、こわごわと冷蔵庫を開けた。また腰が
抜けるほどぶったまげた。ばななちゃんが冷蔵室でキムチをむしゃむしゃ
たべていた。なんなんだ! あたし、アル中になったんだろうか。
 でもとにかく、安腹先生を見たのは虫の知らせだったらしい。先生は
名物編集者だったらしい。 らしい、と書いたのは、あたしの本を編集
してもらったことがなかったからだ。先生は文学関係のリルテ−ルという
りっぱな雑誌をお造りいたしていらっしゃったらしい。先生の前では
あたしは何でも知ってるふりをしていたが、この意味がわからなかった。
あたしには若い頃、肉体の炎を燃やしあったジャックという英国人の
フレンドボ−イがいた。名はモリ−という。ホテル関係の評論家として
活躍している。国際電話で聞いてみた。最初に08を入力して…と
イリリスにはすぐかかった。スコットランドのミラノに住んでいるのだ。
2843/3:02/11/02 08:25
 「ハロ−、ジャック、アイラボユ−!」 あたしが囁くと彼はハスキ−
な声で返してきた。「ミ−ツ−」
 「バイザウエイ。テ−チ、ミ−、リルテ−ル?」
こんな感じで英会話を続けていたら、面倒になったのかジャックは下手な
日本語で返してきた。「ソレ、ケ−コ、コバナシネ!」
 そうか。今わかった。安腹先生は小咄の雑誌を作ってたんだ。さすがは
名人芸だ。

 考えてみれば不思議な一致だ。先生とはお仕事をしたことがないけど、
よく一緒に食事をした。かならずどこかの編集者をつれてきて、社用で
勘定させてしまうのが得意技だった。「けい子ちゃん、編集ってのはな、
いかにテメエの財布を開けないで会社のカネで作家と飲むかってのが
才能なんだよ。」  先生はつねづねこう申さられていた。
 先生とあたしは食べ物の趣味がいっしょだった。まるで腹の虫が兄弟
みたいですね、といって笑ったものだった。
 
 冷蔵庫にいた安腹先生そっくりの巨大な虫はなんだったんだろ?
こういうのって虫の知らせっていうのかな? まるでツルゲ−ネフの
「変身」にでてくるザザムシみたいだ。それともあれは、あたしの
無意識が作り出した幻影だったんだろうか。
 なんにしても悲しいおしらせです。あたしはおしらせがきらいだ。
だって悲しいんだもん。