アルタイの喉歌のカイは、弦が二つの、茶色い三味線みたいな楽器を伴奏に使
う。トプショールっていうんだそうだ。張っている皮はラクダとか山羊とかなん
だって。この土地では手近な動物なんだろうな。
私はドキドキしながら、カイを聞かせてもらった。
これがもう、すごいとしか言いようがない。
何て言うんだろう、地響きみたいなものすごぉぉい低音で大地を揺らしたかと
思うと、せつなく絞り出すような高音で水面を波立たせ、私の心にとまっすぐに
届くような感じ。
そうなんだ。言葉はしばしば曲がって届くけど、音楽はいつもまっすぐに届く。
黄金の山脈の稜線。美しい湖のさざ波。それらのフラクタルと相似形な自然が、
この演奏にはぎゅっと詰まっている。私は変幻自在な音楽に心地よく翻弄される
木の葉となって、川や湖の上をくるくると舞い、震えながら大地に着地する。
これは祈りだ。理由もなく私はそう確信した。
なぜかっていうと、そのとき私が思い出したのがアイヌのシャーマンである
アシリ・レラさんだからだ。大地に根付いた神様への祈り。北海道とアルタイ
という地理的には遠くの二点が、こんな近しい固有の振動をもつのは不思議だ。
そう言えば、アルタイの人たちって日本人みたいな顔をしてるな。遠くの親戚
に久しぶりに会ったという感じ。だから、神様も日本の神様と似ているのかも
しれない。そんな気がした。
参考資料:
http://www.12kai.com/altai/aboutaltai.html http://www.12kai.com/altai/personnel.html