【控訴】ホテルジャンキーズクラブ・村瀬千文【37】

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953無名草子さん
明日HJ32号発売前のひとときの読み物として、
リゾジャン掲載のムラセチフーミ「リゾートホテルでの『儀式』」なんていかが?
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プライベートビーチを通り、海辺に建てられた平屋のコテージに案内されると、
まずスーツケースを全部空にするという、いつものリゾートホテルでの
儀式その1≠ゥらはじめた。
ドレスやジャケットはクローゼットのハンガーにかけ、ランジェリーやTシャツ
などは引き出しにしまう。バスルームのシンクの横にハンドタオルを一枚広げて、
化粧水や歯磨きセットをきちんと並べて置く。ノートや筆記用具はデスクの引き
出しへ。読書用の本はベッドサイド・テーブルの上に重ねておく。こうすること
によって、今までは他人行儀な顔をしていたホテルの部屋がなんとなく
自分のお部屋≠ノなったような気がしてくるものだ。

儀式その2≠ヘ、着ていた服を脱ぎ捨てランドリー袋に入れ、シャワーをひと
浴びすること。異国の香りがするソープを泡立て、からだについて汗や汚れと共に、
日常からひきずってきたさまざまな自分の中の不純物たちを少しずつ洗い流す。
おかしくもないのにおかしいフリして笑う自分、思ってもいないお愛想やお世辞を
言う自分、そんなものがからだの中にいっぱいたまっている。ひとフロ浴びて、
髪の毛をタオルドライしながら出てきたすっぴんの私を見た彼(Jack)の顔が
うれしそうに輝いた。
「ひと皮むけた?」
「ほんの少しね」
(略)開け放したフランス窓の向こうには、まるで三六色入り色鉛筆のブルーの
コーナーのようにきれいなグラデーションを描いた海が見えた。(略)

ギアを二段ばかり切り替えた後の儀式その3≠ヘホテル内散歩。ホテルの中を
あちこち歩いて回りながら「あ、あしたの朝ごはんはここのテラスの木陰のテーブル
で食べよう」とか「午後のお茶はこのサロンのあそこの角のテーブルで」とか、
すごしたい時間をイメージしながらチェックする。いいリゾートホテルには、思わぬ
ところに素敵なライブラリーやバー、サロンなどがひっそりと隠れていたりするものだ。