「ネクスト」予想 (
>>466続き)
(前回の参考資料は、
http://pcweb.mycom.co.jp/column/dream/dream043.html http://pcweb.mycom.co.jp/column/dream/dream026.html)
真相を知るためにケイは、兄に似た男とサイコドラマを演じることにした。
しぶる男を説き伏せなければいけなかったが。
>>411-412nの頃とはかなり事情が変わっていて
今や彼の悩みは口うるさい妻ではなく、その数倍は口うるさいケイのことになっていた。
とにかく、彼女は強引にセッションを開始した。
「この前、私が何かから逃げていると言ったわよね。私は何から逃げているの?
兄さんのことから逃げていると言いたかったの?」
「主に自分から逃げているんじゃないの」
「はぐらかさないで。……質問を変えるわ。あなたは兄さんなの? 私を恨んでいる?」
「さあ。君の兄さんではないから、それはわからない。わかるのは、君が彼の死の原因の
一つであったらしいということくらいだ」
「私が聞きたいのはそういうことじゃない!」
「やれやれ。君は情報にアクセスするときに何を求めているの? 世界の真理とやらが
無造作に降ってきては、皆口を揃えて君は素敵だ素晴らしいと誉めたたえてくれること?
君は何も悪くないんだ全て許してあげると頭をなでてもらうこと?」
「兄さんでなければあんたは誰なのよ? ちゃんと名乗りなさいよ、卑怯者!」
男は、「僕」や「俺」と言う代わりに、そっと自分を指差しながら語った。
「名前はない。その時々に応じて、αであったりΩであったり、『あ』になったり
『ん』にったり《シ》の命を受けたりする。君の好きな匿名掲示板にも遍在する何か。
2番目のチャネル経由のミームの囁きと言ってもいいけど、そういう言い方をすると、
君は遺伝子にやったのと同じようにミームを擬人化してトンデモ解釈路線をひた走る
んだろうなぁ」
「あなたが兄さんでないのなら、どうして兄さんの姿で現れたりするの? ひどいじゃ
ないの……あんまりよ」
「だって君は、裁判で被告席に座っている人間を見ても、B級ホラーのお笑い映画の
男優を見ても、自分のお兄さんに似ていると思うんでしょう?
もちろん、こういうのは趣味がいいとは言えない。いくら君が繰り返し、お兄さんを
自分語りの格好のネタにしているとは言ってもね。
許してください。僕が愚かでした……と言うだけだ。頭を垂れる相手は君ではないけれど」
「それで、私にどうしろっていうのよっ!?」
「別に。土手を走る君や校庭で笛を吹く君は楽し気で、縮尺狂いの妖怪フィギュアのようだった。
徹底的にやり返すのよと叫びながら川原を漕ぎ出す君は、はちきれそうなくらい禍々しかった。
君は永劫の闇の中、糞尿にまみれていればいい。真に才能のある者が光の海を泳ぐその間に」
そして唐突に交信は切れた。
「さようなら。かわいい妹――。(藁」
声はこの上ない嘲笑と侮蔑の響きを帯びていた。
そして――ドラマが終わった後、兄に似た男の顔は、もうちっとも兄に似ているようには
見えなくなった。そもそも、どうしてこの男のことを兄に似ているなどと思ったのか、
それすらもケイはわからなくなった。
参考資料:
http://www.hotwired.co.jp/opendiary/randy/20000501.html